2026年7月6日月曜日

Bud Powell / The Amazing Bud Powell, Vol. 1

 

 BlueNote(BLP5003)1951年リリース音源。1949年8月9日と1951年5月1日録音の2回に分けて録音され、1955年には収録曲を変更して12インチLP盤(BLP1503)がリリースされています。今回のアルバムは後発の(BLP1503)をCD化したバージョンです。
 「Un Poco Loco」 のTakeが3パターン続けて収録されていて「It Could Happen To You」 は(BLP5003)とは異なるTakeが収録、「A Night In Tunisia」については、異なるTakeと合わせて2曲、「Dance Of The Infidels」「52nd St. Theme」「Wail」「Parisian Thoroughfare」 は(BLP5003)には無い追加曲、(BLP5003)にあった「You Go To My Head」 は消えています。そして曲順も全く異なるものとなっているので(BLP5003)、かなり印象の異なるアルバムになっていると思われます。
 このアルバムのタイトルに Vol. 1 がついている通り Vol.2 を1953年の session録音で発表しているので、おそらく最初の録音後に続くアルバムを録音する企画が持ち上がり、Vol. 1, 2 のタイトルにして楽曲や構成を組みなおしての録音となったものと推測されます。(Vol2 は持ってません)


 ピアノ・スタイルは右手の高速なシングルトーンと、左手はコードプレーで頻繁なコードチェンジに徹する形です。Powell の最盛期は1940年代後半から50年代初頭にかけてと言われておりこれはその時期の作品で、他をあまり聞いていないのでわかりませんがこのアルバムでは終始「唸りっぱなし」でこの人も「唸るピアニスト」であったようです。音楽にのってくると唸る人は多いですがこの人は常に唸りっぱなしなのが特徴的です。(唸るミュージシャン)50年代中期以降は麻薬やアルコールなどの中毒に苦しみ、精神障害となっています。

 また特徴的なのは、Un Poco Loco が冒頭から続けて3Take入っていることで、一聴して難易度の高い曲ですので、納得がいくまでに時間がかかったようです。Loco はスペイン語で「狂気」の意味。モード的なコードにとらわれないソロ、完成形は、本体のリズムとカウベルの異なるリズムが複合するポリリズムになっているのが特徴的で、一聴して演奏者に難易度高そうな曲です。
「Un Poco Loco 1Take」カウベルのリズムはラテンの一般的なヤツです。ピアノソロも迷走していて、途中で曲は突然終わります。
「Un Poco Loco 2Take」カウベルのリズムを変えています。少し耳障りですが面白いかもしれません。ピアノソロに入る手前の、ベースとシンクロしたピアノの左手が迫力を加えています。ピアノソロは、未だ手探りしているようなところも見られ、ドラムソロに入るタイミングもブレイクなのか、なんなのかよくわからない感じがします。
「Un Poco Loco 3Take」カウベルは2Takeと同じリズムを使用して音量が下がり、録音のバランスも良くなります。ベースとシンクロしたピアノの左手が躍動感を強調し、流れるような演奏で曲の完成度も高くなっています。
 微妙にアレンジの違う演奏を収録しているリマスターが一般的ですが、曲が完成するまでの過程を、このように記録しているものは珍しいかと思います。
 「Dance Of The Infidels」曲名は「異教徒たちの踊り」という意味を持ちます。ビバップ特有のクロマチックを巧みに織り交ぜたスピード感あふれるメロディが特徴で、Un Poco Loco が強烈な個性を持っていたのでホッしてしまいます。
「52nd St. Theme」Monk作品です。Monk と車に同乗していてPowell の麻薬所持が警察に勘違いされて Monk のキャバレーカード没収は有名な話しですが、その時は1948年、この録音は1951年です。ニューヨーク・マンハッタンの52丁目は、ジャズ・クラブが密集していたことから「スウィング・ストリート」と呼ばれ、Monk もお気に入りの Powell に目をかけていた思い出の町でもあります。、Monk の持つストレンジなところと、ダンサブルなリズムを高速で再現しています。ステージでのオープニングやクロージングのテーマ曲として使われることが多かったようで、Monk 本人のアルバムでの演奏記録はなく、Charlie Parker のライブ音源「The Complete Live Performances on Savoy」「Royal Roost Bop」などで Monk の演奏を聴くことができるようです。 
「It Could Happen To You (Alternate Master)」最初に書いていますが、Alternate Master の表記で原盤にはないこのアルバムでの追加曲で、ルパートで始まりますが、ひとつひとつのセンテンスに感情が入ってリズミカル。またフレーズの間の切れ目で、一回止まってから次に入る流れが良いです。ここら辺 Monk に師事した影響なのかなと思います。
「A Night In Tunisia」よく聴くチュニジアは、いかに情熱をこめて熱く演奏するかみたいなものが多いですが、ここでは熱量よりリズム重視、ダンサブルで跳ねるようなベースも印象に残ります。ピアノソロは、ガヤガヤと叫びながら色々なものを詰め込んでいます。こちら Alternate も含め、管楽器は入っていないトリオ演奏。
「A Night In Tunisia (Alternate Master) 」本番テイクより若干早めに感じます。ピアノソロは、こちらの方が序盤から次第に盛りがっていく感じがスムーズで好きですが、途中のためらいの間みたいなところがあったり、熱量はオリジナルの方が高いような気もします。そこら辺でAlternate になってしまったんでしょうか。
「Wail」2管が加わった Powell 作曲の力強いハードバップ。
「Ornithology」 トランペット奏者の Benny Harris が Charles Parker と共作した曲で、How High the Moon のコードをコンストラクトして作られています。鳥類学を意味する言葉で、Parker のニックネーム Bird にちなんでいます。トリオ演奏で、少し遅れ気味に感じるピアノのフレーズが何か色々考えながら弾いているんだろうなと感じます。
「Bouncing With Bud 」また2管が加わった演奏です。トリオでは実験的にいろいろ試して、管が加わると完成された演奏になっているように感じます。Bud Powell 作。
 「Parisian Thoroughfare」Un Poco Locoと同様に未完成でも入れてしまった感じです。ピノソロが最初はためらいもなく饒舌で絶好調でしたが、なぜか途中で集中力が切れたようにフレーズが単調になったり途切れがちになったりして、話し声がして録音がぶった切れています。最初の部分の出来が良かったのでアルバムに追加したのでしょうか。

未完成な曲を完成させる過程を収録し、トリオとクインテットの曲の完成度を比較させるかのような録音順、果ては完成形の無い録音までと、これがジャズ録音のドキュメンタリーだと言いたいようなアルバムです。Bud Powell の企画というより制作サイドの Alfred Lion の戦略でしょうか🎶

piano : Bud Powell
bass : Curly Russell (1 to 3, 6 to 8, 12), Tommy Potter (4, 5, 9 to 11)
drums : Max Roach (1 to 3, 6 to 8, 12), Roy Haynes (4, 5, 9 to 11)
tenor sax : Sonny Rollins (4, 5, 9, 11)
trumpet : Fats Navarro (4, 5, 9, 11)

producer : Alfred Lion

recorded on August 9, 1949 (tracks 4, 5, 9 to 11) and on May 1, 1951 (tracks 1 to 3, 6, 7, 8, 12).

1. Un Poco Loco (1st Take) / Bud Powell
2. Un Poco Loco (2nd Take) / Bud Powell
3. Un Poco Loco / Bud Powell
4. Dance Of The Infidels/ Bud Powell
5. 52nd St. Theme / Thelonious Monk
6. It Could Happen To You (Alternate Master) / Jimmy Van Heusen And Johnny Burke
7. A Night In Tunisia / Dizzy Gillespie, Leo Robin
8. A Night In Tunisia (Alternate Master) / Dizzy Gillespie, Leo Robin
9. Wail / Bud Powell
10. Ornithology / Benny Harris (Charles Parker)
11. Bouncing With Bud / Bud Powell
12. Parisian Thoroughfare / Bud Powell





定年退職して延長をしないことにしたので、音楽以外のことをしばらく「ノージョブ定年 NoJobTeinen」と言う別ブログに書いてみることにしました。



  

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