戦前カントリーブルースの巨匠三人のオムニバス。ブルースと言っても現代人が思うブルースとは少々ニュアンスが異なっています。このタイプの音楽はアメリカの南北戦争以降の復興期に、南部の農村社会で演奏されていた音楽でアメリカ全体のものでは無く、地域のコミュニティ・レベルで歌われていたもので、このタイプの歌い手を、業界では「ソングスター」と呼び、=ブルース・マンではないらしい。英語では「songster」と綴り、星のスターではありません。ブルースの誕生以前から存在し、伝承歌、ブロードサイド・バラッド、ミンストレル・ソング、ポルカやリールといったダンス・チューンなど、さまざまな音楽を演奏していたミュージシャンのことで、ブルースも流行の音楽としてレパートリーに加わって、ソングスターに歌われることもあると言う広義な音楽を歌うミュージシャンを表現するものっだそうです。何やら難しいですが、ここら辺のことは、本CDのライナーノーツでは、中山義雄氏がこ書かれています。しかし難解な内容であることと、筆者の造語なん?と思ったこともあり調べ見ると、奥和宏氏のブログ内で「ソングスターの系譜」としてまとめられているものが、少しだけわかりやすかったのでリンクしときます。
さて、このCDに入っている一人目の巨匠は、ミシシッピ・ジョンハートは本名「John Smith Hurt」で"Mississippi" はセールス用のギミックです。ブルースシンガーにありがちな、ダミ声ではなく、少し鼻にかかった柔らかな声で穏やかで和みますカントリー・ブルースの教本では、必ず出てくる人です。オールドタイムやフォークに近く、タイム感と楽曲の構造は現代のブルースとは完全に違って理解しにくいのですが、スリー・フィンガーのギターの弾き方などは繊細で教則本に載る譜面では現代人が理解しやすいようにアレンジされているものが多いです。収録は13曲ありますが、1928年2月14日①②、1928年12月21日③~⑥、1928年12月28日⑦~⑬の3回の録音で当時ミシシッピ州アバロンに住んでいた彼にメンフィスにきてもらって録音していたのが、ホームシックと大都会のカルチャーショックで行き来しての録音となったとのこと。有名になったのはずっと後の1963年で農民をやりながらギターを弾いていた彼を発見し、ニューポート・フォーク・フェスティバルへ出演してもらったのが、きっかけとのこと。都会の水が合わなかったのか再発見の3年後の1966年11月に心臓発作で亡くなってしまっています。
もう一人の巨匠は、リチャード・ラビット・ブラウン「Richard "Rabbit" Brown」
当然 "Rabbit"はギミックです。ダミ声までいかないが少ししゃがれた歌声のニューオリンズのストリートミュージシャンで、生涯で6曲しか録音されていないうちの5曲がこのアルバムに入っていて、James Alley Blues は、ボブ・ディランがカバーしています。楽曲は全体的に現代のブルースに近づいていますので、ミシシッピ・ジョンハートよりはるかに理解しやすいと思います。I’m Not Jealous のギターの低音源をバチバチ音を鳴らす スナッピングは印象的でした。Sinking Of The Titanic は、あのタイタニック号の沈没を歌っています。勇ましい歌い口で、歌で物語を語るような感じです。
最後の巨匠、ハンボーン・ウィリー・ニューバーン「Hambone Willie Newbern」は、このアルバムで初めて知りましたが、酒のみの雰囲気が漂ったいい声してます。テネシー州ブラウンスヴィルの住人で、スリーピー・ジョン・エステスは彼からギターを教わったと言われていますが、詳しいことは余り知られていません。ギターワークは一番現代ブルースに近いロバート・ジョンソンタイプで「Roll and Tumble Blues」は「Rollin' and Tumblin'」の原曲とどこかに書いてありました。確かにそのものだと思います。ロバートジョンソンもクセが強めのソングスターですから、はるかにニューバーンの方が聴きやすいです。1929年にアトランタでたった6曲を残したものが全てここに収録されています。
この手のソングスターのオムニバスは、勉強で購入していますが、このアルバムは聴きやすい曲、理解しやすい曲が収められており、この手の音楽を聴き始めようと思っている人には入門として良いと思います。玄人向けのものは修行のようなアルバムも多いかと思います🎶
Mississippi John Hurt
1. Frankie
2. Nobody's Dirty Business
3. Ain't No Tellin'
4. Louis Collins
5. Avalon Blues
6. Big Leg Blues
7. Stack O'Lee Blues
8. Candy Man Blues
9. Got The Blues Can't Be Satisfied
10. Blessed Be The Name
11. Praying On the Old Camp Ground
12. Blue Harvest Blues
13. Spike Driver Blues
Richard "Rabbit" Brown
14. James Alley Blues
15. Never Let The Same Bee Sting You Twice
16. I'm Not Jealous
17. Mystery Of The Dunbar's Child
18. Sinking Of The Titanic
Hambone Willie Newbern
19. She Could Toodle-Oo
20. Nobody Knows (What The Good Deacon Does)
21. Shelby County Workhouse Blues
22. Way Down In Arkansas
23. Hambone Willie's Dreamy-Eyed Woman's Blues
24. Roll And Tumble Blues
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