ハーレムの壁際で子供たちと手をつなぎ、「かごめかごめ」っぽいことをしているのでしょうか。この温かみが感じられる印象的なジャケ写のアルバムは、1970年発売の、1stアルバムのです。アルバムタイトルは、先頭曲 Voices Inside(Everything Is Everything)から名付けられているので = 自分の気持ち、迷い、祈りみたいなものを無視せずに受け止める、世の中は、愛、信仰、街、歴史、気分が全部影響し合っている。なので、邦題の「新しきソウルの光と道」は、ただのアルバム・セールスの題目であり、もはや意訳でも何でもない。
ちなみに壁に書かれているスプレーによる落書きは、いつごろからなのか調べてみたら、古くから落書き自体はああったが、スプレー缶による現代的なグラフィティ文化は1960年代末から1970年代に始まり、スプレー塗料を使うグラフィティは1960年代末からニューヨークで盛んになったとされています。当時は、自分の名前や記号を街中に書く「タグ」のようなもので、地下鉄や壁面へスプレーで描く文化となったとのこと。なるほどこのアルバムは1970年発売なので、ニューヨークを象徴するような表現の一つとも思われます。
ダニーと言えばどうしても Live (1971) という人が多いかと思いますが、この1年前のデビューアルバムでは、Jazz、ゴスペル、クラシック、ブルース、ファンクが入り混じって従来のソウル・ミュージックとは一線を画したダニーの音の世界が確立されているのがわかります。プロデューサーには自身のバンド The Kingpins を率いてAretha, Curtisカーティスのバンドにも参加している King Curtis の名前が名前が入っています。
Voices Inside (Everything Is Everything) 重いベースラインから始まり、エモーショナルでソウルフルであるが、何か物悲しい響きでホーンセクションも印象的で明らかに従来のソウルと異なる感触が伝わってきます。自分の気持ち、迷い、祈りみたいなものを無視せずに受け止めることが歌われています。
Je Vous Aime (I Love You) フランス語の題名を使って、愛情を少し上品で静かな温度感に置き換えている曲で、ゴスペルなバック・コーラスで歌われ、持ち味の暖かみを感じるメロウなラブ・ソングです。
I Believe To My Soul Ray Charles のカバーで、ゴスペルっぽい熱とソウルの厚みを足してドニー版のカバーになっています。
Misty 一聴してもあの MIsty とは気づかない人も多いのではないだろうか。ブルースナンバーにアレンジすると、はかないメロディが力強く変わってしまっているのが驚き。
Sugar Lee ラフなスタイルで、ジャム・セッションのインストにして徐々にヒートアップしていくのが楽しい。きっちりと黒いソウル魂で熱いです。
Tryin' Times タイトなブルース・ナンバー。軽く適度にハネるピアノが気持ち良いロックテイスト。1970年前後の空気の中で、ただのラブソングではなく、世の中の不安や緊張を受け止める内容です。
Thank You Master (For My Soul) これもゴスペル色が濃い一曲で、日々の恵みと、生かされていることへの感謝をまっすぐに歌っています。
The Ghetto この曲を聴くと60~70年台のアメリカを背景とした吉田ルイの著作ハーレムの熱い日々 BLACK IS BEAUTIFULを思い出します。68年キング牧師暗殺、ベトナム戦争激化、失業、貧困、なくならない黒人差別、とても意味深いメッセージがこの歌にはあることと実感します。
To Be Young, Gifted And Black Nina Simone の Black Gold (1969) に収録された名曲で、素晴らしい解釈で丁寧に歌われています。「若く、才能があり、黒人であること」自体に価値があるという考えを打ち出していて、公民権運動のアンセム的な楽曲でもありこのアルバムでも大きな意味を持つ楽曲です。
A Dream ボーナストラックで追加曲ですが、現実の厳しさの中でも、夢や希望を手放したくない気持ちがにじむ曲です。アルバムでは、社会性の強い曲が並ぶ最後の追加曲として、オマケではなく、希望や憧れをやわらかく抱きしめる曲を持ってきているのは中々メッセージ性があって良いのではないでしょうか。
アルバムとしては、もちろん愛聴盤ですが、改めてこのレビューを書きながら最後の追加のボーナストラックにもオマケだけではないリスペクトが感じられて良かったです🎶🎹
piano, conductor, vocals : Donny Hathaway
backing vocals : The Vashonettes
guitar : Phil Upchurch ( 1 to 4, 6 to 8 )
bass : Louis Satterfield ( 1 to 3 ), Philip Upchurch ( 3, 4, 6, 7 )
drums : Morris Jennings ( 1 to 4, 6 to 8 )
percussion : Ric Powell ( 1 to 8 )
congas : Henry Gibson
alto sax : Clifford Davis, Donald Myrick
tenor saxophone : Johnny Board, Lenard S. Druss
bariton sax : Willie Henderson
trombone : John Avant, Morris Ellis
trumpet : Robert A. Lewis, Gary Slavo, John E. Howell, Oscar Brashear
bass trumpet : Cyril Touff
french Horn : Ethel Merkerl, John Lounsberry, Paul A. Teryett
tuba : Aaron Dodd
producer : King Curtis ( 1 to 4, 6 ), Donny Hathaway, Ric Powell
1. Voices Inside (Everything Is Everything) / Richard Evans, Philip Upchurch & Ric Powell
2. Je Vous Aime (I Love You) / Donny Hathaway, Leroy Hutson & Edward Kennedy
3. I Believe To My Soul / Ray Charles
4. Misty / Erroll Garner & Johnny Burke
5. Sugar Lee / Donny Hathaway & Ric Powell
6. Tryin' Times / Donny Hathaway & Leroy Hutson
7. Thank You Master (For My Soul) / Donny Hathaway
8. The Ghetto / Donny Hathaway & Leroy Hutson
9. To Be Young, Gifted And Black / Nina Simone & Irvine J. Weldon, Jr.
(Bonus Track)
10. A Dream / Donny Hathaway, Robert Ayers
▶ Misty
▶ A Dream





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