1972年にバプテスト教会「New Temple Missionary Baptist Church」で収録されたライブの2枚組CDです。もともとは2枚組LPとしてリリースされ、ビルボードのトップ10にランクインし、史上最も売れたゴスペル・レコードとなった作品です。このCDは再発盤で当然デジタルリマスターされていて、コンプリートだけにLPには無かったすべての曲が収録されています。LP盤ではオーバーダビングされていたボーカルや、収録曲を別の日にレコーディングして差し替えていたものも、全てオリジナルにしているとのことで、オリジナルを持っているファンは再度購入せざるを得ないような仕掛けとなっているようです。(オリジナルはLPという収録時間の物理的制約や、アルバムのパフォーマンスやバランスを考えたセールス的な仕掛けの意図があってのオーバーダブや曲の差し替えなののでしょうから、オリジナルが悪という訳ではありません)なお、ゴスペル・アルバムとしては1987年に「One Lord, One Faith, One Baptism」もリリースされています。
ソウル・ボーカルで女王の名を得たアレサですが、もともとは父のC. L. Frankliは説教者として公民権運動の活動としても有名な教会の牧師で、母 Barbara Vernice Siggers Franklin はゴスペル歌手。また教会でゴスペルを歌って育ち、デビューもゴスペル系だったわけですから原点回帰しながらゴスペル音楽の持つ素晴らしさを伝えるこのアルバムも全く不思議ではないわけで、このアルバムの収録前の1970年 Spirit In The Dark でもゴスペル曲を取り入れ始めて、このレコーディングとなったのも自然な流れですね。
さてこのアルバム、音楽的にはゴスペルなのですが大衆音楽のソウルのシンガーとして活躍したアレサの今までの経験がミックスされていることもあり、ゴスペル・クワイアの楽しさに改めて耳を奪われ、優秀なライブアルバムにつきものの聴いている人たちの熱量も録音され確かに名盤です。オープニングは誰もが耳にしたことがある「On Our Way」でゴスペルコンサートの始まりであることを認識し、美しい「Wholy Holy」、16分間の「Amazing Grace」「Mary、Do n't You Weep」参加者はきっと涙してるんでしょう。ゴスペルの持つ熱量を受け取りたいなら「What A Friend We Have In Jesus」「Old Landmark」「God Will Take Care Of You」・・・ やはり最初から通して聴いて、静かに聴きながら心で聞き入り、一転どんどんと心を開放しなさいと攻めてこられる、人間の感情を音楽で見事なまでに揺さぶる素晴らしいアルバムでした。
1970年代のシカゴのアフロ・ファンクで、発売は Kingdom Of Chad Records。かなりアンダー・グラウンドなサウンドで、Sun Ra、Art Ensemble Of Chicago などのスピリッツを内包しているとの評もありますが少し違うんですよね。ドロドロのサウンドはアーシーでコズミックさも感じます。レコードなんかは amazon で $4,500 ですから2024年5月現在のレートで、なんと 688,500円 と高額取引。今はレア過ぎて出品もありませんので円安の今では恐ろしい金額になってしまうに違いありません。もちろん私はリイシューのCDの購入でしたからリーズナブル。入手が中古か新品かは覚えていません。2025年2月現在¥4,500でした。高くねえか?DiskUnionでは、リイシューLPは\2,750、タワレコでは、LP¥5,190 CD\2,990でしたが両方ともソールド・アウトでした。
リイシュー版の発売は、レアものの再発/発掘を手がけるシカゴのレーベルの NUMERO が立ち上げた紙ジャケ専門レーベル「アスタリクス」とのこと。アスタリクスの表記は恐らく「4*」(ライナーノーツの裏側にありました)愛聴盤ではありますが、今回調べて見て初めて知りました。
メンバーは6人でベースの Ron Harris は、Ramsey Lewis の Salongo に参加していましたが、他のメンバーの活動は結構マイナーな感じです。
それでは全曲レビューです。Introduction は、スタートからスピリチュアルな幕開け。はるか昔、最初に聴いた時には退屈な感じがした気がしますが、何十回も聴いていると、このドラマチックで大袈裟な構成とオドロオドロしいボーカルが大好きになってきます。またエンディングのベースが怪しさを醸し出すところも最高です。そしてイントロのギターのアルペジオが、普通過ぎて怪しい。Writin' On The Wall も、イントロに続き怪しさ満載の朗読ボーカルとトランス状態になっているかのような叫び。管楽器はトランペットとトロンボーンですが誰が吹いているのかフルートがホラーっぽい。行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」の常連の一人には、このエネルギー最高ですねの誉め言葉頂きました。He Keeps You あたりからは、普通にファンクの演奏ですがボーカルが野太い声で、更にどこかがアフリカンな響き。ここらへんでベースの Ron Harris の変態なベースラインとバカ馬なテクニックと正確なリズム感が気になってきます。We Ain't Free では、グルービーなリズムになってきて普通にファンクもするのかと妙に感心していると、いきなりのベースとドラムとパーカッションのアフリカンの長い間奏とフリーのようなソロに脳がやられてから最後はテクニック剝き出しのソロ合戦とサイケな展開にノックアウトです。If I Had My Way は は Sly とかが好きな人には受け入れやすい楽曲になります。ギターのカッティングとホーン部隊の上手さにも注目です。I'm What You Need では、メロー・ソウルの始まりにコマーシャルな部分を感じながら、ボーカルの野太いバリトン・ボイスが怪しさを加えながらファルセットのボーカルがポップさを加えコーラスがチャンと上手い所が怖いです。Money Won't Save You ここまで聴いてくると、この曲が一番普通に聞こえるので何かつまらなく思えてくるようになれば、相当このアルバムを聴きこんでいる証拠でしょう。私には、もはや普通過ぎて刺激が足りません。Now And Den きっとNow and Then なんですかね。普通ではありますがカオスを含んだスピリチュアルなソウル風ファンクです。
さてバラード主体のボーカルとハーモニーが特徴のこのアルバム。全曲レビューしてみます。 I (Who Have Nothing) まずは、Roberta Flack が切り出し、サビは二人のデュオ、Donny Hathaway の独唱から二人の掛け合い、情感たっぷりに腹の底から湧き出てくるような感情をの表現で、やり過ぎなのではと思うぐらいの力が入った1曲です。ハーモニーも素晴らしいですが伸ばすフレーズで、二人のビブラートの長さもシンクロしているのは今回聴いて気付きました。二人のバンドはギター Eric Gale、ベース Chuck Rainey、ドラム Bernard Purdie の当時の業界では、ありとあらゆる現場で活躍していた三人です。You've Got A Friend は、Carole King の名曲で James Taylor もヒットさせた名曲。ただこの曲に限っては Donny Hathaway の Live! に収録されているバージョン が一番好きかもしれません。ギターは、David Sanborn でもお馴染みの David Spinozza が弾いています。ストローク・プレイですが、埋もれずに密かに存在感のあるプレイです。Baby I Love You は、Aretha Franklin も取り上げた名曲。ここではカントリー風のアレンジで、サビの I Love You のリフレインは、こちらの方が印象強くアイデアの勝利。Be Real Black For Me アメリカの公民権運動を象徴する歌詞をラブ・ソングにしている曲ですね。曲調的には、いかにも Donny Hathaway の色が強いでしょうか。 You've Lost That Loving Feeling は、ブルーアイド・ソウルの The Righteous Brothers のヒット曲ですが Donny Hathaway の色が強いような気がします。 For All We Know は、Roberta Flack のピアノをバックに Donny Hathaway が歌うスタンダードで、Nat King Cole、Billie Holiday で歌われているものとは全く違う解釈です。近い解釈では Nina Simone も発見しクラシックの素養がある人の解釈としては近いものがあるかもしれません。ここまでシリアスな楽曲の展開ですが Where Is The Love で、ポピュラーな感じになり、ホッとします。これは、かなりヒットした曲で、この二人のバージョンが印象的です。Come Ye Disconsolate はゴスペルで、このアルバムのボーカル曲のラストにこの曲を持ってきたことは、様々な音楽性がある二人の、また共通の音楽の大事なルーツでもあることを示していることかと思います。そして最後は二人のピアノのデュオの Mood です。Donny Hathaway のエレピの揺れと、Roberta Flack のクラシカルなピアノのプレイは、二人の音楽の相性の良さを見せてくれます。
CD帯での紹介は「UKファンク界の速度違反野郎」ギラギラのホーン隊とタイトなリズム隊のライブならではの情熱的な演奏は文句なく楽しいものでした。Speedometer は、1997年にファンク・カルテットとして活動をスタートし、ライヴ・ハウスで JB'S や The Meters のカバーのプレイが主体でした。その後 UKファンクの The James Taylor Quartet 等との共演、カルテット編成からパーカッションやホーン・セクションを加えた編成になりオリジナルナンバーを作り始めます。
そしてデビューは1999年にアメリカのレーベル Soul Fire からシングル Soul Safari をリリース。1stアルバム This is Speedometer Vol.1 のリリースは2004年。こちらはUKのレーベル Freestyle Records です。私がもう一枚所有しているのは、This is Speedometer Vol2 (2005) です。バンド自体は現役で speedometer-funk.co.uk から活動を見ることが出来ます。
このアルバムは、英国南部のハンプシャー州にある The Soul Cellar の2008年5月3日PM5時~4日の朝AM4:00までのライブの録音です。(11時間も演奏する訳は無いので、多数のバンドがでて、Speedometer は2回とかだと思いますが) ジャズ・ファンクと言っても、アーバン・ソウル系ではなく、ホーン強化のJB’Sのジャズ寄りな感じです。
さて、おそらく店頭で試聴一発でお気に入り購入のように思われるこのアルバムを全曲レビューします。まずは、テーマソングであろう Speedopener から。MCのバンド名コールから始まり、キーボード、ギター、ベース、ドラムの4ピース演奏です。なるほど結成当初からのテーマソングなので最初は4ピース。当然のパキパキのファンクセッションで当然のカッコ良さ。作曲者はリーダーでギタリストの Leigh Gracie 。お次は At The Speakeasy ホーン部隊参加の同様のファンクセッション。こちらは、This is Speedometer Vol2 (2005) の1曲目にも収録されていました。ほぼスタジオ盤と同じ速度ですが、こちらのライブの方が切れがある感じがします。Speakeasyの意は「知る人ぞ知る」隠れ家的雰囲気の酒場だそうです。しゃべりやすい酒場みたいな気もします。Kool To Be Uncool は、少しスピード落とした同じタイプのファンクセッション。似たタイプの曲が続きますが、この手の、イキったタイトなリズムでカッコ良いホーンの曲は幾らでも聴いてられます。What Am I Gonna Do で歌物になり、JB’Sタイプのタイトなバックでクセが少な目のボーカルです。ここまでソングライティングは全てギタリストの Leigh Gracie で、さすがリーダー歌物もイケてます。Answer To Mother Popcorn で、JB’S の Mother Popcorn (1969) へのアンサーソングで Vicki Anderson が録音した曲のカバーで、原曲のカッコ良さそのままにって感じが、ソウルファンにはたまらないでしょう。キメもそのままですよ、スキですねえ。。Make It Alright こいつの曲の本体はTOP の What Is Hip? を拝借して、サビを変えてきてますね。ここらへんもたまらんですね。Kool & The Gang / Let The Music Take Your Mind さらに、カバーが続きます。Kool & The Gang のバージョンも楽しくなってきたんでリンクしときます。本家のダルさも良いですね。そしてスパイ大作戦のテーマも途中で入れての乱闘となってます。Four Flights Up はギターのカッティングの基礎練習のために作った曲にホーンアレンジして、ツイデにホーン部隊がラテンまでアレンジを加えて遊んだような曲です。バンドの遍歴と今までの下積みの積み重ねが伺われます。Soul Grooving は、Merl Saunders のカバーで本家はジャズ・ファンクの走りのような演奏でした。こちら Speedometer では、もっとタイトに攻めながら、Leigh Gracie は、Grant Green フレーズを入れながら古き良きを大事にした演奏です。Am I Your Woman (Tell Me So) そしてボーカルものに戻ってきます。Beyoncé の Crazy In Love と思ったら元ネタが、 Chi-Lites と言うボーカルグループの本家のようで、本家がまたカッコ良い。No Man Worries 誰のカバーかと思ってましたが、Leigh Gracie の作曲です。元ネタありそうですがわかりません。 Work It Out こちらも This is Speedometer Vol2 (2005) の5曲目に収録。元ネタは Beyoncé です。カバーと言うよりは元ネタレベルまでの再構築なので Beyoncé に元ネタはあったんかな?とも思ったりしましたが、それは無いようです。今まで Beyoncé をこんなにマジマジと見ることもありませんでした。趣味ではないけど凄い方ですね。
The New Mastersounds(ニュー・マスターサウンズ)率いてのジャズ・ファンクを経て、Eddie Roberts のソロ・デビューは、Roughneck 、そしてソロ第2作目が本作のライブ盤です。1st の Roughneck (2009) は未購入ですが、1年前のアルバムとのことで曲目はかなり、重複しているとのことですが、スタジオ盤との違いが気になるところですので中古屋に行った時には注意しときます。
The New Mastersounds との大きな違いは、オルガンがピアノに置き換わっているところが大きく、ジャズ・ファンクが主体であることに変わりないですが、歯切れの良いピアノに置き換わることにより、ジャズ色が若干強まったグルーブになっています。ギターも、それに合わせた、ファンク・ビートにのせたソウルフルなフレーズで、難しいフレーズはあまり使わずに、ペンタ中心のグルーブで、ジャズ・ファンクの中のジャズ色が強く押し出されています。 録音場所は、2005年にパリのモンマルトルにある名門クラブ Le Tripttyque となっています。お店の FaceBook の写真で見るところ、割とこじんまりとした場所のようです。
それでは全曲レビューです。「Eazin’ Down」イントロはギターが口火を切る形で始まり ジャズ・ファンク全開のワンパターンのリフが延々と続いて各自のソロが展開されていきます。まずはグラント・グリーンのフレーズを入れつつの Eddie Roberts の荒々しい男気が溢れるゴツゴツ系、続いては Bill Laurance のピアノ・ソロで、この辺りはジャズっぽく攻めてきますが、ピアノが鳴っているのにオルガンが乱入っぽい入り方です。もしかしたら The New Mastersounds の乱入でしょうか。今回気づきました。ここで混乱して聴いているうちに佳境では高音ピロピロの私の好きなパターンを交えつつトランペット・ソロ、そして全員で大団円で終了。王道の演奏です。「The House in Alajor」かなりジャズ・フュージョンなナンバー。ギターとトランペットがユニゾンで演奏するハード・バップ系のテーマですが、Eddie Roberts のギターが少し歪ませた荒々しい音であるのがカッコ良い。そこからは、テンション押さえ気味のリズム隊に、クール系なソロ回し。盛り上がってきてもリズム隊は決して煽りません。これもこれでカッコ良いかも。「Costa del Soul」重めのリズムですが、ラテン・リズムでカラッとした雰囲気に変えてきたのかと思いきや、根底は少し泥臭いジャズ・ファンクがあります。後は基本的にジャキジャキのギターで Eddie Roberts が暴れる感じのギター弾きまくり、もう少しイってしまうとガシャガシャになるのですが、その手前なのがツボ。そしてトランペットが入ったテーマが入ってジャズ・コンボでよくあるバースも交えてこられると古典的なのか新しいのか、わかならない嬉しい展開。「Mr E」次はルーズなリフのジャズ風ファンク。スコーンと抜けるリズムとワンパターンの繰り返しは相変わらずで、ソロ回しなども相変わらずで、長め Malcolm Strachan のトランぺット・ソロが相変わらず素晴らしいし、リズミカルで華麗な Bill Laurance のソロも相変わらず聴かせてくれて後半の盛り上がりが素敵す。「New Life」テーマが印象的なコードのストロークが主体のジャズ・フュージョンで、ゆったりとしたEddie Roberts のギターが主体の楽曲で、コードが主体なので抽象的なところが魅力的です。「Szabo」今度はジャム・バンド的な曲で、ハンガリーのジャズ・ギタリスト、Gábor Szabó に捧げられたラテン・ソウル。トレモロ・ピッキングが、Gábor Szabó の得意技だったかと思われ、この曲で使われています。ブラスバンド的なノリのドラムとギターのソロ部分が面白い。「Lose Yourself」2002年に流行ったエミネム主演の映画「8 Mile」の主題歌をジャズ・アレンジしているので、今までのジャム・セッション的な曲よりも楽曲的な流れがあって、このアルバムのアクセントになっています。「Every Goodbye」クラブ・ジャズを軽めにして生バンドで演奏しているような曲です。また歌はありませんが、シャンソン的なニュアンスを感じるのはフランスでのライブを意識してのことなのかとも感じます。
本家 The New Mastersounds を、これまで聴きこんではいないので、今後色々なアルバムを聴きこんでいって数年後に再レビューすると、また違った印象になるのかと思います🎶
guitar : Eddie Roberts
trumpet, flugelhorn : Malcolm Strachan
piano : Bill Laurance
bass : Neil Innes
drums : Gordon Kilroy
producer : Eddie Roberts
recorded at Le Tripttyque, Paris, 11th Octorber 2005
1. Eazin’ Down / Pete shand, Eddie Roberts, Bob Birch, Simon Allen
2. The House in Alajor / Eddie Roberts
3. Costa del Soul / Eddie Roberts
4. Mr E / Eddie Roberts
5. New Life / Eddie Roberts
6. Szabo / Eddie Roberts
7. Lose Yourself / Marshal Mathers, Jeffrey Bass, Luis Resto
帯の記述通り、スライっぽい曲が出だし続きポップに聞こえるのもありながら Seven Years なんかはまるでカーティスですが、声質は、やはり白人のホワイト・ファンクです。全体を通して聞くとマイナーなアートっぽい感じがします。また宅録っぽい音源が多く、そこらへんの音作りの雰囲気がスライだし、何かが頭にひっかかる気になるアルバム。
この Edgar Jones(エドガー・ジョンズ)どんな人なのか? 90年代初頭に活躍したイギリスのガレージ・トリオ・バンド、The Stairs(ザ・ステアーズ)のリーダーでベーシスト、ボーカリスト。2006年からソロ活動となり、英国リヴァプール出身で地元DJでは人気が高かたとのこと。つまりは一般的にはあまり知られていないレア・グルーブで良いでしょうかね。