2012年リリースの発掘音源です。渡辺香津美がマイクスターンの推薦よって参加したワード・オブ・マウス・ビッグバンドの日本ツアーのミキサー卓から録ったカセットテープ音源なので音質もばっちり、リリース後に聞いた時には、これはすごい音源だとビックリしました。
ジャコは1982年にウエザー・リポートを脱退し、ワード・オブ・マウス・ビッグ・バンドで、Invitations を録音しています。そして同年に東芝のオーディオ製品のブランド名を冠したオーレックス・ジャズ・フェスティバルで来日しています。その翌年の1983年にスモール・コンボとして再び日本でツアーを行ったのが本アルバム。1982年のツアー時には、かなりの奇行ぶりで、その後のイタリア・ツアーでは長すぎるディストーション・ソロとステージ放棄で2万人観客からのブーイング事件、ホテルのバルコニーの手すりから落下して骨折事件などお騒がせな時期だったはずですが、ここではフィジカルな演奏を見せており、素晴らしい録音内容です。特におかしなエピソードも見かけないので、安定期だったようですが、その頃二人でドラッグと酒にはまっていたマイク・スターンが来日できなかったことを思うと、そうでもないような気がします。ライナーノーツで渡辺香津美は、この後ツアーへの参加を要請されたけど断った、参加すればよかったと思っていたとの記述もありました。しかし、この頃のジャコは迷惑なエピソードのオンパレードで、それはリップサービスで実は渡辺香津美氏も危険を感じていたのでは?とも思ってしまいます。ライナーノーツに書いてあるツアーでのメンバーのエピソードを見ていると楽しそうな現場だったようです。
全曲レビューしときます。 Disc1 から、Soul Intro, The Chicken ジャコと言えばこれです。The Chicken は、我々アマチュア・バンドでもセッションでは皆が楽しめる曲でお世話になってますし、ジャコが付け足した Soul Intro とのセットがやはり定番です。ジャコのベースもオルガンのようにブーストがかかり、演奏内容も良い状態です。Clean Up Woman 昔 Wayne Cochran のバンドに在籍していたジャコの思い出の曲ですね。Dermar Brown のボーカルも、かなりのハイレベル。ソウルに根差して鍛えられたベースのリズムを改めて認識ですが、2分3秒の超ショートでのフェイドアウト。Bass Solo は、MXRデジタル・ディレイを使用した、いつもの一人ソロですが、このベースソロは、よく聞くジミヘンなどは入れずに創造的です。時にやり過ぎてしまって不評を買うことも多かったソロですが、こいつは素晴らしい。Black Market これは Wether Report 時代の名曲で香津美氏のギターが、思いっきりヘビーに暴れているのが嬉しい。Black Market 1976。そして John & Mary は、ジャコの子供の名前をタイトルにした民族音楽的な楽曲、Word Of Mouth 1981 ですが後半は、原曲は後半がワールド・ミュージック風だったが、本アルバムではソウル風のアレンジ。Dania 正式アルバムには収録されていない Jaco Pastorius / Live In New York City Volume One に収録のジャコのスキャットが聴けます。その他FM東京のオンエアをCD化したブートレグっぽい正式リリース盤 Jaco Pastorius Band / Tokyo 83 なんかもありますが、聴き比べても、この盤の演奏は録音状態も含めて良いですね。
続いて Disc2 です。Reggae Tune, Who Knows ジャコの作曲?発案?のレゲエセッションに、ジミヘンの Who Knows のドッキング。18分26秒の長尺で最後はプチっと終わり。好きな人には良いですが少々やり過ぎ感はある。Teen Town, Changes ジャコのセッションなどでも定番の Teen Town はディストーションのギターとも相性が良く、他でもハイラムが気持ちよくギュンギュン弾いているのもありますが、ここでは香津美氏がホント暴れっぷりが素晴らしい。私はハイラム・ファンであり悔しいですが、Jaco Pastorius / Live In New York City Volume One 、 Vol Two より、こちらの方が聴きごたえあるかな。Havona は、Wether Report / Heavy Weather 収録のジャコ作曲の名曲です。このコンボより少し大きい人数の編成でのスピード感のある演奏と非常にマッチしています。ジャコの指さばきも、速さ正確さパッションとも絶好調です。さらに Beavor Patrol は、正式アルバムには収録されていないナンバーで、この録音は Jaco Pastorius Band / Tokyo 83 と同じものと思われます。Fannie Mae, Why I Sing The Blues これもジャコの定番曲のメドレー。安定感は抜群です。
ジャコのアルバムは、必ずしもコンディションの良くないジャコを悲しくなりながら聞いてしますこともありますが、このアルバムはホント聴けて良かったです。病気療養中の渡辺香津美さま、改めて有難うございます!
Jaco Pastorius“WORD OF MOUTH”Band 1983 ジャパン・ツアー・スケジュール
5月10日 大阪フェスティバル・ホール
5月11日 福岡サンパレス
5月13日 名古屋市公会堂
5月14日 宮城県民会館
5月15日 神奈川県民ホール
5月17日 新潟市県民ホール
5月19日 札幌厚生年金ホール
5月21日 新宿厚生年金ホール
5月22日 新宿厚生年金ホール(2ステージ)
bass : Jaco Pastorius
trumpet : Ron Tooley
sax : Alex Foster
keyboads, vocals : Dermar Brown
percussions : Don Alias
steel drums : Othello Molineaux
drums : Kenwood Denard
guitar: Kazumi Watanabe
【Disc 1】
1. Soul Intro, The Chicken / Jaco Pastorius, A.J.Ellis
2. Clean Up Woman / Clarence Reid / Willie Clark
3. Bass Solo / Jaco Pastorius
4. Black Market / Joe Zawinul
5. John & Mary / Jaco Pastorius
6. Dania / Jaco Pastorius
【Disc 2】
1. Reggae Tune, Who Knows / Jaco Pastorius, Jimi Hendrix
2. Teen Town, Changes / Jaco Pastorius, Buddy Miles
3. Havona / Jaco Pastorius
4. Beavor Patrol / Jaco Pastorius
5. Fannie Mae, Why I Sing The Blues / Buster Brown, B.B.King
▶ Havona
▶ Dania