1965年5月、5枚目のリーダー作として制作された、60年代の Herbie Hancock の傑作と言われ邦題は処女航海。Herbie といえば、私の学生時代のイメージは1980年代のヒップ・ホップなどを取り入れたエレクトリック・サウンドで、敬遠しがちなジャンルでした。ジャズをやっていたことは知ってはいたのですが、あまり単体で聴くことはありませんでした。しかしおそばせながら Miles を聴き始めてから Herbie のジャズスタイルを聴くことも増えてきて、やっぱり聴いといたほうが良いんだろうなと Speak Like A Child を入門にして、このアルバムなどを購入しています。
Herbie は、Miles Davis グループに1963年~1965年まで在籍していました。なのでこの1965年の作品のメンバーもトランペットの Freddie Hubbard を除けば、Milesバンドの録音のメンバーで、その影響をモロに受けています。タイトル通りテーマは海の広大さと威厳・処女航海で海をゆく船の壮麗さ・優雅なイルカの美しさ・小さな海生生物の生・嵐などを盛り込んだモチーフを持って作成されたオリジナル作品が収録されています。もともとは1965年3月11日にドラムだけ Stu Martin で Maiden Voyage、Little One、Dolphin Dance の3曲を録音していたそうですが、そのテープは残っていないようで聴き比べができれば更に楽しめるのに残念な限りです。
Maiden Voyage 航海に乗り出す船の美しい姿や、光る水面などのイメージする風景画的な曲で、曲としてはモードジャズ的な構成でコードチェンジは少なめです。
The Eye Of The Hurricane 「Maiden Voyage」が穏やかで広がりのある“船出”の情景なのに対して、緊張感が高く、リズムもハーモニーも鋭い雰囲気になります。透明感があってキラキラのしたピアノのバランス感もあります。
Little One Milesの E.S.P. (1965) のセッションでも録音されています。メンバーは当然この録音と同じです。テンポは遅く、静かな導入から始まります。和音は柔らかいのに、どこか不安定で、子どもの心の揺れのようにも聞こえ、荒れる海の物語の途中に出てくる、静かな回想シーンや、誰か大切な存在を思い出す場面のようにも感じられます。
Survival Of The Fittest ダーウィンの進化論で有名になった「最も適応した者の生存」という考え方を指す言葉がタイトル。ここでは「生き残りをかけた闘い」や「極限状況での緊張感」が前面に出てきて、荒れ狂う自然の中で、生き延びるために必死で抗う瞬間や、試練の場面を象徴しているようなイメージ。
Dolphin Dance 複雑なコード進行と独特のモーダルな動きで、波のように和音が変化していき、どこかに落ち着きつつも完全には止まらない流れが続き、イルカが流れに身を任せながら自由に泳ぎ回るイメージや、海そのものの大きなうねりに感じます。いや名曲。
1965年にしては、現代的な音のセンスの和音とビートのジャズを展開しているのだから、当時のこのアルバムを聴いたジャズ・ファンは新たな時代を感じたに違いありません。この後にエレクトリック・キーボードを取り入れてファンク、ヒップホップ、ジャズ回帰などの活動をする人だけに、アルバム全体を通して聴くとしみじみするものがあります🎶
piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Anthony Williams
tenor sax : George Coleman
trumpet : Freddie Hubbard
producer : Alfred Lion
recorded on March 17, 1965.
recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey
1. Maiden Voyage / Herbie Hancock
2. The Eye Of The Hurricane / Herbie Hancock
3. Little One / Herbie Hancock
4. Survival Of The Fittest / Herbie Hancock
5. Dolphin Dance / Herbie Hancock



















