タワレコをプラプラしていたら、シンプルなジャケットに購買意欲をそそる煽り文句の書いてある帯をしたアルバムが置いてあります。
その内容と存在感から、最も刺激的なブラック・ミュージック・アルバムのひとつに数えられる『The Glitter Of The City』。ドープでディープでパワフルでエモーショナル。艶やかなブラックネスと威圧感すらあるファンクネスがあざなわれ、凄まじい突出感で迫ってくる。ロン・エヴァレットはR&Bグループ、カステルズのシンガーとして活動し、のちにジャズ・トランぺッターに転向したミュージシャン。フィラデルフィアを拠点に活動し、本作も当地のミュージシャンとともに作り上げられた。ハンドメイドのジャケットに収められたオリジナル盤は、当時レコード店で売られることなく、現在では数枚その存在が確認されているのみである。英Jazzman Recordsが数年の調査を経て再発にまで辿り着き、何とその過程で未発表のマスターテープも発見。その音源もボーナストラックとして収録されている。正に桁違いのこの刺激、とことん味わいたい。(尾川雄介)
かなりの気合が感じられるコメントに興味をそそられ聴いてみると悪くない。とびっきり良いという訳では無く悪くない印象でした。
オリジナルのアルバムはリーダーでトランペットの Ron Everett が自主レーベル Vagabond King から1977年の4月4日に8枚のテストプレス。同年の12月7日に500枚がプレスされたとのことで、手売りとメール・オーダーでの発送による販売だったとのこと。相当のレア・アイテムです。タワレコにもジャズ・コーナーに置いてあり、カテゴリー的にはジャズに分類されるようですが私にとっては完全にジャズ・ファンク、アシッド・ジャズの流れに感じます。私の教科書のようなジャズ・ファンク・アルバムの FUNK. INC / CHIKEN LICKIN' は1971年 1972年のリリース、Donald Byrd / Black Byrd は1973年、Grant Green / Shades of Green は1971ですから、このアルバムが録音される5~6年前には流れは始まっていたわけでジャズ・ファンク元祖というほどではありません。
トランペットでボーカルの Ronald Everett は西フィラデルフィア出身で通っていたサルツバーガー中学がクワイアで有名な学校でありベーシスト、シンガーとして活躍していて、卒業の16歳とともにトランペットも独学で学び始め、The Castelles というボーカル・グループを結成して1953年に初レコーディングし、My Girl Awaits Me が10万枚の売り上げたとのことで、ここではベーシスト、シンガーのままでした。そして彼は大学にも通いながらストリート・パフォーマーを続けこのアルバムの制作となります。
エバレットは、戯曲やミュージカルの楽曲をメインにフィラデルフィアで活動を続けミッキー・リアルという名前で本を自費出版するなど常に何かを発信し続ける人だったようです。このアルバムもジャズ、ジャズ・ファンクという枠ではなくソウル調の楽曲であったり、ドラムやパーカッションが無理やりボサやサルサ系のリズムを混ぜてきたりと聴いていてニヤリと楽しめます。不要にボーカルにいきなりエコーを突然かけてくるところもバランスを考えない思い付きにも愛すべきB級品の風格を感じます。リズム隊はしっかりとしているのですが、トランペット、サックスなどの管楽器は感情の向くままに吹いているので、若干技巧的にアウトな訳では無く調子っぱずれになっているところなどもあり、演奏技術に優れているものではないところも味の一つになっています。好き嫌いは非常に分かれるところではありますが、私はこのタイプのダサ・レアな奴も好物の一つですので満足の一枚でした。この手のアルバムは一聴では違和感があるのですが、聴き続けるほどに味が出てくるものと認識しています。
1. Royal Walk
trumpet, voice : Ron Everett
alto sax : Jimmy Savage
alto sax, baritone sax : Bobby Zankel
trumpet : Bill Walsh
flugelhorn : Hakim Yusef Sadiz
bass : Lenard Fletcher Bey, William P. Bennett
piano : Dennis Fortune
Percussion, Bongos : Ron Mitchell Howerton
2. Glitter Of The City (Song By Tahira)
trumpet : Ron Everett
voice : Tahira
sax : Jim Miller
piano : Charles King
bass : Bean Chandler
drums : Nate Jones
congas : Adib
guitar : Warren Marcus
3. Tipsy Lady
piano, voice : Ron Everett
bass : Earl Womack
drums : Lex Humphries
4. Mood Two Latin For You
trumpet : Ron Everett
sax : Jim Miller, Robert Shabazz
piano : Charles King
guitar : Warren Marcus
bass : Bean Chandler
congas : Adib
drums : Nate Jones
5. Pretty Little Girl
piano, voice : Ron Everett
bass : Earl Womack
drums : Lex Humphries
6. Musicman New Rock Joy
voice, trumpet : Ron Everett
sax : Jim Miller, Robert Shabazz
piano : Charles King
guitar : Warren Marcus
bass : Bean Chandler
congas : Adib
drums : Nate Jones
7. Let Your Spirits Be Free
trumpet : Ron Everett
sax : Jim Miller, Robert Shabazz
piano : Charles King
guitar : Warren Marcus
bass : Bean Chandler
congas : Adib
drums : Nate Jones
【Bonus Tracks】
8. Fanfare For Coltrane
9. Untitled No. 4
10. Untitled No. 5
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