2022年11月25日金曜日

向井滋春 / Hot Session

 


 行きつけのおでんバーに行って飲んでたんだけど誰も来ない。マスターと二人しか居ないのでこんな時は一般的ではない趣向の強いヤツをじっくり選んで聴くことが多いのです。このアルバムもマスターが奥からCDの箱を持ってきてゴソゴソとやってからフンフンと言いながらかけてくれたました。おでんバーでかけるのは洋ものが多いのです日本人ではマスターが好きな西荻窪にライヴハウス「アケタの店」のオーナーピアニストの明田川荘之などが良くかかっています。向井滋春を聞くのは久しぶりだったかもしれません。私も日本人アーチストはあまり知らないのですが向井滋春は大学の時にフュージョン時代の曲をコピーバンドでやっていたりしたんで、このトロンボーンの響きは、しっかり頭に焼き付いていて久しぶりに聴きながら懐かしい響きが心地よかったので借りてきてしまいました。


 さて和ジャズのトロンボーンの第一人者向井滋春は1949年1月21日、名古屋生まれ。高校入学時に吹奏楽でトロンボーンを始め同志社大学でビッグバンド、コンボで腕を磨き、1970年にヤマハLMコンテスト入賞、'72年川崎僚バンド、大友義雄バンド、に参加しながら自己のバンドも結成。'79年にニューヨークに渡り、帰国後「モーニングフライト」を結成し「オリッサ」と改変、「渡辺香津美キリンバンド」「松岡直也ウイシング」にも参加されています。(ここら辺は私のツボです)その後ブラジリアン音楽のミュージシャンと共演したしながらエルビン・ジョーンズとのツアーを機に再びストレート・ジャズの世界に帰ってきて'86年に板橋文夫、古野光昭、古沢良治郎とこの「ホットセッション」を結成したわけです。
 アルバムの印象は流行の音楽にも、その演奏を提供し続けているメンメンが明るく洒落っ気たっぷりに流行に媚びずに正々堂々と明るくおおらかにジャズしていることですね。洋ものには無い雰囲気が溢れていて日本人にはやはり共通の心があるんだなと感心してしまいます。また録音はかなに良くて、向井さんのトロンボーンの音色の変化が鮮やかに捉えられています。
 Expression は、ベース古野の作品でストレートなジャズだけど粋なメロディーとテンポが嬉しい。決して和じゃないけど和を感じるんですよね。わかるかな~。Quiet Eyes は向井さんの作曲でトロンボーン・メインのバラードです。ロング・トーンが向井さん独特のビブラートとトリルが楽しめる構造ですね。Ojisan Korekara はピアノ板橋さんの作曲で、こうゆうユニゾンと決めの曲はジャズに限らず日本のこの時代のフュージョン系のバンドではよくあるパターンかと思われ、そういった意味で和を感じるかなあ。ああ楽しい。雨あがりの朝 はドラム古澤さんの楽曲で、幻想的な曲になっています。テーマのメロディーはどっかで聴いたことありますが思い出せない。童謡か?唱歌か?ですかね。I'm Getting Sentimental Over You は1934年に Tommy Dorsey and His Orchestra というビッグバンドで初演奏
され、 Tommy Dorsey's の死後にフランク・シナトラが残されたビッグバンドと共演して有名になった曲とのこと。ですが、これはドラムと向井さんの二人のバトル曲になっています。お好きなんですね。ヤンヤ、ヤンヤ。Limehouse Blues も昔のブルース・スタンダードで安定のリラックスナンバーです。ノリとしては Gadd Gang に近いようなアップテンポのファンク・ブルース仕立てで余裕の大人を感じます。Lady's Blues はソウルバラード系のジャズ・ブルース・スタンダード でこれも定番曲なのでしょうか。ひたすら余裕の色気のある演奏です。Half Moon でピアノ板橋さんの曲となりますが、ここでこのバラードは泣かせます。Landsat View で向井さんのオリジナルで、ジャズ色の中に向井フュージョン的なノリの現代的なアップテンポナンバーです。ジャズなんだけど違うんですよね。楽しかったアルバムもこれで終わり Drunk On The Moon です。スタンダードで締めるのか。最後にこれ聴いてもう一杯飲んでいってねって感じです。楽しい和ジャズの世界でした。おでんバーのマスターありがとうございます。

向井滋春 Trombone
板橋文夫 Piano
古野光昭 Bass
古澤良治郎 Drums

録音:1989年7月3~12日

オリジナル・リリース:1989/10/01 CY-3992

1. Expression
2. Quiet Eyes
3. Ojisan Korekara
4. 雨あがりの朝
5. I'm Getting Sentimental Over You
6. Limehouse Blues
7. Lady's Blues
8. Half Moon
9. Landsat View
10. Drunk On The Moon






  

2022年11月20日日曜日

Thelonious Monk / Monk

 

 1962年 Riverside から Columbia へ移籍し、レコーディングには予算と日程が十分にかけられるようになったので、このような贅沢な録音期間がとれるようになり、このアルバムは 1964年3月~10月にかけての Columbia のスタジオで録音されたアルバムだがセッションはたったの3回であったらしい。
 録音の1964年はモンクの最もノリにのっていて忙しかった時期で、1964年1月~3月に It's Monk's Time を収録、その後すぐに3月からレコーディングしたのがこのアルバムという訳です。


 数年前まではモンクはあまり聴かずに知らなかったクセにこんなことを言うのはおこがましい気がしますが、この時代のモンクは金と時間と時間もあるのでかなり安定した演奏で、モンクのぶつけるような音階と不安定さが好きな私にとってこのアルバムは快作であることは理解できるのですが若干物足りなくも感じます。
 さて、このアルバムの中身です。スタンダードとオリジナルで構成されています。1曲目はガーシュインの Liza でダンサブルなナンバーですが小気味よいリズムに合わせてモンクの違和感のあるコード進行がマッチしていてポップさもあるかっこいい仕上がりです。2曲目 April In Paris はエリントンですか。最初はソロでしっとりと聴かせるこの曲は Himself なんかでも演奏されていてモンクのお気に入りの曲とのこと。調べていたら Genius Of Modern Music の Vol 1にも収録されているとのことなので未だ私のコレクションにはいいていないのでどっかで手に入れます。そして3曲目は Children's Song は童謡で日本ではチューリップですね。こんな遊びを入れてくるところに余裕を感じます。続く I Love You もスタンダードで1928年のルディ・バレーによるヒット曲です。ラグタイム風な曲なのでホンキートンクなピアノで弾けばもともとモンクっぽくなってしまうのでノスタルジックなメロディーはモンク流の処理は浅めです。Just You, Just Me もスタンダードで1929年にジェシー・グリアによって作曲された曲で、これは意図的なモンク・コードががっちりと挿入されていて、ここまでやっていると気持ち良いですね。Live At The It ClubThe UniqueMonk's Mood などにも収録のお馴染みの曲。Pannonica は Monk's Mood Criss-Cross Alone In San Francisco などにも収録さていますが、Briliant Corners が初演とのこと。時代とメンバーによる演奏の変化は後でじっくり聴きこんでみます。Teo は Live At The It Club にも収録されていますが、プロデューサーのテオ・マセロ Teo Macero に捧げられた曲で、どんな人物だったかはよく知りませんが曲イメージからするとノシノシとした大男のような感じがします。
 全体的には陽のモンクがここにいて、オリジナルのライナーノーツは、ビル・エバンスが書いていて「このアルバムを聴く時、絶対に真似のできないパフォーマンスだということがあなたにも分かるでしょう。その比類なき高貴な美しさに圧倒される」と絶賛しているようです。


piano : Thelonious Monk
bass : Larry Gales
drums : Ben Riley
tenor sax : Charlie Rouse

producer : Teo Macero
recorded at Columbia Recording Studios
originally released in 1965.

1. Liza (All The Clouds'll Roll Away)
2. April In Paris (Take 6)
3. Children's Song (That Old Man)
4. I Love You (Sweetheart Of All My Dreams)
5. Just You, Just Me
6. Pannonica (Re-take 2)
7. Teo
【Bonus Tracks】
8. April In Paris (Take 1)
9. Pannonica (Take 2)
10. Medley: Just You, Just Me/Liza (All The Clouds'll Roll Away)





  

2022年11月15日火曜日

Lee Konitz / Motion

 

 サックスによるワンホーン・トリオで、ピアノが無い分和音感は薄くベースが曲を引っ張ている。それもテーマを演奏しないスタンダードということで、漫然と聴いていると、そのことを忘れてしまうが曲名を追いながら聴いていくと何を聴いているのかが解らなくなり、ある意味聴き手にとってこの趣味趣向が理解できない人には苦しいアルバムかも知れませんが、ジャズとはインプロビゼーションである、インプロの無い音楽はジャズ風なだけあると言った熱い発言の方にはたまらないアルバムかも知れません。


 もっか私が 所有する Lee Konitz 音源と言えば Lee Konitz with Warne Marsh, Lee Konitz with The Bert Van Den Brink Trio / Dia Logues, Lee Konitz Hein Van De Geyn / Meeting Again など。正直聴きだしたのは巨匠が 2020年4月15日による肺炎で享年92歳で亡くなってからで、行きつけのおでんバーが追悼でしばらく Lee Konitz が多めでかかっていたことにからなので、それほど傾倒しているわけではありませんでした。こういった和音よりもベースなどの旋律による演奏手法は Lee Konitz の師匠である ピアニスト Lennie Tristano の影響であるらしく、あまり私は Lennie Tristano を聴いていないので、これから聴いてみて勉強しても良いかなとも思っています。
 メンバーは、アルトサックスが Lee Konitz 、ベース Sonny Dallas、ドラムは Elvin Jones ですが、最初は Nick Stabulas がドラムだったが出来栄えに満足できなかったためにElvin Jones で再び収録が行われたとのこと。クールでいながらも緊張感のあるドラムワークは良く歌っていると感じます。本来はあるはずテーマが最初から無し、コード進行のみがアドリブの素材であるというコンセプトで挑んでくるフレージングとそのニュアンスを三人が呼応するこのパフォーマンス。
 そもそも原曲がわからないのに原曲名を記載することに意味があるのか?果たしてコード進行が原曲と一致しているのか? 聴きながらも色々と考えるとそれも面白い一枚ですが、小難しいことは考えずにまず聴いて感じるのが良いのでしょう。

alto sax : Lee Konitz
bass : Sonny Dallas
drums : Elvin Ray Jones

producer : Creed Taylor

recorded New York City, August 29th, 1961.

1. I Remember You
2. All Of Me
3. Foolin' Myself
4. You Don't Know What Love Is
5. You'd Be So Nice To Come Home To
6. Out Of Nowhere
7. I'll Remember April
8. It's You Or No One





  


2022年11月13日日曜日

Hidefumi Toki Quartet / Toki

 

 サックス奏者、土岐英史の1975年発売の初リーダーアルバムで 日本のブルーノートとも謳われる Three Blind Mice からの発売です。1970年6月に設立された日本のジャズ専門レーベルでレーベル設立以降、およそ130枚のアルバムをリリースされていて、このアルバムは tbm-46 と書いてあるのでレーベル46枚目のアルバムであることがわかります。
 さてThree Blind Mice 「3匹の盲目ねずみ」とは、イギリス(イングランド)に伝わる古いマザーグース。様々な歌詞が存在し、古いものでは1609年の出版物も確認されています。
 Three blind mice. Three blind mice.See how they run. See how they run.They all ran after the farmer's wife,Who cut off their tails with a carving knife,Did you ever see such a sight in your life,As three blind mice.
 尻尾を切られた盲目のネズミが、その尻尾を切った農家のおかみさんを追っかけまわすという可愛いいっぽい雰囲気にホラーな内容です。


 さて日本の熱いジャズシーンを記録してきたもので、亡くなってから、その偉大さを改めて確認し最近、土岐英史のアルバムを何枚か購入させていただいている一枚です。1975年の和ジャズって「そうそうこんな感じだよな」って土岐さんのソプラノの使い方が懐かしくもここら辺のジャズやフュージョンを聴き、まねごとをしていた私の大学時代を思い出させてくれるような演奏でした。
 特に1曲目の Lullabye For The Girl は土岐英史のオリジナルで、渡辺香津美が参加していることもあって特に印象深い11分の名演です。ドラムの Steve Jackson の緻密なドラムも時代の和ジャズの雰囲気を出していると思います。続く Darkness も土岐英史のオリジナルでフュージョン時代も感じるバラード。Blues, When Sunny Gets Blue はスタンダードででメンバーが縦横無尽に吹きまくり、弾きまくり、叩きまわる安定感があります。Blues では渡辺香津美のブルース・ギターが素敵でした。締めはリーダーの土岐英史のオリジナル Old Song Blues では、渡辺香津美のギターと井野信義のベースの持ち味を引き出しているオールドなスタイルのブルースで土岐英史は、やはりギタリストが好きなサックス奏者なのだと思わせてくれます。
 録音は1975年5月17日東京アオイ・スタジオ。清々しい季節での録音です。若かりし頃の土岐さんの意気を感じる昭和のジャズ・フュージョン時代を感じれる良いアルバムでした。

alto sax, soprano sax : Hidefumi Toki  土岐英史
guitar : Kazumi Watanabe 渡辺香津美
bass : Nobuyoshi Ino 井野信義
drums : Steve Jackson スティーヴ・ジャクソン

producer : Takeshi Fujii 藤井
Recorded May 17, 1975 at AOI Studio, Tokyo.

1. Lullabye For The Girl
2. Darkness
3. Blues
4. When Sunny Gets Blue
5. Old Song Blues



▶ C Minor


  

2022年9月25日日曜日

Herbie Hancock / My Point Of View

 

 1960年にドナルド・バードのクインテットでプロとしてのスタート。21歳になった1962年に21歳でデクスター・ゴードンを迎え、収録曲に Takin' Off という曲は無く代わりに顔として Watermelon Man を収録した Takin' Off で離陸した。その後 Maiden Voyage(1965年に、Speak Like a Child(1968年)を発表していて、その狭間の1963年録音の2枚目のアルバムが本作の My Point Of View となります。


 トランペットに Donald Byrd、テナーサックスは Hank Mobley は鉄板の布陣。トロンボーンの Grachan Moncur III は、私あまり注目したことが無い人ですこのアルバムの録音でも少し地味目の演奏。リズム隊が、また最強でギターのGrant Green、ベースのChuck Israelsb。ドラムは Anthony Williams でクレジットされていますが Tony Williams(トニー・ウィリアムス)で当時17歳です。本名は Anthony Tillmon Williams だそうです。
 曲はと言えば聴いたことが無いのに、出だしから耳にしたことのあるリフです。Blind Man, Blind Man は、1作目のWatermelon Manをベースにしているのです。名曲ではありますが、洗練されたジャズとは言い難い曲と思っているこの曲がベースとなっているのは たしか Donald Byrd でもありました。またこの曲は、後にハンコックがプロデュースする Head Hunters でもアレンジを変えて強力な曲となっています。ミュージシャンにとっては印象的なつくりの曲になるようです。
 とはいえ、このアルバム、他の作品に較べるとあまり話題にならないとなっています。前作が強力であり次のアルバムに同様のモチーフで Blind Man, Blind Man を持ってきたことで2匹目のドジョウ狙いのような扱いになっているからでしょうか。ぶち抜けた良さはありませんが、シンプルに演奏曲目とも実に良い作品ではあります。
 ファンク基調のジャズも良いですが、3曲目の King Cobra は、コードとリズムが印象的で気に入りました。これがハンコックのコブラのイメージなのかと思ったら、ハンコックが当時乗っていたスポーツカー、Shelby King Cobra の曲だそうです。重たいエンジン音がブルンブルンとして、朝靄の中へぶっ飛ばすようないめーじなのでしょうか?そう思って聴くとすっきりします。

piano : Herbie Hancock
guitar : Grant Green
bass : Chuck Israelsb
drums : Anthony Williams
tenor sax : Hank Mobley
trombone : Grachan Moncur III
trumpet : Donald Byrd

Producer : Alfred Lion

Recorded on March 19, 1963.

1. Blind Man, Blind Man
2. A Tribute To Someone
3. King Cobra
4. The Pleasure Is Mine
5. And What If I Don't





  

2022年9月17日土曜日

Russell Malone Quartet / Wholly Cats

 

 90年代以降を代表する黒人ジャズギタリストの一人で、イメージ的は厳格にジャズを追求していながらもコンテンポラリーな要素も取り入れた作品もある方です。1963年11月8日 アメリカ合衆国ジョージア州オールバニ生まれで、4歳の時に母親が買ったおもちゃのギターを弾き始め、12歳のときにジョージ・ベンソンがベニー・グッドマンとテレビで演奏するのを見たことに大きな影響を受け、B.B.キングやザ・ディキシー・ハミングバーズなどの影響を受けほとんど独学とのこと。1988年からはジミー・スミスのバンドに2年間加入し、1990年代を通してハリー・コニック・ジュニアのビッグバンドのメンバーとして世界中を廻り、やダイアナ・クラール・トリオのメンバーとなり、1990年代後半から2000年にかけて、ピアニストのベニー・グリーンの3枚のアルバムに参加し、その後2人はデュオを結成し、2003年から2004年にライブアルバム1枚、スタジオ・アルバム1枚をリリースして2007年までツアーを行っています。
 一方リーダー作は今までにスタジオ録音13枚、ライブ2枚とそれほど多くない。デビュー Russell Malone が1992年で、2017年のアルバム Time for the Dancer 以降発表していないが演奏活動はまだまだ続けられているようで、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラへの客演で本年2022年8月24日で来日されています。


 本作は、日本のレーベル Venus による音源で1995年録音の作品となっています。Venus は高音質音源のレーベルとして有名で、本作も24bit Super bright sound と表示され音圧が高く高品質な録音となっています。収録曲はチャーリークリスチャンの Wholly Cats、マルグリューミラーの Carousel 、ジミースミスの Off The Top、モンクの Four In One、ビリーストレイホーンの After All 等、スピード感あふれるアグレッシブな演奏からしっとり聴かせるバラードまで。Russell Malone はジョージ・ベンソンやウェス・モンゴメリーの流れを汲む人で、音はジャズそのものだけど、音楽性はジャズだけでなく様々な音楽からの影響もある人の印象ですが、本作は硬派なシンプルなジャズです。クラシック、カントリー、ブルースの影響をこの録音から感じると書いておられる人もいますがそうですかね?
 録音メンバーは、Russell Malone、Larry Willis、Rodney Whitaker、Yoron Israel。あまり注目して聴いたことのないメンバーだが程よい緊張感とセンスの良い演奏は好感です。
 ゴリゴリのフレーズや、機関銃のように詰め込んだフレーズは Four In One ぐらいですが少し地味目、そんな構成のためかそれほど売れていないアルバムではあるものの演奏、録音とも充実しているので彼の作品の中では上位に位置付けても良い作品ではないかと思われます。

electric guitar : Russell Malone
piano : Larry Willis
bass : Rodney Whittaker
drums : Yoron Israel

producer, Mastered By : Tetsuo Hara

recorded at Clinton Studio "A" in New York on July 18 and19, 1995.

1. Wholly Cats
2. I Concentrate On You
3. Carousel
4. Swing Low, Sweet Chariot
5. Off The Top
6. Four In One
7. After All
8. Chitlin Blues
9. Yesterdays





  

2022年8月20日土曜日

Bobby Hutcherson / Knucklebean

 

 Bobby Hutcherson(ボビー・ハッチャーソン)は1941年アメリカロサンジェルスに生まれジャズ・ヴィブラフォン奏者であるが、もとはピアノから音楽に入った人です。Milt Jackson(ミルト・ジャクソン)、Miles Davis(マイルス・デイビス)、Thelonious  Monk(セロニアス・モンク)に影響を受けてジャズに傾倒し、ジャズ・バンドへの参加はヴィブラフォンで、Dave Pike(デイブ・パイク)にヴィブラフォンの手ほどきを受けているとのこと。1961年にニューヨークへ進出し頭角を現すようになり、1963年にはジャッキー・マクリーンの「One Step Beyond」に参加、続く1964年にエリック・ドルフィーの「Out to Lunch」、アンドリュー・ヒルの「Judgment」への参加で一躍注目を集める。1965年、初リーダー作「Dialogue」を Blue Note(ブルーノート)からリリース。以降新主流派のヴィブラフォン奏者として数多くの作品を同レーベルに残し、1966年発売のHappenings は Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)も参加していることから人気の作品とのこと(どこかで手に入れねば)1970年代に入って新主流派ジャズが下火になるとラテン、R&B、ファンク等のフュージョン的な作品が連なるが、ヒットには至らなかったようで、この作品もその一つになるんでしょうね。1980年代以降はストレート・アヘッドなジャズに戻りっているそうです。私は彼のリーダー・アルバムを購入は、これが初めてですが、参加アルバムとしては、 Eric Dolphy / Out To Lunch!Grant Green / Idle Moments などのを聴いています。その他ジャズファンクのオムニバスなんかにもハッチャーソンは収録されていて、Out To Lunch! はフリージャズの入り口のようなアルバムで印象深いアルバムで、ここでも Freddie Hubbard(フレディハバード)と共演していました。


 しかし、このアルバムでのフレディ・ハバードとの共演は実に12年ぶりとなったとのことですが、1曲目の Why Not なんかは当時流行りのスムース・ジャズ系で軽やかな出だし、フレディも控えめに、ハッチャーソンのビブラフォンが縦横無尽に音の洪水を創り出している。とにかくテクニックを魅せる楽曲となっている。Sundance Knows はのっけからフレディのソロ・トランペットから始まり、次の主役が登場したかのような流れは、ライブに来ているかのような演出と感じます。トランペットも粒立ちのはっきりした音色の楽器であり、ビブラフォンも短い音を連続させるのが真骨頂の楽器であり、聴いているリスナーを熱くさせる抜群の取り合わせだと、この演奏を聴いていて思います。MJQとかでは心落ち着かせる音色に感じるのに奏者によって全く変わるのが面白い。なんて思いながら聴いていると So Far, So Good あたりからはストレート・アヘッドなジャズで実にスリルに満ち溢れた演奏となるのに好感。Little B's Poem はハッチャーソンのオリジナル。ミドルテンポで落ち着いたテーマなのにハッチャーソンがひたすら弾ける名演です。それほど評価が高くないアルバムとのことですが結構熱いですね。隠れた名盤かもしれません。おススメ度は結構高いです。

marimba, vibraphone : Bobby Hutcherson
electric piano, piano : George Cables
bass : James Leary
drums : Eddie Marshall
flute, soprano sax, tenor sax : Manny Boyd
flute, tenor sax : Hadley Caliman
trumpet : Freddie Hubbard (2 to 4, 6)

producer : Dale Oehler

tracks 2, 3, 4, 6 recorded on March 1, 1977.
tracks 1, 5 recorded on March 3, 1977.

1. Why Not
2. Sundance Knows
3. So Far, So Good
4. Little B's Poem
5. 'Til Then
6. Knucklebean


▶ Why Not




  

2022年8月14日日曜日

Toots Thielemans / East Coast West Coast

 

 1922年ベルギーのブリュッセル出身で、ハーモニカだけでなくギター、口笛なども演奏されたらしい。まっすぐな音色のハーモニカで聴く人に心を届けるような演奏でした。「Toots」というニックネームはミュージシャンの「Toots Mondello」と「Toots Camarata」に由来しています。1950年にベニー・グッドマンのヨーロッパ・コンサート・ツアーに参加したことがきっかけで30歳の1952年にアメリカに移住することになります。そして「チャーリー・パーカー・オールスターズ」のメンバーとなり、「ジョージ・シアリング・クインテット」などへも参加。以降、エラ・フィッツジェラルド、クインシー・ジョーンズ、ビル・エヴァンス (Affinity)、ジャコ・パストリアス (Invitations, Live 1985, Twins Ⅰ&Ⅱ Live In Japan 1982, Truth Liberty & Soul)、Zachary Breaux (Laidback) ナタリー・コール、パット・メセニー (Secret Story)、ポール・サイモン、ビリー・ジョエル など、ジャズだけではなく幅広く活動しています。日本人ではオルケスタ・デ・ラ・ルス (La Aventura)、ポピュラー音楽やCM音楽、テレビ番組「セサミ・ストリート」でのハーモニカ・ソロなど多岐にわたるようになったとのことで、セサミストリートの耳覚えのあるあのハーモニカはトゥーツ・シールマンスだったのかと今更知りました。そして2016年故郷ブリュッセルにて死去。享年94歳でした。


 共演アルバムに名演が多いだけにリーダーアルバムは少ないといった印象がありましたがライブも含めると40枚超のアルバムを出していらっしゃるようです。ライナーノーツによるとこのアルバムの前に出した「The Brasil Project」の名前のシリーズは絶賛でした。そしてこのアルバムは、スタンダードを中心とした豪華メンバーでのジャズ・アルバムとなっています。以外にもジャズ・スタンダード中心のアルバムはこれが初めてのことで、おおよそ4分ぐらいにコンパクトにまとめられた名曲が揃っていて、スリリングさ熱さといったものは無いものの、中身は悪い訳がありません。
 バンドでの演奏も良いですが、ハーモニカという楽器の特性もあると思いますが、デュオ曲にセンスが光ります。In Your Own Sweet Way はvibesの Mike Mainieri との共演で最後の方にベースとパーカッションが入ります。 A Child Is Born は Herbie Hancock との共演でライナーノーツで塩谷哲氏が書かれているように「音楽の美しさ、強さ、大きさを改めて感じることのできる名演」かと思います。
 昔クロマチック・ハーモニカを購入はしたんですが全く上達せずに眠ったままです。こんな透明感のある音が出てっけかな?と、これを聴いて再挑戦しようとは・・・・思えないなあ。

harmonica :  Toots Thielemans
<East Coast>
piano : Lyle Mays  (1-4) 
piano : Bruce Barth (7) 
guitar : John Scofield (1,5,7)
bass: Christian McBride (1-7)
drums : Troy Davis (1-5,7) 
trumpet : Terence Blanchard  (2,4,7)
tenor sax : Jushua Redman  (1,4)
vibes : Mike Mainieri  (5,6)
<West Coast>
piano : Alan Broadbent (8,11,12)
piano : Herbie Hancock (9)
piano : Michael Lang (13) 
guitar : Robben Ford (8,10)
bass : Charlie Haden (8,10,11,12)
Dave Carpenter (13) 
drums : Peter Erskine (8,10,12)
violin : Jerry Goodman (8,10) 
tenor sax : Ernie Watts (12,13) 

executive producer : Ron Goldstein
producer : Miles Goodman, Oscar Castro-Neves

recorded At Conway Studios, Los Angeles (West Coast) & The Hit Factory, New York (East Coast) 1994

【East Coast】
1. Naima
2. In Walked Bud
3. Dear Old Stockholm
4. Groovin' High
5. Con Alma
6. In Your Own Sweet Way
7. Giant Steps
【West Coast】
8. Waltz For Debby
9. A Child Is Born
10. Take Five
11. Spring Can Really Hang You Up The Most
12. Ornithology
13. Blue In Green





  

2022年5月22日日曜日

Miles Davis / Agharta

 

 Miles Davis(マイルス)を聴いてきた人たちに衝撃を与える作品の一つに入るアルバムでしょう。実際私も行きつけのおでんバーで、Agharta(アガルタ) Pangea(パンゲア)を聴きその破壊的な音圧に衝撃を受けながら、2枚のCD音源を同時に鳴らすとヘビーなリズムの混沌さが増して、そのエネルギーだけで音楽として成立するフリージャズやノイズ系の音楽に通ずるものと酷似するといったマスターの実験にも付き合ってきた一連の作品です。
 今でこそマイルス作品も相当な数を聴くようになった私ですが、ジャズをそれほど好んで聴いていなかった時代からマイルスはラジオやTVなどで耳にすることも多く、それは大衆受けしそうなポップな作品のエレキトリック・マイルスでした。このイメージでマイルスの音楽は固定されていたのですが、エレクトリックに移行する前の歴史を聴いてみようと思い最初に購入したのが Jazz At The Plaza でした。ここら辺は所謂ジャズらしさが聴けて大人になったような気分になりました。そして次に購入したのが Bitches Brew で、聴きながら困惑し当時その良さが理解できず、ここでマイルスはよくわからない、やっぱり真のマイルス好きはこんな作品が好みなのか、私には理解できない世界だ。と暫く私はマイルスから遠ざかってしまいました。


 しかしマイルスの 古いアルバムも聴いてみるかと、聴き始めてからはその真面目な演奏ぶりに面白くなってきて、印象は一変しました。時代を追いながら聴けば聴くほど面白く聴けてきます。死刑台のエレベーターなんて小説を読みながら聴いてたら非常につまらなかったんですが、時間を置いて聴いてみると、あれっ良いじゃないですかなんてことも起きます。
そんな聴き方をしているうちに、マイルスって時代を追いながら聴いたら面白いと気付き始めて、またエレクトリック・マイルスに戻ってきたわけで聴いたことはあるけど、持っていないパンゲアもいずれ手に入れないければなりません。
 さて、そんなわけで本作はエレクトリック・マイルスの大阪コンサート1975年2月1日午後の部を収録したアルバムでありこんな刺激的な名作が日本のコンサートの収録であるということも嬉しい限りです。同じエレクトリック・マイルスの作品である Bitches BrewIn A Silent Way などはいくつかの録音をつなぎ合わせた手法での作品と言われているのに対しセッションなので当然一発勝負の録音となっていてぶっ飛び具合は中々のもの。
 このアルバムの収録時にマイルスは48歳でジャズに一線を画しエレクトリックでファンクな世界に突入、ファンク好きな私にとっては今となってはとっつきやすい録音です。

trumpet, organ : Miles Davis
guitar : Reggie Lucas
guitar, synthesizer, percussion : Pete Cosey
bass (fender) : Michael Henderson
drums : Al Foster
congas, percussion, drum (water drum), drum machine (rhythm box) : Mtume
soprano sax, alto sax, flute : Sonny Fortune

producer : Teo Macero

recorded Feb 1, 1975 at Osaka Festival Hall

1. Prelude
2. Maiysha
3. Interlude / Theme From Jack Johnson