2024年6月15日土曜日

The Red Garland Trio / A Garland Of Red

 

 マイルスやコルトレーンのアルバムでよく聞いているものの、Red Garland はリーダー作は聴き始めたのは割と最近です。1923年5月13日 生まれ 1984年4月23日 で亡くなったピアニストで、ピアノを始めたのは兵役中の18歳の時、デビュー前にはプロ・ボクサーで35試合を戦っているとのことで、なかなか個性的な遍歴です。
 1946年にニューヨークに移りビリー・エクスタインのビッグ・バンドに参加し、チャーリー・パーカー、マイルス・デイビス、ファッツ・ナヴァロと共演する経験を積んでいます。1955年から1958年にかけてはマイル・デイビス・クインテットに参加しますが、デイビスはステージを離れて、トリオの形でガーランドを主役にするのが定番だったらしい。
 このアルバムはリーダー作としてデビュー作の1956年の録音。スタンダード集ですが洒落たタッチで、ブルージー。人気が出始めた頃の快作。この後の12月にドラムが Art Taylor に変わり、2枚目の Groovy を録音しています。売れっ子は録音を量産します。


 基本的にシンプルで曲自体をアドリブ部分などもすぐに口ずさめるアルバムですね。レビューしていきます。 A Foggy Day スタンダードで Gershwin 作品です。ころころと軽快にメロディーをわかりやすく解説してくれるような演奏です。Paul Chambers のソロも触発されるように早口でしゃべりかけてくるような感じで余裕も感じます。My Romance は、Lorenz Hart, Richard Rodgers のスタンダード。これも曲を演奏しながら、きっちりと解説してくれるのはガーランド。テーマが良いので飽きがこないですね。ピアノに聞きほれてたら曲の最後でベースは弓弾きであったことを確認。What Is This Thing Called Love?  は Cole Porter の作曲です。メンバー三人の呼吸があっていて良いです。アルコ弾きのベースソロは、好きでは無いものも多いですが、この曲の Paul Chambers のメロディーの作り方は冴えていると思います。またドラムの Art Taylor のソロもメリハリ良く全体的にさりげない自己主張がまた良いバランス。Makin' Whoopee  は Walter Donaldson, Gus Kahn のスタンダード。ブルージーでガーランドのピアノも今までよりかしこまっていないところが、この曲の魅力でしょうか。September in the Rain は Al Dubin, Harry Warren のスタンダード。この曲も悪くはないが Paul Chambers のアルコ弾きソロはあんまり趣味ではないかな。 Little Girl Blue は Hart, Rodgers のバラードです。ブロック・コード弾きで演奏される序盤は単音メロディのコロコロとは違って曲のイメージが、しっかり浮かび上がり、ソロとの対比が良いです。Constellation  は Charlie Parker の曲で、I Got Rhythm コード進行に基づいた曲です。おそらくライブでも最も受ける曲の一つでしょうから気合十分の高速進行です。アルバムに1曲あっても良い変化かなって感じですが、このバンドではこれぐらいでちょうど良いかなって感じです。Blue Red は Red Garland のオリジナル。ベースソロからの幕開け。そしてドラムのシンバルが加わり最後にリーダー登場です。最初の曲とピアノのタッチがだいぶ違うのも聴き比べて良い感じです。
 軽やかなシングル・トーンとブロックコードと独特のスタイルです。何よりもわかりやすピアノで曲を間接してくれるような演奏が好印象です🎵

piano : Red Garland
bass : Paul Chambers
drums : Art Taylor

Recorded at Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, August 17, 1956

1. A Foggy Day (George Gershwin, Ira Gershwin)
2. My Romance (Lorenz Hart, Richard Rodgers)
3. What Is This Thing Called Love? (Cole Porter)
4. Makin' Whoopee (Walter Donaldson, Gus Kahn)
5. September in the Rain (Al Dubin, Harry Warren)
6. Little Girl Blue (Hart, Rodgers)
7. Constellation (Charlie Parker)
8. Blue Red (Red Garland) 





  

2024年6月14日金曜日

The Beatles / Magical Mystery Tour


 私のアマチュア音楽生活もギターを始めてから40年以上。ビートルズの初来日は1966年6月、私生まれてはいましたが赤ちゃんでしたので全く記憶になく、残念ながら熱狂的なビートルズの日本の歓迎は記憶にはありません。テレビの記録映像を見ただけです。中学生になり、洋楽に興味を持ち始めた頃にはハードロック系に行ってしまったんで、ビートルズを聴くことがなく聴いていても懐かしむ気持ちが起きないのです。しかし普通に生活していても未だに聴くことも多いし、ジャズ含め様々なアーチストもカバーしていますので耳にすることは多いですし、影響を受けたと言っているアーチストはゴロゴロいるし、これは聴いていたほうが良いかな、音楽生活も広がるもんかな?音楽仲間と話しているときにこの曲知らんではカッコ悪いしな、と何枚かオジサンになってから購入しています。しかし余り心に響かないのはしょうがない。


 このアルバム有名ですが、イギリスで作ったテレビ映画用サウンドトラック。ポール発案で制作されたこの映画自体のコンセプトは様々な「普通の」人々(ジョン・レノンの叔父、チャーリーを含む)が観光バスに乗り込んで旅行し、予測できない「マジカル」な冒険をするというものであります。脚本とプロの映画監督無しという状況で撮影は行われ、結果無秩序な映画なってしまい映画自体はあまり評判が良くなくて、イギリスでは最初 BBC One にて1967年のクリスマス休日をまたいで2回放送されたのですがその放送でに非難が集まるという惨敗だったそうです。その結果アメリカではABCで放送するという予定がキャンセルされ、公には1976年まで見ることが出来なかったアンダーグラウンド映画扱いでビートルズがコケた初めての瞬間だったようです。
 ただ、そこはビートルズ。アルバムのレコードセールスは好調でサウンドトラックに加えて Strawberry Fields Forever、All You Need Is Love などの私でも十分に知っている強力なシングルとなり、アルバムも全米チャートは8週連続第1位の好成績だったようです。いくら駄作でもこれだけのヒット曲を使っている映画ですから、普通はたまにTVでOAがあっても良さそうなもんですが、見たことがないと言うことは、よほどの駄作だったんでしょう(かえって見てみたいもんです)
 知っている曲が多いだけに私でも楽しめるアルバムではあります。久しぶりに聞いた中で個人的には Your Mother Should Know の作風、I Am the Walrus なんかが好きかなあと思ったりして、今更恥ずかしい感じがします🎵

1. Magical Mystery Tour
2. Fool on the Hill
3. Flying
4. Blue Jay Way
5. Your Mother Should Know
6. I Am the Walrus
7. Hello Goodbye
8. Strawberry Fields Forever 
9. Penny Lane
10. Baby You're a Rich Man
11. All You Need Is Love








  

2024年6月9日日曜日

Brecker Brothers / Out Of The Loop

 

 1994年GRP移籍の2作目で通算8作目。このアルバムを発表後に活動を休止し Brecker Brothers としては最後のスタジオ・アルバム作品となります。Michael Brecker は、これ以降は2001年に Jack Wilkins のReunion と言う作品に参加し、2005年にマイケルは骨髄異形成症候群(前白血病状態)を患っていることを明らかにし、ライブ等の活動を一時停止し、2007年にマイケルが骨髄異形性症候群から進行した白血病によって死去しています。
 アルバムとしては、ファンク・サウンドがマーカスっぽいと思いましたが、クレジットは無し。ヒップ・ホップやプログラミング等の当時のトレンドを取り入れつつ生のバンド・サウンドにもこだわりを見せたサウンドづくりや、当時の流行りなのかテーマのメロのハモリ方とベースのかぶせ方がマーカスの得意パターンと酷似していると感じます。

 

 まず最初の Slang はランディのミュート・トランペットがとてもクールで、マイケルのソロが対比的に変態フレーズ少な目の王道のソロで、ファンク的なアプローチにつなげていくとが素晴らしい。サンプリングやヒップホップ要素を取り入れた Scrunch、When It Was
あたりは、アシッド・ジャズ系の曲でアーチストに影響を多大に与える名作子のリフがマンマ使われているのを聴いたことがあります(どの楽曲か思い出せませんし、楽曲検索では出てこないのが悔しいですが) Secret Heart は王道にフュージョン路線。African Skies は曲名通りの、アフリカン・リズムをダイレクトに取り入れたメセニーっぽい曲で、実際、後年マイケルはメセニーとやっているようです。暴れん坊な曲が多いアルバムですが、締めは、And Then She Wept で美しくメローに終わります。
 ということで、様々な曲がちりばめられているブレッカー・ブラザーズらしい作品ですが、全体的にはトリッキーさを抑えて、ポップに仕上げてきている印象です。バップも良いですがこのようなフュージョン作品もたまらないものがあります🎵



 そして時代を感じるのが上記ウインド・シンセ EWI の宣伝がライナーノーツに含まれていること。ブレッカーファンは楽器奏者が多いからなのでしょうが値段まで記載してあるのが本気を感じます。1994年で本体60,000円、モジュール68,000円。現在価格を見てみると本体は同じようなもの。今はモジュールは不要なんですかね。検索ででてきませんでした。

soprano tenor sax, EWI : Michael Brecker
trumpet : Randy Brecker 
programmed by (keyboards and rhythm) : Maz Kessler (3, 6), Robbie Kilgore (3, 6)
guitar : Dean Brown, Larry Saltzman ( 2), Robbie Kilgore (6)
bass, acoustic bass : James Genus (1, 3, 4, 7 to 9)
bass, acoustic bass (Piccolo Bass), vocals : Armand Sabal-Lecco
drum programming, programmed By (bass & keyboard programming): Andy Snitzer (2), Chris Botti (2)
drums : Rodney Holmes (4, 5), Steve Jordan (1, 7 to 9)
percussion : Steve Thornton (1, 2, 5, 7 to 9)
backing vocals : Mark Ledford (4)

executive producer : Dave Grusin, Larry Rosen

1. Slang
2. Evocations
3. Scrunch
4. Secret Heart
5. African Skies
6. When It Was
7. Harpoon
8. The Nightwalker
9. And Then She Wept

▶ Slang




  

2024年6月8日土曜日

Steve Lacy / The Straight horn of Steve Lacy

 

 Solid Jazz Giants という復刻版の名盤シリーズで見かけて、試聴せずに購入の一枚です。ソプラノ・サックス片手のジャケも気になりどんなもんかの試し買いでした。後で知りますが、Steve Lacy はソプラノ・サックス奏者で、フリージャズで有名な方。Monk の愛好家でもあり、Cecil Taylor と出会ってからフリー派となったらしい。このアルバムでもアルバム6曲中、Monkを3曲、Cecil Taylorを2曲、Parkerを1曲 となっています。がフリーの片鱗ぐらいの音使いなのでフリーに変化する過程の貴重な録音と言うことでしょうか。フリー好きの「おでんバー」のマスターはフリーの時代のこの人の演奏を知っていたのですが普通の演奏を聴くことはなかったらしく、一緒に聴きながら普通のジャズに感慨深いとのことでした。
 しかしながら再度、そう思って聴くと饒舌で吹き出すと止まらないソロや、吹きながらドンドン展開していくインプロにその片鱗は見えるような気がします。ジャズはアドリブにこそ面白さがあるということが世に言われておりますが、まさにこのアルバムは上手く楽曲を構成させる技術ではなく、感じることを音にして出していくジャズの面白さがこのアルバムでは伝わってきます。バリトンとソプラノ・サックスの組み合わせでピアノレスのカルテット編成は斬新で、低音と高音の対決なのか?と思いきや、バリトンもソプラノもテナー寄りの音域に近づけた演奏になってます。フリーになりそうではありますが音程と秩序は保たれています。


  私の中でグッと興味ある人になった Steve Lacy、ピアノレスのこの編成でこの盛り上げ方をした共演者にも注目すしてみましょう。バリトンの Charles Davis は Sun Ra とも一時共演する人物で斬新な感覚と才能で、Taylorの曲 Air でのアドリブは明らかにレイシーを触発していますね。そしてベーシスト John Ore は、このアルバムで3曲とりあげられているMonkのカルテットに参加していたベーシストで、共演者がどんなところに飛んで行っても堅実なリズムキープを続けます。自分は決して熱くはならず共演者に火をつけてしまうベーシストで、堅実な演奏です。がこちらも後に Sun Ra に参加していますね。ピッタリと寄り添 いながら弾くベース徹しているように思えます。ドラムの Roy Haynes はコルトレーン Impressions 、モンクとコルトレーンの共演ライブ Live at the Five Spot Discovery! なんかに参加していて、やはり後にフリージャズにも突入する人です。
 モダン・ジャズから前衛的ジャズへ切り込んでいく境界線のアルバムは非常に興味深い🎵

soprano sax : Steve Lacy
baritone sax : Charles Davis
bass : John Ore
drums : Roy Haynes

recorded at Nola Penthouse Sound Studios, New York on November 19, 1960.

1. Louise / written by Cecil Taylor
2. Introspection / written by Thelonious Monk
3. Donna Lee / written by Charlie Parker
4. Played Twice / written by Thelonious Monk
5. Air / written by Cecil Taylor
6. Criss Cross / written by Thelonious Monk

Louise




  

2024年6月7日金曜日

The Brand New Heavies / Heavy Rhyme Experience vol 1


 以前はDJ・ラッパーがどうも苦手で、正直、最初は苦手なアルバムでしたが今ではお気に入りになっています。ラップを好んで聴くようになったわけではありませんが、ジャズ・フュージョン系にラップを取り入れたもの等が普通にありますし、どうやら耳慣れしてきたようです。耳馴れとは面白いものでフリー・ジャズなんかも同じように、以前は聴かなかったのですが、いつもの音楽好きの集う「おでんバー」でかかっているのを聴いているうちに普通に聴けるようになってきました。環境と経時変化で好みの音楽が変わってきているのに気づくと自分でも時々ビックリします。
 このアルバムも最初は違和感があった一枚ですが、いつの間にか普通に聴くようになっていた一枚です。そして今回気づいたのがアルバム名ずっと Rhythme と思っていたのが、実は Rhyme であったこと。rhythm(リズム)は最後にeが付かないので気づけよと自分でも思いますが 韻(イン)でした。つまりラップの韻のことを指していたんですね。なるほど。
 いつもお馴染みの華やかなグルーブではない。HIP HOPであるけど、ファンクに音を寄せた生の演奏。打ち込みではないバックトラックが素晴らしい。


 それではレビューです。Bonafied Funk ファンクにのせたラップは Main Source (Large Professor、Sir Scratch、K-Cut) で、Andrew Levy のベースはいつもより単純ではあるけど、やはりツボを押さえています。ベースラインが印象的でありますがギターの単音リフもツボです。It's Gettin' Hectic は、ユニットGang Starr をフューチャー。このユニットは Guru、DJ Premier のお二人。これも単純なファンク・リフにのせたラップで、ラップをのせやすいように楽曲的に細かい仕掛けは無し。Who Makes the Loot? は、このアルバムで一番耳に残るベースラインで印象的で、BNH的なサウンドかも知れません。ラッパーは Grand Pubaで緩い感じで余裕があります。Wake Me When I'm Dead 更に曲的には凝った演奏となります。Masta Ace がフィーチャーで雄叫び系ラップ。Jump N' Move レゲエ系MCの Jamalski で、早口言葉のようなラップは楽しい。タイトルがジャマイカンに訛っているのも面白い。Death Threat はBNHの音が後ろにあるファンクサンドに Kool G Rap がフィーチャー。Simon Bartholomew のワウが聞いたギターがとても相性がよろしいようでこの曲も捨てがたい。State of Yo は、Black Sheep がフィーチャー。ややジャジーな感じのするリフに Hip-Hop で相性はかなりよろしいようで。力の抜けた感じが好感。Do Whatta I Gotta Do 凄くラップ感がありますが、曲に動きがあります。Ed O.G がフィーチャー。演奏にもスリリングさが加わっています。Whatgabouthat 南夫と読むのか、レゲエMCの Tiger がフィーチャー。言葉に勢いがあります。こんな言葉で普通にまくしたてられたら迫力で怖いと思います。Soul Flower ラップではありますが、非常にダンサブルでこれも良い。ラストは The Pharcyde がフィーチャー。やはり最後は渾身の一撃って感じですね。
 私自身相変わらずラップに興味は無いのですが、このアルバムはBNHらしさとラップの共存が素晴らしく別格の一枚🎵

bass : Andrew Levy
drums : Jan Kincaid
guitar : Simon Bartholomew
percussion : Paul Daley
sax : Mike Smith
trumpet : Martin Shaw

producer : The Brand New Heavies

1. Bonafied Funk  featuring : Main Source
2. It's Gettin Hectic  featuring : Gang Starr
3. Who Makes The Loot?  featuring : Grand Puba
4. Wake Me When I'm Dead  featuring : Masta Ace
5. Jump N' Move  featuring : Jamalski
6. Death Threat  featuring : Kool G Rap
7. State Of Yo  featuring : Black Sheep
8. Do Whatta Gotta Do  featuring : Ed O.G
9. Whatgabouthat  featuring : Tiger
10. Soul Flower  featuring : The Pharcyde






  

2024年6月2日日曜日

Boscoe


 1970年代のシカゴのアフロ・ファンクで発売は Kingdom Of Chad Records。かなりアンダー・グラウンドなサウンドで、Sun Ra、Art Ensemble Of Chicago などのスピリッツを内包しているとの評もあります。ドロドロのサウンドはアーシーでコズミックさも感じます。レコードなんかは amazon で $4,500 ですから2024年5月現在のレートで、なんと 688,500円 と高額取引であります。もちろん私はリイシューのCDの購入でしたらからリーズナブル。入手が中古か新品かは覚えていません。リイシュー版も発売はレアものの再発/発掘を手がけるシカゴのレーベルの「NUMERO」が立ち上げた紙ジャケ専門レーベル「アスタリクス」とのこと。アスタリクスの表記は恐らく「4*」(ライナーノーツの裏側にありました)愛聴盤ではありますが、今回調べて見て初めて知りました。


 メンバーは6人でベースの Ron Harris は、Ramsey Lewis の Salongo に参加していましたが、他のメンバーの活動は結構マイナーな感じです。


 それではレビューです。Introduction は、スタートからスピリチュアルな幕開け。最初に聴いた時には退屈な感じがした気がしますが何十回も聴いていると、このドラマチックで大袈裟な構成とオドロオドロしいボーカルが大好きになってきます。またエンディングのベースが怪しさを醸し出すところも最高です。Writin' On The Wall も、イントロに続き怪しさ満載の朗読ボーカルとトランス状態になっているかのような叫び。管楽器はトランペットとトロンボーンですが誰が吹いているのかフルートがホラーっぽい。行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」の常連の一人には、このエネルギー最高ですねの誉め言葉頂きました。He Keeps You あたりからは、普通にファンクの演奏ですがボーカルが野太い声で、更にどこかがアフリカンな響き。ここらへんでベースの Ron Harris の変態なベースラインとバカ馬なテクニックと正確なリズム感が気になってきます。We Ain't Free では、グルービーなリズムになってきて普通にファンクもするのかと妙に感心していると、いきなりのベースとドラムとパーカッションのアフリカンの長い間奏とフリーのようなソロに脳がやられてから最後はテクニック剝き出しのソロ合戦とサイケな展開にノックアウトです。If I Had My Way は は Sly とかが好きな人には受け入れやすい楽曲になります。ギターのカッティングとホーン部隊の上手さにも注目です。I'm What You Need では、メロー・ソウルの始まりにコマーシャルな部分を感じながら、ボーカルの野太いバリトン・ボイスが怪しさを加えながらファルセットのボーカルがポップさを加えコーラスがチャンと上手い所が怖いです。Money Won't Save You ここまで聴いてくると、この曲が一番普通に聞こえるので何かつまらなく思えてくるようになれば、相当このアルバムを聴きこんでいる証拠でしょう。私には、もはや普通過ぎて刺激が足りません。Now And Den きっとNow and Then なんですかね。普通ではありますがカオスを含んだスピリチュアルなソウル風ファンクです。
 購入当初ジャケットがレゲエカラーなのでそっち系かと思いきや、そちら要素は全くなく、スピリチュアル一歩手前のファンク。古きよきサウンドで全体的にリバーブかかりすぎでサイケな雰囲気カオスな香りが漂い、マニアにはヨダレものの一枚かと思います🎵

guitar : James Rice
bass : Ron Harris
drums : Steve Cobb
sax : Darry Johnson
trumpet : Harold Warner
trombone : Reg Holden

Producer – Joseph Ehrenberg

Recorded at Paragon Studios, Chicago, Illinois.
Originally released in 1973.

1. Introduction
2. Writin' On The Wall
3. He Keeps You
4. We Ain't Free
5. If I Had My Way
6. I'm What You Need
7. Money Won't Save You
8. Now And Den





  

2024年6月1日土曜日

Miles Davis / The Best Of Miles Davis 80th Anniversary

 

 Miles Davis 生誕の80周年記念ベスト。発売は2006年の既に20年以上経過した盤で、日本でのみ発売のコンピですね。改めてマイルスが何時亡くなったの調べると1991年ですが、当時マイルスが亡くなった時に日本のテレビでも大きく報道されたていました。この時は私はマイルスにほぼ興味なしでしたが、ジャズ・ミュージシャンが亡くなってもテレビで大きく取り扱われることは、ほぼ無いのに、さすが大物マイルスと思った記憶あります。
 選曲に使われた盤は Cannonball Adderley / Somethin' Else(1958)Miles Davis / All Stars Vol1(1952,1953)、Miles Davis / All Stars Vol2(1952,1953)、Miles Davis / Birth Of The Cool(1949-50) のしっかりジャズしていた時代の作品で、楽曲全体の構成に重きを置いていた時代のものとなっています。
Japan-only compilation sourced from Somethin' Else (Cannonball Adderley), Miles Davis Vol. 1, Miles Davis Vol. 2, and Birth Of The Cool. Although not named among the credits, the obi states RVG (Rudy Van Gelder) remasters are the audio source.


 選曲は「スイングジャーナル」の編集長、後に音楽評論家となる中山康樹氏で「マイルスを聴け!シリーズ」を中心としてマイルスに関する著作を多く出版されています。私自身は中山康樹氏の著書ではマイルスではなく、「ビル・エヴァンスについていくつかの事柄」「スイングジャーナル青春録 大阪編、東京編」「現代ジャズ解体新書」などを楽しく読ませていただいております。私自身は、昔「音楽は聴いて感じるものであって、時代背景・解説なんて面倒なものは知らなくても良い」のスタンスでしたが、ここ最近は「作品を作った時代背景やミュージシャンの関係性などを知ってから聴くと、また違った感覚で作品を楽しむことが出来る」ことに楽しみを見出しています。また単体での作品を楽しむこともありますが、アルバムを通して聴いて、その構成にプロデューサーやミュージシャンの製作意図を感じることも楽しみの一つとなってきました。
 改めてコンピ・アルバムも単純に作品を並べただけの駄作もあれば、選曲者の意図やセンスを感じるものもありリスナーとして楽しんでいます。この作品も行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」の住人に最初は「なんだコンピか、全部聞いたことはあるけどね」の反応であったのが、聞き始めれば懐かしんでもらい「ああ、これ好きだったんだよね」「これは面白くないアルバムだったんだよな」などの様々な反応があり、改めて中山氏の選曲にセンスを感じる次第です🎵

1. Somethin' Else / Somethin' Else
2. Israel / Birth Of The Cool
3. Autumn Leaves / Somethin' Else
4. Ray's Idea / All Stars Vol1
5. I Waited For You / All Stars Vol2
6. Boplicity / Birth Of The Cool
7. Love For Sale / Somethin' Else
8. Dear Old Stockholm / All Stars Vol1
9. Deception (aka Conception) / Birth Of The Cool
10. Donna (aka Dig) / All Stars Vol2
11. Yesterdays / All Stars Vol1
12. Weirdo (aka Sid's Ahead) / All Stars Vol2
13. How Deep Is The Ocean / All Stars Vol1
14. Lazy Susan / All Stars Vol2
15. It Never Entered My Mind / All Stars Vol2





  

2024年5月31日金曜日

Shelly Manne & Bill Evans Feat. Monty Budwig / Empathy

 


 整然としたトラッドな内容で悪くもないが、楽しくも無いと最初に思っていましたが、再度聴いていると、意外と中毒性があるかもしれません。相変わらず中古で購入です。購入時の帯には「アルバム・タイトルそのままに、三者がお互いに感情を移入しあった、滋味溢れる名盤です」とあり楽しみにしてました。しかし行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」では Bill Evans は好まれていないので、持って行くのを後回しにしていたため、かなり寝かせての試聴でした。持ち込み試聴の結果、好きではないとは言われなかったが、興味は示されなかったので、まあまあの反応。ちなみに、以前に持ち込んだ Bill Evans / A Simple Matter Of Conviction でも、似たような反応で、このアルバムはドラマーが Shelly Manne で同じ、ベースは Eddie Gomez でしたので、Bill Evans 嫌いに Shelly Manne の組み合わせは緩和する傾向にあるようですが、Bill Evans と Shelly Manne の録音はこの2枚しかないようです。ちなみにこのアルバムは1961年に盟友のベーシスト Scott LaFaro を交通事故で亡くした失意の Evans が Riverside から Verve にレーベル移籍してからの第一作で Interplay の次の録音となっています。


 それでは意外と中毒性があるかもしれないと思い始めたアルバムを再度聴きながらのレビューです。The Washington Twist 1962年のブロードウェイ・ミュージカル Mr President の主題曲とのことで流行りを直ぐに取り入れたもので古典スタンダードでは無いようです。Evans は右手のシングルノートで軽やかにメロディーにより陰鬱な感じはしません。 Danny Boy は、アイルランド民謡で Evans の美しい演奏と魅力が堪能できる3分44秒の小作品の名演と思います。イントロから引きこまれます。LaFaro への鎮魂歌のようにも想像をかき立てられます。Let's Go Back to the Waltz  1曲目と同じ Irving Berlin による作品で同ミュージカルに使われた曲です。ゆったりワルツとアップテンポを組み合わせた楽曲でバンドとしてのインタープレイが堪能できます。これも4分34秒と短め。With a Song in My Heart 1952年映画『わが心に歌えば』(With a Song in My Heart)の主題歌で Richard Rodgers の作品。Manne Budwig のコンビが快適なリズムを作ってインタープレイがとても良いと思います。後半で Evans が活躍してきます。Goodbye は、物憂げな出だしですが、このトリオを象徴する内面的な美しさを表現した作品で Gordon Jenkins の有名なスタンダード。I Believe in You 1961年のミュージカル How To Succeed In Business Without Even Trying 努力しないで出世する方法 の主題歌で Frank Loesser 作品。割と流行りの作品をとりれた選曲です。リズミカルでありながら繊細な Evans のピアノが映える作品で、これもこのトリオならではの演奏のような気がしますし、静かに陰として終わるようなイメージの Bill Evans 作品よりも、この爽やかさで終了するのはとても印象が良いです。
 面白みに欠けるような気もしたが、よくよく聞いてみると演奏や構成など、味がある録音かと思います🎵

piano : Bill Evans
bass : Monty Budwig
drums : Shelly Manne

producer : Creed Taylor

recorded in New York, Aug. 14, 1962. 

1. The Washington Twist  (Irving Berlin)
2. Danny Boy  (Frederick Weatherly) 
3. Let's Go Back to the Waltz  (Irving Berlin)
4. With a Song in My Heart (Richard Rodgers, Lorenz Hart)
5. Goodbye  (Gordon Jenkins)
6. I Believe in You (Frank Loesser)