2022年12月3日土曜日

向井滋春 / Mukai On The Wing Live Recording

 


 学生時代にトロンボーン・フュージョンバリバリの向井滋春のコピーバンドを組んでいたことは何度か、このブログで書いていると思いますがバンドを組んでいたことがトロンボーンという楽器の出す音、音使いの魅力を、この時に刷り込まれたんだなあと改めてこのアルバムを聴いて思います。
 トロンボーンを吹いたことは無いですが、指使いではない楽器の特性を思うとキレの良いトロンボーンは聴いていて感嘆するものがあります。
 このアルバムは、行きつけのおでんバーで私以外に誰も来なかったときにマスターと向井滋春を聴いていて、やはり良いなあとお借りした一枚であります。


 このアルバムは1991年1月24日25日に行われた江古田の Buddy でのライブの収録です。録音状態が良く音像も奥行きがあるのだがライナーノーツによると、この会場は広くは無かったらしい。リーダー作としては久しぶり録音のようですが気負いのある録音というよりは、ブラジル音楽をベースにした息の合った演奏は聴いていて安心感があります。アルバム全体としては曲調とは裏腹にノッペリしてしまっている印象がありますが、それほど広くない会場でのライブだったことから間近で見る演奏に向井さんやメンバーの妙技を見れて観客は十分楽しめるめるものだったものと想像されます。
 オープニングは、トロンボーンの巨匠JJジョンソンの Lament 向井さんのテーマ・ソロとリーダー・メインで聴かせてくれます。トロンボーンでこの細かな音階の表現はさすがです。 Berlin は向井さんのオリジナルで1980年ベルリンジャズフェスに出演した際にベルリンの壁崩壊の喜びを込めて描いた曲。 Tamagawa Blues ( タマガワ・ブルース ) も向井さんのオリジナルなのはネーミングからわかります。 Forever も向井さんのオリジナルで本気の美しいバラード。Vera Cruz はブラジルの黒人音楽家ミルトン・ナシメントの作品でいかにも向井さんの好みのブラジルテイストのジャズです。 Dindi は、アントニオ・カルロス・ジョビンの作品で美しいイントロとうっとりとさせるトロンボーンのロングトーンがマッチしています。そして誰もが知るジャズ・スタンダード All The Things You Are はブラス部隊がイキイキと軽々とした演奏でここら辺の曲になるとまさに円熟味が感じられます。Purple Field はブラジルテイストの向井オリジナルですがオリエンタルな音使いも魅力的。. Wedding はアフリカの黒人ピアニスト、ダラー・ブランドの作品。アフリカよりもポップなメロディー・ラインが印象的。ラストは、日本人大好き Recado Bossa Nova です。定番ですよね。このグルングルンと開店するように軽やかな展開は大好きなパターンです。
 今回も和ジャズの良さを感じるアルバムでした。演奏的にはえっこれが日本人?というレベルの高さですけど計算されたような外しのない構成は和ジャズならではの楽しみですね。こうゆうのはオジサンになってくると演歌の良さがわかってくるみたいなものと共通する間隔なんでしょうか。

trombone : 向井滋春 Shigeharu Mukai
bass : 古野光昭 Mitsuaki Furuno
drums : 村上寛 Hiroshi Murakami
piano : 福田重男 Shigeo Fukuda
tenor sax : 山口真文 Mabumi Yamaguchi

producer : Genroh Hara

recorded January 24 & 25 1991 @ Buddy, Ekoda Tokyo.

1. Lament
2. Berlin
3. Tamagawa Blues ( タマガワ・ブルース )
4. Forever
5. Vera Cruz
6. Dindi
7. All The Things You Are
8. Purple Field
9. Wedding
10.Recado Bossa Nova





  

2022年12月2日金曜日

Bill Withers / Live At Carnegie Hall


 1970年代に活躍した男性ニューソウル系と言えば、Donny Hathaway (1945 - 1979) Bill Withers(1938 - 2020)Curtis Lee Mayfield(1942 - 1999)Marvin Gaye (1939 - 1984) などを挙げる人が多いと思いますが、私の音楽系リスナー仲間では Bill Withers は馴染みが薄い人のようで、行きつけの音楽好きが良く集まる「おでんバー」ではビル・ウィザーズをかけても懐かしんでくれる人はあまりいません。私よりも10歳年上のマスターなんかは確実に世代だと思うのですが、Use Me をかけても無反応で、ソウル・ファン以外の日本ではマイナーな存在かもしれません。でも私にとってはカーティス、マービンゲイ は別格として、Donny Hathaway、Bill Withers は双璧をなすヒーローです。


 このアルバムは1972年10月にアメリカのカーネギーホールでのライブ。ソロ2作をリリース後の唯一のライヴ盤です。ビル・ウィザーズにとって、初めての全国ツアーのせいか満員のファンを前にスタート直後は、恥ずかしがったような話し方だったのが、徐々にこなれ最後は新曲「Harlem」では大合唱での大団円となります。USアルバム・チャート第63位、US R&Bアルバム・チャート第6位の売り上げとなったヒット作です。
 Donny Hathaway、Bill Withers に共通するのは、ソウルとともに感じるフォーキーな味わい。私が特に好きなのは1曲目の様々なアーチストにカバーされている Use Me で単純なコードと歌なのにシャウトもしてないのに何故こんなに熱いのか名曲です。Ain't No Sunshine は、何故こんなに寂しいメロディーなのか? Lean On Me は何故こんなに心を揺さぶるのか?シンガーとしても素晴らしいが一挙にソングライターとしても素晴らしい人でこれも文句なしに素晴らしいライブ!

vocals guitar piano: Bill Withers
guitar : Benorce Blackmon
bass : Melvin Dunlap
piano, string & horn : Ray Jackson
drums : James Gadson
percussion : Bobbye Hall

1. Use Me
2. Friend of Mine
3. Ain't No Sunshine
4. Grandmas's Hands
5. World Keeps Going Around
6. Let Me in Your Life
7. Better Off Dead
8. For My Friend
9. I Can't Write Left Handed
10. Lean On Me
11. Lonely Town Lonely Street
12. Hope She'll Be Happier
13. Let Us Love
14. Harlem/Cold Baloney

▶ Use Me





  

2022年11月27日日曜日

Horace Silver Quintet / The Styungs Of Silver

 

 アート・ブレイキーを入門編としてファンキー・ジャズを好んで聴くようになってから、やはりこの人は欠かせないですが、私自身ソロ作品は未だそれほど聴きこんでいる訳では無く少しづつ集めている状態で、もっか3枚。これで4枚目です。6 Pieces Of Silver、 The Horace Silver Quintet / Horace-ScopeThe Horace Silver Quintet / Song for My Father で、最初に購入したのは Song for My Father でした。
 1928年生まれで作曲でも「ソング・フォー・マイ・ファーザー」「ザ・プリーチャー」「ニカの夢」「シスター・セイディ」など数多くのお馴染みの作品を残しています。家系はポルトガル系で父親からの影響で、西アフリカのカーボベルデ共和国の民謡を聴いて育ったとのこと。


 所謂名盤と言われる 6 Pieces Of Silver の次作として録音された作品で Blue Note での5作品目です。初録音は1956年 New Faces New Sounds (Introducing the Horace Silver Trio) ですが、後にアートブレイキーのリーダー作として曲を追加して Horace Silver Trio and Art Blakey-Sabu として発売されているので私は5作目と理解しています。
 ハード・バップ全盛期の録音らしくファンキーさとノリの良さが楽しく聴きやすいサウンドです。前作 trumpet が Donald Byrd だったのが今作は Art Farmer となっていて、tenor Sax Hank Mobley、drums Louis Hayes は継続です。アドリブ云々もあるのだろうが、何よりサウンドのまとまり感を感じる名演です。余裕を感じながらも若々しさもあり、選曲も良く統一感のある飽きのこないアルバムです。
 オープニングは No Smokin' で、ホーンとピアノの掛け合いとスムーズかつスピーディななリズム隊の流れが気持ち良い。The Back Beat は、2拍、4拍が強調されるビートを強調するリズム主体の曲で、曲の構成は16小節×2、8小節ブリッジ、8小節エンディングでホレスシルバーでは珍しい構成とのことだが違和感は全くない。Soulville はオーソドックスなマイナー・ブルースで、ライナー・ノーツに書いてあるホレス談では「メロディーはずっと2拍子でソロから4拍子」とあります。そこらへんが古臭くもありカッコよくもあります。Home Cookin' もモダンな雰囲気があり泥臭くもあるが美しい曲です。ホーンがイントロでテーマをこなしソロはアートとハンクがやり皆が戻ってきてワイワイとテーマに戻り温かでチームワークの良さが感じられます。Metamorphosis は15+15+16+15小節のAABA形式の変則だが違和感は全く感じさせなくてすんなりと耳に入ってくる名演でスピーディーで流れるようなスムーズな進行。ここまでは全てホレス・シルバーの作曲で最後の締めはスタンダードの My One And Only Love で静かなサロンで聴いているかのようなゆったりとした温かな演奏で締めくくられている。これがまた良い出来です。
 ホレス・シルバーのピアノは派手ではないけど自然な感じが良いですしこのアルバムは構成のセンスの良さが感じられお薦めです。

piano : Horace Silver
bass : Teddy Kotick
drums : Louis Hayes
tenor sax : Hank Mobley
trumpet : Art Farmer

producer : Alfred Lion

recorded on May 8, 1957 at the Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey
originally issued as Blue Note BLP 1562 and BST 81562

1. No Smokin'
2. The Back Beat
3. Soulville
4. Home Cookin'
5. Metamorphosis
6. My One And Only Love





  

2022年11月25日金曜日

向井滋春 / Hot Session

 


 行きつけのおでんバーに行って飲んでたんだけど誰も来ない。マスターと二人しか居ないのでこんな時は一般的ではない趣向の強いヤツをじっくり選んで聴くことが多いのです。このアルバムもマスターが奥からCDの箱を持ってきてゴソゴソとやってからフンフンと言いながらかけてくれたました。おでんバーでかけるのは洋ものが多いのです日本人ではマスターが好きな西荻窪にライヴハウス「アケタの店」のオーナーピアニストの明田川荘之などが良くかかっています。向井滋春を聞くのは久しぶりだったかもしれません。私も日本人アーチストはあまり知らないのですが向井滋春は大学の時にフュージョン時代の曲をコピーバンドでやっていたりしたんで、このトロンボーンの響きは、しっかり頭に焼き付いていて久しぶりに聴きながら懐かしい響きが心地よかったので借りてきてしまいました。


 さて和ジャズのトロンボーンの第一人者向井滋春は1949年1月21日、名古屋生まれ。高校入学時に吹奏楽でトロンボーンを始め同志社大学でビッグバンド、コンボで腕を磨き、1970年にヤマハLMコンテスト入賞、'72年川崎僚バンド、大友義雄バンド、に参加しながら自己のバンドも結成。'79年にニューヨークに渡り、帰国後「モーニングフライト」を結成し「オリッサ」と改変、「渡辺香津美キリンバンド」「松岡直也ウイシング」にも参加されています。(ここら辺は私のツボです)その後ブラジリアン音楽のミュージシャンと共演したしながらエルビン・ジョーンズとのツアーを機に再びストレート・ジャズの世界に帰ってきて'86年に板橋文夫、古野光昭、古沢良治郎とこの「ホットセッション」を結成したわけです。
 アルバムの印象は流行の音楽にも、その演奏を提供し続けているメンメンが明るく洒落っ気たっぷりに流行に媚びずに正々堂々と明るくおおらかにジャズしていることですね。洋ものには無い雰囲気が溢れていて日本人にはやはり共通の心があるんだなと感心してしまいます。また録音はかなに良くて、向井さんのトロンボーンの音色の変化が鮮やかに捉えられています。
 Expression は、ベース古野の作品でストレートなジャズだけど粋なメロディーとテンポが嬉しい。決して和じゃないけど和を感じるんですよね。わかるかな~。Quiet Eyes は向井さんの作曲でトロンボーン・メインのバラードです。ロング・トーンが向井さん独特のビブラートとトリルが楽しめる構造ですね。Ojisan Korekara はピアノ板橋さんの作曲で、こうゆうユニゾンと決めの曲はジャズに限らず日本のこの時代のフュージョン系のバンドではよくあるパターンかと思われ、そういった意味で和を感じるかなあ。ああ楽しい。雨あがりの朝 はドラム古澤さんの楽曲で、幻想的な曲になっています。テーマのメロディーはどっかで聴いたことありますが思い出せない。童謡か?唱歌か?ですかね。I'm Getting Sentimental Over You は1934年に Tommy Dorsey and His Orchestra というビッグバンドで初演奏
され、 Tommy Dorsey's の死後にフランク・シナトラが残されたビッグバンドと共演して有名になった曲とのこと。ですが、これはドラムと向井さんの二人のバトル曲になっています。お好きなんですね。ヤンヤ、ヤンヤ。Limehouse Blues も昔のブルース・スタンダードで安定のリラックスナンバーです。ノリとしては Gadd Gang に近いようなアップテンポのファンク・ブルース仕立てで余裕の大人を感じます。Lady's Blues はソウルバラード系のジャズ・ブルース・スタンダード でこれも定番曲なのでしょうか。ひたすら余裕の色気のある演奏です。Half Moon でピアノ板橋さんの曲となりますが、ここでこのバラードは泣かせます。Landsat View で向井さんのオリジナルで、ジャズ色の中に向井フュージョン的なノリの現代的なアップテンポナンバーです。ジャズなんだけど違うんですよね。楽しかったアルバムもこれで終わり Drunk On The Moon です。スタンダードで締めるのか。最後にこれ聴いてもう一杯飲んでいってねって感じです。楽しい和ジャズの世界でした。おでんバーのマスターありがとうございます。

向井滋春 Trombone
板橋文夫 Piano
古野光昭 Bass
古澤良治郎 Drums

録音:1989年7月3~12日

オリジナル・リリース:1989/10/01 CY-3992

1. Expression
2. Quiet Eyes
3. Ojisan Korekara
4. 雨あがりの朝
5. I'm Getting Sentimental Over You
6. Limehouse Blues
7. Lady's Blues
8. Half Moon
9. Landsat View
10. Drunk On The Moon






  

2022年11月20日日曜日

Thelonious Monk / Monk

 

 1962年 Riverside から Columbia へ移籍し、レコーディングには予算と日程が十分にかけられるようになったので、このような贅沢な録音期間がとれるようになり、このアルバムは 1964年3月~10月にかけての Columbia のスタジオで録音されたアルバムだがセッションはたったの3回であったらしい。
 録音の1964年はモンクの最もノリにのっていて忙しかった時期で、1964年1月~3月に It's Monk's Time を収録、その後すぐに3月からレコーディングしたのがこのアルバムという訳です。


 数年前まではモンクはあまり聴かずに知らなかったクセにこんなことを言うのはおこがましい気がしますが、この時代のモンクは金と時間と時間もあるのでかなり安定した演奏で、モンクのぶつけるような音階と不安定さが好きな私にとってこのアルバムは快作であることは理解できるのですが若干物足りなくも感じます。
 さて、このアルバムの中身です。スタンダードとオリジナルで構成されています。1曲目はガーシュインの Liza でダンサブルなナンバーですが小気味よいリズムに合わせてモンクの違和感のあるコード進行がマッチしていてポップさもあるかっこいい仕上がりです。2曲目 April In Paris はエリントンですか。最初はソロでしっとりと聴かせるこの曲は Himself なんかでも演奏されていてモンクのお気に入りの曲とのこと。調べていたら Genius Of Modern Music の Vol 1にも収録されているとのことなので未だ私のコレクションにはいいていないのでどっかで手に入れます。そして3曲目は Children's Song は童謡で日本ではチューリップですね。こんな遊びを入れてくるところに余裕を感じます。続く I Love You もスタンダードで1928年のルディ・バレーによるヒット曲です。ラグタイム風な曲なのでホンキートンクなピアノで弾けばもともとモンクっぽくなってしまうのでノスタルジックなメロディーはモンク流の処理は浅めです。Just You, Just Me もスタンダードで1929年にジェシー・グリアによって作曲された曲で、これは意図的なモンク・コードががっちりと挿入されていて、ここまでやっていると気持ち良いですね。Live At The It ClubThe UniqueMonk's Mood などにも収録のお馴染みの曲。Pannonica は Monk's Mood Criss-Cross Alone In San Francisco などにも収録さていますが、Briliant Corners が初演とのこと。時代とメンバーによる演奏の変化は後でじっくり聴きこんでみます。Teo は Live At The It Club にも収録されていますが、プロデューサーのテオ・マセロ Teo Macero に捧げられた曲で、どんな人物だったかはよく知りませんが曲イメージからするとノシノシとした大男のような感じがします。
 全体的には陽のモンクがここにいて、オリジナルのライナーノーツは、ビル・エバンスが書いていて「このアルバムを聴く時、絶対に真似のできないパフォーマンスだということがあなたにも分かるでしょう。その比類なき高貴な美しさに圧倒される」と絶賛しているようです。


piano : Thelonious Monk
bass : Larry Gales
drums : Ben Riley
tenor sax : Charlie Rouse

producer : Teo Macero
recorded at Columbia Recording Studios
originally released in 1965.

1. Liza (All The Clouds'll Roll Away)
2. April In Paris (Take 6)
3. Children's Song (That Old Man)
4. I Love You (Sweetheart Of All My Dreams)
5. Just You, Just Me
6. Pannonica (Re-take 2)
7. Teo
【Bonus Tracks】
8. April In Paris (Take 1)
9. Pannonica (Take 2)
10. Medley: Just You, Just Me/Liza (All The Clouds'll Roll Away)





  

2022年11月15日火曜日

Lee Konitz / Motion

 

 サックスによるワンホーン・トリオで、ピアノが無い分和音感は薄くベースが曲を引っ張ている。それもテーマを演奏しないスタンダードということで、漫然と聴いていると、そのことを忘れてしまうが曲名を追いながら聴いていくと何を聴いているのかが解らなくなり、ある意味聴き手にとってこの趣味趣向が理解できない人には苦しいアルバムかも知れませんが、ジャズとはインプロビゼーションである、インプロの無い音楽はジャズ風なだけあると言った熱い発言の方にはたまらないアルバムかも知れません。


 もっか私が 所有する Lee Konitz 音源と言えば Lee Konitz with Warne Marsh, Lee Konitz with The Bert Van Den Brink Trio / Dia Logues, Lee Konitz Hein Van De Geyn / Meeting Again など。正直聴きだしたのは巨匠が 2020年4月15日による肺炎で享年92歳で亡くなってからで、行きつけのおでんバーが追悼でしばらく Lee Konitz が多めでかかっていたことにからなので、それほど傾倒しているわけではありませんでした。こういった和音よりもベースなどの旋律による演奏手法は Lee Konitz の師匠である ピアニスト Lennie Tristano の影響であるらしく、あまり私は Lennie Tristano を聴いていないので、これから聴いてみて勉強しても良いかなとも思っています。
 メンバーは、アルトサックスが Lee Konitz 、ベース Sonny Dallas、ドラムは Elvin Jones ですが、最初は Nick Stabulas がドラムだったが出来栄えに満足できなかったためにElvin Jones で再び収録が行われたとのこと。クールでいながらも緊張感のあるドラムワークは良く歌っていると感じます。本来はあるはずテーマが最初から無し、コード進行のみがアドリブの素材であるというコンセプトで挑んでくるフレージングとそのニュアンスを三人が呼応するこのパフォーマンス。
 そもそも原曲がわからないのに原曲名を記載することに意味があるのか?果たしてコード進行が原曲と一致しているのか? 聴きながらも色々と考えるとそれも面白い一枚ですが、小難しいことは考えずにまず聴いて感じるのが良いのでしょう。

alto sax : Lee Konitz
bass : Sonny Dallas
drums : Elvin Ray Jones

producer : Creed Taylor

recorded New York City, August 29th, 1961.

1. I Remember You
2. All Of Me
3. Foolin' Myself
4. You Don't Know What Love Is
5. You'd Be So Nice To Come Home To
6. Out Of Nowhere
7. I'll Remember April
8. It's You Or No One





  


2022年11月13日日曜日

Hidefumi Toki Quartet / Toki

 

 サックス奏者、土岐英史の1975年発売の初リーダーアルバムで 日本のブルーノートとも謳われる Three Blind Mice からの発売です。1970年6月に設立された日本のジャズ専門レーベルでレーベル設立以降、およそ130枚のアルバムをリリースされていて、このアルバムは tbm-46 と書いてあるのでレーベル46枚目のアルバムであることがわかります。
 さてThree Blind Mice 「3匹の盲目ねずみ」とは、イギリス(イングランド)に伝わる古いマザーグース。様々な歌詞が存在し、古いものでは1609年の出版物も確認されています。
 Three blind mice. Three blind mice.See how they run. See how they run.They all ran after the farmer's wife,Who cut off their tails with a carving knife,Did you ever see such a sight in your life,As three blind mice.
 尻尾を切られた盲目のネズミが、その尻尾を切った農家のおかみさんを追っかけまわすという可愛いいっぽい雰囲気にホラーな内容です。


 さて日本の熱いジャズシーンを記録してきたもので、亡くなってから、その偉大さを改めて確認し最近、土岐英史のアルバムを何枚か購入させていただいている一枚です。1975年の和ジャズって「そうそうこんな感じだよな」って土岐さんのソプラノの使い方が懐かしくもここら辺のジャズやフュージョンを聴き、まねごとをしていた私の大学時代を思い出させてくれるような演奏でした。
 特に1曲目の Lullabye For The Girl は土岐英史のオリジナルで、渡辺香津美が参加していることもあって特に印象深い11分の名演です。ドラムの Steve Jackson の緻密なドラムも時代の和ジャズの雰囲気を出していると思います。続く Darkness も土岐英史のオリジナルでフュージョン時代も感じるバラード。Blues, When Sunny Gets Blue はスタンダードででメンバーが縦横無尽に吹きまくり、弾きまくり、叩きまわる安定感があります。Blues では渡辺香津美のブルース・ギターが素敵でした。締めはリーダーの土岐英史のオリジナル Old Song Blues では、渡辺香津美のギターと井野信義のベースの持ち味を引き出しているオールドなスタイルのブルースで土岐英史は、やはりギタリストが好きなサックス奏者なのだと思わせてくれます。
 録音は1975年5月17日東京アオイ・スタジオ。清々しい季節での録音です。若かりし頃の土岐さんの意気を感じる昭和のジャズ・フュージョン時代を感じれる良いアルバムでした。

alto sax, soprano sax : Hidefumi Toki  土岐英史
guitar : Kazumi Watanabe 渡辺香津美
bass : Nobuyoshi Ino 井野信義
drums : Steve Jackson スティーヴ・ジャクソン

producer : Takeshi Fujii 藤井
Recorded May 17, 1975 at AOI Studio, Tokyo.

1. Lullabye For The Girl
2. Darkness
3. Blues
4. When Sunny Gets Blue
5. Old Song Blues



▶ C Minor


  

2022年9月25日日曜日

Herbie Hancock / My Point Of View

 

 1960年にドナルド・バードのクインテットでプロとしてのスタート。21歳になった1962年に21歳でデクスター・ゴードンを迎え、収録曲に Takin' Off という曲は無く代わりに顔として Watermelon Man を収録した Takin' Off で離陸した。その後 Maiden Voyage(1965年に、Speak Like a Child(1968年)を発表していて、その狭間の1963年録音の2枚目のアルバムが本作の My Point Of View となります。


 トランペットに Donald Byrd、テナーサックスは Hank Mobley は鉄板の布陣。トロンボーンの Grachan Moncur III は、私あまり注目したことが無い人ですこのアルバムの録音でも少し地味目の演奏。リズム隊が、また最強でギターのGrant Green、ベースのChuck Israelsb。ドラムは Anthony Williams でクレジットされていますが Tony Williams(トニー・ウィリアムス)で当時17歳です。本名は Anthony Tillmon Williams だそうです。
 曲はと言えば聴いたことが無いのに、出だしから耳にしたことのあるリフです。Blind Man, Blind Man は、1作目のWatermelon Manをベースにしているのです。名曲ではありますが、洗練されたジャズとは言い難い曲と思っているこの曲がベースとなっているのは たしか Donald Byrd でもありました。またこの曲は、後にハンコックがプロデュースする Head Hunters でもアレンジを変えて強力な曲となっています。ミュージシャンにとっては印象的なつくりの曲になるようです。
 とはいえ、このアルバム、他の作品に較べるとあまり話題にならないとなっています。前作が強力であり次のアルバムに同様のモチーフで Blind Man, Blind Man を持ってきたことで2匹目のドジョウ狙いのような扱いになっているからでしょうか。ぶち抜けた良さはありませんが、シンプルに演奏曲目とも実に良い作品ではあります。
 ファンク基調のジャズも良いですが、3曲目の King Cobra は、コードとリズムが印象的で気に入りました。これがハンコックのコブラのイメージなのかと思ったら、ハンコックが当時乗っていたスポーツカー、Shelby King Cobra の曲だそうです。重たいエンジン音がブルンブルンとして、朝靄の中へぶっ飛ばすようないめーじなのでしょうか?そう思って聴くとすっきりします。

piano : Herbie Hancock
guitar : Grant Green
bass : Chuck Israelsb
drums : Anthony Williams
tenor sax : Hank Mobley
trombone : Grachan Moncur III
trumpet : Donald Byrd

Producer : Alfred Lion

Recorded on March 19, 1963.

1. Blind Man, Blind Man
2. A Tribute To Someone
3. King Cobra
4. The Pleasure Is Mine
5. And What If I Don't





  

2022年9月17日土曜日

Russell Malone Quartet / Wholly Cats

 

 90年代以降を代表する黒人ジャズギタリストの一人で、イメージ的は厳格にジャズを追求していながらもコンテンポラリーな要素も取り入れた作品もある方です。1963年11月8日 アメリカ合衆国ジョージア州オールバニ生まれで、4歳の時に母親が買ったおもちゃのギターを弾き始め、12歳のときにジョージ・ベンソンがベニー・グッドマンとテレビで演奏するのを見たことに大きな影響を受け、B.B.キングやザ・ディキシー・ハミングバーズなどの影響を受けほとんど独学とのこと。1988年からはジミー・スミスのバンドに2年間加入し、1990年代を通してハリー・コニック・ジュニアのビッグバンドのメンバーとして世界中を廻り、やダイアナ・クラール・トリオのメンバーとなり、1990年代後半から2000年にかけて、ピアニストのベニー・グリーンの3枚のアルバムに参加し、その後2人はデュオを結成し、2003年から2004年にライブアルバム1枚、スタジオ・アルバム1枚をリリースして2007年までツアーを行っています。
 一方リーダー作は今までにスタジオ録音13枚、ライブ2枚とそれほど多くない。デビュー Russell Malone が1992年で、2017年のアルバム Time for the Dancer 以降発表していないが演奏活動はまだまだ続けられているようで、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラへの客演で本年2022年8月24日で来日されています。


 本作は、日本のレーベル Venus による音源で1995年録音の作品となっています。Venus は高音質音源のレーベルとして有名で、本作も24bit Super bright sound と表示され音圧が高く高品質な録音となっています。収録曲はチャーリークリスチャンの Wholly Cats、マルグリューミラーの Carousel 、ジミースミスの Off The Top、モンクの Four In One、ビリーストレイホーンの After All 等、スピード感あふれるアグレッシブな演奏からしっとり聴かせるバラードまで。Russell Malone はジョージ・ベンソンやウェス・モンゴメリーの流れを汲む人で、音はジャズそのものだけど、音楽性はジャズだけでなく様々な音楽からの影響もある人の印象ですが、本作は硬派なシンプルなジャズです。クラシック、カントリー、ブルースの影響をこの録音から感じると書いておられる人もいますがそうですかね?
 録音メンバーは、Russell Malone、Larry Willis、Rodney Whitaker、Yoron Israel。あまり注目して聴いたことのないメンバーだが程よい緊張感とセンスの良い演奏は好感です。
 ゴリゴリのフレーズや、機関銃のように詰め込んだフレーズは Four In One ぐらいですが少し地味目、そんな構成のためかそれほど売れていないアルバムではあるものの演奏、録音とも充実しているので彼の作品の中では上位に位置付けても良い作品ではないかと思われます。

electric guitar : Russell Malone
piano : Larry Willis
bass : Rodney Whittaker
drums : Yoron Israel

producer, Mastered By : Tetsuo Hara

recorded at Clinton Studio "A" in New York on July 18 and19, 1995.

1. Wholly Cats
2. I Concentrate On You
3. Carousel
4. Swing Low, Sweet Chariot
5. Off The Top
6. Four In One
7. After All
8. Chitlin Blues
9. Yesterdays