2023年2月18日土曜日

Sound of Blackness / Africa To America


 Africa to America, the journey of the drum!
「アフリカからアメリカへドラムと共にやってきた」のタイトルで民族音楽を連想しましたが、ゴスペルを基調とした、クワイア40名のゴスペル10人編成のアメリカのアーバン・コンテンポラリー・アンサンブル・グループです。
 結成は1969年でミネソタ州セントポールの Macalester College(マカレスター大学)にて結成されたグループで Macalester College OF Black Voices であったものが、1971年に Gary Hines がアンサンブルの統制をとり、Sound of Blackness の名前となったそうです。


 アルバムは重厚なコーラスを基調とした現代的なバンド演奏です。レビューしときます。Hold On(Pt.1)はアフリカをイメージさせるパーカッションとゴスペルの荘厳なコーラスに続くイントロ。I'm Going All The Way は宗教的ではないダンサブルなナンバーで困難があっても頑張ってクリアーしていこうという曲。リードボーカルは Ann Nesby でパワフルで粘りと伸びのある歌声です。Ah Been 'Buked(Pt.1) の、ゴスペルの短いコーラスを挟んで、シングルにもなってヒットした I Believe。プログラミングしたリズムを用いたモダンなサウンドですが、ブランニューあたりで聴いたことのあるようなメロディーな気もするのですが見つかりませんでした。気のせいか?Hold On(Pt.2) のゴスペル・コーラスを挟んで、Everything Is Gonna Be Alright で、また人生への応援歌のような歌詞のモダンなナンバーで元気がでます。Sun Up To Sundown は、アフリカンな雰囲気のコーラスでつなぎをゴスペルから変えてきています。The Lord Will Make A Way はゆったりとしたブルージーな曲ですが、ここへきて宗教的な歌詞です。淡々と歌い上げ叫ぶボーカルがカッコ良い。ここでつなぎの曲は無く、He Took Away All My Pain 牧歌的なAORの雰囲気漂う元気ソングです。A Place In My Heart でバラードきました。美しいメロディーで伸びやかな歌声でかなり気分は盛り上がります。The Harder They Are The Bigger They Fall は,エレクトリック・ファンクで、やっぱりバラードの後はこうなる鉄板の展開でソウルフル&パワフルです。そしてテーマである The Drum (Africa To America)は,パーカッションにナレーションとコーラス。テーマ部分の響きは Kibbles and Bits で歌詞は違いますがジョージの孫が歌っているフレーズにそっくりだったのが気になってしょうがない。続く African Medley(Royal Kingdoms, Rise, My Native Land)でテーマのアフリカが続きます。映画で使われそうな,アフリカを想起させるコーラスとパーカッションの曲で深いです。A Very Special Love はブラコン的なバラードで穏やかにう歌い上げてロマンチックです。Strange Fruit はアカペラで,カバーだそうでビリー・ホリデイの持ち歌でもあった黒人差別を告発する哀歌とのこと。Black Butterfly は,ミドルテンポのブラコン的な楽曲でミュート・トランペットがオブリガードします。Livin' The Blues は,ブルースです。やっぱりアレンジはアーバンな感じになってしまうんですね。この曲でこのアレンジは似合わないですがアルバムのコンセプトはこうですからしょうがないですか。ラストはaゴスペル Ah Been 'Buked(Pt.2)で締めくくりです。コンテンポラリーな楽曲でありながらゴスペルを基調とした重厚なコーラスで African Americanの「歴史」「精神」を相互に描いていて、たまに聞くのですが、いつでも素晴らしい傑作のお勧め盤。

Robert Anderson : vocals
Jamecia Bennett : background vocals
Robin Berry : harp
Dexter Conyers : vocals
Core Cotton : vocals
LaSalle Gabriel : guitar
Shirley Marie Graham : vocals
Trenon Graham : drums, percussion
Carrie Harrington : vocals, background vocals
Jayn Higgins : vocals
Gary Hines : arranger, drum programming, keyboards, piano
Jimmy Jam : arranger, drum programming, keyboards, synthesizer
Geoffrey Jones : vocals
Patricia Lacy : vocals
Terry Lewis : arranger
Eunique Mack : vocals
Renee McCall : vocals, background vocals
Ann Nesby : bass, vocal arrangement, vocals
Kevin Pierce : guitar
Alecia Russell : vocals
Nate Sabin : guitar
Larry Sims : trumpet
James Smith : vocals
Sounds of Blackness : instrumental, primary artist, vocals, background vocals
Billy Steele : keyboards, vocal arrangement, vocals
Jeff Taylor : drum programming
Libby Turner : vocals, background vocals
Franklin Wharton : alto sax
Kevin Whitlock : percussion
Stokley Williams : drums, percussion
Louis J. Wilson : tenor sax
Marcus Wise : tabla
David Wright III : baritone sax
Jimmy Wright : arranger, keyboards, organ, electric piano, synthesizer, vocals
Rev. Joseph Young, Jr. : rap

Gary Hines : producer
Jimmy Jam and Terry Lewis : executive producer, producer

1. Hold On(Pt.1) 
2. I'm Going All The Way 
3. Ah Been 'Buked(Pt.1) 
4. I Believe 
5. Hold On(Pt.2) 
6. Everything Is Gonna Be Alright 
7. Sun Up To Sundown 
8. The Lord Will Make A Way 
9. He Took Away All My Pain 
10. A Place In My Heart 
11. The Harder They Are The Bigger They Fall 
12. The Drum(Africa To America) 
13. Agrican Medley(Royal Kingdoms,Risek,My Native Land) 
14. A Very Special Love 
15. Strange Fruit 
16. Black Butterfly 
17. You've Taken My Blues & Gone 
18. Livin' The Blues 

2023年2月17日金曜日

Chick Corea Electric Band / Light Years


 大学時代に買った一枚で、当時は Al Di Meola の Electric Rendezvous とかが流行っていたころです。ジャズ界で活躍していたチック・コリアが、ポップで軽めのフュージョンを作っていた時代でした。行きつけの「おでんバー」では、評価が高くないのが、ここら辺のアルバムで、他ジャズ好きな方のコメントなどを見ていても、評価は低めな気がします。でも私にはジャズやフュージョンの云々は抜きにして青春時代の一枚ですから思い出とともにこれを聴いています。思えば大学時代、音楽事務所のアルバイトでコンサートのバイトをやっていたことがあり、チック・コリアのステージ(何のバンドかは忘れました)も何回かバイトしていまして、セッティングが終わってから会場の警備もしながらタダでステージを見れるのが楽しみでした。外の駐車場の警備に回されるとハズレでしたけどね。交通費は出なかったんで帰りに飲んだら、ほぼアルバイト代は無くなってしまっていたのも今となっては楽しい思い出です。


 このエレクトリック・バンドの一枚目はプログレ・フュージョンであっただけに、このアルバムがひたすらライトでコマーシャルな音作りの展開は少し驚くものはありました。
 それでは、レビューです。Light Years タイトル曲でもあり売れた曲で懐かしいですが、今聴くいても、かなりシンプル。 Second Sight はバラードというよりは静かな曲で売って変わって曲の構成も凝っています。Flamingo は、シンセのサウンドが前面に出てきて、途中の John Patitucci のフレット・ベースがアクセントになっています。Prism はフルートのようなシンセが印象的でテーマの繰り返しなのですが、微妙にアクセントなどを変えながら繰り返されているのでシンプルに聞こえながらも、よく考えて作られた曲です。Time Track でサックスの Eric Marienthal と、ギターの Frank Gambale が交互にソロを交えてきてバンドの一体感が出てきています。最後は決めだらけ。Starlight は、ファンク・フュージョンでマーカス的な曲になっています。Your Eyes もミドル・テンポでややファンク気味です。カッティング・ギターの音色は Starlight と変えていますが、シングル・ノートの音は変えないんですね。どれもそうですがソロは短めで気持ちが入っていく前にテーマに戻る感じです。The Dragon ゆっくりして少し重めの曲で、単純なコード進行で進みますが深みがあります。View from the Outside これはカッコ良いですよね。インパクト抜群です。Smokescreen 忙しい曲です。ゆっくりのテーマに細かなドラムと、超早いフレーズが時々出てくるベース。チック・コリアのソロはかなり長めに入っていますので今までの楽曲のコンセプトとは少し変えたアレンジ。Hymn of the Heart は風景画のような曲でパット・メセニーっぽくもあるような感じです。Kaleidoscope で最後となります。こ複雑に絡み合うリズムとテーマのメロディーが不思議な絡み方をするですね。やっと Frank Gambale が最後にストレス発散かのように思いっきり弾くまくり、チックも合わせてきています。
 とにかく懐かしかったんですが、前回聴いた時にはスカスカ感があったように記憶しているのですが今回はそうでもなかったです。その時の体調、心境で変わってくるものなのでしょうか?他のアルバムでも、たまにあるんですよね。

keyboads : Chick Corea
sax : Eric Marienthal
guitar : Frank Gambale
bass : John Patitucci
drums : Dave Weckl

1. Light Years
2. Second Sight
3. Flamingo
4. Prism
5. Time Track
6. Starlight
7. Your Eyes
8. The Dragon
9. View from the Outside
10. Smokescreen
11. Hymn of the Heart
12. Kaleidoscope





  

2023年2月12日日曜日

Scott Hamilton / The Grand Appearance

 

 Scott Hamilton(スコット・ハミルトン)1954年生まれで、幼い頃はピアノとクラリネットを習い17歳からテナー・サックスに転向1976年にニューヨークへ進出したミュージシャンです。レコードデビューは1977年で、このアルバムはその翌年の1978年の録音です。
 かなり昔っぽい作風と録音なので1940年代かなと思っていたら新しい録音(と言っても40年以上前の録音ですが)なので、ビックリしました。なにしろ同時期のジャズ・フュージョン界のヒット作と言えば Weather Report などのフュージョン全盛期で、Heavy Weather(1977年)、Mr Gone(1978年)などのヒット作が発表され、旧来のジャズ人気が下火の頃と考えると、旧来の4ビート・ジャズ・ファンとジャズ至上主義の業界人は期待を寄せていたに違いありません。
 それだけに新人のサポートはHank Jones(ハンク・ジョーンズ)Tommy Flanagan(トミー・フラナガン)George Mraz(ジョージ・ムラーツ)Connie Kay(コニー・ケイ)と言ったジャズ・ジャイアンツばかりなのがすごい。


 現在私の所有音源でもテナー奏者に着目した音源は少ないため、参加されているアルバムは見当たりませんでした。名前は知っていたが、あまり聴いたことがない人だけに新鮮。テナーならではの、深い響きとトーンです。所有音源で近いのはZoot Sims(ズート・シムズ)ではありますが、彼ほどの図太い感じの夜と酒を感じるような音でもなく品行方正な
感じがしました。
 それではアルバムのレビューです。Crazy Rhythm 1928年のミュージカル Here's Howe のために Irving Caesar、Joseph Meyer、Roger Wolfe Kahn によって書かれた作品で、ショーがこれから始まるようなオープニングに相応しい軽やかな曲。I May Be Wrong 1929年の Henry Sullivan の作曲 Harry Ruskinn による作詞のポピュラーソングで、ローボイスで歌うようなテナー・サックスのソロはムードは満点で緩やかなソロは聴きやすい。Body And Soul は定番のスタンダード。軽めのタッチは聴きやすくて良いが少々刺激が欲しい。 All Of Me も定番のスタンダードですが、こちらは少しテンポ・アップしてきて流れるようなテナー・ソロとなっていて高音のしゃくりも出てくる。段々と面白くなってきました。ピアノの Hank Jones のソロ、George Mraz のベース・ソロの回しも余裕があります。The Shadow Of Your Smile (Theme From The Sandpiper) は邦題「いそしぎ」ですね。ここまでがピアノが Hank Jones です。You'd Be So Nice To Come Home To 邦題は「帰ってくれたらうれしいわ」で大橋巨泉によってつけられたらしいですが、こちらはそのまま英語読みの方がポピュラーですね。ピアノは Tommy Flanagan に交代して現代的なサウンドにぐっと変わったのが印象的で、スイングする波が違うのがよくわかります。I Thought About You は1939年のJimmy Van Heusen 作曲、Johnny Mercer 作詞のスタンダードでロマンチックなテーマがいかにもジャズって感じで素敵な曲です。これも Tommy Flanagan によって全く違うスイング感が出て ハミルトンのサックスも前半の古き良き時代を思わせる吹き方から変わってきている。伴奏によってインスパイアされるフレーズが変わるんでしょうね。Out Of Nowhere は1931年 Edward Heyman、Johnny Green によるポピュラー作品で Body And Soul の作者でもあります。イントロからいきなりテーマをハミルトンが吹き始めるのですが、テーマ部分は静かにソロで徐々に盛り上がりながら強弱をつけながら盛り上がっていくのが静かに盛り上がります。Cheek To Cheek 1935年のTop Hat というミュージカル映画にために Irving Berlin が書いた曲でいかにもジャズらしい盛り上がりのあるメロディがスムーズ。このアルバムで一番盛り上がっているような気がします。New York Blizzard Blues はハミルトン作曲です。スインギーでメンバーが一番リラックスして演奏しているので最後にもってきたのでしょうか。
 若干退屈さも感じましたが、聴きこめばピアニストでこれほど演奏の内容が変わるのかと対比がくっきりしているのを発見して少し面白くなった。デビューしたてのフレッシュなハミルトンと書いてありますが余りフレッシュさも感じないのが微妙ですかね。

tenor sax : Scott Hamilton
bass : George Mraz
piano : Hank Jones (1 to 5), Tommy Flanagan (6 to 10)
drums : Connie Kay

producer : Gus P. Statiras

recorded January 23 (1 to 5), and February 8, (6 to 10) 1978 at the Downtown Sound Studio, New York, NY.

1. Crazy Rhythm
2. I May Be Wrong
3. Body And Soul
4. All Of Me
5. The Shadow Of Your Smile (Theme From The Sandpiper)
6. You'd Be So Nice To Come Home To
7. I Thought About You
8. Out Of Nowhere
9. Cheek To Cheek
10. New York Blizzard Blues





  

2023年2月11日土曜日

Indigo Jam Unit / 10th album




 真っ白なジャケにエンボスで曲名が文字加工してあるCDジャケットは無機質。実際に音を聞いてみるとピアノ、アコースティック・ベース、ドラムと全て生楽器なのに、楽曲が基本的にドラムとベースが同じリフを正確に繰り返すバンドサウンドも無機質に聞こえます。無機質ではありますが、ベースとドラムの重低音感はかなりのもので、この音圧とスピード、正確さでウッド・ベースを1曲弾き続けるのは相当の剛腕の持ち主であります。
 Indigo Jam Unit は2005年に結成されたインストユニットで結成10年目で本作は10枚目のアルバムです。デビューアルバムの Demonstration から既に強力なビート感と重低音のベースを武器にインパクトのあるサウンドでした。そのデビューから夏にレコーディング、冬にリリース、年明け全国ツアーというスケジュールを、メンバーチェンジも一度も行わず10年間続けてきた彼ら4人にしか出すことができない力強いサウンドが売りです。本作品も、約2ヶ月間にわたり、ほぼ毎日セッション、リハーサルを繰り返しつくられレコーディングは全曲一発録音。ダビングや修正を一切行わないのがポリシーとのこと。


 楽曲の構成自体はファンクでよくある16ビートのリズムとフレーズの反復と同じ手法でサウンド的なアプローチは基本ジャズ。そして繰り返されるビートの中にクラシック的な透明感のあるフレーズのピアノが時にはジャズ的なメロディーやラテンのリフも時に駆使しながらでバンドの音を装飾します。これが楽曲の展開の基本形のようです。ピアノの樽栄氏はクラシック、ドラムの清水氏はジャズ、ベースの笹井氏はファンク、パーカッションの和佐野氏はラテンが音楽的なルーツが根底にあり、このルーツが見事に混ざり合った音楽は独自のクロスオーバーサウンドとなっています。
 さてアルバムのレビューですが、10 は、単純に聞こえるが難しいフレーズをベースとドラムが繰り返し繰り返しピアノが少しづつ色付けしていきドラムとパーカッションのソロのような部分に突入。ピアノが少し派手な色付けする。激しめですな。Horizon は、10よりも少し複雑なフレーズの繰り返しで、ピアノも10よりもアドリブ要素が強くなります。ダンサブルな要素が加わったフレーズです。Steps は更にメロディックにダンサブルになり、テーマのメロディーは覚えやすいので頭にこびりつきます。ドラムソロもカッコよくベースの上下運動も激しい。Move は美しめのテーマで激しさは押さえた楽曲です。相変わらず同じパターンの繰り返しですが、途中で入るブレイクにハッとして、また演奏が地始まるところドラムがひたすらジャズな感じも良い雰囲気。Gladiator は、邪悪な低音域のベースが主体で疾走感があります。途中のビ・バップにチェンジするところもにくい演出です。Detective まで来ると、このパターンに頭が耳が侵されてきます。アルバムの曲が進むにつれてジャズ、ポップの方向性も見せ始めたところで練習のようなパターンに再度突入。聴きながらも作業に集中できるヤツです。Raindance Synchronic ここで曲名のイメージが音で表現されているのがわかりやすい曲です。パーカッションの入れ方が雨だれみたいです。・・がこんな激しい雨だれに打たれたらビチャビチャですね。Synchronic は、普通の楽曲のイントロに出てくるようなテーマがレコードの針が飛ぶように繰り返されるのですが途中で針は飛ばずに曲が進行して、また元に戻ってくるといったような不思議な印象を受ける曲ですが大丈夫です。最後には発展してくれます。Moments は、普通のジャズのように聴こえます。何かホッとします。ここで Indigo の繰り返しの美学のようなパターンの方が意外と聴いている人が何か緊張感を持つのだと気づかされます。不思議な感覚です。最後の Light も、きっちり曲名が曲のイメージを体現しています。一筋の光が見えるような線の細いメロディーが美しい曲です。
 どうやらこの手のジャズは音楽的な分類学では Club Jazz がしっくりきますが、他のヒップホップ的な手法を取り入れたものとは明らかに異なる「音質」であり「ライブでは狂ったように押し寄せるビートで踊りまくれるので楽しい」とこのバンドを聴くことを進めてくれた名古屋時代の友人に感謝です。2016年夏で活動休止はもったいない。
 
piano : 樽栄嘉哉
bass : 笹井克彦
drums : 清水勇博
drums,percussion : 和佐野功

1. 10
2. Horizon
3. Steps
4. Move
5. Gladiator
6. Detective
7. Raindance 
8. Synchronic
9. Moments
10. Light


▶ Horizon



  

2023年2月10日金曜日

Derek And Dominos / Layla And Other Assorted Love Songs


 クリーム解散後、ブラインド・フェイスを経て結成したデレク・アンド・ドミノスの唯一のスタジオ録音アルバム1970年の「Layla」+ライブ録音。エリック・クラプトンの最高傑作とも言われ、ロック小僧に限らず世界中のギタリストが最も持っているあるいは聞いたことがあるアルバムの一枚ですね。ビルボードのポップアルバム・チャートで最高16位を記録し、RIAAのゴールドアルバムを獲得し、1972年と1977年にはBillboard 200でチャートインした。2011年にはイギリスのアルバムチャートで68位を記録、2000年はグラミー栄誉の殿堂入りしています。本作のスーパーデラックス・エディションは2011年に発売され翌年にはグラミー賞最優秀サラウンドサウンド・アルバム獲得の超ロングセラーです。
 クラプトン使用ギターは、前作のソロ・アルバム Eric Clapton(エリック・クラプトン・ソロ)から使用された1956年製フェンダー・ストラトキャスター、通称ブラウニーです。



 改めて久しぶりに聞いてみても難解聴いても飽きない素晴らしい内容で売れ続ける理由がわかります。買った当時から数十年聞いてない人も多いでしょうから、たまにもう一回聞いてみると良いのではないでしょうか。本作には、オリジナルではないセッションやライブなどが多数収録されているので、また新たに購入されても十分楽しめる内容となっています。
 さてアルバムの内容です。I Looked Away Eric クラプトンとウィットロックの共作でライトなサザン・ロック。地味な曲ですがアルバムの冒頭にこの地味な曲をもってくるってことは本当は、これがやりたい音楽の一つの形だからわかってくれというような強い自己主張を感じます。Bell Bottom Blues クラプトンによる作曲で、単純なブルースの進行ではなくメロディックなコードな流れがクラプトンらしい曲で売れ筋の要素満載の曲で、やはり良いです。Keep On Growing これもクラプトンとウィットロックの共作で、私的にはこのバンドのイメージをよく体現している曲と思います。Nobody Knows You When You're Down And Out ジミー・コックのカバーで、後のアルバムのMTVアンプラグドのバージョンの方がわかりやすいアレンジで印象にある人ものではないでしょうか。こっちの方が泣きのブルースって感じですね。I Am Yours はニザーミの詩にクラプトンが曲をつけたもので静かな曲ですが耳に残ります。Anyday は再びクラプトンとウィットロックの共作で方向性は Keep On Growing と同じタイプ。ギターソロに入る流れがとても好みです。 Key To The Highway はチャールズ・シーガー、ウィリー・ブルーンジーのブルースの古典曲です。スタジオ・ジャムを録音していたのを出来が良かったから入れたような体裁です。従ってクラプトンとオールマンのギターソロもわかりやすく自己主張のフレーズ満載でクラプトン・ファンのギター小僧は絶対好きなパターンで、中盤のグシャグシャ感もサービスの演奏です。Tell The Truth もクラプトンとウィットロックの共作。フェイセス当たりのブギー的なロック・サウンドな感じ。ライブとかで演ったら受けそうでコマーシャルな感じとボーカルの気合の入り方も好きです。Why Does Love Got To Be So Sad 中盤はクラプトンとウィットロックの共作が続きます。激しめの曲ですが、この作風はシカゴとかの流れかな。どっちが元祖だろう?Have You Ever Loved A Woman は、ビリーマイルスの古典ブルース。オールマン・ブラザースのバージョンにも名演ありますよね。悪かろう訳もなくここら辺の古典的名曲をアルバムに入れてくるのもやはりクラプトン流。Little Wing このアルバムにジミヘンが入っていたことは忘れてましたが再度聴き直して、そうそうこれこれと思い出しました。リバーブ深めの録音もジミヘンのサイケなイメージを出そうとしているのだなと再認識。It's Too Late はチャック・ウィリスのドゥーワップ・バラードをテンポ・アップさせたもので、やはりクラプトンのリメイクはうまい。そしてテーマ曲の Layla です。多くのギタリストに愛されコピーされ続ける名曲ですが私はリフぐらいしか弾けません。クラプトンだけの作曲と思っていたら、ピアノコーダ部分はジム・ゴードンとのことでした。全く違う曲を合体させたような、この流れも確かにこの曲を印象付ける重大な要素で改めて聴きながらこのアイデアも天才的と思います。Thorn Tree In The Garden は、ウィット・ロックの曲で、ウィットロック、クラプトン、オールマン、レイドル、ゴードンはスタジオで輪になって座り、マイクがその中央に置かれて録音が行われたとのこと。これも地味ですがバンドとしてのチームワークを表現しているようで、冒頭とラストにこのような曲の配置もアルバムとしてメッセージ性があるアルバムなのだと再認識しました。
 このアルバムはデラックス・エディションなので、2枚目のディスクはオリジナルには無いライブ音源などが収録されています。印象的なのは、サイケな雰囲気と凝ったアレンジですがビートルズっぽいとも感じる Roll It Over。 はじっけプリが楽しい Tell The Truth。ギター小僧としては、クラプトンのギターがたっぷり堪能できる Snake Lake Blues。単純にとがっていてカッコ良い Evil。曲のアレンジ力が見せつけられる Got To Get Better In A Little While Jam のバージョン違いの収録。
 おそらく多くの人が所有はしているが、ずっと聴いていない名アルバム。聴き直す価値あり。持っていなくて新規購入を考える人には、やはりこのデラックスの方がお勧めです。

guitar, vocals : Eric Clapton
bass, ercussion : Carl Radle
drums, percussion : Jim Gordon
organ, vocals : Bobby Whitlock (exept 1)
guitar : Duane Allman(except 1,2,3)
piano : Albhy Galuten(4)

【Disc1】
1. I Looked Away
2. Bell Bottom Blues
3 Keep On Growing
4. Nobody Knows You When You're Down And Out
5. I Am Yours
6. Anyday
7. Key To The Highway
8. Tell The Truth
9. Why Does Love Got To Be So Sad
10. Have You Ever Loved A Woman
11. Little Wing
12. It's Too Late
13. Layla
14. Thorn Tree In The Garden

【Disc2】
1. Mean Old World 
(Layla Session Out-Take)
2. Roll It Over 
(Phil Spector Produced Single B-Side)
3. Tell The Truth 
(Phil Spector Produced Single A-Side)
4.It’s Too Late 
(Live On The Johnny Cash Show, 5 November, 1970)
5. Got To Get Better In A Little While 
(Live On The Johnny Cash Show, 5 November, 1970)
6. Matchbox 
(With Johnny Cash & Carl Perkins) 
(Live On The Johnny Cash Show, 5 November, 1970)
7. Blues Power 
(Live On The Johnny Cash Show, 5 November,1970)
8. Snake Lake Blues 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
9. Evil 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
10. Mean Old Frisco 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
11. One More Chance 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
12. Got To Get Better In A Little While Jam 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
13. Got To Get Better In A Little While 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)



▶ Layla


  

2023年2月5日日曜日

Phat Phunktion / You And Me

 

 以前、Real Life .:. High Fidelity を聴いてから気にはなっていたバンドで、中古ですが、これで2枚目の購入となりました。以前のアルバムの印象は、きっちりとして切れのあるホーンアレンジでぴっちりと細かなキメで T.O.P. みたいだと言えば、その通りだが Phat Phunktion は思いっきり重量感があって硬質。一聴したところ T.O.P. 、クラブ・ジャズの熟練者のバンドであったものに今回は Hip Hop も取り込んでいる。進化したのかと思いきやアルバムは Real Life .:. High Fidelity は2011年、本アルバムは2004年であるから Real Life .:. High Fidelity の方が余計なものをそぎ落とした進化系のようであるようです。
 このバンドの略歴は、米ウィスコンシン州マディソンで1996年、大学で音楽を専攻する学生たちによって結成され、輸入盤が国内でも一部でヒットしてから国内盤でも発売されるようになったとの事。確か地元ラジオ局なんかで輸入盤をかけたところヒットした記事を見たような気がします。


 その他大きな特徴はヘビメタのような音色で鋭く切り込んでくるギターソロで、この手のファンクバンドでは珍しいですね。これに合わせるかのようにホーン部隊もキレがあるアレンジと録音になっています。
 さて曲の紹介です。Untitled (Weekend Special) ジャム・セッションとかでやっている曲なのだろうか? Untitled という曲名であり歌部分はラップを取り入れたファンクではありますが、キメの箇所あり多くラップ以外のところはメロディのある歌なので、おそらくその場でのジャムは無理だと思うのですが・・決まったパターンで曲の構成はあるけど weekend のライブの時だけ好きなソロを入れる曲名の無い曲なんだろうか? You And Me は、どっかで聴いたことのあるキーボードのバッキング・パターンにホーン・アンサンブル。コーラスに色っぽい女性のボーカルが入ってます。もしや上の写真の左後ろの女性かと Holly Brook を調べてみるともっと若い女性でした。Higher はミドル・テンポのソウルナンバーかと思ったら、またラップでした。ここら辺が今っぽくて良いと思うのか、アンバランスと思うのかは意見の分かれるところでしょう。How Do I Get Your Heart 踊れる系のファンク・チューンでソウル風のボーカルであっさりとまとめています。ギター・ソロもバランスを考えたきつすぎないフレーズで全体的にバランス良しです。Rocco は、これまたどっかで聴いたベースの打ち方とホーン・アンサンブルです。基本このパターン大好きです。歌無しのインストにしているのも良し、トランペットにワウをかけるのも良し(あの人のファンですね)最後は超高音にまで展開して欲しかったです。ギター・ソロも気合が見受けられます。Rock Star は、少し落ち着いた曲調でブラコン的な雰囲気もあるファンク。ボーカルが結構良いですがギターの人でしょうか。トロンボーン、サックスの方もボーカルとっておられるけどライナーノーツに詳しいことは書いてありません。Never Be The Same 売れ線な曲でギターが頑張ってますが頑張りすぎないでも良いと思うな。Integrity このアルバムでニ番のメロー路線でしょうか。ラップが入ってますが、これは賛否は別れずマッチしていると思います。曲調も含めて Acid Jazz ってやつでよくあるパターンですね。A Little Bit 派手さは無いけど曲としてまとまっていてセンスは良くて好きです。Red Carpet 変則技ですね。ラップも肺いて Acid Jazz ってやつです。このバンドっぽくないけど大好きの好きです。Always で正調に戻りました。ライブでみんながシーンとする曲です。一番のメロー路線です。Stand Up は締めの一曲なのでバンドも気に入っている曲を配置することが多いと思うのですが、色々な音楽性があるメンバーが気に行っている曲なんでしょうね。
 基本的に大好きなサウンドを持っているバンドなので応援したいですし、演奏技術はピカピカで、将来的に大物になる可能性はあると思うのですが器用貧乏っぽいところも感じなくはありません。他のアルバムも中古で見かけたら買います。

keyboards, vocals : Tim Whalen
guitar, vocals : Vince Jesse
guitar : Louka Patenaude (11)
bass : Jason Braatz
drums : Sheldon Allen
percussion : Pauli Ryan
alto sax, baritone sax : Dan Wallach
tenor sax, vocals : Al Falaschi
trombone, vocals : Courtney Larsen
trumpet : John Schipper (2)
vocals : Mr. Parker (8)
backing vocals : Holly Brook (2)

producer : Al Falaschi, Tim Whalen

1. Untitled (Weekend Special)
2. You And Me
3. Higher
4. How Do I Get Your Heart
5. Rocco
6. Rock Star
7. Never Be The Same
8. Integrity
9. A Little Bit
10. Red Carpet
11. Always
12. Stand Up

▶ Rocco




  

2023年2月4日土曜日

The Brand New Heavies / Brother Sister


 英・ロンドン出身で、ポップ・ジャズやクインシー系の音楽に、ファンク・テイストを強調した Acid Jazz(アシッド・ジャズ)と呼ばれる分野を牽引し、職人的な音作りファンクを愛する心が感じられるアルバムです。ただこのジャンル Acid Jazz(アシッド・ジャズ)とか、Jazz Funk(ジャズ・ファンク)、Club Jazz(クラブ・ジャズ)などとも呼ばれるようで音楽業界のセールスのためのカテゴリー用語は未だによくわからず、このタイプの音楽に Jazz(ジャズ)を絡ませたカテゴライズには若干ムリがあるんじゃないかとはいつも思っています。
 そして、このブログで所持品整理しながら見つかるジャケ写違いが発生していましたので、2枚分写真のっけときます。中身は同じだと思っていたら、なんと曲目が若干異なるようで右のバージョンには Midnight At The Oasis、Worlds Keep Spinning が入っています。でもレコード会社の策略には間違いないような気はします。
ジャケットの違いはこの違いです。
左 USバージョン Delicious Vinyl ‎ 
右 Europeバージョン FFRR


 2枚購入と言う失態はあるものの、このアルバムは全体にスローでまったり適度にファンキー全ての楽曲がシングル級の完成度で、Acid Jazz という単語に批判的なことも書きましたが他のアルバムよりも、少しジャズっぽさがあります。
 さて曲目の紹介です。Have A Good Time 楽曲の作りとしては単純なファンクで Let's all just have a good time を繰り返すナンバーだが永遠に繰り返せるぐらいのリフの力強さが魅力 Brother Sister 1曲目には参加していなかったボーカルの N'Dea の切ない歌声が最初は細い線で段々と力強く歌い上げる。タイトル曲だけに凝った作りになっています。Dream On Dreamer 一度聴くとキャッチーなメロディーと曲名のサビ部分は頭の中で繰り返される名曲で様々なアレンジを施されたバージョンが多数でているはず。Midnight At The Oasis アシッド・ジャズと言うよりこれはジャズ・ファンクと呼んだ方がしっくりくるインストファンクでキレが良いサウンドとホーン部隊のソロがなどが気持ち良い。Ten Ton Take これもホーン部隊が大活躍のインスト・ファンクで強力リズム隊がしっかりと土台を支えています。気持ち良いですね。Mind Trips で歌姫 N'Dea が舞い戻ってきます。曲に入る前に歌詞無しのハミングを入れるのがセクシーでカッコ良かったです。mind trips は got me trippin'out mind trips i can without のサビが、これまた呪文のように頭にこびりついてしまうのが魅力。Fake は掛け声?が印象的なファンクで、ライブではこの掛け声に合わせて客が飛び跳ねそうな元気いっぱいの曲。Spend Some Time も、きっちりと作りこんだ歌物でこれもきっちりと記憶に残っているメロディーが素晴らしい。Los Burritos 中休みのジャムセッションのような曲で1分くらいの小曲です。Back To Love これは懐かしい感じのする歌メロが素晴らしい曲で、男性ボーカルとともに曲が盛り上がる。Snake Hips は、リズム隊の練習曲のようでギターがギュイーンとだけしか鳴らさない。インパクトは絶大。Keep Together ここまで来ても、これだけの曲が続けて出てくるのは凄いなと最初聴いた時も思い始めた。シリアスな響きのサビとその後に出てくるピアノの高揚させてくれるコード進行とかが凄いんですよね。People Giving Love はレゲエです。でもメロディーラインはBNHです。なるほど癖になるのは、このメロディーラインにあるのかと今気づきました。Forever 重厚な低音ベースとジージーとなるようなギターの単純なバッキングが印象的です。後半になるとストリングスが入ってきてゴージャス感が増します。Day Break で最初はは爽やかに、最後は大団円のファンクで締めくくりとなります。
 何回聴いても捨て曲が無く、どこをとっても金太郎飴のように売れ線という単語が出てくる天才的なバンドです。incognite と比較してしまいがちですが、BNHの方がバンドとしてのまとまりがあります

vocals : N'Dea Davenport
guitar : Simon Bartholomew
bass : Andrew Levy
drums, Keyboards : Jan Kincaid

producer : The Brand New Heavies
written by : A. Levy (1, 2, 4 to 7, 10, 14), J. Kincaid (1, 2, 4 to 6, 9 to 14), N. Davenport (1 to 3, 5, 6, 12, 14), S. Bartholomew (1, 2, 4 to 6, 10, 12, 14)

1. Have A Good Time
2. Brother Sister
3. Dream On Dreamer
4. Ten Ton Take
5. Mind Trips
6. Fake
7. Spend Some Time
8. Los Burritos
9. Back To Love
10. Snake Hips
11. Keep Together
12. People Giving Love
13. Forever
14. Day Break

1. Have A Good Time
keyboards, backing vocals : Mike Boito
sax, backing vocals : Ray Gaskins
backing vocals : Brady Blade
backing vocals, percussion : A. Levy, J. Kincaid, N'Dea, S. Bartholomew

2.  Brother Sister
backing vocals : J. Kincaid, N'Dea
sax : Steve Williamson
trumpet : Gerard Presencer
trombone : Dennis Rollins
flugelhorn : Gerard Presencer
percussion :  TBNH

3. Dream On Dreamer
keyboards : Amp Fiddler
backing vocals, keyboards: N'Dea
flugelhorn : Gerard Presencer
flute : Mike Smith
percussion : A. Levy, Jeff Scantlebury

4. Ten Ton Take
keyboards : Max Beesley
trumpet : Kevin Robinson
sax : Mike Smith
trombone : Dennis Rollins
percussion : Jeff Scantlebury

5. Mind Trips
backing vocals : N'Dea
percussion : A. Levy, TBNH

6. Fake
backing vocals : Brady Blade
sax : Mike Smith
trumpet : Gerard Presencer
trombone : Dennis Rollins
backing vocals, percussion : A. Levy, J. Kincaid, N'Dea, S. Bartholomew

7. Spend Some Time
keyboards : Mike Boito
backing vocals : N'Dea
percussion : Jeff Scantlebury

9. Back To Love
sax : Steve Williamson
trumpet : Gerard Presencer
trombone : Dennis Rollins
percussion : Jeff Scantlebury

10. Snake Hips
sax : Mike Smith
trumpet : Gerard Presencer
trombone : Dennis Rollins
percussion :  TBNH

11. Keep Together
backing vocals : N'Dea
percussion :  S. Bartholomew

12.Pepole Giving Love  
keyboards : A. Levy
backing vocals : N'Dea
sax : Steve Williamson
trombone : Dennis Rollins
percussion : Jeff Scantlebury

13. Forever
backing vocals : N'Dea
flute : Mike Smith
percussion :  TBNH

14. Day Break
sax : Mike Smith
trombone : Dennis Rollins
trumpet : Gerard Presencer
backing vocals, percussion : A. Levy, J. Kincaid, N'Dea, S. Bartholomew



▶ Forever


  

2023年2月3日金曜日

David Sanborn / Straight to The Heart


 サンボーンを最初に知ったのがこのアルバムで、大学時代にジャズ研の先輩から「この曲をやれるメンツ集めてるんだけど」と渡された曲が、このアルバムの Smile でした。先輩は大学に入学してからサンボーンに惚れてアルトサックスを始め、多摩川のほとりで夜な夜な練習して完全コピーを完了してからのお誘いで、周囲からは Mr.Sanborn をささやかれるほどで、ライブをするごとに女性ファンが増えるといった実力者でした。数年前に同窓会でお会いしたところ、今はサラリーマンをしながらジャズ・フュージョン・ロックを問わず音楽優先の勤務時間が許される生活をなさっているとのことでサックスは一生のお友達になっているようです。
 スタジオでの地獄の特訓は、歌えなければ楽器で表現できるわけもない理論から楽器触らずに各パートを声で出して歌うことから始まり、このアルバムの音は全て覚えているほど聴きこんでいます。おかげで、すっかり洗脳されてしまい無人島に一枚だけ持って行けるんだったら私はこのアルバムを選びます。


 さてこのアルバム、サンボーン、マーカスはもちろんのこと今は亡きハイラムも最高の演奏で、キーボードのドン・グロルニック、ブレッカー・ブラザーズ、ドラムのバディ・ウィリアムス、名アルバムでは必ず参加している印象のあるパーカッションのラルフ・マクドナルドなどが出演で贅沢の極みの絶好調期の理屈抜きで楽しめるライブ・アルバムとなっています。
 それではアルバムの紹介です。Hideaway すべてが完璧なイントロ、売れ線のフュージョンのどこが悪い。かっこよすぎで最初の曲から全開に素晴らしい。ギターのハイラムのソロもロックで素晴らしい。今のフュージョンはやたら早弾きして難しいことをやりますが、ハイラムは早弾きはせずに、フレーズをつなげて展開するのが上手いのです。基本的にロックですがバッキングのクリーンなギターの音色も素晴らしい。 Straight To The Heart は、バンド全体がこの曲を大事に演奏しているのがわかります。タイトル曲でもあるよにサンボーンが一番感情を込めたサックスを吹いているのがこの曲でしょうか。Run For Cover ライブ映像ではこの曲が一番多いように感じます。ベーシストでスラップをやる人はこの曲を練習局にする人が多いようです。マーカスの静かなベース・ソロから始まるこの曲はマーカスの非凡な音楽性を思い知らされる名曲です。Smile 私はこの曲が全てのエッセンスが詰まっていて曲の表情も多彩で最高であると思っていますが世の中的にはそうでもないのかも知れません。別で発売されているビデオ Love & Happiness で見ることのできる2回目のギターソロのハイラムの弾けっぷりも最高です。今でもこの曲は全部歌えます。Lisa はライブでの休息を入れるバラードです。サンボーンのアルトが歌うように聴く人の心をつかむ曲。Love & Happiness これも学生時代のサンボーン・バンドのテーマの一つ。ボーカルものですが盛り上がります。ビデオ Love & Happiness では、これから始まります。Lotus Blossom も名曲です。これは Heart To Heart に収録されているスタジオテイクの方も良かった記憶があります。One Hundred Ways はポップなフュージョン・ナンバーで夕暮れを思わせるしんみりとしたテーマが魅力的な曲でコーラスも入っているのですが凄く良い。フュージョン曲でコーラスが入ったりするとダサくなる曲が多いのですがサンボーンのサックスが肉声のような役割を果たしているのと、やっぱりマーカスのセンスが良いのでしょう。
 何百回聴いても色あせない素晴らしいアルバムです。今夜の就寝時の子守歌はこのアルバムにします。

alto sax : David Sanborn
keyboards : Don Grolnick
guitar, backing vocals : Hiram Bullock
bass, synthesizer : Marcus Miller
drums, backing vocals : Buddy Williams
percussion : "Crusher" Bennett (2), Michael White (5) (6), Ralph MacDonald (3, 8)
horns : Jon Faddis, Michael Brecker, Randy Brecker (8)
lead vocals : Hamish Stuart (6)
backing vocals : Frank Floyd, Lani Groves, Vivian Cherry, Marcus Miller (8)

producer : Marcus Miller

1. Hideaway
2. Straight To The Heart
3. Run For Cover
4. Smile
5. Lisa
6. Love & Happiness
7. Lotus Blossom
8. One Hundred Ways


▶ Smile



  

2023年1月29日日曜日

Canned Heat / Rollin' And Tumblin'


 1967年のデビューアルバム。白人ブルース・バンドで戦前のジャック・ブルースの創始者の一人とされるTommy Johnson(トミー・ジョンソン)の Canned Heat Blues からバンド名がつけられたとのこと。Canned Heat は、食品を温めて冷まさないための燃料のことで1914年の製品名「Sterno Canned Heat」で、ブリキなどの缶に入って売られていたのだが、Canned Heat Blues 自体はアルコール依存の人がこのエタノールを含む Canned Heat を飲むようになってしまった人の歌とのこと。この時代のブルースのテーマは酒、女、貧困が主流だったので珍しくもないんですが直接タイトルは珍しいですかね。
 何故このアルバムを購入したのかと言うと、中学生ぐらいの時に兄が持っていた音楽系同人誌を興味津々で読んでいて、ヒッピー文化とともにこの Canned Heat というバンドが紹介されていました。サラリーマン札幌時代に中古CD屋で見つけて、これが Canned Heat かと直ぐに購入を決意を記憶しています。よく覚えてたもんです。


 結成は1965年デビューは1967年とのことなので、実力があるメンバーが集まってのバンド結成が予想されます。このデビューアルバムの原盤は Canned Heat というバンド名がアルバムにつけられていたものと中身は同じですが、ジャケ写はこれとは違うようです。また本作はカバー中心ですが2作目以降はオリジナルになっているようです。しかし私の Canned Heat の所有音源はこれしかありません。
 さて曲の紹介です。Rollin'and Tumblin' デルタブルースのクラシックで Hambone Willie Newbern が最初に録音、Robert Johnson、Muddy Waters がヒットさせています。スライド・ギターでアンプに直突っ込み、歪み無しのシンプル設計です。Bullfrog Blues オリジナルは William Harris で1928年らしいです。テンポ早めでベースがブンブンという感じでカッコ良い。ウシガエルのブルースなんですね。Goin'down Slow はオリジナル St. Louis Jimmy Oden で1948年作。スローブルースでハーモニカがソロのメインでこれも良い。 Dust My Broom は Robert Johnson 1936年で、ブルースバンドの教科書には必ずのっている名リフが印象的な曲です。初心者も直ぐにマネができるので誰もが通る道で王道の演奏  Evilis Goin'on は Howlin' Wolf がオリジナルの1954年。エルビス?と思ったら Evilis ですね。Catfish Blues は Robert Petway で1954年ですか。Muddy Waters が有名ですかね。Help Me は Sonny Boy Williamson II の1963年。同じような曲調のブルースだけど特徴のある曲です。Big Road Blues  は Tommy Johnson の1928年。スピード感とドラムのドカドカ加減が気分を変えてくれます。The Story Of My Life は Junie B. Jones でリリース年不明。ブギですね。おそらく自分の人生を嘆くブルースなのでしょうか。The Road Song は Wilson Hawk これもリリース年は不明。Rich Woman は Mississippi John Hurt でリリース年は不明。古臭くて雰囲気のある曲ですね。ブルース・ギター小僧はこんな曲でギターを練習します。
 なんかブルースの教科書みたいなアルバムでした。実は購入当初はワクワクしたものの、
つまらないと思っていたのですが今聴くとそれなりに楽しめる内容です。聴き手の私の変化ですね。でも少し聴き疲れするかもしれません。

vocals : Bob Hite
rhythm and slide guitar, vocals, harmonica : Alan Wilson
lead guitar : Henry Vestine
bass : Larry Taylor
drums : Frank Cook

producer : Cal Carter

1. Rollin'and Tumblin' 
2. Bullfrog Blues 
3. Goin'down Slow 
4. Dust My Broom 
5. Evilis Goin'on 
6. Catfish Blues
7. Help Me 
8. Big Road Blues 
9. Story Of My Life 
10. The Road Song
11. Rich Woman