2024年9月14日土曜日

Jaco Pastorius / Word Of Mouth


 これはジャコがウェザー・リポートに在籍中の1980年に録音したジャコ自身がリーダーとしては2作目のソロ・アルバム。このアルバム制作にはいろいろと裏話(今となっては表ですが)があります。このアルバム「Word Of Mouth」の制作の契約発売のレーベルは Warner Bros(ワーナー・ブラザーズ)1枚目のデビュー作「Jaco Pastorius(ジャコパストリアスの肖像)」は Epic Records (エピック)で、当時加入していたしていた Weather Report(ウェザー・リポート)のレーベルである Columbia(コロムビア)にはこのジャコのソロ制作の印象は裏切り行為のように映り印象は当然良くありませんでした。
 ワーナーは、話題のジャコのアルバム制作なので期待もあり、ロサンゼルス交響楽団から31人を雇って「John And Mary」「Three Views Of A Secret」に9,000ドルかけたが、ボツにしてその中から7人を選んで9回のオーバーダブで63人編成に仕上げなおしたり、ニューヨーク、ロサンゼルス、フロリダとあちこちで録音しオーバーダブで仕上げるなど予定した予算を大幅にオーバーしたとのこと。制作サイドにはかなりの迷惑をかけているようで、雑誌インタビュー記事などからは、このアルバムの制作の構想はかなりの前からあったことは間違いないですが、ウェザー・リポート加入での名声と成功、ドラッグと酒に侵されたジャコの正常な金銭感覚は失われてたようで、制作サイドも翻弄されていたようです。
 発売の結果、評論家の間では評判は良く日本ではゴールド・ディスクを獲得。しかしアメリカでは5万枚の売り上げだけで終わり、ワーナーの目論見は大誤算の結果となりました。



 音楽好きの集う「おでんバー」では評判の悪いジャコですが、自宅では思いっきり聴けますので、久しぶりに聴きながらのレビューです。Crisis 混沌とした楽曲になっていますが、それもそのはず。参加ミュージシャンたちは、互いの音を聴かずにパストリアスのベース・トラックに合わせて演奏したトラックを、ミキシング時に重ね合わせたからです。ある意味フリージャズのようなエネルギーの塊りとなっています。アンサンブルをコラージュしたフリージャズのような熱気のある仕上がりになっている。3 Views of a Secret ジャコの代表曲の一つでもあります。Weather Report でも演奏されていた曲です。Toots Thielemans のハーモニカがとても効果的で印象的です。ジャコがおかしくなってしまってからも、Toots Thielemans は、この曲をあちこちのライブで吹いていてくれているほど気にいってくれているようです。Liberty City このビッグ・バンドでの演奏を念頭に置いて書かれた曲です。ジャコによるホーン・アレンジもしっかりと構想を練ったものです。リズム楽器なしの最初のホーン部隊のイントロはノリよく、イントロが終わるとジャコのフレットレスを活かしたフレーズとパーカッション、ジャコの愛するスチールドラムもしっかりと脇を固めていますし、Toots Thielemans もしっかりとオブリガード。アコースティックピアノは、Herbie Hancock しか弾いていないようなので、このピアノはハンコックですね。今更発見です。Chromatic Fantasy は、バッハのチェロのための練習曲を自身のベース運指の練習曲としていたパストリアスの録音です。左手の運指と右手のピチカートによる壮絶なテクニックで、後半は組曲のように曲が付けられています。Blackbird 学生時代に最後のあるアルペジオのようなベースを猛練習、破壊的なベースソロまでもコピーしようとしていたベーシストがいたのを思いだします。メロディ・パートはToots Thielemans が又も大活躍です。続いてはロックのようなディストーションをかけた Word of Mouth です。最初はジャコのソロで後半からエンディングにかけてはビッグ・バンドによる演奏となります。ジャコはこの前半ソロをファンサービスと思ってやりだすと、いかれてしまう時もあったようで、ドンドン過激な演出になっていったようです。John and Mary は、ジャコの2人の子供の ジョンとメアリーの笑い声や歌声がちりばめられていたり、お父さんの歌声も録音されている曲で、Wayne Shorter のソプラノ・サックスも花を添えています。いかれたオヤジさんでしたが子煩悩ではあったようです。
 録音内容としては秩序のあるフリージャズのような Crisis で幕開けするこのアルバムは、聴いていると情熱的であり、何かの情景が浮かびそうな美しさ、幻想的であり、せつなさもあり荒々しさもある素晴らしい作品ですが、Warner としては Weather Report 級の売り上げを期待していたのでしょう。十分良いアルバムではありますが、ジャズ・ビッグバンドの形式では購入層もウェザー・リポートで取り込んでいたアメリカのロック世代の若年層には響かなかったということ。その意味では音楽性のほかセールスのセンスにも優れた Weather Reort は偉大なバンドであることもわかります🎶

horn & string arrangements, electric bass, synthesizer : Jaco Pastorius
conductor, String Arrangement : Michael Gibbs

【Basic Tracks】
harmonica : Toots Thielemans
drums : Jack DeJohnette, Peter Erskine
acoustic piano : Herbie Hancock
keyboads : Richard Hilton, Tim Devine
lyricon : Tom Scott
percussion : Bruno Castellucci, Don Alias, Robert Thomas, Jr. 
steel drums : Leroy Williams, Othello Molineaux, Paul Horn-Muller
trumpet : Bob Findley, Chuck Findley, David Weiss, Snooky Young)
flugelhorn : Warren Luening
tromborne : Charles Loper, James E. Pugh, Lew McCreary
trombone, tuba : David Bargeron
bass trombone : Bill Reichenbach, David Taylor
french horn : Brad Warnaar, John Clark, Peter Gordon
tuba : Tommy Johnson
tuba, bass horn : Roger Bobo
piccolo, flute : James M. Walker
soprano alto flutre : Hubert Laws
sax : George Young
soprano sax : Wayne Shorter
tenor sax : Michael Brecker
baritone sax : Howard Johnson
basoon : David Breinenthal
【Strings】
conductor : Jules Chaikin
violin, cocert master : Gerald Vinci
violin : Stuart Canin, William Hymanson
viola : Denyse Buffum
double bass : Arni Egilsson, Bruce Bransby
【vocalist】
Alfie Silas, Edie Lehmann, Jim Gilstrap, John & Mary Pastorius, John Lehman, Marti McCall,Myrna Matthews,Petsye Powell,Zedric Turnbough,
【unknown】
Allan Harshman,David Duke,Deborah Sabusawa,Dennis Karmazyn,Harvey Michael,Schaps,Jeff Reynolds,Jerry Hudgins,Mike Butcher,Ray Kelley,Ricky Schultz,Robert Cowart,Russell Schmitt,Simon Levy

1. Crisis (Jaco Pastorius)
2. 3 Views Of A Secret (Jaco Pastorius)
3. Liberty City (Jaco Pastorius)
4. Chromatic Fantasy (Johann Sebastian Bach)
5. Blackbird (Lennon-McCartney)
6. Word Of Mouth (Jaco Pastorius)
7. John And Mary (Jaco Pastorius)

Crisis




  

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