2023年2月12日日曜日

Scott Hamilton / The Grand Appearance

 

 Scott Hamilton(スコット・ハミルトン)1954年生まれで、幼い頃はピアノとクラリネットを習い17歳からテナー・サックスに転向1976年にニューヨークへ進出したミュージシャンです。レコードデビューは1977年で、このアルバムはその翌年の1978年の録音です。
 かなり昔っぽい作風と録音なので1940年代かなと思っていたら新しい録音(と言っても40年以上前の録音ですが)なので、ビックリしました。なにしろ同時期のジャズ・フュージョン界のヒット作と言えば Weather Report などのフュージョン全盛期で、Heavy Weather(1977年)、Mr Gone(1978年)などのヒット作が発表され、旧来のジャズ人気が下火の頃と考えると、旧来の4ビート・ジャズ・ファンとジャズ至上主義の業界人は期待を寄せていたに違いありません。
 それだけに新人のサポートはHank Jones(ハンク・ジョーンズ)Tommy Flanagan(トミー・フラナガン)George Mraz(ジョージ・ムラーツ)Connie Kay(コニー・ケイ)と言ったジャズ・ジャイアンツばかりなのがすごい。


 現在私の所有音源でもテナー奏者に着目した音源は少ないため、参加されているアルバムは見当たりませんでした。名前は知っていたが、あまり聴いたことがない人だけに新鮮。テナーならではの、深い響きとトーンです。所有音源で近いのはZoot Sims(ズート・シムズ)ではありますが、彼ほどの図太い感じの夜と酒を感じるような音でもなく品行方正な
感じがしました。
 それではアルバムのレビューです。Crazy Rhythm 1928年のミュージカル Here's Howe のために Irving Caesar、Joseph Meyer、Roger Wolfe Kahn によって書かれた作品で、ショーがこれから始まるようなオープニングに相応しい軽やかな曲。I May Be Wrong 1929年の Henry Sullivan の作曲 Harry Ruskinn による作詞のポピュラーソングで、ローボイスで歌うようなテナー・サックスのソロはムードは満点で緩やかなソロは聴きやすい。Body And Soul は定番のスタンダード。軽めのタッチは聴きやすくて良いが少々刺激が欲しい。 All Of Me も定番のスタンダードですが、こちらは少しテンポ・アップしてきて流れるようなテナー・ソロとなっていて高音のしゃくりも出てくる。段々と面白くなってきました。ピアノの Hank Jones のソロ、George Mraz のベース・ソロの回しも余裕があります。The Shadow Of Your Smile (Theme From The Sandpiper) は邦題「いそしぎ」ですね。ここまでがピアノが Hank Jones です。You'd Be So Nice To Come Home To 邦題は「帰ってくれたらうれしいわ」で大橋巨泉によってつけられたらしいですが、こちらはそのまま英語読みの方がポピュラーですね。ピアノは Tommy Flanagan に交代して現代的なサウンドにぐっと変わったのが印象的で、スイングする波が違うのがよくわかります。I Thought About You は1939年のJimmy Van Heusen 作曲、Johnny Mercer 作詞のスタンダードでロマンチックなテーマがいかにもジャズって感じで素敵な曲です。これも Tommy Flanagan によって全く違うスイング感が出て ハミルトンのサックスも前半の古き良き時代を思わせる吹き方から変わってきている。伴奏によってインスパイアされるフレーズが変わるんでしょうね。Out Of Nowhere は1931年 Edward Heyman、Johnny Green によるポピュラー作品で Body And Soul の作者でもあります。イントロからいきなりテーマをハミルトンが吹き始めるのですが、テーマ部分は静かにソロで徐々に盛り上がりながら強弱をつけながら盛り上がっていくのが静かに盛り上がります。Cheek To Cheek 1935年のTop Hat というミュージカル映画にために Irving Berlin が書いた曲でいかにもジャズらしい盛り上がりのあるメロディがスムーズ。このアルバムで一番盛り上がっているような気がします。New York Blizzard Blues はハミルトン作曲です。スインギーでメンバーが一番リラックスして演奏しているので最後にもってきたのでしょうか。
 若干退屈さも感じましたが、聴きこめばピアニストでこれほど演奏の内容が変わるのかと対比がくっきりしているのを発見して少し面白くなった。デビューしたてのフレッシュなハミルトンと書いてありますが余りフレッシュさも感じないのが微妙ですかね。

tenor sax : Scott Hamilton
bass : George Mraz
piano : Hank Jones (1 to 5), Tommy Flanagan (6 to 10)
drums : Connie Kay

producer : Gus P. Statiras

recorded January 23 (1 to 5), and February 8, (6 to 10) 1978 at the Downtown Sound Studio, New York, NY.

1. Crazy Rhythm
2. I May Be Wrong
3. Body And Soul
4. All Of Me
5. The Shadow Of Your Smile (Theme From The Sandpiper)
6. You'd Be So Nice To Come Home To
7. I Thought About You
8. Out Of Nowhere
9. Cheek To Cheek
10. New York Blizzard Blues





  

0 件のコメント:

コメントを投稿