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2021年12月7日火曜日

Herbie Hancock / Maiden Voyage

 

 1965年5月、Herbie Hancock (ハービー・ハンコック)の5枚目のリーダー作として作成された60年代のハービー・ハンコックの傑作と言われるアルバム Maiden Voyage 邦題は処女航海です。
 私のハービーのイメージは1980年代のヒップ・ホップなどを取り入れたエレクトリック・サウンドだったので、ジャズをやっていたことは知ってはいたのですが、あまり単体で聴くことはありませんでした。しかし、マイルスを聴き始めてからハービーのピアノを聴くことも増えてきたため、Speak Like A Child などを仕入れて入門編であるこの処女航海など最近聴き始めています。


 マイルス・デイヴィス・グループには1963年~1965年まで在籍していたので、メンバーもトランペットの Freddie Hubbard を除けばマイルス・バンドのメンバーですしマイルスの影響をモロに受けていた時代の作品と言えるでしょう。
 テーマはタイトル通り、海の広大さと威厳・処女航海で海をゆく船の壮麗さ・優雅なイルカの美しさ・小さな海生生物の生・嵐などを盛り込んだモチーフを持って作成されたハービーのオリジナルとなっています。航海に乗り出す船の美しい姿や 光る水面などのイメージの Maiden Voyage で始まり、次いで嵐をモチーフにした The Eye Of The Hurricane と続きますが、メンバーの若々しく、エネルギッシュな演奏。ハービー透明感があってキラキラのしたピアノのバランス感も素晴らしい。1965年にしては、現代的な音のセンスの和音とビートのジャズを展開しているのだから、当時のこのアルバムを聴いたジャズ・ファンは新たな時代を感じたに違いありません。この後にエレクトリック・キーボードを取り入れてファンク、ヒップホップ、ジャズ回帰などの活動をする人だけに、初めて聞くわけではないけどアルバム全体を通して聴くとしみじみするものがあります。

piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Anthony Williams
tenor sax : George Coleman
trumpet : Freddie Hubbard

producer : Alfred Lion

recorded on March 17, 1965.
recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey

1. Maiden Voyage
2. The Eye Of The Hurricane
3. Little One
4. Survival Of The Fittest
5. Dolphin Dance





muu music webzine

  

2024年1月1日月曜日

Bobby Hutcherson / Happenings

 

  まずは、この中身がジャズであるとは想像できない斬新なジャケットに惹かれます。ジャケットを手掛けたのは Reid Miles なるグラフィック・デザイナーで、1956~1967年のBlue Note で400枚余りのアルバムを手掛けていたとのこと。これほどの仕事をしているのに、好きな音楽はクラシックであったとのことで仕事と趣味は別物であったようです。少し調べてみただけで、Reid Miles のお仕事は Cookin' Bags GrooveSomethin' ElseThe SidewinderBlue TrainSoul StationMidnight BlueSearch For The New LandGreen Street・・・・色付け写真、文字のみジャケなど、様々なパターンがありますが一定の法則はありそうな感じです。


 得てしてジャケットに反してイモな音であることも良くあるかと思いますが内容がまた良かった。ボヤボヤしていない輪郭がはっきりした vibraphone のサウンド。これにセンスの良いピアノ・サウンドは Herbie Hancock でした。なので、Maiden Voyage も収録されています。vibraphone と言えば、スイングの Lionel Hampton、モダン化の Milt Jackson ですが、そういった先陣のサウンドを進化させたのが Bobby Hutcherson と言えるのではないかと、このアルバムを聴いていて思います。演奏は脂がのっていますが、サウンドはクールです。
 さてレビューです。 Aquarian Moon は、イントロが始まったと思ったら直ぐに疾走感がありながらも透明感のあるプレイに魅了されます。ハンコックのピアノも絶好調でメロディー楽器で有りながら打楽器でもある両楽器の相性の良さを感じながらもスリリングなプレイは爽快。Bouquet は、どこか抽象的で前衛的な神秘的な楽曲で心に安定感をもたらしてくれます。Rojo はボサノバですが、音使いが不思議な曲です。正しい音使いがあるとすれば、そこから0.5ぐらいズレた音の選択をし続けることによって不思議な感覚が生まれます。Maiden Voyage は言わずもがなのハンコックの持ち込み曲です。1965年にハンコックは発表で、この録音はその翌年です。ハッチャーソンよりも、やはりハンコックの世界観で進行していると感じるので、オリジナルの方が印象としては好いかもしれません。Head Start ここで高速バップで主役はハッチャーソンに戻ります。どこかで聞いたことのあるテーマですが、そこは気にしない。When You Are Near は、ゆったりめのバラードで、vibraphone の、ゆらぎを聴かせるプレイです。The Omen は、怪しいフリーな曲です。Omen は日本語では「前兆」ですが何の前兆なのかを知りたいところ。嵐ではなく何か不思議なことの起こる前兆のようなホラーな雰囲気でした。アルバムの締めをこの曲にするところに芸術性を感じます。
 とりわけ好きな音って訳では無いですが、何か心に引っかかるものを遺してくれる作品でした🎵
 
vibraphone, marimba : Bobby Hutcherson
piano : Herbie Hancock
bass : Bob Cranshaw
drums : Joe Chambers

producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder
photography, design : Reid Miles
recorded on February 8, 1966.

1. Aquarian Moon
2. Bouquet
3. Rojo
4. Maiden Voyage
5. Head Start
6. When You Are Near
7. The Omen


▶ Rojo



  

2023年3月5日日曜日

Herbie Hancock / Quartet

 

 いきつけの「おでんバー」では、ジャズに、こだわりのある方が多いので持って行った音源をかけて反応を見るのが楽しいのですが、傾向として、Bill Evans とJaco Pastorius の反応は悪いことはわかっています。Herbie Hancock、Chick Coreaについては嫌われてハイなようですが反応は薄目、コメントはほぼ無しなので歓迎はされていないようです。という訳で、このアルバムも実験として持って行きましたが1曲目だけ反応があり以降は薄目でした。なんとなく、わかっていましたので別に悔しくもなく、むしろ1曲目に反応があったのは発見でした。(やはり嫌われてはいない)
 と言うことでこのアルバム、ジャケットをよく見ると2Record set on 1 Compact Disc の表示なので2枚のアルバムが一つにまとまっているようです。そのうちダブル可能性があるのでなるべく覚えておきたい情報です。ライナー・ノーツはついていませんでした。裏面には曲目、メンバー、録音場所などは書いてありますが二つのアルバム名は書いてありません。でググって見ると、1981年夏の来日の際、信濃町のスタジオで録音された14曲は二枚のアルバム「Herbie Hancock Trio.1981」「Quartet Herbie Hancock」でリリースされた。日本では前者のアルバムに収録された「ステイブルメイツ」が素晴らしく人気盤となる。しかし「ステイプルメイツ」はこのアルバムには入っていない?ではありませんか。この東京のレコーディングでは2枚分のアルバムが収録されたが、状況証拠としては、本CDで2枚分のアルバムは収録されていないのではないでしょうか?想像するに、CDに入っていたのはライナーノーツが無く、安っぽい1枚の紙印刷物を4つ折りにしたものなので「海賊版のようなもので中身を確かめずに違うCDのジャケットをスキャンしてコストを抑えるために4つ折りにした」で当たっているような気がします。つまりはダブる可能性は無いってことですか。なるほど。


 下調べにだいぶ時間を使ってしまいましたが、状況がわかったところでアルバムのレビューです。Well You Needn't 言わずと知れたモンクのナンバーが1曲目。原曲よりもスピード感あふれる演奏で完璧なフレージングで突っ走ります。特に目立つのは Wynton Marsalis  の独壇場のような正確無比な音使い若干19歳の若者が先輩たちについてこいと言わんばかりのソロを展開し、続くハンコックのピアノ、ロン・カーターのベースも本気さが伺えます。つまらない演奏が多いと言われる Wynton Marsalis ですが、これは当たりのほうの演奏ではないでしょうか。 'Round Midnight もモンクです。ハービーのリリカルなピアノのイントロ、ミュート・トランペットがテーマを吹きフリー・テンポからきっちりとしたリズムになり、いきなりのビッグバンドのような爆音でテーマが終了してソロ回しに展開。ベタですが楽しいかもしれない。そしてテンポ・アップしてまた表情を変え、エンディングは、テンポを落として夜中に散歩に戻るような展開は、これまたにくいエンターテイメント。Clear Ways は Tony Williams の楽曲で、スピード早めのハード・バップ。音量は各楽器マックスの録音ですがピアノ・ソロの時に興奮して誰かがわめいているような音が聞こえます。ハンコックでしょうか?そのぐらいのノリノリの演奏であります。A quick sketch は、Ron Carter の楽曲で16分30秒の大作で、テーマ部分はサビ以外はワン・コードでタイトル通り手早く作った曲なのでしょうか。構造が単純な分、退屈な感じはしますがメンバーの技量が素晴らしいだけに聴きごたえのある内容になっています。The Eye Of The Hurricane はハンコック作曲で、Maiden Voyage でもお馴染みのヤツです。嵐がモチーフの曲だけあってエネルギッシュな演奏にもってこいの楽曲です。ここでもピアノ・ソロで誰かがわめいているかのような音が聞こえます。やはりハンコックですか。そしてトニーのドラム・ソロが本能の演奏と言う叩き方に興奮。終わりも派手ハデでナイス。Parade も Ron Carter の楽曲で今回は短いですが長めの8分。ボサのリズムで良い曲で箸休めのような役回りの曲かと思っていたら後半が熱い。Parade はエレガントなピアノイントロが長めに展開、トニーのリム・ショットが効いたドラムとトランペットで場面を変える。この Wynton Marsalis の演奏も当たりですね。つまらなくないし押し引きもバランス良いです。ハンコックのバラバラと音がちりばめられるようなソロも素晴らしい。The Sorcerer はハンコック、Pee Wee は Tony Williams の楽曲でともに、ハンコック、トニー、ロン・カーターが参加しているマイルスの Sorcerer 1967年からの楽曲です。I Fall In Love Too Easily は、Jule Styne, Sammy Cahn のスタンダード。シナトラが歌い、マイルスの Seven Steps to Heaven でもこのメンバーで吹き込まれています。しっとりとした美しい響きで大人なジャズの雰囲気にと Wynton Marsalis の響きが合っています。
 廉価版のいい加減なパッケージではありますが聴き終わっても余韻の残るアルバムでした。モンクとマイルスの曲の選曲が多いのですが、このメンバーでは、ただのスタンダードの演奏ではなくなるところが良かったです。当たりです🎯

piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Tony Williams
trumpet : Wynton Marsalis

producer : David Rubinson & Friends Inc., Herbie Hancock

recorded  July 28, 1981 at CBS Sony Studios, Shinanomachi, Tokyo, Japan

1. Well You Needn't
2. 'Round Midnight
3. Clear Ways
4. A Quick Sketch
5. The Eye Of The Hurricane
6. Parade
7. The Sorcerer
8. Pee Wee
9. I Fall In Love Too Easily



▶ Parade


  

2022年9月25日日曜日

Herbie Hancock / My Point Of View

 

 1960年にドナルド・バードのクインテットでプロとしてのスタート。21歳になった1962年に21歳でデクスター・ゴードンを迎え、収録曲に Takin' Off という曲は無く代わりに顔として Watermelon Man を収録した Takin' Off で離陸した。その後 Maiden Voyage(1965年に、Speak Like a Child(1968年)を発表していて、その狭間の1963年録音の2枚目のアルバムが本作の My Point Of View となります。


 トランペットに Donald Byrd、テナーサックスは Hank Mobley は鉄板の布陣。トロンボーンの Grachan Moncur III は、私あまり注目したことが無い人ですこのアルバムの録音でも少し地味目の演奏。リズム隊が、また最強でギターのGrant Green、ベースのChuck Israelsb。ドラムは Anthony Williams でクレジットされていますが Tony Williams(トニー・ウィリアムス)で当時17歳です。本名は Anthony Tillmon Williams だそうです。
 曲はと言えば聴いたことが無いのに、出だしから耳にしたことのあるリフです。Blind Man, Blind Man は、1作目のWatermelon Manをベースにしているのです。名曲ではありますが、洗練されたジャズとは言い難い曲と思っているこの曲がベースとなっているのは たしか Donald Byrd でもありました。またこの曲は、後にハンコックがプロデュースする Head Hunters でもアレンジを変えて強力な曲となっています。ミュージシャンにとっては印象的なつくりの曲になるようです。
 とはいえ、このアルバム、他の作品に較べるとあまり話題にならないとなっています。前作が強力であり次のアルバムに同様のモチーフで Blind Man, Blind Man を持ってきたことで2匹目のドジョウ狙いのような扱いになっているからでしょうか。ぶち抜けた良さはありませんが、シンプルに演奏曲目とも実に良い作品ではあります。
 ファンク基調のジャズも良いですが、3曲目の King Cobra は、コードとリズムが印象的で気に入りました。これがハンコックのコブラのイメージなのかと思ったら、ハンコックが当時乗っていたスポーツカー、Shelby King Cobra の曲だそうです。重たいエンジン音がブルンブルンとして、朝靄の中へぶっ飛ばすようないめーじなのでしょうか?そう思って聴くとすっきりします。

piano : Herbie Hancock
guitar : Grant Green
bass : Chuck Israelsb
drums : Anthony Williams
tenor sax : Hank Mobley
trombone : Grachan Moncur III
trumpet : Donald Byrd

Producer : Alfred Lion

Recorded on March 19, 1963.

1. Blind Man, Blind Man
2. A Tribute To Someone
3. King Cobra
4. The Pleasure Is Mine
5. And What If I Don't