Donald Byard (ドナルド・バード) がデビュー当初に Transition に残したワンホーンの好盤で、1956年5月7日の録音。場所は Boston の高級住宅地の Beacon Hill にあったこのアルバムのエンジニアの Steve Fassett's の自宅のあったビルの中にあったスタジオです。スタジオ名はファセット・レコーディングなので氏の所有のスタジオなのでしょう。
古き良き時代を感じる品行方正なバードのトランペットが非常に好印象で、メンバーにピアノのRay Santisi (レイ・サンティシ)、ベースは Doug Watkins (ダグ・ワトキンス)、ドラムに Jim Zitano (ジム・ジターノ) のワンホーン・カルテット編成です。
バードとダグ・ワトキンスは生地のデトロイトから1954年にニューヨークへやってきて、この録音の1956年は1955年に活動を始めたザ・ジャズ・メッセンジャーの初期のメンバーとして、ダグ・ワトキンスとともに参加しています。
Transition というレーベルも丁度1955年から始動しており、バードはこの創設間もないレーベルに Bird Jazz (後に Fist Flight としてCD化)Byrd's Eye View、そして本作をの3作を残しています。このレーベル自体は2年間で14作をリリースして無くなってしまうレーベルなので3作を残したのはバードだけでした。
その中でも特徴的に思えるのがこのアルバムで、ブルースやバップを避けてスタンダードを選曲し、技巧に走る演出は少ないのでかえって爽やかな印象を与えているんだと思います。特に印象的なのは1曲目の Little Rock Getaway で、ここら辺がモーダルな演奏が多いアルバム Fuego につながっているように思えます。Polka Dots And Moonbeams は美しいバラード曲で朗々とゆったりと吹かれるトランペットの表現力に、こういった音を詰め込まない演奏も魅力的だと改めて聴いていて思います。People Will Say We're In Love は Ray Santisi のピアノがフューチャーされ、バードは吹かずにピアノの音は少しこもり気味の録音となっています。しかしそのオフ気味の録音バランスがラフで自然体の録音と聞こえてくるのがマジックのような録音。If I Love Again は、やっとアップ・テンポになってきて、少し雰囲気を変えてきてます。カラッとしたミュート・トランペットで軽快。What's New はベースの Doug Watkins が主役となるバラードです。リーダーはバードですが、この曲にもバードは参加せず。曲も良いですが発想が自由だなあ。こうきて最後のアップ・テンポのアレンジの Stella By Starlight で締めくくるのもアイデアの勝利です。
ジャケットの撮影場所はこのレコーディングスタジオの庭でしょうか?22歳のバードがカメラを見つめ残りのメンバーは古びたドアの前に椅子を並べているのも、なかなか素敵な構図となっています。いや、これも聴いてよかった🎵
trumpet : Donald Byrd
piano : Ray Santisi
bass : Doug Watkins
drums : Jim Zitano
producer : Tom Wilson
recorded at Steve Fassett's Home on Beacon Hill in Boston, May 7, 1956.
1. Little Rock Getaway
2. Polka Dots And Moonbeams
3. People Will Say We're In Love
4. If I Love Again
5. What's New
6. Stella By Starlight