2023年4月14日金曜日

The Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomery


 Wes Montgomery (ウェス・モンゴメリー) が Riverside に残した1960年のスタジオ録音の Full House と並ぶ歴史的名作。「Incredible」 とは「とんでもない」の意で、本アルバムにはオクターブ奏法で複雑なフレーズもバリバリと弾きまくる技が展開されています。
 おそらくギターを弾かない人には理解しずらいと思うんですが、ギターでオクターブの音を出すということは、2本の弦を鳴らさなければならず、2本の弦にオクターブは隣接していないので実質3本の弦を使うことになります。そうなると使用できるポジションも限られてくるので素早く上下させないと弾けませんので、素早く音が飛ぶフレーズでの上下運動はかなり面倒なことになります。オクターブの音は単音と比べて聴く人に強く耳に残る音になります。普通の人は弾きやすいフレーズを選んだりすると思いますが、ウェスは弾きやすい弾きにくいは関係なくオクターブで弾きまくっています。ウェスのこのオクターブ奏法をどうして始めたのか? もともとオクターブで演奏していたわけではなく1950年代中盤に地元インディアナ・ポリスで、ジョニー・ザ・クライング・トンプソンというブルースマンのバンドに参加していたところ彼のプレイのフレーズを全て覚えてしまいユニゾン、ハーモニーを付けて演奏していて、これが評判が良くオクターブの上下のユニゾンでプレイするようになる。ある日、ジョニーの弦が演奏中に切れてしまうアクシデントがあり咄嗟にオクターブでのプレイを始めたのが始まりとのこと。咄嗟ということですが、それなりに練習していなけりゃできないことでしょうけどね。
 さらに有名な奏法としてはウェスはピックを使わずに右手の親指のみで弦をはじきます。1948年~1950年までLionel Hampton楽団に所属したのですが、ウェスは家族と暮らしたいために退団し故郷のインディアナポリスに戻ります。奥さんと7人の子供たちを養うために朝の7時~15時まで工場で働き、夜9時~深夜2時ごろまでジャズ・クラブで演奏し家族が寝ている夜しか練習できなかったので、こっそりと音を小さくする必要があったために親指でそっと弾くようになったとのこと。
 多くのジャズを学ぶギタリスト達にお手本とされているギタリストではありますが、フレーズのコピーをすることはできても、本質的にその特徴的な奏法や音をマネすることは非常に困難なことであるとも言える過去現在とも唯一無二のギタリストであります。


 本作はそのウェスの作品の中でも重要作にあたると思われます。冒頭の Airegin からシングル・ノートの素早いフレーズとオクターブを取り混ぜた演奏です。最も技巧的な曲で、「Incredible」「とんでもない」と言うアルバム名からも、これを印象付けたいということで、この曲を頭に持ってきたのかと思われます。また名盤請負人といわれる Tommy Flanagan のピアノ・プレイもこの曲でのプレイが一番激しいアプローを魅せます。Tommy Flanagan は一方では Polka Dots And Moonbeams では、ゆったりとしたプレイと響きの素晴らしいを見せてくれます。Four On Sixはウェス自作の曲でテーマ部分や展開もギタリスト向けの今なお多くの演奏家に演奏され続けている名曲であります。ギターだけでなく Percy Heath のひたすらテンポよくウォーキングし続けるベースはソロ部分でもそのまま続けられ、こんなベースソロもカッコよいではありませんか、と言いたいです。ドラムの Albert "Tootie" Heath は、Percy Heath の兄弟であるとのこと。メンバーも素晴らしく息があっており、かつウェスの特質が盛り込まれ魅力を堪能できる快作です🎵

guitar : Wes Montgomery
piano : Tommy Flanagan
bass : Percy Heath
drums : Albert "Tootie" Heath

Producer : Orrin Keepnews
Recorded in New York, January 26 & 28, 1960.

1. Airegin
2. D-Natural Blues
3. Polka Dots And Moonbeams
4. Four On Six
5. West Coast Blues
6. In Your Own Sweet Way
7. Mister Walker
8. Gone With The Wind

▶ Airegin




  

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