Mal Waldron(マル・ウォルドロン)は1925年ニューヨーク生まれのジャズ・ピアニスト、作曲家。ビリー・ホリデイの伴奏者としても知られ、ビリー・ホリデイ死去の5か月前に、アルバム Left Alone(レフト・アローン)を制作しビリーが作詞マルが作曲の Left Alone は、スタンダード・ナンバーとなっています。2002年12月2日ベルギーのブリュッセルで77歳で他界されています。
「プラハの春」という単語は知っていますが、学生時代に世界史は無視してきたので何が起きたのか、よくわかっていませんので、ググります。
1968年4月に始まった「人間の顔をした社会主義」を掲げるドプチェクの指導の下で展開された、チェコスロヴァキアでの民主化運動。しかし、同1968年夏になると事態は急変、8月20日にソ連のブレジネフ政権は、ワルシャワ条約機構5ヵ国軍を侵攻させて軍事弾圧に踏み切り、市民の抗議の嵐の中をプラハの中心部を制圧、ドプチェクらを連行した。このチェコ事件によってプラハの春は踏みにじられてしまった。しかし、ゴルバチョフは1988年3月の新ベオグラード宣言の中でブレジネフ・ドクトリンの否定、東欧諸国へのソ連の内政不干渉を表明、1989年11月10日にベルリンの壁が破壊され、チェコスロバキアでも、1989年からの「ビロード革命」によって共産党体制は崩壊し自由化を実現した。この民主化運動自体を「プラハの春」と呼ぶこともあれば、チェコ事件を含めた期間の一連の流れを「プラハの春」と呼ぶこともあるらしい。
このアルバムは1990年にドイツ・ミュンヘンで録音された作品です。その後1989年にベルリンの壁が崩壊し、ルーマニアのチャウシェスク王朝が吹きとび社会主義が崩壊。国内の秘密警察網が整備強化されて国民同士の監視と秘密警察への密告が奨励され、旧東ドイツと並んで東欧で最悪の警察国家となった。チェコがスロバキアと合併していたチェコスロバキアの時代、スターリン的抑圧に対する不満が爆発して、スロバキア人のドプチェク率いる政権が誕生し、自由化・民主化路線が布かれた訳です。1966年以降は、西ドイツのミュンヘンに住んで音楽活動を続けていた マルにとってはとてつもない環境の変化が周りに起きていた訳で、このアルバムは「プラハの春」と呼ばれる1968年の自由化の波という社会的なテーマを取り上げショパンの「革命」で幕を開ける本作が、旧ソ連によって叩き潰された「プラハの春」へのオマージュであるということで背景は、かなり重いアルバムですね。(そんな気はしていましたが調べるまで分かりませんでした)
録音場所は、西ドイツのミュンヘン。レーベルは「Alfa Jazz」。いかにも日本のレーベルらしい、あからさまな企画盤で、プロデューサーも Tetsuo Hara と日本なところが素晴らしい。力強いピアノが印象的な作品で、出だしがショパンの Revolution のジャズ・バージョン。クラシックの原曲は知らないのですが、きっとやり過ぎなんだろうしピアノで、ばっさり切られるような曲になっています。ピアノをちゃんと勉強した人はあっけにとられることが容易に想像できますので、あえて原曲のクラシックは暫く聴かないことにします。そして East Of The Sun はスタンダードで Brooks Bowman 作曲。これは中々聴きごたえがある演奏でゴツゴツしたマルのピアノにタイトなドラムとブンブンするベースが素晴らしい。Let Us Live - Dedicated To East Germany はマルのオリジナル。アグレッシブなドラム・ソロから始まり、緊迫感のあるインプロが展開されます。少し劇場チックな展開なのがやり過ぎ感もありますが、その後のオリジナリティある展開は結構好きかもしれないです。いや独特です。そして主題である Spring In Prague もマルのオリジナル。どれほど激しい曲なのかと思っていたら、ゆったりとして落ち着いた曲です。先にも書きましたが ”民主化運動自体を「プラハの春」と呼ぶこともあれば、チェコ事件を含めた期間の一連の流れを「プラハの春」と呼ぶこともあるらしい" と言うことであれば、この曲は先の ”民主化運動自体を「プラハの春」と呼ぶ" 考えでの作曲だったのでしょう。ゆったりとした民主化へ向けての流れがこのイメージにあったのかと思います。次いで、On A Clear Day はスタンダード。なるほど革命が起きて、日が昇り、ドイツで生き延びる、そしてプラハの春、ある晴れた日とpらはの春の一連の流れが表現されている。重いですが次の曲は Spring Is Here 美しい風景描写のような世界、最後は We Demand で重々しく幕を閉じます。一瞬光が見えたかのようなプラハの春ですが、戦いと混沌は続くようです。硬質な重いタッチと言われるマルのピアノは、まさにその表現がぴったりで、またパウロ・カルドソのベースもマルに負けない個性的な演奏です。単なる企画ものでは終わらないイージーに聴くというより噛みしめるアルバムでした。重いなあ・・
piano : Mal Waldron
bass : Paulo Cardoso
drums : John Betsch
producer : Tetsuo Hara
recorded At Arco Studios in Munchen Feb. 19 & 20 1990
1. Revolution
2. East Of The Sun
3. Let Us Live - Dedicated To East Germany
4. Spring In Prague
5. On A Clear Day
6. Spring Is Here
7. We Demand
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