2023年3月5日日曜日

Herbie Hancock / Quartet

 

 いきつけの「おでんバー」では、ジャズに、こだわりのある方が多いので持って行った音源をかけて反応を見るのが楽しいのですが、傾向として、Bill Evans とJaco Pastorius の反応は悪いことはわかっています。Herbie Hancock、Chick Coreaについては嫌われてハイなようですが反応は薄目、コメントはほぼ無しなので歓迎はされていないようです。という訳で、このアルバムも実験として持って行きましたが1曲目だけ反応があり以降は薄目でした。なんとなく、わかっていましたので別に悔しくもなく、むしろ1曲目に反応があったのは発見でした。(やはり嫌われてはいない)
 と言うことでこのアルバム、ジャケットをよく見ると2Record set on 1 Compact Disc の表示なので2枚のアルバムが一つにまとまっているようです。そのうちダブル可能性があるのでなるべく覚えておきたい情報です。ライナー・ノーツはついていませんでした。裏面には曲目、メンバー、録音場所などは書いてありますが二つのアルバム名は書いてありません。でググって見ると、1981年夏の来日の際、信濃町のスタジオで録音された14曲は二枚のアルバム「Herbie Hancock Trio.1981」「Quartet Herbie Hancock」でリリースされた。日本では前者のアルバムに収録された「ステイブルメイツ」が素晴らしく人気盤となる。しかし「ステイプルメイツ」はこのアルバムには入っていない?ではありませんか。この東京のレコーディングでは2枚分のアルバムが収録されたが、状況証拠としては、本CDで2枚分のアルバムは収録されていないのではないでしょうか?想像するに、CDに入っていたのはライナーノーツが無く、安っぽい1枚の紙印刷物を4つ折りにしたものなので「海賊版のようなもので中身を確かめずに違うCDのジャケットをスキャンしてコストを抑えるために4つ折りにした」で当たっているような気がします。つまりはダブる可能性は無いってことですか。なるほど。


 下調べにだいぶ時間を使ってしまいましたが、状況がわかったところでアルバムのレビューです。Well You Needn't 言わずと知れたモンクのナンバーが1曲目。原曲よりもスピード感あふれる演奏で完璧なフレージングで突っ走ります。特に目立つのは Wynton Marsalis  の独壇場のような正確無比な音使い若干19歳の若者が先輩たちについてこいと言わんばかりのソロを展開し、続くハンコックのピアノ、ロン・カーターのベースも本気さが伺えます。つまらない演奏が多いと言われる Wynton Marsalis ですが、これは当たりのほうの演奏ではないでしょうか。 'Round Midnight もモンクです。ハービーのリリカルなピアノのイントロ、ミュート・トランペットがテーマを吹きフリー・テンポからきっちりとしたリズムになり、いきなりのビッグバンドのような爆音でテーマが終了してソロ回しに展開。ベタですが楽しいかもしれない。そしてテンポ・アップしてまた表情を変え、エンディングは、テンポを落として夜中に散歩に戻るような展開は、これまたにくいエンターテイメント。Clear Ways は Tony Williams の楽曲で、スピード早めのハード・バップ。音量は各楽器マックスの録音ですがピアノ・ソロの時に興奮して誰かがわめいているような音が聞こえます。ハンコックでしょうか?そのぐらいのノリノリの演奏であります。A quick sketch は、Ron Carter の楽曲で16分30秒の大作で、テーマ部分はサビ以外はワン・コードでタイトル通り手早く作った曲なのでしょうか。構造が単純な分、退屈な感じはしますがメンバーの技量が素晴らしいだけに聴きごたえのある内容になっています。The Eye Of The Hurricane はハンコック作曲で、Maiden Voyage でもお馴染みのヤツです。嵐がモチーフの曲だけあってエネルギッシュな演奏にもってこいの楽曲です。ここでもピアノ・ソロで誰かがわめいているかのような音が聞こえます。やはりハンコックですか。そしてトニーのドラム・ソロが本能の演奏と言う叩き方に興奮。終わりも派手ハデでナイス。Parade も Ron Carter の楽曲で今回は短いですが長めの8分。ボサのリズムで良い曲で箸休めのような役回りの曲かと思っていたら後半が熱い。Parade はエレガントなピアノイントロが長めに展開、トニーのリム・ショットが効いたドラムとトランペットで場面を変える。この Wynton Marsalis の演奏も当たりですね。つまらなくないし押し引きもバランス良いです。ハンコックのバラバラと音がちりばめられるようなソロも素晴らしい。The Sorcerer はハンコック、Pee Wee は Tony Williams の楽曲でともに、ハンコック、トニー、ロン・カーターが参加しているマイルスの Sorcerer 1967年からの楽曲です。I Fall In Love Too Easily は、Jule Styne, Sammy Cahn のスタンダード。シナトラが歌い、マイルスの Seven Steps to Heaven でもこのメンバーで吹き込まれています。しっとりとした美しい響きで大人なジャズの雰囲気にと Wynton Marsalis の響きが合っています。
 廉価版のいい加減なパッケージではありますが聴き終わっても余韻の残るアルバムでした。モンクとマイルスの曲の選曲が多いのですが、このメンバーでは、ただのスタンダードの演奏ではなくなるところが良かったです。当たりです🎯

piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Tony Williams
trumpet : Wynton Marsalis

producer : David Rubinson & Friends Inc., Herbie Hancock

recorded  July 28, 1981 at CBS Sony Studios, Shinanomachi, Tokyo, Japan

1. Well You Needn't
2. 'Round Midnight
3. Clear Ways
4. A Quick Sketch
5. The Eye Of The Hurricane
6. Parade
7. The Sorcerer
8. Pee Wee
9. I Fall In Love Too Easily



▶ Parade


  

0 件のコメント:

コメントを投稿