BlueNote移籍の一枚目 Liquid Spirit (2013) から、すっかりお気に入りになったGregory Porter なので、それ以降せっせと集めています。このアルバムは、2010年に Motéma Musicより発売のデビューアルバムです。これは日本限定バージョンですので、1960 What?のリミックスが追加されているのと、日本語版ライナーノーツがついています。
作品としては、愛や社会的なテーマを含む比較的シンプルで内省的な作りで、声の魅力を前面に押し出した作品です。以降のアルバムは、フックの強さがあり、曲の推進力、広がり曲の強さとメッセージ性が広がったものになっているので、デビューのシンプルさに結構な落差を感じます。
「『ウォーター』の延長線上で『ビー・グッド』を作り、その延長線上で『リキッド・スピリット』を作った。今後、多少楽器構成を変えて作ることはあるかもしれないけど、大きな意味でこの方向性が変わることはないだろうね。ソウルとジャズの境界線をもっと無くし、ブルーズやゴスペルの影響をしっかり入れて、説得力のある歌詩を書いていくこと。これまで同様、これからもそこを突き詰めていくつもりだ」
いやいや、Be Good (2012) は延長線上であることは感じるけど、 Liquid Spirit (2013) あたりからは、作者は精神的には延長線上にあるかもしれないけど、リスナーとしては、かなり変わってきていると感じます(グッとアップグレードしています)
Illusion 流れるようなピアノ伴奏上で、豊かで温かみのあるバリトン・ヴォイスで自由に歌い上げます。。大げさな装飾を削ぎ落とした構成で、アフリカで買った絨毯、風に舞う袋、庭で飲む紅茶などの描写により「君がいなくなって息の仕方」を見失ってしまったと歌う情熱的なラブバラード。
Pretty アンサンブル全体が軽やかで流れるようなリリシズムを展開。各パートが巧みに絡み合いながら、一目惚れした女性の美しさとドラムを叩く姿に魅了される主人公の無邪気で軽快な喜びを表現。前曲の静寂から一変して、管楽器の華やかな彩りと躍動的なリズムが加わります。
Magic Cup 「豆を挽き、ミルクを蒸す」「砂糖とスパイス」「朝の完璧な一杯」といった言葉が並び、パートナーへの情熱や依存心を重ね合わせ、黒い鏡のような液体を見つめながら相手を想う、ラブ・ソング。
Skylark 本来は「ひばりよ、私の愛がどこにあるのか知っているかい?」と語りかける切なく美しい歌詞を持つバラードですが、ここではあえてインストでアクセントをつけています。
Black Nile 1964年の Wayne Shorter のカバー。原曲はインストで、Porter は力強いスキャットを乗せたボーカル・ナンバーに。ナイル川はアフリカ系アメリカ人のルーツや歴史を象徴する水脈として位置づけられており、「水」という主題を浮き彫りにしています。
Wisdom Porter の恩師でありサンディエゴの伝説的ジャズ・ミュージシャンであるDaniel Jackson との共作楽曲。「母の乳、父の血」「大洪水の中でも先人の肩の上に立っていた」「先祖が与えてくれたものが私の糧となった」といったフレーズが登場し、先人たちの苦難と知恵(Wisdom)への敬意が歌われる、伝統的なゴスペル・ソング「Wade in the Water」のフレーズが織り込まれるスピリチュアルも感じる楽曲。
1960 What? デトロイトの暴動を歌ったプロテスト・ソングで「モーターシティが燃えている」「ショットガンの音が鳴った」「日光、月の明かり、街頭の明かりはいらない」「正しくないことに対して戦う」と淡々と歌い上げ力がみなぎっています。
But Beautiful ピアノの Chip Crawford を中心としたアコースティックなアンサンブルが、原曲の美しいメロディを豊かに奏で、グレゴリーの音楽的ルーツであるトラディショナル・ジャズへの深い敬意とエレガンスを示します。「ラブ」と「プロテスト」という激しさが行き交うアルバム後半において短めのインストで、気品に満ちた箸休め。
Lonely One ジャズの枠組みの中に、Donny Hathaway、Marvin Gaye などの巨匠を想起させる、情熱的でソウルフルな歌唱。「間違った相手を選んでしまったのか?」「君の美しさを傷つけられたのか?」「大丈夫、ここに君と同じ孤独を抱えた者がいる(The lonely one is here)」と寄り添います。
Water アルバム全体を通じて表現しようとした最も重要なモチーフ。歩道を濡らし、汚れを洗い流し、庭を潤す一方で、時に植物を傷つけ、すべてを流し去っていく「水」のイメージは、人々の内面に流れ込む精神や感情、愛、そして救済。「Oohh, wash me... Save me...」
Feeling Good 1965年に Nina Simone が歌ったバージョンが公民権運動の時代背景と結びつき、「自由への渇望と新たな旅立ち」を象徴するアンセム。Mahalia Jackson のアカペラ表現から強いインスピレーションを受けた無伴奏のアカペラで強い感動と解放感を与えるクライマックス。
単調で刺激に乏しいと思って聴いていたアルバムですが、落ち浮いて歌詞を聴きながら背景を想像しながら聴くと、1960年代のスピリッツを受け継ぐ、結構中身の濃い内容で深さを感じます🎶
vocals : Gregory Porter
alto sax : James Spaulding (5,6) , Yoske Sato (2,3,5,7,9)
bass : Aaron James (2-7,9)
drums : Chuck Mcpherson (4,6,9) , Emanuel Harold (2,3,5,7)
piano : Chip Crawford
trombone : Robert Stringer (2,3,5,7)
trumpet : Curtis Taylor (3,5,7), Kafele Bandele (4,5,7) , Melvin Vines (2,3,5,7)
arranged by : Chip Crawford, Gregory Porter, Kamau Kenyatta
producer : Kamau Kenyatta
1. Illusion / Gregory Porter
2. Pretty / Gregory Porter
3. Magic Cup / Gregory Porter
4. Skylark / H. Carmichael/ J. Mercer
5. Black Nile / Wayne Shorter
6. Wisdom / Daniel Jackson/Gregory Porter
7. 1960 What? / Gregory Porter
8. But Beautiful / J. Burke/ J. Van Heusen
9. Lonely One / Gregory Porter
10. Water / Gregory Porter
11. Feeling Good / L. Bricusse/ A. Newley
12. 1960 What?(Gerardo Frisina Cuban Soul Mix) / Gregory Porter
▶ Illusion
▶ Pretty
▶ Skylark
▶ Wisdom
▶ Water








