2026年11月3日火曜日

Herbie Hancook / Speak Like A Child

 

 それまで聞かず嫌いだった Herbie Hancook を聴き始めるきっかけのアルバムです。なにしろジャケットが好印象、中身も素敵な Speak Like A Child は、Herbie Hancook が1968年に発表したアルバムです。1965年からベトナム戦争が本格化して1968年にはキング牧師の暗殺された年の録音で、アメリカ音楽を時代背景を考えながら聴くうえで重要な年代になります。
 このジャケ写は婚約中の Herbie Hancook とGigi  Meixner のシルエットで、いかにも平和なこのジャケットのアルバムは「innocence and naivete」がテーマで、Herbie は子供、少年、少年時代、そうしたものを題材に曲を書いています。書き下ろしではない作品としては Miles 作品で既に演奏されている The Sorcerer (魔法使い)がありますが、子供にっとって不思議な存在であることを考えればこれはコンセプトに沿った選曲。しかし Miles 作品で既に演奏されたことのある 1曲目の Riot(暴動)は、曲名からわかるように innocence の対極にあります。これは、録音された時代背景の、当時の現実社会の戦争、暴動、弱肉強食の金融界などへのアンチテーゼを、あえて裏テーマとして表しているような記事を見たことがありますしライナーノーツにも似たような解釈が書かれている記事を見たことがありました。以来 Herbie がそう語ったとは書かれていなかったもののそういった解釈をしていました。
 が、しかしです。今回の再聴にあたり、原盤のライナーノーツの細かい字を読んでいたら何やら、今までの認識と違うことが書いてある。

The first number, Riot, was recorded originally by Miles Davis. "When I listened to the record," Herbie said, "it sounded like a riot to me with regard to the emotions being expressed. This version, however, is less riotous. It does contain an element of turmoil, but it's there more as an undercurrent than on the surface. Incidentally, when I wrote this song, I wrote the melody first and then I added the harmonies I wanted underneath. I suppose I heard them vaguely in my head from the beginning. I just had to find them." 

つまりは、Miles の録音当時は、暴動(Riot)のように聞こえたが、今回のバージョンは、そこまで暴動的ではない。と本人が語っている。つまり、時代背景を踏まえたアンチテーゼは、リスナー側の誇大解釈で、作者本人にとっては純粋に「innocence and naivete」を表し、婚約者との幸せ絶頂の幸福感を詰め込んだアルバムであるということが今更に判明。

 
 最初にこのアルバムを聴く前の私の Herbie Hancook のイメージはゴリゴリのハード系の電子音楽だったので、このアルバムでイメージが一新されたことを覚えています。以降、Speak Like A Child以前の作品では Takin' Off (1962), Inventions & Dimensions (1963), My Point Of View (1963), Empyrean Isles (1964), Maiden Voyage (1965)  以降では、Fat Albert Rotunda (1969), Head Hunters (1973), Quartet (1981), Future Shock (1983), Herbie Hancock and Wayne Shorter / 1+1 (1996) など増え続けています。ただ Future Shock については、Herbie Hancook の聞かず嫌いの元凶だったので、中身はわかってはいたものの、怖いもの見たさに購入して記憶どおり以上の内容にそれ以降ほぼかけていません。

Riot スリリングな疾走感でピアノが突っ走りホーンが合いの手を入れる。「innocence and naivete」がテーマにしては曲名とイメージが合致しないのと思いますが、そうではないと作曲者本人が言っているのだからしょうがない。好きな曲ではあります。
Speak Like A Child  ボサノバのリズム、叙情的なピアノと控えめなホーンのアンサンブルは素晴らしい。清々しさの中に、独特のロマンを感じさせる演奏だと思う。
First Trip  Ron Carter の息子が初めて学校に通うことになった日の様を音楽で表現したスインギーな曲。比較的穏やかな表情をしてはいるのですが大胆なプレイで、ホーン部隊は参加しません。
Toys ブラス・アンサンブルがほわっとするテーマに、一転してファンキーなタッチも駆使しながら変幻自在なフレーズを積み重ねていくピアノソロが素晴らしい。
Goodbye To Childhood  これも幻想的なブラス・アンサンブルのテーマでホンワリさせて、更に幻想的なじんわりとピアノの響きが堪能できる曲で。Toys とつながっているかのような感じがします。
The Sorcerer  これはハービーがマイルスにつけたあだ名でもあるとのこと。Miles Davis / Sorcerer のタイトルでもありますが全く違う曲に聞こえます。もしかしてライナーノーツのインタビューでの Riot のことは、The Sorcerer のことと間違えて書いてしまったとか?ないでしょうか

アルバムの楽曲は基本ピアノ・トリオの演奏で、ソロは Herbie Hancook のみでブラスは曲の色付け程度に控えめで、全体的にしっとりと淡いく感じます。私の中のハービーのイメージが変わりました中々の作品ではないかと思います🎶🎹

piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Mickey Roker
flugelhorn : Thad Jones
alto flute : Jerry Dodgion
bass trombone : Peter Phillips

producer : Duke Pearson
photography by (cover photo) : David Bythewood
recorded by : Rudy Van Gelder
recorded on March 6 & 9, 1968

1. Riot / Herbie Hancock
2. Speak Like A Child / Herbie Hancock
3. First Trip / Ron Carter
4. Toys / Herbie Hancock
5. Goodbye To Childhood / Herbie Hancock
6. The Sorcerer / Herbie Hancock

▶ Riot




定年退職して延長をしないことにしたので、音楽以外のことをしばらく「ノージョブ定年 NoJobTeinen」と言う別ブログに書いてみることにしました。


  


2026年11月2日月曜日

George & Ira Gershwin / Oh Kay! (Orchestra Of St. Luke's)


 ジャズ作品を聴いていると、やたら出てくるGershwin ですが、あまり知らなかったので、勉強のためにと中古屋で購入してみた作品です。作品自体は、1926年ブロードウェイミュージカルの St Luke's Orchestra の演奏によるアルバムです。作曲は弟 George Gershwin で、作詞は兄 Ira Gershwin。ロシア・ユダヤ系移民の息子として、アメリカニューヨーク系で生まれ、弟がメキメキピアノが上手になりお株を奪ってしまい兄は沢山の作詞をし、弟が曲を書いたとのことで有名なお二人です。


 ただわたくし音楽好きではあるんですけど、ミュージカルとか演劇系は見に行っても、ほぼ寝てしまうタイプの男で、その音楽は別だろうとは思うのですが何故か興味がわかないのです。またオーケストラの演奏なども、かなり良い睡眠剤になってしまう人です。なので、このアルバムも勉強のために購入したのではありますが、ほぼ心に残っていないので購入してから聴くのは、確か3回目ぐらい。これを書いている今は4回目です。

 3回目は、いつもの行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」でした。昔聴いても、ほぼ感動しなかったアルバムの良さを店の音の良いオーディオで聴かせてもらって発見することが多いので、最近は、購入してから全く聴いていない存在をほぼ忘れているアルバムを持参していくことが多くなっています。
 フードコーディネーターと食育ソムリエの資格を取ろうと定年してから通っている調理学校の仲間と、学校の近くで帰りに飲んでからの「おでんバー」は、2軒目なので少々酔っ払い気味です。いつも到着時間が遅くなってしまったのですが、気分良く店のドアを開けると先客が何人かいらっしゃいますが、私は初めてお会いする(のはず)少し若めの男性二人組の横に座らせていただき、マスターが何か持ってきた?と言われたので、このアルバムをかけていただくことにします。前に聴いた時は全く興味がわかずに聴きながら吞みながら寝てしまったアルバムであることを話しながらワイワイしゃべっていると、隣の男性から「これ良いですねえ」との感想をいただきます。「踊っているところは、これを聴いていても見えてこないけど聴いていると・・・」わたくしも酔っていたので細かいところは思い出せないが「なかなかツワモノの洞察力と見解」に若いけど教養深いねえとそこから色んなことを話していたのですが、話しも知的で飲んでも分をわきまえている好青年、ダンサーであるマスターの奥様のことも知っている様子。そこで舞台関係者であることは、さすがに察知します。

 そして途中で現れた常連のカメラマン女子。彼らと飲んだことはあるらしい。しばらく皆でしゃべってから、彼らは先に席を立たれたので「またね若い衆、がんばれよ」みたいな感じで別れました。するとマスターから、あの人「世界の〇〇で、〇〇を〇〇〇」に出てた「森〇 〇〇」だよ。と告げられました。途中で舞台関係の仕事の方とは気づいたので売れない俳優でもやっているのかと思い、そこら辺を少し突っ込んで聞いたような気もします。そんなプロだとは思いもしなくて、何か素人がぶってしゃべっていたこともあったかと思います。いやいや何やら恥ずかしい気分。マスターは私が気づかずにしゃべっているなとニヤニヤしていたようで(ですが失礼にあたる発言は無かった模様)、カメラマン女子も、なごんだ雰囲気に、私が今日が初顔合わせしたとは気づかなかったようです。

 この店、通常はカウンターで音楽を聴きながら各人が仲良くなっていくシステムなので、優しいプロレスラー、やたらと品行方正で常識人なアダルト業界の方、文芸春秋の編集、占いサイトのコメンター、女子フリーカメラマン、中国人美人モデル、韓国人のボンボン大学院生、全国の競艇場をめぐりなら旅行をするのが趣味な金融マン などなど人との出会いも楽しいお店であります。


 正直、このアルバムの良さはわかりませんが、心に余裕のある時にポカポカした部屋で静かな気持ちで、本でも読みながらかけるのはアリです。そして音楽の中身よりも、これを店で聴いたときにこんなことがあったなあと思い出せるアルバムになったのは何より🎶

orchestra : St Luke's Orchestra
conductor : Eric Stern

Music By : George Gershwin
Lyrics By : Ira Gershwin

1. Overture
2. The Moon Is On The Sea
3. When Our Ship Comes Sailing In
4. Don't Ask
5. Someone To Watch Over Me
6. The Woman's Touch
7. Dear Little Girl
8. Maybe
9. Clap Yo' Hands
10. Do, Do, Do
11. Finale Act I
12. Entr'acte
13. Bride And Groom
14. Ain't It Romantic?
15. Fidgety Feet
16. Heaven On Earth
17. Finaletto Act II, Scene 1
18. Dance Specialty
19. Oh, Kay!
20. Finale Ultimo

包み込みような優しさが感じられる名園

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2026年11月1日日曜日

Tommy Flanagan / Let's

 

 このアルムを購入したころに、私が聴いていたTommy Flanagan の参加したアルバムは Kenny Burrell / Jazzmen Detroit (1956)、Kenny Burrell With Coleman Hawkins / Bluesy Burrell (1963)、Kenny Burrell& John Coltrane (1958) の Kenny Burrell 系、そしてJohn Coltrane の John Coltrane / Giant Steps (1959) 、Wes Montgomery の The Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomery (1960) でしたが、リーダーアルバムを持っていなかったので何か聞いてみようと購入したものです。今考えると地味なアルバムを購入した気がしますが、それ以来リーダーアルバムや参加アルバムは、かなりの増え増えています。その後のアルバムでエピソード含めて印象深かったのは、うまく弾けなかった Giant Steps へのリベンジ Tommy Flanagan / Giant Steps (In Memory Of John Coltrane) (1982) でしょうか。
 
 このアルバムは Tommy Flanagan の出身にまつわる作品です。1930年のデトロイト生まれで1945年に15歳でプロ・デビュー。その後デトロイトのジャズ・クラブの Blue Bird Inn では、Paul Chambers、Kenny Burrell、Thad Jones、Tommy Flanagan が入れ替わりでセッションをする地元の売れっ子たちになり、デトロイトを離れたのは1951年の徴兵で、その後1956年にニューヨークへ進出してきています。
 デトロイト組は仲が良いようで様々なアルバムをセッションしていますが、このアルバムは同じデトロイト出身の先輩であり、ブルーノートデビュー盤でもピアノで参加したたトランぺッター Thad Jones の作品集となっています。Tommy Flanagan はサドの事をトランペット奏者としてのみならず、作曲家としても天才と讃えており、サド作品を集めたアルバムを作るのが夢でもあったとのこと。


Let's 数多くTommy Flanagan はこの作品の録音を残している定番局ですが、テーマ部分でにジャパンフュージョン並みのキメが多い曲です。若干リズムがもたついてしまうように聞こえるところがありますが、そんなことはどうでもよいと弾きまくっています。爽快。
Mean What You Say 出だしはゆっくりと始まり、メロディは軽く流れるだけでなくはっきりした推進力を持って進み、段々と盛り上がり、上質さが漂います。
To You THAD MELビッグバンドの後期に書かれたバラードで、派手さより Flanagan の端正なタッチが曲の輪郭をきれいに見せてくれます。
Bird Song ただの気軽なブルースではなく Thad のメロディ感とブルース感が前に出る1956年の Mad Thad に録音された曲です。はっきりとした旋律の輪郭と整えられたスイング感が気持ち良い。
Scratch 軽快さと都会的なしゃれっ気がある曲です。1曲目から4曲目までで作ってきたトリオの空気を、少しだけ引き締めてくれていて、音を詰め込みすぎず、自然な流れが心地よい。
Thadrack モダンなスウィング感と、少しひねりのある曲で、ビッグバンドで聴いたらまた楽しいことが、このトリオからもわかります。
A Child Is Born Kenny Burrell でも取り上げられているナンバーで、おそらく Thad の作品の中でももっとも広く愛されているバラード寄りの代表曲で大好きな曲です。曲のテーマには、やわらかさや敬意のような空気があり、この曲の持つあたたかさを、派手に盛り上げるよりも静かに歌い上げてくれています。好演です。
Three in One THAD MELビッグバンドの初期に書かれた曲で、味わい深く、品のある演奏が主軸になってアルバム後半の呼吸を整えています。これもなかなかの演奏で後半上がってきます。
Quietude 静けさと落ち着きが中心にある、Thad しい抒情的な1曲で、静けさの中にある品のよさが出ています。
Zec 勢いのあるハードバップ寄りでカッコよい曲です。攻めた曲なのに、聴き味はすっきりしています。
Elusive Elusive は直訳すると「つかみどころがない」「とらえにくい」という意味合いがありますが、少々複雑であるテーマと構成ではありますが、割とスタンダードに楽しい。

1993年のなかなか頑固な感じの硬いタッチで弾きながらも上品であり、凛々しい作品だと感じます。なんというかバランス感覚に優れているピアノで頑固っぽい感じもするけど人情味もあってパンチの聴いたフレーズはとても心地よいです。


 発売は ENJA というドイツのレーベルで、ツアーでドイツを訪れた際に録音するアメリカ人やヨーロッパ在住のアメリカ人ミュージシャン、録音機会に恵まれないベテランミュージシャンなどの録音がほとんどだったのがトミーフラナガンの在籍で世界から注目されるようになったレーベルです。ミュージシャンのクレジットを見ていたら、プロデューサーに Diana Flanagan の文字があります。1989年以降から奥方がマネージャー兼プロデューサーとして勤められているとのこと。2020年4月6日、90歳で亡くなられています。旦那のライブでおしゃべりばかりしている人には鉄槌をくらわした人とのこと🎶🎹

piano : Tommy Flanagan
bass : Jesper Lundgaard
drums : Lewis Nash

all compositions by Thad Jones
producer : Diana Flanagan
multi-track digital recording by Hans Nilsen at Focus Studio, Denmark on April 4th, 1993.

1. Let's
2. Mean What You Say
3. To You
4. Bird Song
5. Scratch
6. Thadrack
7. A Child Is Born
8. Three in One
9. Quietude
10. Zec
11. Elusive

アルバムとは関係ありませんが
怖そうなおばさんのエラとのライブがカッコよくて・・

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2026年10月31日土曜日

Jim Hall / Jazz Guitar


 2013年12月10日に亡くなられてから10年上経ちましたが、そんなに前だったかな?って感じがします。アルバムは巨匠 Jim Hall の1957年録音の初リーダー作です。
 Jim Hall は1930年生まれでこの時 27歳。ですがジャケットの巨匠はだいぶ真面目そうな風貌で27歳よりは貫録がある感じがします。そして後ろで抽象的な Jim Hall のギターを弾く姿のペインティングは John Altoon とのクレジット。1950年代と1960年代のLAアートシーンで抽象画で著名なアーチスト。知的なアート作品である主張を感じます。


 ドラムなしのオールド・ファッションなトリオ編成とシンプルな演奏で何かとてもライトで、あったかい雰囲気が伝わってきます。このライトさの秘密はピアニストの Carl Perkins で、左手に障害を持っている方で、演奏は音数が両手のピアニストよりも少なくなるため、結果全体に風通しのいいライトなサウンドに貢献し、彼のドライブ感のある演奏と軽やかさ魅力をプラスしています。 

Stomping At The Savoy ニューヨークのダンス文化の中心だったハーレムにある有名なダンスホール「Savoy Ballroom」を題材にしたダンス向きの曲で、Savoy Ballroom は、ハーレムでダンス文化の中心だった場所で、ここでは、曲のにぎやかさをそのまま押し出すというより、3人のきれいに呼吸がそろった軽快さを感じます。
Things Ain't What They Used To Be なんでもないブルースですが、音を置く間合いがよく弾き過ぎていないというか、控えめなギター、聴きやすいピアノで派手さは全くないのが、かえって聴きやすい。youTube に Alternate Take があったので聴きましたが、そちらでは、ベースソロがあって、もう少しアグレッシブな感じです。採用テイクのほうはベースソロは無く重めに重心があるような気がします。
This Is Always Carl Perkins のピアノがわかりすく曲を誘導してくれるところに、なめらかなメロディをパキっとした音のギターでなめらかに流し、音数はこれも増やさずにフレーズのつながりで聴かせてくれています。
Thanks For The Memory 前の曲までは、もっさりとしたギターではありましたが、ここでは少しばかり細やかな音です。それに合わせて Carl Perkins のピアノも饒舌になります。Red Mitchell のベースソロはもう少し目立っていただくほうがバランスがとれたような。
Tangerine ここで更に表情が変わります。跳ねたリズムに合わせて Red Mitchell のベースの下支え良い感じになり全体が立体的に聴こえます。
Stella By Star light 映画のためのテーマの 物語っぽい流れ に華やかな表情を出した解釈で、この盤の中でも表情が出ている気がします。やすい曲です。コード感の移り変わりに対して、ホールがどう間を取るかが見どころです。
9:20 Special Count Basie楽団の流れで生まれた1941年のジャズ・スタンダード。テンポ感の良さが楽しい曲で、3人のやり取りが素直に伝わってきます。Jim Hallのギターもリズムを意識した弾き方になりドラムレスの演奏ですがテンポ感があります。
Deep In A Dream かなり歌心重視で、ギターの音の余韻を味わえます。途中までのギターソロで貫いていただいても良いぐらいですが、ピアノが入って伴奏部分が不要になってからのギターの対比も良いは良い。
Look For The Silver Lining 1920年のミュージカル『Sally』で広まったスタンダード。明るく穏やかに上がっていくメロディが良い曲です。派手に盛り上げるより、柔らかいフレージングと余白で曲の良さが出ています。
Seven Come Eleven 最後にしかけてきていたのを、これを再度聴くまで忘れていました。もともとは Charlie Christian と Benny Goodman 楽団 で知られるジャズ・スタンダードでスイング感を出すために、アタック強めなストロークのギターが印象的です。

 まだまだ現代ジャズ・ギターの巨匠ジム・ホールの記念すべき初リーダー作ですが気負いは感じられずリラックスした雰囲気で、難しいことはやらんので、楽しんで聞いてくれといったアルバムでした。
 Jim Hall  も嫌いなスタイルではないのですが特に大好きなわけではない。私の手持ちで、リーダーアルバムは Concierto (1975) しかありません。セッション参加では Bill Evans で Green Dolphin Street (1959)、Undercurrent (1962)  そして、Charlie Haden - Jim Hall (1990) それに忘れてはいけない Ella Fitzgerald  Ella In Berlin (1960) なんかがあります🎶🎸

guitar : Jim Hall
piano : Carl Perkins
bass : Red Mitchell

producer : Richard Bock
recorded in Los Angeles, January 10 & 24, 1957.
 
1. Stomping At The Savoy / Andy Razaf, Benny Goodman, Edgar Sampson, Chick Webb
2. Things Ain't What They Used To Be / Ted Persons, Mercer Ellington
3. This Is Always / Mack Gordon, Harry Warren
4. Thanks For The Memory / Leo Robin, Ralph Rainger
5. Tangerine / Johnny Mercer, Victor Schertzinger
6. Stella By Starlight / Ned Washington, Victor Young
7. 9:20 Special / Earl Warren
8. Deep In A Dream / Eddie De Lange/Jimmy Van Heusen
9. Look For The Silver Lining / B.G. DeSylva/Jerome Kern
10. Seven Come Eleven / Charlie Christian/Benny Goodman







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2026年10月30日金曜日

Soulive & Karl Denson / Spark!


 もともとはノリノリの ファンクサウンドの Souliveですが、硬派なこのタイプもたまらない魅力。ゆるく怪しく、ジャムってるジャズファンクでアシッドな雰囲気に酔えます。Karl Denson は Lenny Kravitz、Fred Wesley などののバンドに参加したりするジャンルを超えて活動するサックス/フルート奏者で、化学反応が起こってる感じです。リリースは2012年の名門ブルーノートから、ジャズとジャムの素晴らしいブレンドとなっています。


 そして、前回書いたこのレビューでわかったことですが、タイトルの Spark! は リリースの前年 2011年3月に64歳で亡くなった Melvin Sparks のこと。Jack McDuff、Dr. Lonnie Smith、 Charles Earland、Leon Spencer などのオルガン奏者との共演が多いソウル・ジャズ、ハード・バップ、ジャズ・ブルース系の ギタリストで、私もソロアルバムは持っていないものの、ジャズファンク系のオムニバスには度々登場する、こっちの世界では重鎮です。


Spark  なんとこのアルバムで唯一のオリジナル曲。フルートとギターのユニゾンがタイムスリップしたかのような、雰囲気たっぷりの怪しさを出しています。後半は、オルガンの推進力と、管楽器の抜け感のバランスが気持ちよい。
Povo  Freddie Hubbard のアルバム Sky Dive (1972)に収められていた曲。リズムの粘りと、ジャムにぴったりのフレーズの反復でじわじわ引き込むタイプ。ゴチャっとした延々と続くサックスソロが最高デス。
Nubian Lady  ピアニストの Kenny Barron の作曲で、その Kenny Barro も参加した Yusef Lateef / The Gentle Giant (1972)や、The Roy Meriwether Trio / 同名アルバム(1973) などでの演奏が有名。やはりアシッドで怪しくするにはフルートが手っ取り早い。シタール風の音色と音階のギターとオルガンがマッチして更に怪しさが増す。
Soul Sides  トランペッターの Art Farmer のアルバム Gentle Eyes (1972) からの楽曲で
、作曲者のクレジットが Art Farmer だが、正確にはオーストリア出身のトロンボーン奏者のエリック・チースターによるものとライナーノーツで解説。


ダラダラと聴きながらノリノリになるには、もってこいの作品です🎶

guitar : Eric Krasno
bass : Neal Evans
drums : Alan Evans
fluite, sax : Karl Denson

producer : Soulive

This album is dedicated to the great Melvin Sparks. Tracks 1-4 Recorded at The Library, Greenfield, MA. Tracks 5 & 6 Recorded live at The Independent, San Francisco, CA 11/10/2011. Alan Evans, Eric Krasno, Karl Denson, Neal Evans, Ryan Zoids, DeAngelo Nieves

1. Spark / Solive
2. Povo / Freddie Hubbard
3. Nubian Lady / Yusef Lateef
4. Soul Sides / Art Farmer
【BonusTracks】
5. SHAHEED (Live from the Independent in San Francisco 2011/11/10)/ Solive
6. LIQUID  (Live from the Independent in San Francisco 2011/11/10) / Solive 



▶ Spark



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2026年10月29日木曜日

Donny Hathaway / Everything Is Everything


 ハーレムの壁際で子供たちと手をつなぎ、「かごめかごめ」っぽいことをしているのでしょうか。この温かみが感じられる印象的なジャケ写のアルバムは、1970年発売の、1stアルバムのです。アルバムタイトルは、先頭曲 Voices Inside(Everything Is Everything)から名付けられているので = 自分の気持ち、迷い、祈りみたいなものを無視せずに受け止める、世の中は、愛、信仰、街、歴史、気分が全部影響し合っている。なので、邦題の「新しきソウルの光と道」は、ただのアルバム・セールスの題目であり、もはや意訳でも何でもない。
 ちなみに壁に書かれているスプレーによる落書きは、いつごろからなのか調べてみたら、古くから落書き自体はああったが、スプレー缶による現代的なグラフィティ文化は1960年代末から1970年代に始まり、スプレー塗料を使うグラフィティは1960年代末からニューヨークで盛んになったとされています。当時は、自分の名前や記号を街中に書く「タグ」のようなもので、地下鉄や壁面へスプレーで描く文化となったとのこと。なるほどこのアルバムは1970年発売なので、ニューヨークを象徴するような表現の一つとも思われます。


 ダニーと言えばどうしても Live (1971) という人が多いかと思いますが、この1年前のデビューアルバムでは、Jazz、ゴスペル、クラシック、ブルース、ファンクが入り混じって従来のソウル・ミュージックとは一線を画したダニーの音の世界が確立されているのがわかります。プロデューサーには自身のバンド The Kingpins を率いてAretha, Curtisカーティスのバンドにも参加している King Curtis の名前が名前が入っています。

Voices Inside (Everything Is Everything) 重いベースラインから始まり、エモーショナルでソウルフルであるが、何か物悲しい響きでホーンセクションも印象的で明らかに従来のソウルと異なる感触が伝わってきます。自分の気持ち、迷い、祈りみたいなものを無視せずに受け止めることが歌われています。
Je Vous Aime (I Love You) フランス語の題名を使って、愛情を少し上品で静かな温度感に置き換えている曲で、ゴスペルなバック・コーラスで歌われ、持ち味の暖かみを感じるメロウなラブ・ソングです。
I Believe To My Soul Ray Charles のカバーで、ゴスペルっぽい熱とソウルの厚みを足してドニー版のカバーになっています。
Misty 一聴してもあの MIsty とは気づかない人も多いのではないだろうか。ブルースナンバーにアレンジすると、はかないメロディが力強く変わってしまっているのが驚き。
Sugar Lee ラフなスタイルで、ジャム・セッションのインストにして徐々にヒートアップしていくのが楽しい。きっちりと黒いソウル魂で熱いです。
Tryin' Times タイトなブルース・ナンバー。軽く適度にハネるピアノが気持ち良いロックテイスト。1970年前後の空気の中で、ただのラブソングではなく、世の中の不安や緊張を受け止める内容です。
Thank You Master (For My Soul) これもゴスペル色が濃い一曲で、日々の恵みと、生かされていることへの感謝をまっすぐに歌っています。
The Ghetto この曲を聴くと60~70年台のアメリカを背景とした吉田ルイの著作ハーレムの熱い日々 BLACK IS BEAUTIFULを思い出します。68年キング牧師暗殺、ベトナム戦争激化、失業、貧困、なくならない黒人差別、とても意味深いメッセージがこの歌にはあることと実感します。
To Be Young, Gifted And Black Nina Simone の Black Gold (1969) に収録された名曲で、素晴らしい解釈で丁寧に歌われています。「若く、才能があり、黒人であること」自体に価値があるという考えを打ち出していて、公民権運動のアンセム的な楽曲でもありこのアルバムでも大きな意味を持つ楽曲です。
A Dream ボーナストラックで追加曲ですが、現実の厳しさの中でも、夢や希望を手放したくない気持ちがにじむ曲です。アルバムでは、社会性の強い曲が並ぶ最後の追加曲として、オマケではなく、希望や憧れをやわらかく抱きしめる曲を持ってきているのは中々メッセージ性があって良いのではないでしょうか。

アルバムとしては、もちろん愛聴盤ですが、改めてこのレビューを書きながら最後の追加のボーナストラックにもオマケだけではないリスペクトが感じられて良かったです🎶🎹

piano, conductor, vocals : Donny Hathaway
backing vocals : The Vashonettes
guitar : Phil Upchurch ( 1 to 4, 6 to 8 )
bass : Louis Satterfield ( 1 to 3 ), Philip Upchurch ( 3, 4, 6, 7 )
drums : Morris Jennings ( 1 to 4, 6 to 8 ) 
percussion : Ric Powell ( 1 to 8 )
congas : Henry Gibson

alto sax : Clifford Davis, Donald Myrick
tenor saxophone : Johnny Board, Lenard S. Druss
bariton sax : Willie Henderson
trombone : John Avant, Morris Ellis
trumpet : Robert A. Lewis, Gary Slavo, John E. Howell, Oscar Brashear
bass trumpet : Cyril Touff
french Horn : Ethel Merkerl, John Lounsberry, Paul A. Teryett
tuba : Aaron Dodd

producer : King Curtis ( 1 to 4, 6 ), Donny Hathaway, Ric Powell

1. Voices Inside (Everything Is Everything) / Richard Evans, Philip Upchurch & Ric Powell
2. Je Vous Aime (I Love You) / Donny Hathaway, Leroy Hutson & Edward Kennedy
3. I Believe To My Soul / Ray Charles
4. Misty / Erroll Garner & Johnny Burke
5. Sugar Lee / Donny Hathaway & Ric Powell
6. Tryin' Times / Donny Hathaway & Leroy Hutson
7. Thank You Master (For My Soul) / Donny Hathaway
8. The Ghetto / Donny Hathaway & Leroy Hutson
9. To Be Young, Gifted And Black / Nina Simone & Irvine J. Weldon, Jr.
(Bonus Track) 
10. A Dream / Donny Hathaway, Robert Ayers




▶ Misty






▶ A Dream

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2026年10月28日水曜日

John Coltrane Quartet / Ballads

 

 ギター弾きで大学からジャズ研に入ってジャズに触れてきたのですが、ジャズフュージョン・ファンク路線ばかりでジャズに傾倒することなく卒業してしまいました。周囲は、ラテンバカ、フュージョン路線の管楽器の方が多く、コルトレーン教の方が周囲にいなかったため、人生半分を大きく過ぎてから John Coltrane を聴き始めました。と言っても聴いていないと、周囲のジャズ好き系の友人の話が分からないので、密かに研究のために聴いている側面が大きくて好きになってしまったから、もっと聴いてみたいという感じには未だなっていません。
 ですが、前回に書いたレビューを見直していると「コルトレーン入門をこれにしておけば、もっと色んなアルバムを聴く気になっていたんではないか?と思われるほど響いた」と書いてあります。でもですね、聴きなおすまではどんなアルバムだったのか全く忘れていたので、心の底から感動したよりは一過性のものであったのか、爺になっているので記憶力が乏しくなっているのか。



 原盤は Impulse! レコードから1962年に発表したもので、タイトル通り、全曲バラード作品です。バラードばかりのアルバムは苦手なのに、聴きなおしてみれば苦手を意識せずに音の世界に入り込むことができました。またこのアルバムでは、それほど好きではないシーツ・オブ・サウンドもフェイクも控えめな印象で、どちらかと言えばストレートにテーマやメロディを歌いあげているのも好感です。
 原盤の Gene Lees 氏のライナーノーツでは、It's Easy To Remember を除き、このカルテットでは収録されているどの曲も、事前に演奏したことがなかったので、彼らは音楽店で買ってきた市販の楽譜を持ってスタジオに現れて、使用するコード進行のメモを書き出し、30分ほど軽くリハーサルをしてから、本番に臨み大半の曲はワンテイク(1回の録音)で完了したと書いてあります。入念な打ち合わせとコンセプトがある凝ったものではなく、ライトな感覚でのセッションの模様です。

Say It (Over And Over Again)  Coltrane の豊かなトーンで吹かれるエモーショナルな演奏です。先にも書いたように吹きすぎないのが、とても心地よい。McCoy Tyner のピアノも分かりやすく極上のタッチで優しく、ロマンティックで温かい雰囲気が魅力的な演奏です。
You Don't Know What Love Is  多くのジャズメンが好んで演奏する Gene DePaul で有名な名曲。大げさなイントロから始まるので、どんな難しい展開になるのかと思いきや、逆にシンプルな展開になるので拍子抜けします。フレーズとテーマを大切にした演奏ですが、1曲目の Say It の演奏が良すぎて印象に残りにくいかもしれない。
Too Young To Go Steady  この曲もメロディーを崩しすぎず旋律の輪郭を丁寧に残していて歌心や余白を前に出していて、Coltrane の音が 柔らかく、近い距離で語りかけるように 聞こえます。これも良きです。
All Or Nothing At All  Frank Sinatra が 1939年8月31日 に Harry James Orchestra と録音した版が大きなヒットになったスタンダード。イントロでも、やっと何か仕掛けてきたなと思わせてくれます。このアルバムでもこの曲だけが例外的に複数テイクや再録音を伴った曲として扱われていて、アルバムの中でも特に完成に時間をかけた1曲ですが以外に短く3分40秒で大きく展開する前に終わってしまいます。
I Wish I Knew  1945年の映画 Diamond Horseshoe のために書かれた楽曲で、アルバムの全体の雰囲気の歌心や余韻を前に出している流れにきれいにはまっています。メロディーを急がず、1つ1つの音を置くように吹いているところに、この曲の良さがあり、もともと歌ものとして成立しているので、Coltrane 版は 旋律の切なさが伝わりやすいし、もっと聴いていたいぐらいです。
 What's New  1939年に登場したスタンダードで、もともともインスト曲として書かれています。バラードにはなっていますが、もともとポップス寄りの曲なので、今までと少し流れが違う雰囲気になっています。
It's Easy To Remember これだけは、1961年に録音された別テイクが採用されています。そう言われて聴いてみると、今までのリラックスした表情とは違うような気がして、多少冷めた温度感になっているように聞こえるが、どうでしょう。
Nancy (With The Laughing Face) 1942年の Jimmy Van Heusen 作曲 / Phil Silvers 作詞 のスタンダード曲で、Frank Sinatra が 1944年 に録音した版で広く知られるようになったスタンダード。原曲の甘さが伝わってくる、やわらかく愛情のこもった雰囲気 が核になっています。これも良いは良いのですが、やはりこのアルバムは1曲目の Say It (Over And Over Again) にカッコよさが集約されている気がします。

「サックスのマウスピースの調子が悪く、速いフレーズを弾けなかったため、苦肉の策としてバラード・アルバムを作った」というエピソードもあるようですが、実際は、プロデューサーの Bob Thiele が、よりファン層を広げるために仕掛けたものらしいのでガセネタっぽい。

 ライナーノーツの中で1986年に 市川正二氏 がこう書いています。「哀しいムードの曲をいかにも哀しそうに演奏するとセンチメンタリズム(感傷主義)に陥って俗っぽくなるが、甘さをセーブしてしかもエモーションを大事にプレイすると、そこにリリシズム(叙情主義)と呼ぶにふさわしい優美な音楽が生まれる」
 ライナーノーツに書いてある内容は当然アルバムの売り文句ですし、マニアの美辞麗句が書かれていると思われることが多いですが、この市川正二氏の評論には納得がいきます。また時間がたつと忘れてしまうこともあるかもしれませんが、もう少し心に留めておくようにします🎶🎷

tenor sax, soprano sax : John Coltrane
piano : McCoy Tyner
bass : Jimmy Garrison (1 to 6, 8), Reggie Workman (7)
drums : Elvin Jones

producer : Bob Thiele

recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey
1-5 : November 13, 1962
6,8 : September 18, 1962
7 : December 21, 1961

1. Say It (Over And Over Again) / Frank Loesser, Jimmy McHugh
2. You Don't Know What Love Is / Don Raye, Gene DePaul
3. Too Young To Go Steady / Harold Adamson, Jimmy McHugh
4. All Or Nothing At All / J. Lawrence, A. Altman
5. I Wish I Knew / Harry Warren, Mack Gordon
6. What's New / Bob Haggart, Johnny Burke
7. It's Easy To Remember / Lorenz Hart, Richard Rodgers
8. Nancy (With The Laughing Face) / Jimmy Van Heusen, Phil Silvers





定年退職して延長をしないことにしたので、音楽以外のことをしばらく「ノージョブ定年 NoJobTeinen」と言う別ブログに書いてみることにしました。


  

2026年10月27日火曜日

Thelonious Monk / The Nonet!

 

 1967年の秋に Monk のカルテットは Jazz Expo'67 というイベントに出演契約を交わし,
従来のカルテットに管五人を加えた9人編成でロンドンのオデオン・ハマースミスでリハーサルを行い、その後のパリでの録音を行った。会場はフランス・パリ8区にあるコンサートホール Salle Pleyel  で、ここはパリ管弦楽団とフランス放送フィルハーモニー管弦楽団のフランチャイズホールとのこと。
 本CDはラジオ放送用音源で、イントロダクション部分がカットされているものの、ラストまでノーカット収録されているいます。発掘音源で発売は1988年、放送用録音なので録音状態は割と良い感じですが、サウンドはモノラルです。
 さて題名の Nonet とは九重奏のことですが、 1人:独奏・Solo(ソロ)、2人:二重奏・Duet(デュエットもしくは、Duo:デュオ)、3人:三重奏・Trio(トリオ)、4人:四重奏・Quartet(カルテット)、5人:五重奏・Quintet(クインテット)、6人:六重奏・Sextet(セクステット)、7人:七重奏・Septet(ゼプテット)、8人:八重奏・Octet(オクテット)、9人:九重奏・Nonet(ノネット)となります。
 今回の録音は、全ての曲でフルメンバーのノネットで演奏しているのではなく、Ruby My Dear はカルテット、We See でトランペットの Ray Copeland が参加のクインテット、Epistrophy でペット Ray Copeland に続き、サックス Johnny Griffin が参加と、エンディングに向けて人数が増えていくような形態です。


 録音されている拍手で相当大きい会場であることがわかります。人数が多い割にはホーン部隊のアンサンブルは薄目で、ビッグバンドのサウンドを目指すというよりは、各人のソロを楽しむ大型ジャムセッションのような感じです。

Ruby My Dear  まずはカルテットで開始の、ゆったりとして落ち着いた Ruby My Dear。情感たっぷりの Phil Woods のアルトが牽引するのも良いことには良いんですが、いつもの小節やフレーズをぶったぎるようなアクセントは無く何か気取っている感じが違和感というか、新鮮な感じがします。
We See   トランペットの Ray Copeland が参加してクインテットになります。あちこちに音階が飛び跳ねて戻ってくるような元気のあるテーマなので、やはりここでトランペットが活躍します。テーマの持っている雰囲気もあって Monk は感じますが、アルトのソロが終わってトランペットと進むにつれ、親分である Monk が存在を消していることに気づきます。トランペットソロが終わると親分が登場し、やっと独特のアクセントや和音を連発してくれますが、あくまで演奏に沿ったリズムの中でやってくれるだけで、全体をストップさせたり発信させたりするようないつもの感じではありません。そしてベースソロですが、何をやっているのか不明なほどの録音レベル低さばかりが気になる。Ben Riley は、Art Brakey がよくやるドンドンドンの煽りをあちこちでやってます。
Epistrophy  モンクの曲の中でも特に推進力が強く、ライブでは熱量が上がりやすい1曲です。ここでやっとテナーサックス、トロンボーンも参加しての重さが加わった演奏になってきます。先ほどの We See での盛り上がりが限界かと思いましたが、各自の熱のこもったソロで会場は湧いています。ここで思いました。大所帯になればスモールコンボでやるようなアクセントはつけにくいものなので、カルテットでも抑えめにして同じようなテンションでの助走をつけて、同じようなスピードを維持しているようなものなのかもしれない。ラストエンディングではバッチリときまりました。
Oska-T  じっくり広がっていくタイプの曲で、編成の厚みが出るほど面白さが増すような感じがします。これまでで一番 Monk イズムが出ているような気がして安心します。アドリブ部分も素晴らしいですが、バンドで一点に集中するバッキングの部分などはロックではないけどロックっぽさも感じてしまいました。Jimmy Cleveland のトロンボーンソロも新鮮だし人数多めの厚いサウンドがカッコよし。
Evidence  リズムの角が立っていて、フレーズの切れ味を楽しむタイプ。これもアンサンブルが入ることによって推進力が増します。段々とあったまってきて色々なものがスムーズに進行してきた気もします。足並みのそろい方がフュージョンのようでもある。面白い。
Blue Monk 代表曲らしい分かりやすさがありつつ少し転びそうで転ばない感じが楽しいです。管の色が乗って一気に華やぎます。力いっぱいの Monk の打鍵も熱がこもって良きかなって感じです。フリューゲル・ホルンのミュート演奏って珍しい?ものも聴けました。
Epistrophy  最後にエンディングで短めに決めて終わりです。

 人数が多いこともあってか Monk のピアノは薄めの印象でしたが、後半は熱がこもってます。でもファンの間でもつまらないといった評も見受けられたのは前半の印象かなと思われます。Monk が参加したジャムセッションとして聴けば、かなり貴重な音源だと思います。マニアな録音のせいか youTube には、残念ながら音源があまり見当たりませんでした(面白いと思うんですけどねえ)🎶🎹

piano : Thelonious Monk
bass : Larry Gales
drums : Ben Riley
alto sax : Phil Woods
tenor sax : Charlie Rouse ( 3 to 7) , Johnny Griffin ( 3 to 7)
trumpet : Clark Terry (6), Ray Copeland (2 to 7)
trombone : Jimmy Cleveland ( 3 to 7)

producer : Joop Visser
recorded on November 3rd, 1967 at Salle Pleyel, Paris.

1. Ruby My Dear / Thelonious Monk
2. We See / Thelonious Monk
3. Epistrophy / Kenny Clarke, Thelonious Monk
4. Oska-T / Thelonious Monk
5. Evidence / Thelonious Monk
6. Blue Monk / Thelonious Monk
7. Epistrophy / Kenny Clarke, Thelonious Monk


▶ Oska-T

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