2025年4月24日木曜日

Chick Corea & Herbie Hancock / An Evening with Chick Corea And Herbie Hancock

 


 最近聴いている音源には Herbie Hancock が多いですが、Chick Corea については、Electric Band系が多いかと思っていたら、Miles 作品が多いでしょうか。この両者の共通点として直ぐに思い浮かぶのは、若い時は思いっきりアコースティック・ジャズのミュージシャンであったのが、ある時思いっきりエレクトリックに傾倒し、またアコースティックに戻ってきているところです。このアルバム購入は2025年に入ってからで、特に目的としてのこう購入でなく、たまたま中古屋で見かけたから。私には興味津々ですが、行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」では、余り好まれて聴かれることの無い二人です。しかし先に家で封を開けて聴いたところ素晴らしい。敢えて、皆様の先入観を変えるために持って行きました。が、人の先入観はなかなか変えることが出来ないもの、悪評ではないものの、無反応に近い。うーん、これは残念。しかし音楽は自分で聴いて、どう感じるかです。他人の評価に惑わされることがあるものの、自分が良いと感じることが心の栄養に大事なものです。


 Chick Corea と Herbie Hancock、共演と言えば Miles Davis / In A Silent Way (1969)Live Evil (1971) などが有名ですが、ライナーノーツには、二人の繋がりが、もっと原点にあると掲載されています。Chick のデビュー・アルバムは1962年7月にニューヨークで録音されたラテン音楽のバンド、Mongo Santamaría の「GoMonGo!」で、この頃 Herbie は Donald Byrd のバンドにいて、土曜日だけ Mongo Santamaría のバンドで演奏していたそうです。そして、当時未完成だった Herbie のオリジナル「Watermelon Man」を Mongo Santamaría が取り上げて大ヒットとなり、Herbie 初のリーダー・アルバム Takin' Off (1962) でも収録され大ヒットし、様々なミュージシャンにカバーされたり完全オマージュの別名の曲が演奏されるなんてことも起きています。共演こそしていないものの両者の Mongo Santamaría への参加、そして「Watermelon Man」へと点と点がつながってくると言う、エピソードは謎解きのようでワクワクしますが、ここでは残念ながら演奏されていません。


 このアルバム 1978年2月ライブ録音。6曲中3曲がChick、1曲がHerbie、1曲がChick  & Herbie、そしてバルトークのピアノ曲で、ライナーノーツの英語版では、このアルバムは、二重奏 (Duets) であるが、勝負・決闘 (Duels) ではないと書かれ、Duets には「二人だけの対話」の意味がある。対話ではあるが「対決」はあり、インプロビゼーションの最もピュアーかつスリリングな局面が凝縮されているとも書かれています。このライナーツのライターの 久保田 高司 氏の研究心、書きっぷりは中々マニアで読み応えありました。ステレオで注意深く聴きたい方は、右が Chick、左が Herbie です。
 それでは、全曲レビューしていきます。「Homecoming」Chick Corea の作曲です。格調高きクラシックのようであり、フュージョンのようでありながらの実はジャズ・インプロであるのが凄い。2台のピアノを名手が演奏するので、広がりがある美しい展開、打楽器のようなピアノの使い方などテクニックやピアノを知り尽くしたアイデアも堪能できます。拍手の大きさ、笑い声などからも顧客サービスたっぷりのパフォーマンスもあるようで、おそらくピアノの鍵盤前から離れてのピアノの弦の中に手を突っ込んでのパーフォーマンスをしながら、手を挟まれるギャグなんかもやっているように音から推測できます。映像で見てみたい気もしますが、見なくても想像できる録音です。「Ostinato」はバルトークの「Mikrokosmos」よりと書いてあります。他の演奏を聴いたことが無いので、この演奏の凄さはわかりませんが、1曲目で耳馴れしてくると、オーケストラでも聴いているかのような立体感のある演奏に聞こえますが3分だけの超ショートであさめています。「The Hook」は Chick と Herbie の共作となっています。こちらは最初からインプロ感のある演奏で、ウネウネとお互いの感情を探りながら変化していきます。特に印書に残るのは、ギターのピッキング単音のような響きのリフを延々としてる部分で鍵盤を叩いているだけなのだろうか?それとも、ホントにピッキングでもしているのだろうか?気になります。11分過ぎのミュート気味の音はピアノの弦の上に何かをのっけて鍵盤を叩いての音だろうか?とか、それを過ぎると二人の単音連打による打楽器的なアプローチ。かなり独創的です。「Bouquet」 Herbie が Chick を紹介しての Chick の独奏。こちらについてはガチガチの遊びとお笑い要素無し。Herbie の紹介部分があるから1曲目の Homecoming と実質的には同じぐらいですが、最長の19分22秒の演奏です。途中何かラテンの曲からの引用もあることだけは解りますが、何の曲かはわからないのが悔しいところ。「Maiden Voyage」そして Herbie の名曲の登場です。Maiden Voyage (1965) では、Freddie Hubbard のトランペットが印象的なジャズ曲でしたが、ピアノのデュオでやると透明感のある曲に変わります。イントロから始まるコードリフだけで客はヤンヤです。ファンは大興奮ですね。ピアノだけのプレイですが、ここにきて私も頭がハッと覚めます。「La Fiesta」Chick 作曲のスパニッシュかラテンと思いきやイントロからはラテンの雰囲気は微塵も無し。でも途中のソロからスパニッシュになり、おそらく Chick の演奏に合わせてスパニッシュにあるリズムの手拍子?っぽいヤツを Herbie が合いの手を入れて雰囲気が盛り上がります。
 なにしろ、名手の二人であり息もぴったり、アイデア満載のファンサービスたっぷり。ありがたいけど退屈なアルバムではありません🎶🎹 

piano (steinway) : Chick Corea, Herbie Hancock

producer : Chick Corea, David Rubinson
recorded live at Masonic Auditorium, San Francisco; Dorothy Chandler Pavilion, Los Angeles; & Hill Auditorium, Ann Arbor; February, 1978.

1. Homecoming / Chick Corea
2. Ostinato (From Mikrokosmos For Two Pianos, Four Hands) / Bela. Bartok
3. The Hook / Chick Corea, Herbie Hancock
4. Bouquet / Chick Corea
5. Maiden Voyage / Herbie Hancock
6. La Fiesta / Chick Corea





  

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