2022年12月11日日曜日

Keith Jarrett, Gary Peacock & Jack DeJohnette / Standards, Vol. 1

 

 キース・ジャレットも最近聴き始めたピアニストで、難解というイメージが付きまとっていたせいか今まで敷居が高かった人です。オジサンの世代的には有名な人なので知ってはいましたし、行きつけの「おでんバー」でもマスターが好きなので比較的よくかかっていたので段々と耳馴れしてきてやっと自分で購入した一枚目がこのアルバムとなりました。
 初のリーダーアルバムの購入とはなりましたが、Keith Jarrett の参加している作品はマイルスぐらいでした。Miles Davis / Live EvilMiles Davis / Get Up With It


 イメージとしては長尺のソロを唸りながら演奏する印象だったので、このアルバムは正直正統な演奏だったのが意外でした。この作品はトリオでの演奏としてのデビュー作で、その出発点と言うことです。実際1981年までは、キースは全くと言っても良いほどスタンダードを弾かないピアニストで1982年のソロ・コンサートでアンコールにOver The Raibow, All The Things You Are などのスタンダードを演奏したのが反響を呼び翌1983年1月に、このアルバムのレコーディングに入ったとのこと。
 選曲はスタンダードながらも繊細なタッチでありながらドラマチックなピアノにドラムのジャックのリズムに乗せ、ベースのゲーリーも濃密に絡み合う。激しく高揚させてくれたり音は鳴っているのに静かな静寂ような気持にさせてくれたりとこれも買ってよかった。
 Meaning Of The Blues ではスタンダードではあるものの、お互いの音を確かめるような感じで、そっと演奏が始まります。All The Things You Are は、ジャズマンならお馴染みの名曲で、コンサートでもアンコールで演目には入っていたとのことで、やはり堂に入ったもの美しいテーマ部分は導入部でその後は激しく目まぐるしいソロに入ります。唸り声も絶好調でノリにのった力強い曲になっていますが、曲のラストでいきなり失速してくずしたテーマに戻るところがまた良い。It Never Entered My Mind は美しいバラードで1940年に初演のブロードウェイ・ミュージカル Higher And Higher の中の失恋ソングで原曲はミディアム・テンポだったのがフランク・シナトラが歌って以降バラードとして定着した曲だそうです。The Masquerade Is Over については、落ち着いた調和のとれたスタンダードらしい演奏で安心感がありますが気持ちよさそうに唸るキースが絶好調だなあ。God Bless The Child はエリックドルフィーで有名な曲で、元々の曲は非常に辛気臭いブルース調の曲なのですが、ダンサブルなソウルのような曲調にしていて、ドラムも8ビートですか?へえこんなこともするのかと15分の演奏も気にならない。新鮮でした。なるほど、これも名盤と呼ばれているのがわかります🎵

piano : Keith Jarrett
double bass : Gary Peacock
drums : Jack DeJohnette

producer : Manfred Eicher

recorded January 1983 at Power Station, New York City.

1. Meaning Of The Blues
2. All The Things You Are
3. It Never Entered My Mind
4. The Masquerade Is Over
5. God Bless The Child





  

2022年12月10日土曜日

Chet Baker / Sings


 私の友人もトランぺッターだけど歌が好き(なおかつ上手い)歌うトランぺッターと言えばガレスピが真っ先に思い当たり、ジャンルは違いますがスペクトラムの新田一郎氏もハイトーンなボーカルが素敵でした。トロンボーンやサックスではあまり思い当たらずトランぺッターに歌う人が多いように感じますね。なぜかと考えると私の友人を思いだします。彼は楽譜も読めますが「歌えなければ吹けるわけがない」を信条にメロディーやアドリブを口ずさみ、その音を吹きます。また彼のバンマスの練習の時には楽器を置いて、口ずさむことから練習は始まりました。ここら辺がトランぺッターとボーカルに何か関係性があるのかなとも思っています。トランペット吹けないんで私にはその理屈はわかりませんが。


 いつもの「おでんバー」に行くと珍しくほぼ満席でビックリ。基本オジサン多めなのでですが本日は女性客もちらほらといらっしゃいます。最初にマスターが「これは誰でしょう?」とかけたのは日野照正。ほぼ今まで聴いていないんですが、前回来た時に1枚聴いてあれカッコイイなと思っていたのでマスターのニヤニヤ顔と併せて直ぐに正解できました。その後もオジサンたちはあれやこれやと好きなものをかけていたのですが女性にも何か好きなものをかけなよ。と薦めると「これ」でした。甘いささやきボーカルは私ずっと聴いていると飽きるんですが、他の女子たちにも受けは良く女性はこれが良いようです。

 さてチェット・ベイカーの代表作として多くの人が真っ先にあげるのが本作。基本スタンダードを力を入れずに静かに歌っています。ジャズ・ボーカリストは基本メロディーをフェイクするのが常ですがチェットはメロディーをストレートにシンプルに歌い上げています。トランペットも派手に吹きまくることがなくアンニュイといった表現も似合います。
 こんなに地味なのに名作と呼ばれ、CDショップにはほぼ必ず置いてあるなんて音楽性とセールスで見てジャズ史の中でもこれは特殊なアルバムなのではないかと思っていましたが、先にも書いたように女性にはこれが好みの方も多いようなので私の偏見ですか。
 トランぺット・メインのジャズがも最近よく聞いているんですが熱めの演奏が好きで経年とともに加熱してファンク系に晩年移行したりする人がどちらかと言えば好みです。ほぼチェット・ベイカーもこれしか聞いていないため晩年のアルバムも少し聞いてみたい気はしています。 1960年代はマイルスも凌ぐ人気があり、1960年ドラッグにはまって人生転落しガレスピによって1973年に復活。1988年にはオランダのホテルから転落死とこの人も壮絶人生。

※最近気になっている Celesta(チェレスタ) という楽器がこのアルバムでも使われています。基本ピアノなんですが音域は、ピアノの中央ハから上へ4オクターブが従来の標準で高音を担当する楽器とのこと。

vocals, trumpet : Chet Baker
piano : Russ Freeman
celesta : Russ Freeman (1 to 6)
bass : Carson Smith (1, 7-12) , James Bond (2-6)
drums : Bob Neel (1, 7-12) , Lawrence Marable (3, 4), Peter Littman (2-5)

1. That Old Feeling
2. It's Always You
3. Like Someone In Love
4. My Ideal
5. I've Never Been In Love Before
6. My Buddy
7. But Not For Me
8. Time After Time
9. I Get Along Without You Very Well
10. My Funny Valentine
11. There Will Never Be Another You
12. The Thrill Is Gone
13. I Fall In Love Too Easily
14. Look For The Silver Lining




  

2022年12月9日金曜日

Tommy Flanagan / Eclypso

 

 エレピを購入して練習を始めたからかピアニストに着目した音源の購入が多くなってきているような気がします。昔はギタリストにしか興味が無かったんですが人は変わるもんです。さて今回は Tommy Flanagan を購入です。リーダー作品としては OverseasConfirmationLet's を所有しており、参加作品は、Thad Jones / Motor City SceneThe Incredible Jazz Guitar Of Wes MontgomeryKenny Burrell& John ColtraneKenny Burrell / Jazzmen DetroitCurtis Fuller / South American Cookin'John Coltrane / Giant StepsKenny Burrell With Coleman Hawkins / Bluesy Burrell などがあり、私ん所有する盤ではデトロイトつながりの作品が多いようです。


 初のリーダーアルバム Overseas よりも本作ではサラッとスインギーなタッチでリラックスした演奏でわかりやすい、帯の諸評としては「1970年代を代表するピアノ・トリオ名盤にしてトミー・フラナガン自身の代表作」「!ジョージ・ムラーツ~エルヴィン・ジョーンズとのトリオはどこまでもエレガントでスウィンギー!これぞ究極のモダン・ピアノ・トリオ・サウンド!」とあります。未だ聴いていない人に売るための文句ですから当然大袈裟なんですが、このアルバムは確かに!と思わせてくれます。Overseas からの変化としてはベースが Wilbur Little から George Mraz に交代となっています。、
 軽快な Oleo から始まりますが、このアルバムでは「キーをCに上げている」との情報があったので調べてみたら原曲のキーはB♭でした。なるほど半音上げで少し雰囲気が変わるんですね。フラナガンのピアノは気持ち良い。Denzil's best はピアノはややリラックスでベースは滑らか、三人の抜群のコンビネーションですね。A Blue Time はミディアム・スローでブルージー。Relaxin' At Camerillo は、カマリロ州立病院に入院したチャーリー・パーカー が47年に Dial セッションで録音した曲でテーマは短めで軽やかなピアノソロに直ぐに移行してからのベースソロ、ドラムソロがスムーズでカッコ良い。Cup Bearers は Tom McIntosh の作曲で63年にガレスピ録音した曲で、ピアノとベースがシンクロしている様が気持ち良い。Eclypso は実は Overseas でも収録されているが、本アルバムではタイトルになった曲で長尺になり重厚感のある曲となっている。Confirmation はこれもチャーリーパーカーの代表作のひとつ。1946年で録音したが、その3ヵ月後、麻薬常用と過度の飲酒のため6ヵ月間にわたってカマリロ病院で療養し、3曲目の Relaxin' At Camerillo が作成されたという関係性のようです。
 これも当たりの良いアルバムですねえ。

piano : Tommy Flanagan 
bass : George Mraz
drums : Elvin Jones

producer : Horst Weber, Matthias Winckelmann

Sound Ideas Studios, NYC, February 4, 1977

1. Oleo 
2. Denzil's Best 
3. A Blue Time 
4. Relaxin' At Camerillo 
5. Cup Bearers 
6. Eclypso 
7. Confirmation

▶ Oleo


▶ Eclypso


  

2022年12月4日日曜日

The Miles Davis Sextet / Jazz At The Plaza VOL1


 おそらく私がマイルスの音源を入手した最初の盤がこれです。大学時代にジャズ研に属していたのでそれなりにマイルスの話題は出るのですが全く聴いたことも無いけれどマイルスを聴いたことが無いと言うのも気恥ずかしかったため、話題が出れば静かにしていたので何か聞いてみようかと購入したのが確かこれです。ギターを担当していた私はギターレスの音源を入手することは皆無であったので、このようなモロジャズには、ほぼ接していなかったこともあり衝撃的でした。なにしろギターレスなので、ここに直ぐにコピーしようと思うようなフレーズが無かったんですから。今当時の私の音源選びの基準はそこらへんだったんですから今のようなジャズ好きになるとは思ってもいませんでした。


 さて Kind of Blue カインド・オブ・ブルーのメンバーで録音された1958年のニューヨーク、プラザホテルでCBSの主催するパーティのライブ録音です。リリースされたのが1973年というから15年間眠っていた録音で、第1集はこのセクステット。第2集はデュークエリントン楽団です。録音されたのは9月9日で、ビリー・ホリデイも出演していた贅沢なライブでこの強力なメンバーでの演奏は凄まじく何度聞いても素晴らしい。このメンバーでは最高の出来ではないでしょうか。
 1曲目タイトルは、Jazz At The Plaza ですが中身は Straight, No Chaser でキャノンボールのテナー → アルト でサックスのソロ展開は強力で見事。My Funny Valentine ではマイルスのミュートでのバラードプレイが徐々に迫ってくるかのような迫力あるプレイ。If I Were a Bell はマイルスの当時の主要レパートリーの一つでミュージカル「野郎共と女たち」の1曲でもあります。長尺のマイルスのソロで盛り上がり、コルトレーンのソロで盛り上がり過ぎたのかマイクにぶつかる音もあり、マイルスは「Oleo」のイントロが詰まってしまったりしています。録音状態の悪さやこういったハプニングでお蔵入りになっていたのでしょうか? そんなに聞き込んだ覚えはないのですが、このアルバムは覚えてしまうほど聞いています。何かわくわくしてしまう演奏ですね

trumpet : Miles Davis
piano : Bill Evans
bass : Paul Chambers
drums : Jimmy Cobb
tenor sax : John Coltrane
alto sax : Julian "Cannonball" Adderley

1. Jazz At The Plaza (Straight, No Chaser)
2. My Funny Valentine
3. If I Were a Bell
4. Oleo



▶ Oleo


  

2022年12月3日土曜日

向井滋春 / Mukai On The Wing Live Recording

 


 学生時代にトロンボーン・フュージョンバリバリの向井滋春のコピーバンドを組んでいたことは何度か、このブログで書いていると思いますがバンドを組んでいたことがトロンボーンという楽器の出す音、音使いの魅力を、この時に刷り込まれたんだなあと改めてこのアルバムを聴いて思います。
 トロンボーンを吹いたことは無いですが、指使いではない楽器の特性を思うとキレの良いトロンボーンは聴いていて感嘆するものがあります。
 このアルバムは、行きつけのおでんバーで私以外に誰も来なかったときにマスターと向井滋春を聴いていて、やはり良いなあとお借りした一枚であります。


 このアルバムは1991年1月24日25日に行われた江古田の Buddy でのライブの収録です。録音状態が良く音像も奥行きがあるのだがライナーノーツによると、この会場は広くは無かったらしい。リーダー作としては久しぶり録音のようですが気負いのある録音というよりは、ブラジル音楽をベースにした息の合った演奏は聴いていて安心感があります。アルバム全体としては曲調とは裏腹にノッペリしてしまっている印象がありますが、それほど広くない会場でのライブだったことから間近で見る演奏に向井さんやメンバーの妙技を見れて観客は十分楽しめるめるものだったものと想像されます。
 オープニングは、トロンボーンの巨匠JJジョンソンの Lament 向井さんのテーマ・ソロとリーダー・メインで聴かせてくれます。トロンボーンでこの細かな音階の表現はさすがです。 Berlin は向井さんのオリジナルで1980年ベルリンジャズフェスに出演した際にベルリンの壁崩壊の喜びを込めて描いた曲。 Tamagawa Blues ( タマガワ・ブルース ) も向井さんのオリジナルなのはネーミングからわかります。 Forever も向井さんのオリジナルで本気の美しいバラード。Vera Cruz はブラジルの黒人音楽家ミルトン・ナシメントの作品でいかにも向井さんの好みのブラジルテイストのジャズです。 Dindi は、アントニオ・カルロス・ジョビンの作品で美しいイントロとうっとりとさせるトロンボーンのロングトーンがマッチしています。そして誰もが知るジャズ・スタンダード All The Things You Are はブラス部隊がイキイキと軽々とした演奏でここら辺の曲になるとまさに円熟味が感じられます。Purple Field はブラジルテイストの向井オリジナルですがオリエンタルな音使いも魅力的。. Wedding はアフリカの黒人ピアニスト、ダラー・ブランドの作品。アフリカよりもポップなメロディー・ラインが印象的。ラストは、日本人大好き Recado Bossa Nova です。定番ですよね。このグルングルンと開店するように軽やかな展開は大好きなパターンです。
 今回も和ジャズの良さを感じるアルバムでした。演奏的にはえっこれが日本人?というレベルの高さですけど計算されたような外しのない構成は和ジャズならではの楽しみですね。こうゆうのはオジサンになってくると演歌の良さがわかってくるみたいなものと共通する間隔なんでしょうか。

trombone : 向井滋春 Shigeharu Mukai
bass : 古野光昭 Mitsuaki Furuno
drums : 村上寛 Hiroshi Murakami
piano : 福田重男 Shigeo Fukuda
tenor sax : 山口真文 Mabumi Yamaguchi

producer : Genroh Hara

recorded January 24 & 25 1991 @ Buddy, Ekoda Tokyo.

1. Lament
2. Berlin
3. Tamagawa Blues ( タマガワ・ブルース )
4. Forever
5. Vera Cruz
6. Dindi
7. All The Things You Are
8. Purple Field
9. Wedding
10.Recado Bossa Nova





  

2022年12月2日金曜日

Bill Withers / Live At Carnegie Hall


 1970年代に活躍した男性ニューソウル系と言えば、Donny Hathaway (1945 - 1979) Bill Withers(1938 - 2020)Curtis Lee Mayfield(1942 - 1999)Marvin Gaye (1939 - 1984) などを挙げる人が多いと思いますが、私の音楽系リスナー仲間では Bill Withers は馴染みが薄い人のようで、行きつけの音楽好きが良く集まる「おでんバー」ではビル・ウィザーズをかけても懐かしんでくれる人はあまりいません。私よりも10歳年上のマスターなんかは確実に世代だと思うのですが、Use Me をかけても無反応で、ソウル・ファン以外の日本ではマイナーな存在かもしれません。でも私にとってはカーティス、マービンゲイ は別格として、Donny Hathaway、Bill Withers は双璧をなすヒーローです。


 このアルバムは1972年10月にアメリカのカーネギーホールでのライブ。ソロ2作をリリース後の唯一のライヴ盤です。ビル・ウィザーズにとって、初めての全国ツアーのせいか満員のファンを前にスタート直後は、恥ずかしがったような話し方だったのが、徐々にこなれ最後は新曲「Harlem」では大合唱での大団円となります。USアルバム・チャート第63位、US R&Bアルバム・チャート第6位の売り上げとなったヒット作です。
 Donny Hathaway、Bill Withers に共通するのは、ソウルとともに感じるフォーキーな味わい。私が特に好きなのは1曲目の様々なアーチストにカバーされている Use Me で単純なコードと歌なのにシャウトもしてないのに何故こんなに熱いのか名曲です。Ain't No Sunshine は、何故こんなに寂しいメロディーなのか? Lean On Me は何故こんなに心を揺さぶるのか?シンガーとしても素晴らしいが一挙にソングライターとしても素晴らしい人でこれも文句なしに素晴らしいライブ!

vocals guitar piano: Bill Withers
guitar : Benorce Blackmon
bass : Melvin Dunlap
piano, string & horn : Ray Jackson
drums : James Gadson
percussion : Bobbye Hall

1. Use Me
2. Friend of Mine
3. Ain't No Sunshine
4. Grandmas's Hands
5. World Keeps Going Around
6. Let Me in Your Life
7. Better Off Dead
8. For My Friend
9. I Can't Write Left Handed
10. Lean On Me
11. Lonely Town Lonely Street
12. Hope She'll Be Happier
13. Let Us Love
14. Harlem/Cold Baloney

▶ Use Me





  

2022年11月27日日曜日

Horace Silver Quintet / The Styungs Of Silver

 

 アート・ブレイキーを入門編としてファンキー・ジャズを好んで聴くようになってから、やはりこの人は欠かせないですが、私自身ソロ作品は未だそれほど聴きこんでいる訳では無く少しづつ集めている状態で、もっか3枚。これで4枚目です。6 Pieces Of Silver、 The Horace Silver Quintet / Horace-ScopeThe Horace Silver Quintet / Song for My Father で、最初に購入したのは Song for My Father でした。
 1928年生まれで作曲でも「ソング・フォー・マイ・ファーザー」「ザ・プリーチャー」「ニカの夢」「シスター・セイディ」など数多くのお馴染みの作品を残しています。家系はポルトガル系で父親からの影響で、西アフリカのカーボベルデ共和国の民謡を聴いて育ったとのこと。


 所謂名盤と言われる 6 Pieces Of Silver の次作として録音された作品で Blue Note での5作品目です。初録音は1956年 New Faces New Sounds (Introducing the Horace Silver Trio) ですが、後にアートブレイキーのリーダー作として曲を追加して Horace Silver Trio and Art Blakey-Sabu として発売されているので私は5作目と理解しています。
 ハード・バップ全盛期の録音らしくファンキーさとノリの良さが楽しく聴きやすいサウンドです。前作 trumpet が Donald Byrd だったのが今作は Art Farmer となっていて、tenor Sax Hank Mobley、drums Louis Hayes は継続です。アドリブ云々もあるのだろうが、何よりサウンドのまとまり感を感じる名演です。余裕を感じながらも若々しさもあり、選曲も良く統一感のある飽きのこないアルバムです。
 オープニングは No Smokin' で、ホーンとピアノの掛け合いとスムーズかつスピーディななリズム隊の流れが気持ち良い。The Back Beat は、2拍、4拍が強調されるビートを強調するリズム主体の曲で、曲の構成は16小節×2、8小節ブリッジ、8小節エンディングでホレスシルバーでは珍しい構成とのことだが違和感は全くない。Soulville はオーソドックスなマイナー・ブルースで、ライナー・ノーツに書いてあるホレス談では「メロディーはずっと2拍子でソロから4拍子」とあります。そこらへんが古臭くもありカッコよくもあります。Home Cookin' もモダンな雰囲気があり泥臭くもあるが美しい曲です。ホーンがイントロでテーマをこなしソロはアートとハンクがやり皆が戻ってきてワイワイとテーマに戻り温かでチームワークの良さが感じられます。Metamorphosis は15+15+16+15小節のAABA形式の変則だが違和感は全く感じさせなくてすんなりと耳に入ってくる名演でスピーディーで流れるようなスムーズな進行。ここまでは全てホレス・シルバーの作曲で最後の締めはスタンダードの My One And Only Love で静かなサロンで聴いているかのようなゆったりとした温かな演奏で締めくくられている。これがまた良い出来です。
 ホレス・シルバーのピアノは派手ではないけど自然な感じが良いですしこのアルバムは構成のセンスの良さが感じられお薦めです。

piano : Horace Silver
bass : Teddy Kotick
drums : Louis Hayes
tenor sax : Hank Mobley
trumpet : Art Farmer

producer : Alfred Lion

recorded on May 8, 1957 at the Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey
originally issued as Blue Note BLP 1562 and BST 81562

1. No Smokin'
2. The Back Beat
3. Soulville
4. Home Cookin'
5. Metamorphosis
6. My One And Only Love





  

2022年11月25日金曜日

向井滋春 / Hot Session

 


 行きつけのおでんバーに行って飲んでたんだけど誰も来ない。マスターと二人しか居ないのでこんな時は一般的ではない趣向の強いヤツをじっくり選んで聴くことが多いのです。このアルバムもマスターが奥からCDの箱を持ってきてゴソゴソとやってからフンフンと言いながらかけてくれたました。おでんバーでかけるのは洋ものが多いのです日本人ではマスターが好きな西荻窪にライヴハウス「アケタの店」のオーナーピアニストの明田川荘之などが良くかかっています。向井滋春を聞くのは久しぶりだったかもしれません。私も日本人アーチストはあまり知らないのですが向井滋春は大学の時にフュージョン時代の曲をコピーバンドでやっていたりしたんで、このトロンボーンの響きは、しっかり頭に焼き付いていて久しぶりに聴きながら懐かしい響きが心地よかったので借りてきてしまいました。


 さて和ジャズのトロンボーンの第一人者向井滋春は1949年1月21日、名古屋生まれ。高校入学時に吹奏楽でトロンボーンを始め同志社大学でビッグバンド、コンボで腕を磨き、1970年にヤマハLMコンテスト入賞、'72年川崎僚バンド、大友義雄バンド、に参加しながら自己のバンドも結成。'79年にニューヨークに渡り、帰国後「モーニングフライト」を結成し「オリッサ」と改変、「渡辺香津美キリンバンド」「松岡直也ウイシング」にも参加されています。(ここら辺は私のツボです)その後ブラジリアン音楽のミュージシャンと共演したしながらエルビン・ジョーンズとのツアーを機に再びストレート・ジャズの世界に帰ってきて'86年に板橋文夫、古野光昭、古沢良治郎とこの「ホットセッション」を結成したわけです。
 アルバムの印象は流行の音楽にも、その演奏を提供し続けているメンメンが明るく洒落っ気たっぷりに流行に媚びずに正々堂々と明るくおおらかにジャズしていることですね。洋ものには無い雰囲気が溢れていて日本人にはやはり共通の心があるんだなと感心してしまいます。また録音はかなに良くて、向井さんのトロンボーンの音色の変化が鮮やかに捉えられています。
 Expression は、ベース古野の作品でストレートなジャズだけど粋なメロディーとテンポが嬉しい。決して和じゃないけど和を感じるんですよね。わかるかな~。Quiet Eyes は向井さんの作曲でトロンボーン・メインのバラードです。ロング・トーンが向井さん独特のビブラートとトリルが楽しめる構造ですね。Ojisan Korekara はピアノ板橋さんの作曲で、こうゆうユニゾンと決めの曲はジャズに限らず日本のこの時代のフュージョン系のバンドではよくあるパターンかと思われ、そういった意味で和を感じるかなあ。ああ楽しい。雨あがりの朝 はドラム古澤さんの楽曲で、幻想的な曲になっています。テーマのメロディーはどっかで聴いたことありますが思い出せない。童謡か?唱歌か?ですかね。I'm Getting Sentimental Over You は1934年に Tommy Dorsey and His Orchestra というビッグバンドで初演奏
され、 Tommy Dorsey's の死後にフランク・シナトラが残されたビッグバンドと共演して有名になった曲とのこと。ですが、これはドラムと向井さんの二人のバトル曲になっています。お好きなんですね。ヤンヤ、ヤンヤ。Limehouse Blues も昔のブルース・スタンダードで安定のリラックスナンバーです。ノリとしては Gadd Gang に近いようなアップテンポのファンク・ブルース仕立てで余裕の大人を感じます。Lady's Blues はソウルバラード系のジャズ・ブルース・スタンダード でこれも定番曲なのでしょうか。ひたすら余裕の色気のある演奏です。Half Moon でピアノ板橋さんの曲となりますが、ここでこのバラードは泣かせます。Landsat View で向井さんのオリジナルで、ジャズ色の中に向井フュージョン的なノリの現代的なアップテンポナンバーです。ジャズなんだけど違うんですよね。楽しかったアルバムもこれで終わり Drunk On The Moon です。スタンダードで締めるのか。最後にこれ聴いてもう一杯飲んでいってねって感じです。楽しい和ジャズの世界でした。おでんバーのマスターありがとうございます。

向井滋春 Trombone
板橋文夫 Piano
古野光昭 Bass
古澤良治郎 Drums

録音:1989年7月3~12日

オリジナル・リリース:1989/10/01 CY-3992

1. Expression
2. Quiet Eyes
3. Ojisan Korekara
4. 雨あがりの朝
5. I'm Getting Sentimental Over You
6. Limehouse Blues
7. Lady's Blues
8. Half Moon
9. Landsat View
10. Drunk On The Moon






  

2022年11月20日日曜日

Thelonious Monk / Monk

 

 1962年 Riverside から Columbia へ移籍し、レコーディングには予算と日程が十分にかけられるようになったので、このような贅沢な録音期間がとれるようになり、このアルバムは 1964年3月~10月にかけての Columbia のスタジオで録音されたアルバムだがセッションはたったの3回であったらしい。
 録音の1964年はモンクの最もノリにのっていて忙しかった時期で、1964年1月~3月に It's Monk's Time を収録、その後すぐに3月からレコーディングしたのがこのアルバムという訳です。


 数年前まではモンクはあまり聴かずに知らなかったクセにこんなことを言うのはおこがましい気がしますが、この時代のモンクは金と時間と時間もあるのでかなり安定した演奏で、モンクのぶつけるような音階と不安定さが好きな私にとってこのアルバムは快作であることは理解できるのですが若干物足りなくも感じます。
 さて、このアルバムの中身です。スタンダードとオリジナルで構成されています。1曲目はガーシュインの Liza でダンサブルなナンバーですが小気味よいリズムに合わせてモンクの違和感のあるコード進行がマッチしていてポップさもあるかっこいい仕上がりです。2曲目 April In Paris はエリントンですか。最初はソロでしっとりと聴かせるこの曲は Himself なんかでも演奏されていてモンクのお気に入りの曲とのこと。調べていたら Genius Of Modern Music の Vol 1にも収録されているとのことなので未だ私のコレクションにはいいていないのでどっかで手に入れます。そして3曲目は Children's Song は童謡で日本ではチューリップですね。こんな遊びを入れてくるところに余裕を感じます。続く I Love You もスタンダードで1928年のルディ・バレーによるヒット曲です。ラグタイム風な曲なのでホンキートンクなピアノで弾けばもともとモンクっぽくなってしまうのでノスタルジックなメロディーはモンク流の処理は浅めです。Just You, Just Me もスタンダードで1929年にジェシー・グリアによって作曲された曲で、これは意図的なモンク・コードががっちりと挿入されていて、ここまでやっていると気持ち良いですね。Live At The It ClubThe UniqueMonk's Mood などにも収録のお馴染みの曲。Pannonica は Monk's Mood Criss-Cross Alone In San Francisco などにも収録さていますが、Briliant Corners が初演とのこと。時代とメンバーによる演奏の変化は後でじっくり聴きこんでみます。Teo は Live At The It Club にも収録されていますが、プロデューサーのテオ・マセロ Teo Macero に捧げられた曲で、どんな人物だったかはよく知りませんが曲イメージからするとノシノシとした大男のような感じがします。
 全体的には陽のモンクがここにいて、オリジナルのライナーノーツは、ビル・エバンスが書いていて「このアルバムを聴く時、絶対に真似のできないパフォーマンスだということがあなたにも分かるでしょう。その比類なき高貴な美しさに圧倒される」と絶賛しているようです。


piano : Thelonious Monk
bass : Larry Gales
drums : Ben Riley
tenor sax : Charlie Rouse

producer : Teo Macero
recorded at Columbia Recording Studios
originally released in 1965.

1. Liza (All The Clouds'll Roll Away)
2. April In Paris (Take 6)
3. Children's Song (That Old Man)
4. I Love You (Sweetheart Of All My Dreams)
5. Just You, Just Me
6. Pannonica (Re-take 2)
7. Teo
【Bonus Tracks】
8. April In Paris (Take 1)
9. Pannonica (Take 2)
10. Medley: Just You, Just Me/Liza (All The Clouds'll Roll Away)