1959年録音の4作目のトリオ作品で、1961年の Waltz for Debby と双璧をなす代表作との評判もあるアルバムです。Miles の Kind of Blue(1959)で、新しいモードジャズをするための下準備を本作 Portrait In Jazz で作ったと言われています。Waltz for Debby と録音メンバーは同じで、ベースは、Scott LaFaro、ドラムは Paul Motian となります。ですが、Miles作品では Kind of Blue のベースは Paul Chambers、ドラムは James Cobb と本録音とは異なります。
音楽的な下準備という意味では、従来のフォービートの伴奏ベースではなく積極的にピアノとのコール&レスポンスをするベースとピアノの関係が対等である点と言われており、ドラムの Motian もビートの刻みより、色彩的なサポートや会話的な応答を重視、Evans のの繊細なタッチと内省的なハーモニーが、三者の即興をまとめ上げています。
本作はリマスターのCDなので、Autumn Leaves も2バージョン収録がうれしいところ。このアルバムを聴いたのは、いきつけの音楽好きの集う「おでんバー」で、Bill Evans 好きの読書女性が、マスターが Bill Evans嫌いなのを知っていながらもガンガンかけていたので、私も少しづつ聴き始めたころ。彼女の好きな Envans は、「静」の演奏が多い印象でしたが、そればかりではない「動」もあることに気づいたのはこのアルバムでした。
オリジナルのライナーノーツはプロデューサーの Orrin Keepnews 氏が、興奮気味に大げさに書いておられます。
Come Rain Or Come Shine このアルバムの「トリオの会話スタイル」をいきなり見せつける1曲目で、よく知られたスタンダードでありつつ冒頭からトリオのバランス感覚を聴かせてくれます。出だしのイントロから、テンポやニュアンスを少し揺らしつつ入ることで、ロマンティックさよりも「深い思索」のような気配を出し、テーマの途中でもベースがコード・トーンから逸れた音でラインを描き微妙な陰りを与え、ピアノソロでは、オクターブでのメロディや分散和音を使いながら元のメロディの断片が常にどこかに残っています。
Autumn Leaves take1, 2 Take 1 は、ややストレートで構成が整理されて LaFaroのベースラインも比較的「まとまり志向」な」慎重な探り合い。take 2は、緊張感がありドラマ性が強く自由でリズムの前後に揺れが出る分、ダイナミクスや間合いのコントラストが大きいかと思えます。
Witchcraft アメリカン・ポップス寄りの洒落っ気が強い曲を、テンポ中速で4ビート、スインギーにしています。元のコード進行を尊重しつつテンションの積み方やボイシングでジャジーで少しダークな色合いになっています。テーマでも細かな装飾音やリズムのずらし方を使い、ただメロディをなぞるのではなく「さりげない変奏」です。
When I Fall In Love 「本気で恋をするなら、その愛は永遠に続くものだと信じたい。だから軽い気持ちでは恋に落ちない」という慎重だけれど一途な愛の誓いの曲。テンポはゆっくりで1音1音の余韻をもたせ、ピアノはメロディをほぼ忠実に歌いながら、ハーモニーを細かくリハーモナイズして陰影をつけています。ベース、ドラムとも「静かな会話」と「間合いの美しさ」が特徴でしょうか。
Peri's Scope ガールフレンドの Peri が、自分の名前がついた曲がない、と Evans に催促をしてできたらしいです。いわゆるジャズの典型的な形式に沿った中速スイングで、メロディはシンプルで歌いやすく覚えやすいフレーズ。ハーモニーの選び方や、フレーズの「登っては少しだけ影を落とす」感じに、Evans らしい感傷がうっすら。
What Is This Thing Called Love? 「ジャズど真ん中のスタンダード枠」を担っている感じです。テンション高めで、アドリブの起伏も大きく、LaFaro の攻めたラインが前に出る「動」ってヤツが強く感じられます。
Spring Is Here 「春が来て世界は浮き立っているのに、自分の心には春が来ない」という、Richard Rodgers, Lorenz Hart らしい切ない“アンチ春うた”です。Evans の所謂リリカル・タッチ、内省的なバラード解釈の、私の、いきつけの音楽好きの集う「おでんバー」のマスターが嫌がるパターンですが、私は好きです。
Blue In Green Miles の Kind of Blue(1959)のほうが先に録音されています。作曲は Miles Davis 名義ですが、Bill Evans作または共作説が出ているようです。とみなす見方が現在は有力です。非常にゆっくりしたテンポで、円を描くような、上昇と下降をくり返すメロディで内省的なので確かにそうかなといった感じです。Miles 版よりさらに陰影の深い解釈で演奏されています。
聴きなおしても結構よかったですが、また、いきつけの音楽好きの集う「おでんバー」に持っていったら、マスターが無口になるんだろうな。楽しみです🎶🎹
piano : Bill Evans
bass : Scott LaFaro
drums : Paul Motian
producer : Orrin Keepnews
recorded at Reeves Sound Studios, New York; December 28, 1959
1. Come Rain Or Come Shine (Harold Arlen & Johnny Mercer)
2. Autumn Leaves take1 (Jacques Prévert, Johnny Mercer, Joseph Kosma)
3. Autumn Leaves take2 (Jacques Prévert, Johnny Mercer, Joseph Kosma)
4. Witchcraft (Carolyn Leigh, Carolyn Leigh)
5. When I Fall In Love (Edward Heyman, Victor Young)
6. Peri's Scope (Bill Evans )
7. What Is This Thing Called Love? (Cole Porter)
8. Spring Is Here (Richard Rodgers and lyricist Lorenz Hart)
9. Someday My Prince Will Come (Frank Churchill, Larry Morey)
10. Blue In Green (Miles Davis)












