2023年3月4日土曜日

Thelonious Monk / Piano Solo On Vogue

 


 フランスの Disques Vogueレーベルに1954年に残した作品です。モンクは Blue Noteで2作品を録音し 1952年に Prestige に移籍し、この1954年に2作品を発表しています。モンクは、Salon International du Jazz なるジャズ祭に出演でフランスに行きフェスが終わった6月7日にラジオ用にこの作品は録音されていたのですが、 Prestige と契約していたため直ぐに発売されることはなく後にLPでリリースされたとのこと。ちなみにこの作品の録音前に行ったフェスでの演奏はフランスのミュージシャンとのトリオで、腕は良かったらしいが相性はあまりよくなかったらしいです。
 つまり、当時 Prestige での契約条件は良くなかったこと、ニューヨークでの酒場での演奏をするための キャバレー・カード も無かったこと等からフランスへの出稼ぎに行ってこの名作が録音されたわけでファンとしては嬉しい限り。ジャケットはオリジナルのものからは変更されているようですが、CDの方はラッパーがピアノ弾いてるみたいなジャケ写で私としては下の元のジャケ写が好み。そしてよく見ると、このジャケットのスペルは【THEOLONIOUS】!となっています。それも上下です。Vogueレーベルの担当者は発売後に、どこで気づいたのだろうか、その時の焦り具合が気になります。
 

 モンクのソロ作品と言えば、1957年の Himself、1957年 Alone In San Francisco、 1965年 Solo Monk があり。最初のソロ作品は、この1954年のこのPiano Solo On Vogue。
 録音した時代によってモンクのモンクらしさは異なります。私的にはモンク自身そのものが滲み出ており、独特の世界エッセンスが色濃くでて一人フランスで尖がった演奏をしているこのソロ作品がかなり好きです。素朴な演奏ですがじっくり聞くと味わいがドンドンでてくる作品です。
 それではこの作品を再度聴きながらレビューです。 'Round About Midnight 1944年モンク作曲で、モンクの作曲した作品の中でスタンダードとして最もよく演奏されている曲と思います。この時点で作曲してから10年経っているのかと思いながら聴くと、迷い箸のような音の模索は無くこの演奏は完成されているなと感じます。Evidence これもモンク作。テーマのメロディ自体がバッキングのような個性的な楽曲です。モンク独特の不協和音が適度にちりばめられていて1拍ベース音を先に入れて独特のリズム感が生まれています。Smoke Gets In Your Eyes これはJerome Kernの名スタンダードで、出だしは原曲に忠実にしながら段々とモンク節をちりばめていく演奏は素晴らしい。有名スタンダードをとりあえず選曲してアルバムに入れている感じは全くなくモンクの曲のように収められています。Well You Needn't モンク作曲で自身の作品でも数多く演奏されている名曲で、ユーモラスに感じてしまうメロディーが特徴的な曲でソロで弾かれると、また良いですね。Reflections これもモンク作品ですね。優雅なメロディーで正統派な感じがする曲で、モンク作品の中では比較的モンク臭さが少ない曲かと思います。このアルバムの演奏でも割合と滑らかで平坦な演奏の部類に属する感じでゴージャス感があります。We See もモンク作品です。テーマの音のばらけ具合が丁度良くモンクらしさが出る。曲も良いがモンクの演奏もかなりのもの。聴き直して再確認です。Eronel これもモンクです。エレガントなメロディーの中の狂気のような感じでしょうか。正統派のコードの流れに少しづつ違和感が入ってくるのが気もち良いですね。クセになります。Off Minor これも良い曲ですよね。モンク作品です。モンクは楽々弾いていますが、こういった曲を頭の中に入れてインプロビゼーションしていくのって大変そうだなって思いながら聴いてます。Hackensack モンクの作品ですが、テーマは Well You Needn't と被っていますね。どういった事情なのか調べるのは面倒になってきたんで置いときます。
 これはいつでも聴けるお気に入りの場所に保存しておきます。

1.'Round About Midnight
2. Evidence
3. Smoke Gets In Your Eyes
4. Well You Needn't
5. Reflections
6. We See
7. Eronel
8. Off Minor
【Bonus】
9. Hackensack





  

2023年3月3日金曜日

Miles Davis / Live Evil


 1950~60年代前半ぐらいの品行方正なジャズをやっていたマイルスの方がどちらかと言えば好みではあるんですが、Bitches Brew が最初に購入したマイルスのアルバムでした。カッコいいことやってるんだなという認識はありましたが、興味はそれほどなくマイルス自体は自分は好きではないという意識がありましたが、色々な年代のアルバムを聴いているうちに、これは奥が深いかもしれないと思い始め、現時点での音源所有枚数は38タイトルで1人のアーチストでは最大の音源数を所有するようになってしまいました。人は変わるもんで自分でもビックリです。
 これは自分はマイルスは好きではないんだと自覚している段階でタワレコでウロウロしていてジャケットが目につき、帯を見たら「ここでのキース・ジャレットの演奏は本当に凄まじい」に煽られて思わずレジに行ってしまった作品であります。


 気になるジャケットデザインのモチーフはコンセプトはインドで描かれているのは「シヴァ神」(1曲目のタイトルでもありますね)それで、シタールが使われていたりギターが John McLaughlin(ジョン・マクラフリン)な訳です。ファンクに彩られた大傑作と帯にある通り、Michael Henderson(マイケル・ヘンダーソン)のベースのファンク要素がかなり強め。ほとばしるエネルギーは感じるけど多少聴いてて疲れるアルバムかなあというのが最初に聴いたころの感想で、好きに暴れろと言わんばかりの皆さんのソロに若干チープさを感じていました。が、このタイプのアルバムは聴いているうちに印象が変わるもので、チープだと感じていたものが、今回聴き直すと独創的に感じたことを表現する手段としてフォーマットが使われ楽器の持つパワーをリズムと電気的な力で増幅させている素晴らしい演奏に感じてきました。結局 Bitches Brew と比較し てどっちが好みと思っていたことは、どうでもよいことで、楽しみ方は色々あるということですね。
 先に総評を書いてしまいましたが曲のレビューです。Sivad は Davis の逆さ読みで1970年の Get Up With It の楽曲 Directions と Honky Tonk を Teo Macero が編集合体させた作品で、Milesのワウ・トランペットがギターのような唸りを上げ邪悪なムード。ちなみにLive-Evil も Live のスペルを反対に書くと Evil で、このアルバム全体も交互に「静と動」が表現されるコンセプトとなっています。ということで Little Church は、Hermeto Pascoal作の静の作品で、不思議感漂う3分間となります。Medley: Gemini/Double Image そしてGemini 、Joe Zawinul作の Double Image のメドレーとなっていますが、レビューは未だ書いてありませんが Gemini は聴いたばかり、どこが使われているのかは実は未だ私にはわかっていません。静と動の繰り返しと書きましたが静が続いています。What I Say は、HendersonとDeJohnetteのリズム隊がきっちりかみ合った動の部分になります。今は気になりませんが多分ここら辺の8ビートのドラムが私には雑に聞こえていたんですかね。Keith Jarrettのキーボードも暴れています。Milesもプレイで応えますが、ここら辺が今はオッとなるんですが聴きなれていないうちは雑に聞こえていたのもわかる気がします。ラストはDeJohnetteの圧巻のドラムはファンクではなくロック。Nem Um Talvez は、またもHermeto Pascoal 作の静の4分作品。なるほど、この人は静の役割なんですね。
 と、ここで1枚目CDは終わり、2枚目 Selim は Hermeto Pascoal 作の2分。タイトルは Miles の逆綴りで、ここまでくると相反性を示すアートよりも駄洒落感あります。Funky Tonk は、そうです動になり、Miles のワウをかけた電化マイルスのトランペットでブラックな感じ満載で、McLaughlin のカオスなギター、Jarrett のとりとめの無い独奏状態のエレピ・ソロが不思議感を出しながら、コードス・トロークのギターが入ったりで不思議感満載になりファンクで終了。この良さが前回聴いた時は理解できませんでした。最後は Inamorata and Narration by Conrad Roberts で動のハイテンション。基本ファンク路線で、Miles のワウ・トランペットは、結構前に出て仕事しています。おそらく観客は大興奮でしょう。

2CDで1971年発売で、1970年12月19日のセラー・ドアで行われたライブ。コロムビア・レコードのスタジオB録音が収録されています。

trumpet : Miles Davis
guitar : John McLaughlin (except 2-1 2-2)
percussion : Airto Moreira
drums : Jack DeJohnette

producer : Teo Macero

【Disc1】
1. Sivad
bass : Michael Henderson
piano : Keith Jarrett
sax : Gary Bartz

2. Little Church
bass : Dave Holland
keyboards : Chick Corea, Herbie Hancock, Keith Jarrett
sax : Steve Grossman
electric piano, whistling : H. Pascoal

3. Medley: Gemini / Double Image
bass : Dave Holland
drums : Billy Cobham
keyboards : Chick Corea, Joe Zawinul
sax : Wayne Shorter
sitar : Khalil Balakrishna

4. What I Say
bass : Michael Henderson
piano : Keith Jarrett
sax : Gary Bartz

5. Nem Um Talvez
bass : Ron Carter
keyboards : Chick Corea, Herbie Hancock, Keith Jarrett
sax : Steve Grossman
voice : Hermeto Pascoal

【Disc2】
1. Selim
bass : Ron Carter
keyboards : Chick Corea, Herbie Hancock, Keith Jarrett
sax : Steve Grossman
voice  Hermeto Pascoal

2. Funky Tonk
bass : Michael Henderson
piano : Keith Jarrett
sax : Gary Bartz

3. Inamorata And Narration
bass : Michael Henderson
piano : Keith Jarrett
sax : Gary Bartz



Sivad


Selim


  

2023年2月26日日曜日

Chris Connor / Sings Lullabys Of Birdland

 

  ジャズ・ボーカルについては、ここ数年で以前よりは積極的に聴くようになってきたのですが、きっかけは本屋で売っていた Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)のCDブックでした。グループでしたら The Manhattan Transfer、New York Voicesぐらいは聴いていたのですが、ソロ・ボーカルについては聴いてこなかったので、エラの技巧を凝らした楽器のように声をコントロールしているジャズ・ボーカルも良いもんだなと思い、歴史的女性ボーカリストとしては、Billie Holiday、Sarah Vaughan 等を勉強し、系統は違うけど Nina Simone なんかも購入したりしています。でもジャズ・ボーカルの棚に並んでいる Norah Jones は、結構持っていますけど、ジャズではないよな?と思ってています。
 そんな訳で毎回ではないですがジャズ・ボーカルの棚も見ているわけですが、ちょうどジャケットが見えるように置いてあった、このCDは試聴なしで購入してみました。


 少し家で寝かせてから、いつもの「おでんバー」で聴いてみます。マスターに
Chris Connor は知っているか聞いたけれど知らないとのことでした。が最初の曲を聴いたとたんお互いに「ああ、聴いたことはある」。私も聴いたことはありました。他の曲は耳に覚えはありませんでしたが聴きごたえがあると言うより心地よいアルバムでした。
 さて、聞き覚えのある曲が収録されている、このアルバムは1953年、54年録音のBethlehem Records の初期のヒット作品で、Chris Connor の初レコーディング。調べていたら、レーベルの創始者、Gus Wildi(ガス・ウィルディ)は、このアルバムのヒットによって他社と差別化としてボーカル重視路線をとったとの所見を拝見もしたのですが、wikiで見た限りボーカリストは、あんまりいなかったように見て取れます。
 さて、そんなウンチクを仕入れたところでアルバムのレビューです。Lullaby Of Birdland は、George Shearinの1952年作品で、このアルバムの発売された1954年に Sarah Vaughan もこの曲をカバーしてヒットさせています。2分24秒ですが彼女の若干ハスキーなしっとり声が雰囲気ピッタリです。What Is There To Say は、1934年ブロードウェイのコメディ用の曲で、作曲はVernon Duke、作詞はE.Y.Harburg で、もう言葉はいらない、ただいるだけでいいと言うラブ・ソングです。Bill Evans / Every body Digs にも収録されていましたが、どちらも甘くてフワッと包み込んでくれるような曲になっていて素敵です。And what is there to do、Try A Little Tenderness と2曲続けてスローな展開になりますが、特に技巧を使うことも無く率直に歌われているのがジャズではあるがポップス的な感覚に感じます。Spring Is Here は1938年のRichard Charles Rodgers作曲、Lorenz Hart作詞のミュージカル・ナンバーで、最後のサビの Maybe it's because nobody loves me あたりが盛り上がります。Why Shouldn’t I も Coll Porter によるミュージカル作品。Ask Me は Hindeling-Polland と書いてありますが、いつの作品かは不明。トランペットとビッグ・バンドで歌われていますが、曲の雰囲気と口笛でヒュイヒュイとの煽りは明らかにミュージカルで、かなりエンターテイメントに振り切っている楽しい曲。Blue Silhouette Dale-Samos-Vall とあります。月明かりに物思うゆったり感ただよいます。Chiquita From Chi-Wah-Wah はBonacio- La Marge- Franklin は、今までで一番賑やかな演奏で楽しい曲です。歌に入る前の演奏部分が長くトランペット・ソロ、ピアノ・ソロもたっぷりとあります。良き時代のように感じます。A Cottage For Sale は Conlet-Robinson で再びゆったり歌い上げです。このパターンは多いですが彼女の声によく合うのは確か。How Long Has This Been Going On? は、G.&I.Gershwinですからガーシュイン作品。ミュージカルっぽい曲が続いていたので、ジャズっぽい感じになって少しリフレッシュです。ギターソロはこのアルバムでは初めてですかね。Stella By Starlight は Young-Washington で超メジャーなステラです。アコーディオン・ソロも入りバンドも盛り上がり、Chris Connor も、くだけた感じで歌いやすそうです。Gone With The Wind は Wrubel-Magidson 。なぜかボーカルの録音レベルがいきなり高くなったように感じそこに少し驚きました。He’s Coming Home は Deforest とあります。地味なバラードですが好きです。Goodbye はJenkins でアルバムの最後にしては地味な曲ですが、コーマーシャルな部分よりもアーティスティックな作品なので、そこに意味を持たせているんでしょうか。原盤はここで終了ですが、本アルバムは、Why Shouldn’t I の (Alt. Take) が取り直しの最初の音声から含めて入っています。最後の方のボーカルのブレイク部分がこのバージョンの方が短めで、本番録音の方がアレンジ的には凝っていました。
 とにかく甘い声質が素敵なアルバムでした。娯楽が少なかった時代であれば、この声に惚れる人は多かったに違いありません。ジャズ・ボーカルの技巧的なことは無い歌い方なので、彼女のボイスの美しさを堪能してください。確かに売れたんだろうなこれは。

vocals : Chris Connor
accordion : Don Burns (8 -14)
bass : Vinnie Burke  (8 -14)
guitar : Joe Cinderella (8 -14)
drums : Art Mardigan (8 -14)
clarinet, flute : Ronny Odrich (8 -14)

1. Lullaby Of Birdland
2. Try A Little Tenderness
3. What Is There To Say
4. Spring Is Here
5. Why Shouldn’t I
6. Ask Me
7. Blue Silhouette
8. Chiquita From Chi-Wah-Wah
9. A Cottage For Sale
10. How Long Has This Been Going On?
11. Stella By Starlight
12. Gone With The Wind
13. He’s Coming Home
14. Goodbye
15. Why Shouldn’t I (Alt. Take)





  

2023年2月25日土曜日

Fascinated Session


 The Fascinations と Native のメンバーを中心に、JABBERLOOP、quasiomode、Sleep Walker、東京クラブ・ジャズ・バンド のメンバーでレコーディングしたクラブジャズの最強ジャズ・セッション盤。
 発売はコンピレーションアルバム、再発アルバム等の制作販売等が中心の販売の Routine records で、前から気になっていて未だによくわからない The Routine Funk / Kei Kobayashi featuring B-BAND on "Perfect Day" なんてアルバムを作製している DJ 小林径氏の所属しているレーベルですね。
 レーベルについては謎だと思っていたら、解説発見したので掲載しときます。https://www.otaiweb.com/label/aboutroutine.htm
「1990年初期の渋谷。渋谷にあったDJバー・インクスティックでサウンドプロディースをしていたDJ小林径とU.F.O.の矢部直とで行われていたイヴェント" THAT'S HEALIN' FEELIN "の後発のイヴェントとしてスタートした。
 当時のメンバーは小林径の他にミュージック・ライターでもある荏開津広と弁護士ジェームス・P・ヴァイナー(後にレコード屋を宇田川町で開く)、東京スカ・パラダイス・オーケストラの青木達之(後に事故で亡くなる)、テイ・トウワの弟である鄭秀和(現在は建築士としてインテンショナリーズという若手建築家ユニットを結成)というラインアップで、イヴェントの内容はヘビーローテーションの曲は1曲も無く、インストゥルメンタルの方が歌よりも多いという今日では考えられない程マニアックな内容だった。
 ある日は小林径がエレンマキルウェンの誰も知らないような曲をかけていた。荏開津広はラストポエッツのパーカッシヴなトラックをかけていた。ジェームス・P・ヴァイナーはデンマークのアーティストのブラジリアン・フュージョンをかけていた。青木達之はニューオリンズのワイルド・マグノリアスをかけていた。
 学生のバンドのようなワックワック・リズムバンドがアーチー・ベル・タイプの曲を演奏し出すと、渋谷公会堂のライブが終わってROUTINEに遊びに来ていたブランニュー・ヘヴィースの面々がその中に割って入って、皆でジャズ・ファンクのジャム・セッションが始まる。ROUTINEはいつもそんな感じだった。
 フリーソウルやプチカート・ファイブのイヴェントなど渋谷系のメッカだったDJバー・インクスティックでただひたすらダークでマニアックな感じだった。そんなROUTINEが1993年に同名アルバムをリリースした。
 アベレージ・ホワイト・バンドみたいなリフで始まって、ジェームスのナレーションで幕を開けるこの曲は誰もがかっこいいと思った。アルバムは評価され海外でも評判になった。ロンドンのKISS FMでジャイルスは、プレイし、ストレート・ノー・チェイサー誌でもチャート・インし記事でも取り上げられた。
 ドイツの99レーベルからオファーが来て海外でもアルバムがリリースされた。しかし1995年にイヴェントは『このクオリティーを保っていけない』という理由で終了し、それからしばらくしてDJバー・インクスティックもなくなってしまった。
 でも人々の間からROUTINEの名前が途切れる事は無かった。ROUTINEは伝説になった。」


 Fire Cracker は、YMOのラテン風味、Night In Tunisia は、これでもかとラテンなんだけど、和製クラブ・ジャズとしてしっかり成立している素晴らしい出来。シカゴ Saturday In The Park がスウィングになっているところもマニアなミュージシャン魂を感じます。MR WALKER も心つかまれます。何より渡辺雅美のビブラフォンが気持ちよい。
 このアルバムは多分タワレコの試聴で購入したパターンのもので、私が quasiomode なんかを知るかなり前に購入していたのものです。音的に気に入っていたアルバムなので、このレビューを書き直していて quasiomode メンバーの参加なども改めて判明しました。やっぱり好きな音はこうやって集めていると何かしら関連性があるもんだと発見し面白いもんだと思います。ジャパンジャズマンたちのクオリティの高さに敬意を表します。旧来のジャズ・ファンにも若い人にもおすすめの素晴らしいアルバム🎵

piano : Taichi Sugimaru (4 to 7, 9, 10), Tetsu Norioka (1 to 3, 8, 11)
acoustic bass : Kenichi Ohkubo (4 to 7, 9, 10), Terumasa Nishikawa (1 to 3, 8, 11)
drums : Daisuke Yoshioka (11), Yohei  (1 to 3, 8), Yoshitaka Yamashita (4 to 7, 9, 10)
percussion – Takahiro "Matzz" Matsuoka (1 to 3)
alto sax : Daisuke (1 to 3, 5, 8), Tomoyoshi Nakamura (4, 7, 10, 11)
soprano sax : Tomoyoshi Nakamura (3)
tenor sax : Daisuke (4, 10), Masato Nakamura (2)
trumpet : Makoto (1 to 5, 8, 10)
flute : Tomoyoshi Nakamura (5)
vibraphone : Masami Watanabe (1 to 11)

producer : Masami Watanabe, Tomoyoshi Nakamura

recorded on December 23th, 2007 / January 30th, 2008 at Studio dedé

1. Fire Cracker (Fascinations + JABBERLOOP)
2. Night In Tunisia (Fascinations + JABBERLOOP)
3. Saturday In The Park(Fascinations + JABBERLOOP)
4. JAZZ FOR TWO(native + Fascinations + JABBERLOOP)
5. MARIKA (native + Fascinations)
6. POP AND CIRCUM ATANCE (native + Fascinations)
7. MR WALKER (native + Fascinations)
8. PROOF OF THE PUDDING(Fascinations + JABBERLOOP)
9. AMALGAM (native + Fascinations)
10. LET'S GET SWINGING(native + Fascinations + JABBERLOOP)
11. MR WALKER <REPRISE> (Fascinations)





  

2023年2月24日金曜日

Joe Public / Easy Come Easy Go


 これは1994年発売なので私が29歳の当時の関西勤務の頃に購入したヒップ・ホップ系のアルバムです。当時は若かったので、大阪界隈でロック系のセッションなども盛んに参加していました。手当たり次第にロック系のインディーズ・バンドなんかのCDも購入していた時期なので、新発売かなんかで試聴もせずに購入したんではないかな。何故購入にいたったのかは全く記憶にありません。昔は全くヒップ・ホップ系はアレルギー的に聴かなかったので、当時購入直後に聴いて以来、全く聴いていませんでした。


 アシッド系ジャズなんかを聴くようになったので、昔アレルギーのように聴いていなかったヒップ・ホップも最近は大丈夫。と言うことで、たまに聴くようになりました。自分の聴く音楽性の幅は年をとるごとに広がっています。このアルバム、ヒップ・ホップ的な手法の曲もありますが割とブラコン的な曲もありで、割と心地よいかもしれません。
 全く知らない人に等しいので調べてみると、1992年、1994年でアルバム2枚を出して消えていった人のようです。ジャンル的には New Jack Swing と言われるもののようですが、初めて聞きました。
 This Time は、Kool & The Gang の Jungle Boogi のサンプリング、Rumors、What Goes Aroundあたりのリズムとベースラインは最近好きなタイプのグルーブで、割と良いのかもしれないと聴き直しての感想でした。しかしヘビ・ロテには無理があるかな🎵

lead vocals, backing vocals, keyboards, drum programming, programmed by synthesizer, guitar : Jake
lead vocals, backing vocals, guitar : J.R.
lead vocals, backing vocals, bass guitar, drums, Dj Mix : Kev
backing vocals, drum programming : Dew
drums (additional) : Mike Porter

producer : Joe Public

1. Easy Come, Easy Go
2. Deeper
3. Your Love Is On
4. This Time
5. Things You Do 4 Luv
6. Call Me
7. I L.O.V.E. U
8. Show Me
9. Rumors
10. What Goes Around





  

2023年2月19日日曜日

土岐英史 片倉真由子 / After Dark

 

 土岐英史が2021年6月に亡くなってから、ソロ・アルバムを購入しはじめました。亡くなってから、亡くなってからは私のような人が多いのか暫くは品揃えが少なかったのが徐々にリアル店舗の棚の品揃えが増えてきているような気がします。そこでタワレコの定期チェックをしていると、この Days Of Delight の見慣れた岡本太郎ジャケット・シリーズで未だ聴いていないのがありました。お相手はピアノの片倉真由子でデュオ作品とのことで雑誌で知っているが未だ聴いたことの無いピアニストなのでワクワクします。これは家でしばらく眠らしてから、いつもの「おでんバー」で封を開けました。これを聴いた時には音楽マニアではないお客様が同席されていたので静かに耳を傾けていて、マスターも忙しそうだったので他の皆様の反応はよく覚えていません。他の方の印象を聴くのも楽しみなので少し残念。


 レビューをしていきます。東京・青山の岡本太郎記念館内にある岡本太郎のアトリエで録音されたとのことですが、アバンギャルドな芸術は爆発の印象はなく、ベタなスタンダードの枯葉は片倉真由子のピアノから始まります。そこにフワッと土岐のサックスがのってくる。奇抜なことはないのですが、フワッと出てくる土岐のサックスにインパクトがあります。After Dark は土岐さん作の楽曲です。ゆったりとしたピアノイントロが1分半、おやピアノの独奏になるのかと思ったら土岐さんがまたゆったりとした音でテーマを吹き始める。朗々と吹かれるアルト・サックスとどっしりした片倉真由子のピアノの演奏はどこまでも続くのかと思われるような演奏で10分弱の曲ですが長いなとも思わずに聞けました。How High the Moon は、1940年のMorgan Lewis 作曲, Nancy Hamilton 作詞のスタンダードで色んな人がやっていますが、私は Ella Fitzgerald の Ella in Berlin のアルバム最後で印象的だった曲。あちらでは激しい感じでしたが、ここでは明るく空に向かって響けとでもいうようなカラッとした演奏です。難しいことは入れずに、この曲を楽しめます。ソロ部分でのちょっとしたサックスとピアノが頤の間合いをとっているところなどはお互いの目で合図しているところが想像できるようなイメージでした。良いですよね。Gee Baby Ain't I Good to You はブルースのスタンダードで1929年の Andy Razaf、 Don Redman による名曲で、ブルース、ジャズのミュージシャンに問わず名演が多い名曲で大好きです。片倉真由子さんのピアノもとてもこの曲によく合っていると思います。ピアノ・ソロ部分でのモンクっぽいリズムの崩し方とかサビのコードを微妙にずらしているところとか聴き入ってしまいます。Back Home Blues 1951年の Charlie Parker 作曲で、ひねくれた?テーマが面白い曲ですね。ここでも片倉真由美の安定したピアノのバッキングで土岐さんのサックスが映えています。レコーディングの順番はわかりませんが、段々と息がぴったり合ってきているかのような演奏で、次の黒いオルフェにそのままなだれ込みます。ここでも早いパッセージなどは必要なくライブハウスでもない小さな喫茶店でライブを聴いているような気軽な演奏が心地よいです。I Hear a Rhapsody 1941年  George Fragos, Jack Baker, Dick Gasparre の作曲で、ポップスからジャズスタンダードで有名になった曲。土岐さんのイメージに合う曲ですね。Bill Evans と Jim Hall の Undercurrent では、もっと憂鬱な感じだったけど、ここでは力強い曲に変身です。最後に Lover Man 1941年 Jimmy Davis、Roger "Ram"Ramirez、James Sherman の作曲でこれも Ella Fitzgerald で有名になったスタンダードです。短めですがしっかりと締めくくってくれています。
 このアルバムも聞き入ってしまいました。改めて土岐さんのアルバムは良いです。やはり日本人として安心して聴けて共感できる和ジャズなんでしょうね。それと若い頃から聴いていた日本のポップスなんかにも、土岐さんのサックスが吹いている曲も相当あったはずなのでこの音が知らず知らずに刷り込まれていたのかもしれません。

alto sax, soprano sax : 土岐英史
piano : 片倉真由子

2019 年6 月18 日 岡本太郎記念館にて録音

1. 枯葉
2. After Dark
3. How High the Moon
4. Gee Baby Ain't I Good to You
5. Back Home Blues
6. 黒いオルフェ
7. I Hear a Rhapsody
8. Lover Man - dedicated to Noboru Shudo





  

2023年2月18日土曜日

Sound of Blackness / Africa To America


 Africa to America, the journey of the drum!
「アフリカからアメリカへドラムと共にやってきた」のタイトルで民族音楽を連想しましたが、ゴスペルを基調とした、クワイア40名のゴスペル10人編成のアメリカのアーバン・コンテンポラリー・アンサンブル・グループです。
 結成は1969年でミネソタ州セントポールの Macalester College(マカレスター大学)にて結成されたグループで Macalester College OF Black Voices であったものが、1971年に Gary Hines がアンサンブルの統制をとり、Sound of Blackness の名前となったそうです。


 アルバムは重厚なコーラスを基調とした現代的なバンド演奏です。レビューしときます。Hold On(Pt.1)はアフリカをイメージさせるパーカッションとゴスペルの荘厳なコーラスに続くイントロ。I'm Going All The Way は宗教的ではないダンサブルなナンバーで困難があっても頑張ってクリアーしていこうという曲。リードボーカルは Ann Nesby でパワフルで粘りと伸びのある歌声です。Ah Been 'Buked(Pt.1) の、ゴスペルの短いコーラスを挟んで、シングルにもなってヒットした I Believe。プログラミングしたリズムを用いたモダンなサウンドですが、ブランニューあたりで聴いたことのあるようなメロディーな気もするのですが見つかりませんでした。気のせいか?Hold On(Pt.2) のゴスペル・コーラスを挟んで、Everything Is Gonna Be Alright で、また人生への応援歌のような歌詞のモダンなナンバーで元気がでます。Sun Up To Sundown は、アフリカンな雰囲気のコーラスでつなぎをゴスペルから変えてきています。The Lord Will Make A Way はゆったりとしたブルージーな曲ですが、ここへきて宗教的な歌詞です。淡々と歌い上げ叫ぶボーカルがカッコ良い。ここでつなぎの曲は無く、He Took Away All My Pain 牧歌的なAORの雰囲気漂う元気ソングです。A Place In My Heart でバラードきました。美しいメロディーで伸びやかな歌声でかなり気分は盛り上がります。The Harder They Are The Bigger They Fall は,エレクトリック・ファンクで、やっぱりバラードの後はこうなる鉄板の展開でソウルフル&パワフルです。そしてテーマである The Drum (Africa To America)は,パーカッションにナレーションとコーラス。テーマ部分の響きは Kibbles and Bits で歌詞は違いますがジョージの孫が歌っているフレーズにそっくりだったのが気になってしょうがない。続く African Medley(Royal Kingdoms, Rise, My Native Land)でテーマのアフリカが続きます。映画で使われそうな,アフリカを想起させるコーラスとパーカッションの曲で深いです。A Very Special Love はブラコン的なバラードで穏やかにう歌い上げてロマンチックです。Strange Fruit はアカペラで,カバーだそうでビリー・ホリデイの持ち歌でもあった黒人差別を告発する哀歌とのこと。Black Butterfly は,ミドルテンポのブラコン的な楽曲でミュート・トランペットがオブリガードします。Livin' The Blues は,ブルースです。やっぱりアレンジはアーバンな感じになってしまうんですね。この曲でこのアレンジは似合わないですがアルバムのコンセプトはこうですからしょうがないですか。ラストはaゴスペル Ah Been 'Buked(Pt.2)で締めくくりです。コンテンポラリーな楽曲でありながらゴスペルを基調とした重厚なコーラスで African Americanの「歴史」「精神」を相互に描いていて、たまに聞くのですが、いつでも素晴らしい傑作のお勧め盤。

Robert Anderson : vocals
Jamecia Bennett : background vocals
Robin Berry : harp
Dexter Conyers : vocals
Core Cotton : vocals
LaSalle Gabriel : guitar
Shirley Marie Graham : vocals
Trenon Graham : drums, percussion
Carrie Harrington : vocals, background vocals
Jayn Higgins : vocals
Gary Hines : arranger, drum programming, keyboards, piano
Jimmy Jam : arranger, drum programming, keyboards, synthesizer
Geoffrey Jones : vocals
Patricia Lacy : vocals
Terry Lewis : arranger
Eunique Mack : vocals
Renee McCall : vocals, background vocals
Ann Nesby : bass, vocal arrangement, vocals
Kevin Pierce : guitar
Alecia Russell : vocals
Nate Sabin : guitar
Larry Sims : trumpet
James Smith : vocals
Sounds of Blackness : instrumental, primary artist, vocals, background vocals
Billy Steele : keyboards, vocal arrangement, vocals
Jeff Taylor : drum programming
Libby Turner : vocals, background vocals
Franklin Wharton : alto sax
Kevin Whitlock : percussion
Stokley Williams : drums, percussion
Louis J. Wilson : tenor sax
Marcus Wise : tabla
David Wright III : baritone sax
Jimmy Wright : arranger, keyboards, organ, electric piano, synthesizer, vocals
Rev. Joseph Young, Jr. : rap

Gary Hines : producer
Jimmy Jam and Terry Lewis : executive producer, producer

1. Hold On(Pt.1) 
2. I'm Going All The Way 
3. Ah Been 'Buked(Pt.1) 
4. I Believe 
5. Hold On(Pt.2) 
6. Everything Is Gonna Be Alright 
7. Sun Up To Sundown 
8. The Lord Will Make A Way 
9. He Took Away All My Pain 
10. A Place In My Heart 
11. The Harder They Are The Bigger They Fall 
12. The Drum(Africa To America) 
13. Agrican Medley(Royal Kingdoms,Risek,My Native Land) 
14. A Very Special Love 
15. Strange Fruit 
16. Black Butterfly 
17. You've Taken My Blues & Gone 
18. Livin' The Blues 

2023年2月17日金曜日

Chick Corea Electric Band / Light Years


 大学時代に買った一枚で、当時は Al Di Meola の Electric Rendezvous とかが流行っていたころです。ジャズ界で活躍していたチック・コリアが、ポップで軽めのフュージョンを作っていた時代でした。行きつけの「おでんバー」では、評価が高くないのが、ここら辺のアルバムで、他ジャズ好きな方のコメントなどを見ていても、評価は低めな気がします。でも私にはジャズやフュージョンの云々は抜きにして青春時代の一枚ですから思い出とともにこれを聴いています。思えば大学時代、音楽事務所のアルバイトでコンサートのバイトをやっていたことがあり、チック・コリアのステージ(何のバンドかは忘れました)も何回かバイトしていまして、セッティングが終わってから会場の警備もしながらタダでステージを見れるのが楽しみでした。外の駐車場の警備に回されるとハズレでしたけどね。交通費は出なかったんで帰りに飲んだら、ほぼアルバイト代は無くなってしまっていたのも今となっては楽しい思い出です。


 このエレクトリック・バンドの一枚目はプログレ・フュージョンであっただけに、このアルバムがひたすらライトでコマーシャルな音作りの展開は少し驚くものはありました。
 それでは、レビューです。Light Years タイトル曲でもあり売れた曲で懐かしいですが、今聴くいても、かなりシンプル。 Second Sight はバラードというよりは静かな曲で売って変わって曲の構成も凝っています。Flamingo は、シンセのサウンドが前面に出てきて、途中の John Patitucci のフレット・ベースがアクセントになっています。Prism はフルートのようなシンセが印象的でテーマの繰り返しなのですが、微妙にアクセントなどを変えながら繰り返されているのでシンプルに聞こえながらも、よく考えて作られた曲です。Time Track でサックスの Eric Marienthal と、ギターの Frank Gambale が交互にソロを交えてきてバンドの一体感が出てきています。最後は決めだらけ。Starlight は、ファンク・フュージョンでマーカス的な曲になっています。Your Eyes もミドル・テンポでややファンク気味です。カッティング・ギターの音色は Starlight と変えていますが、シングル・ノートの音は変えないんですね。どれもそうですがソロは短めで気持ちが入っていく前にテーマに戻る感じです。The Dragon ゆっくりして少し重めの曲で、単純なコード進行で進みますが深みがあります。View from the Outside これはカッコ良いですよね。インパクト抜群です。Smokescreen 忙しい曲です。ゆっくりのテーマに細かなドラムと、超早いフレーズが時々出てくるベース。チック・コリアのソロはかなり長めに入っていますので今までの楽曲のコンセプトとは少し変えたアレンジ。Hymn of the Heart は風景画のような曲でパット・メセニーっぽくもあるような感じです。Kaleidoscope で最後となります。こ複雑に絡み合うリズムとテーマのメロディーが不思議な絡み方をするですね。やっと Frank Gambale が最後にストレス発散かのように思いっきり弾くまくり、チックも合わせてきています。
 とにかく懐かしかったんですが、前回聴いた時にはスカスカ感があったように記憶しているのですが今回はそうでもなかったです。その時の体調、心境で変わってくるものなのでしょうか?他のアルバムでも、たまにあるんですよね。

keyboads : Chick Corea
sax : Eric Marienthal
guitar : Frank Gambale
bass : John Patitucci
drums : Dave Weckl

1. Light Years
2. Second Sight
3. Flamingo
4. Prism
5. Time Track
6. Starlight
7. Your Eyes
8. The Dragon
9. View from the Outside
10. Smokescreen
11. Hymn of the Heart
12. Kaleidoscope





  

2023年2月12日日曜日

Scott Hamilton / The Grand Appearance

 

 Scott Hamilton(スコット・ハミルトン)1954年生まれで、幼い頃はピアノとクラリネットを習い17歳からテナー・サックスに転向1976年にニューヨークへ進出したミュージシャンです。レコードデビューは1977年で、このアルバムはその翌年の1978年の録音です。
 かなり昔っぽい作風と録音なので1940年代かなと思っていたら新しい録音(と言っても40年以上前の録音ですが)なので、ビックリしました。なにしろ同時期のジャズ・フュージョン界のヒット作と言えば Weather Report などのフュージョン全盛期で、Heavy Weather(1977年)、Mr Gone(1978年)などのヒット作が発表され、旧来のジャズ人気が下火の頃と考えると、旧来の4ビート・ジャズ・ファンとジャズ至上主義の業界人は期待を寄せていたに違いありません。
 それだけに新人のサポートはHank Jones(ハンク・ジョーンズ)Tommy Flanagan(トミー・フラナガン)George Mraz(ジョージ・ムラーツ)Connie Kay(コニー・ケイ)と言ったジャズ・ジャイアンツばかりなのがすごい。


 現在私の所有音源でもテナー奏者に着目した音源は少ないため、参加されているアルバムは見当たりませんでした。名前は知っていたが、あまり聴いたことがない人だけに新鮮。テナーならではの、深い響きとトーンです。所有音源で近いのはZoot Sims(ズート・シムズ)ではありますが、彼ほどの図太い感じの夜と酒を感じるような音でもなく品行方正な
感じがしました。
 それではアルバムのレビューです。Crazy Rhythm 1928年のミュージカル Here's Howe のために Irving Caesar、Joseph Meyer、Roger Wolfe Kahn によって書かれた作品で、ショーがこれから始まるようなオープニングに相応しい軽やかな曲。I May Be Wrong 1929年の Henry Sullivan の作曲 Harry Ruskinn による作詞のポピュラーソングで、ローボイスで歌うようなテナー・サックスのソロはムードは満点で緩やかなソロは聴きやすい。Body And Soul は定番のスタンダード。軽めのタッチは聴きやすくて良いが少々刺激が欲しい。 All Of Me も定番のスタンダードですが、こちらは少しテンポ・アップしてきて流れるようなテナー・ソロとなっていて高音のしゃくりも出てくる。段々と面白くなってきました。ピアノの Hank Jones のソロ、George Mraz のベース・ソロの回しも余裕があります。The Shadow Of Your Smile (Theme From The Sandpiper) は邦題「いそしぎ」ですね。ここまでがピアノが Hank Jones です。You'd Be So Nice To Come Home To 邦題は「帰ってくれたらうれしいわ」で大橋巨泉によってつけられたらしいですが、こちらはそのまま英語読みの方がポピュラーですね。ピアノは Tommy Flanagan に交代して現代的なサウンドにぐっと変わったのが印象的で、スイングする波が違うのがよくわかります。I Thought About You は1939年のJimmy Van Heusen 作曲、Johnny Mercer 作詞のスタンダードでロマンチックなテーマがいかにもジャズって感じで素敵な曲です。これも Tommy Flanagan によって全く違うスイング感が出て ハミルトンのサックスも前半の古き良き時代を思わせる吹き方から変わってきている。伴奏によってインスパイアされるフレーズが変わるんでしょうね。Out Of Nowhere は1931年 Edward Heyman、Johnny Green によるポピュラー作品で Body And Soul の作者でもあります。イントロからいきなりテーマをハミルトンが吹き始めるのですが、テーマ部分は静かにソロで徐々に盛り上がりながら強弱をつけながら盛り上がっていくのが静かに盛り上がります。Cheek To Cheek 1935年のTop Hat というミュージカル映画にために Irving Berlin が書いた曲でいかにもジャズらしい盛り上がりのあるメロディがスムーズ。このアルバムで一番盛り上がっているような気がします。New York Blizzard Blues はハミルトン作曲です。スインギーでメンバーが一番リラックスして演奏しているので最後にもってきたのでしょうか。
 若干退屈さも感じましたが、聴きこめばピアニストでこれほど演奏の内容が変わるのかと対比がくっきりしているのを発見して少し面白くなった。デビューしたてのフレッシュなハミルトンと書いてありますが余りフレッシュさも感じないのが微妙ですかね。

tenor sax : Scott Hamilton
bass : George Mraz
piano : Hank Jones (1 to 5), Tommy Flanagan (6 to 10)
drums : Connie Kay

producer : Gus P. Statiras

recorded January 23 (1 to 5), and February 8, (6 to 10) 1978 at the Downtown Sound Studio, New York, NY.

1. Crazy Rhythm
2. I May Be Wrong
3. Body And Soul
4. All Of Me
5. The Shadow Of Your Smile (Theme From The Sandpiper)
6. You'd Be So Nice To Come Home To
7. I Thought About You
8. Out Of Nowhere
9. Cheek To Cheek
10. New York Blizzard Blues