1987年に他界した Jaco のトリビュートで、ゲスト・ベーシストを起用した Jacoのいない Jaco Pastorius Big Band (Word Of Mouth Big Band) の、2003年の3月、4月のライブを収録したアルバムです。ただ Wiggle Waggle の1曲だけは、ジャコの過去の演奏した録音テープにバンドが合わせて演奏した録音となっているのと、Punk Jazz Revisited を演奏する Marcus Miller は、ビッグバンドに参加せず自身で、いつものスラップを多用した自身の色を強く押し出している作品をレコーディングし、最後の曲として提供しています。またライブの演奏のほか、生前のジャコのボイスを散りばめているのもこの作品の特徴です。
私の所有している、この盤は紙ジャケなのですが、参加ミュージシャンのコメントや、プロデューサーの Peter Graves とアレンジの Larry Warrilow の各曲のコメントが記載されたライナー・ノーツを読みながらアルバムを聴くのも楽しみです。(ただ手書きの文章の部分は英語圏でない私には読解に時間がかかり非常に読みづらい)
さてレビューしていきます。Jaco Speaks は聞き取れないので割愛します。Havona ジャコ作曲で Weather Report の Heavy Weather に収録のベースラインを主体とした楽曲で、ベーシストは Jimmy Haslip で、かなりの再現度でもありジャコよりも正確な発音なのでは無いかとも思ってしまいます。ビッグバンドにも非常にマッチする曲です。Teen Town これも Weather Report の Heavy Weather の収録曲で、ジャコのライブ音源に高確率で演奏される名曲です。ベースは Victor Wooten で、ジャコに負けない自由度の高い演奏は気合十分です。Punk Jazz ベースは Richard Bona で絶妙なタイム感でのベースで、しっかりとビッグ・バンドがグルーブしていると思います。Barbary Coast ジャコの最初の Weather Report への参加アルバム Black Market の収録曲でエンターテイメント性あふれる演奏で、ベースは Gerald Veasley です。Killing Me Softly は Roberta Flack の1973年のヒット曲で、ジャコの若い時にアレンジした譜面を使っての録音のようで、ピりついた雰囲気の無い演奏で、ベースは Jeff Carswell。(Used To Be A) Cha Cha ジャコのファーストアルバム Jaco Pastorius での収録曲です。このアルバム制作のプロジェクトのテーマの一つとしてジャコが余り演奏していない曲を収録することがあり、それに合致する最適な曲として選ばれたとのこと。ベースは Victor Bailey です。 Wiggle Waggle この曲は Herbie Hancock / Fat Albert Rotunda の1曲目に収録されていた楽曲で、メキシコの Sanibel Island でのギグのジャコの演奏に合わせて、ビッグバンドが演奏しています。元曲のベースのリフはもっとジャズ・ファンクですが、ここではジャコの得意のベースのリフパターンにして、この曲にぴったりとマッチしています。Continuum ジャコのアレンジと書いてありますので存命時にアレンジして書いた譜面を使ったものと思われますが、ほぼ Jimmy Haslip の独自のインスピレーションでのソロで構成されています。Elegant People ジャコの愛した Wayne Shorter の楽曲です。Holiday For Pans でレコーディングしたとライナーノーツに書いてあり、アレンジはジャコ本人の表記ですので Holiday For Pans の時のアレンジを使っているとは思いますが、楽器の編成なども異なるため違うアレンジに聞こえます。ベースは Gerald Veasley です。Opus Pocus ジャコの作曲で息子の David Pastorius がベースを弾いっています。曲はいかにもジャコらしいフレーズのベースラインの楽曲です。Domingo これもジャコのアレンジとの表記がしてあります。スリリングなビッグバンドの演奏であり、ベースの Victor Bailey の正確な指さばきが更にグルーブを引き出しています。Forgotten Love ファーストアルバム Jaco Pastorius の収録曲で Herbie Hancock がピアノを弾いてストリングスが印象的でしたが、ここでは管楽器をバックに Christian McBride がフレットレスで、郷愁を誘うソロを展開します。Punk Jazz Revisited 最初に聴いた時には Marcus Miller が我を張った演奏の曲を提供しているとの印象しかなかったのですが、ジャコの肉声の録音があったり、様々な趣向が凝らされているこのアルバムを、完成させるスパイスになっていると今は思います。それにこの楽曲を入れるのは最後しかないですね。
曲ごとにベーシストだけ変わるので、色々なアーチストが録音したものを集めたようなトリビュートとは違い、曲の良さを引き出し、ジャコの基本的なベースラインの魅力を各ベーシストが、それぞれに表現していることでアルバムとしての統一感があります。
故ジャコが雑誌インタビューで、「ジャコパストリアスの肖像」では ベーシスト としてプレイに重点を置いて制作し、Word Of Mouth Big Band ではコンポーザーとして重点を置いているのでベース・プレイは基礎的な部分を弾くことだけで良いと語っています。そういった意味でも、この Word Of Mouth Big Band の録音は、故ジャコ が異なるベースプレイヤーをゲストとして呼んで録音したようなものとも思えます。
基本的にはジャコのベース・ラインを各ベーシストが弾くので、技量の違いや解釈の違いも聴きどころであると思いますが、誰の演奏が良い悪いは、このアルバムではどうでも良いところ。ただ Wiggle Waggle のベースを聴いているとジャコのベースのグルーブは、やはり特別なものがあるんだなと納得させられるものもあり、このテイクを入れたのも絶妙であると感心してしまいます🎶
voice : Jaco Pastorius (1, 4, 6, 9, 12, 14, 17, 20), Peter Graves (17)
【Jaco Pastorius Big Band】
conductor : Peter Graves
alto soprano sax, flute, piccolo flute : Billy Ross
tenor alto sax, clarinet, flute : Gary Keller
tenor soprano sax, clarinet : Ed Calle
baritone sax, bass clarinet, flute : Mike Brignola
trumpet, flugelhorn : Jason Carder, Jeff Kievit, Ken Faulk
trombone : Dana Teboe
bass trombone : Craig Gosnell (5, 10, 18), John Kricker
piano, keyboards : Michael Levine
drums : Mark Griffith
guitar, koto (synth) : Randy Bernsen
recorded live March & April 2003
executive-producer : Dave Love
producer : Michael J. Hurzon, Peter Graves
producer, recorded by : Marcus Miller (21)
1. Jaco Speaks
2. Havona (Jaco Pastorius)
arranged by : Larry Warrilow
bass : Jimmy Haslip
3. Teen Town (Jaco Pastorius)
arranged by : Larry Warrilow
bass : Victor Wooten
4. Jaco Speaks
5. Punk Jazz (Jaco Pastorius)
arranged by : Jaco Pastorius
bass : Richard Bona
tenor sax : Mike Scaglione
6. Jaco Speaks
7. Barbary Coast (Jaco Pastorius)
arranged by : Larry Warrilow
bass : Gerald Veasley
8. Killing Me Softly (Charles Fox, Norman Gimbel)
arranged by : Jaco Pastorius
bass : Jeff Carswell
9. Jaco Speaks
10. (Used To Be A) Cha Cha (Jaco Pastorius)
arranged by : Dan Bonsanti
bass : Victor Bailey
11. Wiggle Waggle (Herbie Hancock)
arranged by : Stan Webb
bass : Jaco Pastorius
12. Jaco Speaks
13. Continuum (Jaco Pastorius)
arranged by : Jaco Pastorius
bass : Jimmy Haslip
14. Jaco Speaks
15. Elegant People (Wayne Shorter)
arranged by : Jaco Pastorius
bass : Gerald Veasley
drums (hand drums) : Bobby Thomas Jr.
16. Opus Pocus (Jaco Pastorius)
arranged by : Larry Warrilow
bass : David Pastorius
marimba : Gary Mayone
17. Peter & Jaco Speaks
18. Domingo (Jaco Pastorius)
arranged by : Jaco Pastorius
bass : Victor Bailey
19. Forgotten Love (Jaco Pastorius)
arranged by : Larry Warrilow
bass : Christian McBride
flute : Mike Scaglione
20. Jaco Speaks
21. Punk Jazz Revisited (Jaco Pastorius, Marcus Miller)
arranged by : Marcus Miller
bass, bass clarinet, drums, clavinet, soprano sax, scratches :– Marcus Miller
soprano sax : Roger Byman
trumpet : Michael "Patches" Stewart
▶ Havona