真っ白なジャケにエンボスで曲名が文字加工してあるCDジャケットは無機質。実際に音を聞いてみるとピアノ、アコースティック・ベース、ドラムと全て生楽器なのに、楽曲が基本的にドラムとベースが同じリフを正確に繰り返すバンドサウンドも無機質に聞こえます。無機質ではありますが、ベースとドラムの重低音感はかなりのもので、この音圧とスピード、正確さでウッド・ベースを1曲弾き続けるのは相当の剛腕の持ち主であります。
Indigo Jam Unit は2005年に結成されたインストユニットで結成10年目で本作は10枚目のアルバムです。デビューアルバムの Demonstration から既に強力なビート感と重低音のベースを武器にインパクトのあるサウンドでした。そのデビューから夏にレコーディング、冬にリリース、年明け全国ツアーというスケジュールを、メンバーチェンジも一度も行わず10年間続けてきた彼ら4人にしか出すことができない力強いサウンドが売りです。本作品も、約2ヶ月間にわたり、ほぼ毎日セッション、リハーサルを繰り返しつくられレコーディングは全曲一発録音。ダビングや修正を一切行わないのがポリシーとのこと。
楽曲の構成自体はファンクでよくある16ビートのリズムとフレーズの反復と同じ手法でサウンド的なアプローチは基本ジャズ。そして繰り返されるビートの中にクラシック的な透明感のあるフレーズのピアノが時にはジャズ的なメロディーやラテンのリフも時に駆使しながらでバンドの音を装飾します。これが楽曲の展開の基本形のようです。ピアノの樽栄氏はクラシック、ドラムの清水氏はジャズ、ベースの笹井氏はファンク、パーカッションの和佐野氏はラテンが音楽的なルーツが根底にあり、このルーツが見事に混ざり合った音楽は独自のクロスオーバーサウンドとなっています。
さてアルバムのレビューですが、10 は、単純に聞こえるが難しいフレーズをベースとドラムが繰り返し繰り返しピアノが少しづつ色付けしていきドラムとパーカッションのソロのような部分に突入。ピアノが少し派手な色付けする。激しめですな。Horizon は、10よりも少し複雑なフレーズの繰り返しで、ピアノも10よりもアドリブ要素が強くなります。ダンサブルな要素が加わったフレーズです。Steps は更にメロディックにダンサブルになり、テーマのメロディーは覚えやすいので頭にこびりつきます。ドラムソロもカッコよくベースの上下運動も激しい。Move は美しめのテーマで激しさは押さえた楽曲です。相変わらず同じパターンの繰り返しですが、途中で入るブレイクにハッとして、また演奏が地始まるところドラムがひたすらジャズな感じも良い雰囲気。Gladiator は、邪悪な低音域のベースが主体で疾走感があります。途中のビ・バップにチェンジするところもにくい演出です。Detective まで来ると、このパターンに頭が耳が侵されてきます。アルバムの曲が進むにつれてジャズ、ポップの方向性も見せ始めたところで練習のようなパターンに再度突入。聴きながらも作業に集中できるヤツです。Raindance Synchronic ここで曲名のイメージが音で表現されているのがわかりやすい曲です。パーカッションの入れ方が雨だれみたいです。・・がこんな激しい雨だれに打たれたらビチャビチャですね。Synchronic は、普通の楽曲のイントロに出てくるようなテーマがレコードの針が飛ぶように繰り返されるのですが途中で針は飛ばずに曲が進行して、また元に戻ってくるといったような不思議な印象を受ける曲ですが大丈夫です。最後には発展してくれます。Moments は、普通のジャズのように聴こえます。何かホッとします。ここで Indigo の繰り返しの美学のようなパターンの方が意外と聴いている人が何か緊張感を持つのだと気づかされます。不思議な感覚です。最後の Light も、きっちり曲名が曲のイメージを体現しています。一筋の光が見えるような線の細いメロディーが美しい曲です。
どうやらこの手のジャズは音楽的な分類学では Club Jazz がしっくりきますが、他のヒップホップ的な手法を取り入れたものとは明らかに異なる「音質」であり「ライブでは狂ったように押し寄せるビートで踊りまくれるので楽しい」とこのバンドを聴くことを進めてくれた名古屋時代の友人に感謝です。2016年夏で活動休止はもったいない。
piano : 樽栄嘉哉
bass : 笹井克彦
drums : 清水勇博
drums,percussion : 和佐野功
1. 10
2. Horizon
3. Steps
4. Move
5. Gladiator
6. Detective
7. Raindance
8. Synchronic
9. Moments
10. Light
▶ Horizon
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