先日 DiskUnion のジャズ館に久しぶりに行ったら、レジ前にピカピカのこの本がいっぱい置いてありました。名著は売れ続けるんだなと嬉しく思います。
音楽を聴くだけであった私が、音楽の時代背景も考えながら聴くようになったきっかけの名著です。私自身は、この本を読むまで1960年代のアメリカの人種差別問題について何となく知っていましたが、深く興味を持つこともありませんでした。しかし、リアルにこの時期にハーレムに女性一人で住んで感じたことを描写する本書を読んでから、音楽との時代の密接な関わりに興味が出てきて、聴いているだけではわからない音楽に隠されているメッセージも知りたいと思うようになり、本ブログの記述でも、その音楽にある時代背景も書きながら考察することが増えました。
吉田ルイ子さんは北海道生まれのフォトジャーナリストで、この本は1962年に渡米され、ニューヨークのハーレムに10年住んで1971年に帰国されるまでと、ちょうど60年代をアメリカの黒人ゲットーで過ごした記録です。1963年ケネディ暗殺、1964年ハーレムの暴動、1965年マルコムX暗殺、1966年ブラックパンサー設立、1968年マーチンルーサーキング牧師暗殺、1969年ウッドストック・・・まあ、すごい時期にハーレムに住まわれていました。
1972年に帰国して写真展「ハーレム Black is beautiful」を開催して、この本も「ハーレムの熱い日々」も出版されました。私はそれを47年後の2019年に古本屋で見つけて読んでみたわけです。別に音楽論を語ってわけでもなく人種差別に対する政治的なメッセージがあるわけでもなく、淡々と描かれているルポルタージュなのですが、さらりとカメラ目線と自身の目線で、人間をとらえています。
ちなみに過ごされた「ゲットー」とは、黒人やヒスパニックの密集居住地のことで、この場合ハーレムに事を指します。Donny Hathaway が The Ghetto という曲で歌っていたりします。 「ブラックパンサー」は、アニメのルパン三世ででてくる宝石や黒ヒョウで、単語だけ知ってはいたのですが、この本で書かれているブラックパンサーは、黒人が居住するゲットーを警察官から自衛するために結成された組織名でした。毛沢東主義にかなり強く影響を受けており、これがハーレムの人の本を読むきっかけになったことあるとかのエピソードが書かれています。ブラックパンサーは日本のゲットーとも連絡を取っていたことも知り、ここで少し詳しくなりました。(この本を読むまで毛沢東主義は中国国内だけのことだと思っていました)
そして音楽的なエピソードでも、興味深いことも書かれています。
「ウェインショーターはハーレムに住んでいて著者と知り合いでお子様の名前はミヤ子ちゃん」「住んでいればチャーリーミンガスに普通に会える」「アート・ブレイキーは売れてからも、金持ちのパーティーで演奏したがニグロとして差別的な扱いを受けていた。しかし、これは本人も容認していた」つまりアート・ブレイキーが日本好きであったのは、日本では差別を浮けることも無く名ドラマーとして尊敬されていたこともあるのでしょうか。確か日本人の奥さんもいらっしゃったはず。
私の愛好する音楽は、ジャズ、ブルース、ソウル、ファンクなど黒人ミュージシャンの演奏するものが大半を占めます。しかしその黒人ミュージシャンの音楽が発展してきた中には哀しい事実も歴史にはあります。
BLACK IS BEAUTIFUL
このタイトルを見るといつも思い浮かべるのは、Esperanza Spalding(かなり好きです)のBLACK GOLD です。最後にBLACKのみんなを指さす彼女に泣けてきて、この本の中で描かれているハーレムの生活オーバーラップします。
この本を読んでから、種問題に関する本などを読む機会も増え、同じ人種問題のルポではありますが白人のグレース・ハルセルの書いた「黒い性・白い性 Black / White SEX」なんかも難解ではありますが、セックスの角度から歴史観点からの宗教、黒人から見た白人、白人から見た黒人、などが書かれており実際に黒人と結婚して本を書かれたかたでした。(黒人と結婚したから本を書いたのではなく、本を書くために結婚したような匂いも読んでいて漂います)
2024年5月31日に吉田ルイさんは永眠されました。89歳で胆管がんだったそうです。




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