未発表音源の発売と言えば「Resonance」が最近の定番でしたが、これは1968年の録音が2020年に創立60周年を迎えたジャズの名門「Impuls!」からの発売です。
既に持っているのでうんちくは要らない人も再度思い出して聞き直していただき、モンクを知らない方にも聴いていただきたい実に楽しい演奏です。正式な録音でないのですが海賊盤よりもはるかに音は良くて十分聞けますし、ラフな録音がかえって臨場感を増しているような気もします。
録音された場所はシリコンバレーのはずれにあるカルフォルニア州パロアルトの高校。キング牧師の暗殺は1968年4月4日。米国は国内で多くの都市で怒りに包まれたアフリカ系アメリカ人による暴動が巻き起こったり人種差別に揺れていました。そんな中ジャズを通して人々の結束を願う一人の男子高校生の思いに応えてモンクは高校の学内コンサートに出演のオファーを受けた。少年は当時16歳のジャズをこよなく愛していたダニー・シャー氏。サンフランシスコから白人居住地区のにあるカリフォルニアのパロアルトの高校までの移動はダニー氏のお兄さんの自家用車だった、こうして1968年の10月27日にライブは行われ、そのライブはその学校の用務員によって録音され、音源はこのライヴの発案者のダニー・シャーの自宅屋根裏で保管されていた。そうして保管された音源が52年後の2020年に発売となったわけです。この音源を聴くこととは別に、キング牧師の死後50年以上を経過しているのに人種差別はいまだ無くならずに不幸な報道があることは嘆かわしいことであり、すべての人間の意識改革が進むことを願っています。
さて先に書いたように録音は用務員のおじさんだったとのことで、極上の状態の録音ではありませんが、バンドメンバーの息がぴったりと合っていて演奏内容はすこぶる良いアルバムだと思います。Well You Needn't の Ben Riley のドラムプレイとLarry Gales の弓弾きベースソロは絶好調ですし、Blue Monk は跳ねるような楽しい演奏で Charlie Rouse のテナーも探るように始めながら段々と饒舌になっていきながら吹きまくらない加減に調整するため具合も良いです。モンクのソロもこの曲は楽しいんだよと語りかけるようにリズミカルな感じだし、長尺のベースソロ、ドラムソロもかなりのお客さんへのサービスで、いやこれは楽しい。お客さんの拍手と一緒に私も拍手したくなります。この盛り上がりの後での Epistrophy の少しアップテンポなイントロでお客さんを煽るところもにくい選曲で演奏後のお客さんの拍手は更に大きく相当に盛り上がってきてるのがわかります。最後に短い I Love You Sweetheart of All My Dreams でのモンクのガツンと聞かせるソロも気合と迫力満点。そして前後しますが Don't blame me のモンクの独奏バラードもピアノの鳴りと、あの独特のタッチでドンドンとピアノを押し込むように弾いてリズムをもつくりだすこの演奏で音を聴きながら見ているような感覚になれます。これも良い。
モンクの代表曲ばかりで安心して楽しめるところと、このカルテットの良さがと充実ぶりが非常によく伝わる名演。これはいつもの「おでんバー」のマスターも気に入ったので、お店のハードディスクに格納されたのは私もうれしい🎶🎹
piano : Thelonious Monk
tenor sax : Charlie Rouse
bass : Larry Gales
drums : Ben Riley
producer : Grand Mixer DXT, Danny Sher, Douglas Holloway, TS Monk
recorded at Palo Alto High School on October 27, 1968.
analog tape restoration by Kevin Przybylowski at Sonicraft A2DX Lab, Red Bank, NJ.
1. Ruby, My Dear
2. Well, You Needn’t
3. Don’t Blame Me
4. Blue Monk
5. Epistrophy
6. I Love You Sweetheart of All My Dreams
▶ Palo Alto (Mini Documentary)
▶ Thelonious Monk Quartet in Poland April 1966
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