2023年10月7日土曜日

Oz Noy / Twisted Blues Volume ①


 Oz Noyを最初に聴いたのがこのアルバム。聴いてびっくり、インパクトありすぎて一発でファンになり、Twisted Blues Vol2Ha!SchizophrenicOzone SqueezeBooga Looga loo など、他のアルバムも揃えていってます。イスラエル出身でスタジオ・ミュージシャンとして活躍し、飛躍を求めてニューヨークに移住、ロック、ジャズ、ポップス、サウンドトラック、CMソングなど幅広い音楽性を武器に手掛け、ソロ・ギタリストとして打って出てきたようです。自身のアルバムとしては5thアルバムとなるようで、未だ聴いてないのがありますので探しとかにゃなりません。メンバーは、Stevie Ray Vaughan & Double Trouble のドラマーの Chris Layton、ロック、ブルース系の敏腕セッションドラマーのAnton Fig、ザッパのバンドに参加し、ポップス、ロック、ジャズなど、あらゆる業界で活躍する御大 Vinnie Colaiuta が参加し、この面倒で変態的な展開のアルバムを強力なリズムで支えています。他 Eric Johnson は3曲目の You Are The State に参加しているし、こういった面白うなセッションでよく見かけるベースの Will Lee など、豪華メンバーが集結しています。


 曲目は、オズが研究家でもあるらしい Thelonius Monk から Light Blue、Trinkle Tinkle の2曲、Meters を混ぜながら、自作曲で固めた意欲作です。雑誌で見ましたが、彼の強力なサウンドはコンパクト・エフェクターのズラリとした連結のようです。あれだけやってしまうと、コンパクト・エフェクターはノイズが制御できなくなるし、音圧の制御が難しいと思いますが、それでこの音はかなりのマニアですね。
 さてレビューです。Twisted Blues は、Oz Noy のオリジナル。かなりエッジの効いたシングル・コイルのギターの音です。Tele と書いてありますので、Telecasterを使用ですね。シングル・ノートで弾く音も当然素晴らしいのですが和音が非常に良く練られているのがこの人の特徴ですね。Oh Really? オールディーズ風の曲がオズ流になるとこうなります。アウトなフレーズだけどポップで、どこか楽しい感じのする曲でとにかく感心してしまいます。 You Are The State は、Chris Tarry とオズの共作。Oz Noy Trio でも活動しているベーシストのようです。現在の手持ちのアルバムには彼の名前はありません。ここでのベースは Roscoe Beck で、Robben Ford, Eric Johnson, Leonard Cohe とプレイしているベーシストとのこと。Whole Tone Blues も、オズ・ノイの作品。どう聴いても Stevie Ray Vaughan のオマージュ作品ですね。オズ・ノイが味付けするとこうなりますってカッコいい仕上がりです。当然ドラムは、Chris Laytonとなります。Cissy Strut は Meters の名曲ですね。様々な人のカバーを聴いてきましたが、オズ・ノイのバージョンが一番斬新で素晴らしいですね。このバージョンは私もギターでコピーしました。ライブハウスでやった同窓会で、この曲を合わせてくれと2日ぐらい前に音源を渡しましたことがあるんですが、このバージョンはベース、ドラムのリズム隊はきっちり聴きこんでくれてないとズレまくります。 Light Blue は、モンクの楽曲です。今までのようなエッジが効いたサウンドではなくゆったりとした曲になっています。ストラトを使って、おそらくスライドも使って幻想的な曲調にしています。Steroids いかにもオズ・ノイ的な曲でこれはエッジが効いているほうです。二つの曲を合体させたような作りで、微妙にリズムとメロディーをずらせたりと細かな細工が施されている曲で合わせるメンバーが凄いですね。Two Centers は、シンプルなコード進行と単純な曲に思わせておいて、段々とモリモリに仕掛けが始まる雰囲気を作っておいて、その先に中々いかないというジレッったい作風です。そう思ってしまう聴き手の人はだいぶオズ・ノイの世界に入り込んでしまっている人でしょう。Trinkle Tinkle 最後はモンクで締めくくりです。エフェクトを幾つ使ってるんだと思う音のギターで始まり、スイングでロックするようなリズムですね。ギターのテイストは Stevie Ray Vaughan です。レイボーンはジャズ・ブルースも名手でしたことを思いだします。
 ギターを弾く人であれば、あっけにとられるアイデアとテクニックのオズ・ノイがブルースを意識すればこうなるって言う完璧な作りこみの作品🎵

guitar : Oz Noy (all), Eric Johnson (3)
organ : Jerry Z (1, 2, 7, 8) John Medeski (1,5)  Reese Wynans (3,4,6)
piano : Allen Toussaint (2)
bass : Roscoe Beck (3, 4, 6, 9) Will Lee (1, 2, 5, 7, 8)
drums : Anton Fig (3, 5)  Chris Layton (4,6,9) Vinnie Colaiuta (1,2,7,8) 
tambourine : Ralph MacDonald (5)

producer : Oz Noy

recorded @ The Carriage House Studios, Stamford CT Nov. 5 & Dec. 12, 2010
recorded @ Saucer Sound, Austin TX Dec. 18 & 19, 2010

1. Twisted Blues
2. Oh Really?
3. You Are The State
4. Whole Tone Blues
5. Cissy Strut
6. Light Blue
7. Steroids
8. Two Centers
9. Trinkle Tinkle





  

2023年10月6日金曜日

John Scofield / Grace Under Pressure


 John Scofield(ジョンスコ)名義ではありますが、Bill Frisell(ビル・フリゼール)とのツイン・ギター作品です。ジョンスコは相変わらずのエキセントリックなプレイで、ビル・フリゼールも思いっきり主役を食わんとする存在感のあるプレイ。この二人は、全く違った個性であるため聴き分けは簡単。これは、どっちのギターかなんて聞きながら迷うことは無く聴きながら二人の姿が思い浮かぶのも、わかりやすくて良いところ。



 このアルバムを購入した当初はストレートなギター・ジャズやフュージョンを聴くことが多かったのでこのアルバムを「普通の人がやったらノイズです」なんてレビューをしていました頃もありましたので昔の私には難解なギターだったのでしょう。が、今の私が聴けばそんなことは無くアウトな音使いが非常に心地よいジャズ・プレイだと感じます。
 このアルバムでの、わかりやすいジャズ曲は Grace Under Pressure、You Bet、Twang あたり。特にYou Bet は明るいジャズで最も二人のギターの対比もよくわかって良いです。難解ではありますが、お気に入りは Scenes From A Marriage で、浮遊感のあるインプロのやり取りで、各自がどこに着地するのかわからなくなりますが、メンバーの皆さん追いついてきて最終的にはフリージャズの様相に転じます。最近の私は、全く理解できなかったフリージャズも聴けるような耳と頭になってきたので、ここら辺なら違和感なくすんなりと楽しんで聴くことが出来ます。ホーン部隊には Randy Breckerも参加していますが、かなり軽い味付け的な使用で激しいソロなどはありません。
 伝統的なジャズ手法から、自由な演奏にと2人のギタリストの個性がうまく混ざり合わさった作品と感じます🎵
 
guitar : John Scofield 
guitar : Bill Frisell 
bass : Charlie Haden
drums : Joey Baron 
flugelhorn : Randy Brecker(3, 5, 6, 8, 10)
french horn : John Clark(3, 5, 6, 8, 10)
trombone : Jim Pugh(3, 5, 6, 8, 10)

producer : Steve Swallow

recorded and mixed in December 1991 at Power Station, NYC.

1. You Bet
2. Grace Under Pressure
3. Honest I Do
4. Scenes From A Marriage
5. Twang
6. Pat Me
7. Pretty Out
8. Bill Me
9. Same Axe
10. Unique New York

▶ You Bet


▶ Twang


  

2023年10月1日日曜日

Ella Fitzgerald / Like Someone In Love

 

 1930年代から数十年に亘り、ツアーとレコーディングに明け暮れ、揺るぎない人気と地位を築いていたエラ・フィッツジェラルドの1957年作品。1955年にDecca Records を離れ Norman Granz が興したレコード会社 Verve Records に所属しています。エラがいちばん沢山のレコードを吹き込んだのは、この Verve Records で、Cole Porter、Rodgers & Hart、Duke Ellingtonなどの作曲家シリーズ、Ella In Berlin のようなライブ録音など多彩な作品を残しています。スインギーな歌が得意な印象がありますが、このアルバムのような静かでエモーショナルなバラードも素晴らしいものがあります。また Frank DeVol のアレンジも素晴らしく、単調になりがちなアルバムをエラの良さを引き出すことで聴きごたえのあるアルバムに仕上げていることと思います。


 本アルバムは、再販盤が数多く出ていて、それにはボーナストラックが肺いているようですが、私の購入のこの盤はオリジナルのまま。上記のジャケ写は別の後発CDで録音の翌年の写真のようです。高級そうなボートに乗っていますね。
 さてレビューです。There's a Lull in My Life は Mack Gordon 作曲 Harry Revel 作詞の1937年映画 Wake Up And Live の挿入歌で、伸びやかなボーカルにうっとりとし、Stan Getz が途中で出てくると、おっ出てきたなと思って直ぐにいなくなる。いい感じの始まりです。More Than You Know は、スタンダードで良く知られた歌で、Edward Eliscu, Billy Rose の作詞 Vincent Youmans の作曲で1929年出版(ということはシートミュージックですか)ミュージカル Great Day に使われたナンバー。エラの豊かな表現力がとにかく素晴らしい。包み込むように歌い上げられると幸せな気持ちになれます。What Will I Tell My Heart?  は、Jack Lawrence 作詞 Peter Tinturin 作曲。似たような展開の佳曲です。田舎のゆったりとした家でゆっくり本でも読みながら、このアルバムを聴いていたら長生きできそうです。I Never Had A Chance  は Irving Berlin 作曲で、それほど有名な曲ではないようです。Close Your Eyes は Bernice Petkere の作詞・作曲 で1933年出版だからこれもシート・ミュージックですかね。でもこれは良く聴くスタンダードの恋の歌。今までの肩ひじ張らない曲であったのに対し、少し力が入ってます。We'll Be Together Again は Carl T. Fischer, Frankie Laine による歌曲でバックのオーケストラの演奏も緩急つけて、盛り上げにかかって来る感じあります。Then I'll Be Tired Of You は Yip Harburg 作詞 Arthur Schwartz 作曲のナンバーで可愛らしい曲ですね。伸びやかなトーンで歌いあげてくれます。Like Someone in Love は Johnny Burke 作詞 Jimmy Van Heusen 作曲のタイトル曲。コンセプト的にも合致して出来も良かったのだろうが、アルバム全部良い曲なので特にこれが良いということも感じはしません。映画のエンディング?いやオープニングっぽいかな。Midnight Sun は Sonny Burke, Lionel Hampton 作曲 でインストでしたが、Johnny Mercer が54年に作詞して歌曲として出版のこれもシート・ミュージックですか。良く練られたメロディーラインの流れるような美しさが感じられる曲です。I Thought About You  作詞 Mercer 作曲 Van Heusen の有名スタンダード。似たようなラブ・バラードが続くような気もしますが、実に伸びやかに歌っていただけるので飽きは来ません。You're Blasé  はOrd Hamilton 作曲 Bruce Sievier 作詞、少し曲の表情が変わってお気楽に明るく聴ける感じです。邦題は「冷たいお方」Night Wind  邦題は「夜の嵐」Lew Pollack, Bob Rothberg による歌曲で少し粋な感じですね。What's New? は Johnny Burke 作詞 Bob Haggart 作曲で、1938年にトランぺッター Billy Butterfield に書いたラブ・ソングで「何か変わったことはない?私たちの恋はどうなったの?私はあなたのことを変わらず愛してます」可愛らしいようなドキドキする怖い歌です。Hurry Home は Buddy Bernier, Bob Emmerich, Joseph Meyer による作詞作曲。前の曲との関連性を考えると「早く帰ってこい」は何か意味があるのでしょうか。曲は好いですよ。How Long Has This Been Going On?  は George Gershwin, Ira Gershwin の作詞作曲でオールド・スタンダードで、歌い方に凄く表情があります。
 アルバムとして大きな抑揚はありませんがエラの40歳の歌唱は、歌の上手さ、表情と歌手としては絶好調な感じです。



vocals : Ella Fitzgerald
arranger, conductor : Frank DeVol
sax : Stan Getz

producer : Norman Granz

tracks 1-11 recorded October 15, 1957 in Hollywood, Los Angeles
tracks 12-15 recorded October 28, 1957 in Hollywood, Los Angeles

1. There's a Lull in My Life (Mack Gordon, Harry Revel) 
2. More Than You Know (Edward Eliscu, Billy Rose, Vincent Youmans)
3. What Will I Tell My Heart? (Irving Gordon, Jack Lawrence, Peter Tinturin) 
4. I Never Had A Chance (Irving Berlin)
5. Close Your Eyes” (Bernice Petkere)
6. We'll Be Together Again (Carl T. Fischer, Frankie Laine) 
7. Then I'll Be Tired Of You (Yip Harburg, Arthur Schwartz) 
8. Like Someone in Love (Johnny Burke, Jimmy Van Heusen)
9. Midnight Sun (Sonny Burke, Lionel Hampton, Johnny Mercer)
10. I Thought About You (Mercer, Van Heusen) 
11. You're Blasé (Ord Hamilton, Bruce Sievier)
12. Night Wind (Lew Pollack, Bob Rothberg)
13. What's New? (Johnny Burke, Bob Haggart)
14. Hurry Home (Buddy Bernier, Bob Emmerich, Joseph Meyer)
15. How Long Has This Been Going On? (George Gershwin, Ira Gershwin)




  

2023年9月30日土曜日

Buddy Guy Junior Wells & Junior Mance / Buddy And The Juniors


 ポップスの女性歌手のアルバムか?とも思ってしまうジャケットの中の赤ちゃん3人は、Buddy GuyJunior WellsJunior Mance ですね。この可愛らしいジャケットなのに、中身は泥臭いブルースです。シカゴを代表するブルースマン Buddy Guy、Junior Wells は、ありうる組み合わせですが、ジャズピアニストの Junior Mance が参加とは貴重なアコースティック・ブルース・セッションです。随分昔から持っていたアルバムなのですが、今回聴くまであの Junior Mance とは気づいていませんでしたので、聴き直しは心して聴こうと思います。プロデューサーである Michael Cuscuna は、ライナーノーツに、このレコーディングについて興奮気味に記述してある気がします。そりゃあ Buddy Guy、Junior Wells は当然セッションはあるでしょうが Junior Mance との共演なんて凄いことですから当然でしょう。


 さて、レビューです。オープニングは Talkin' 'Bout Women Obviously ギターとブルースハープの弾き語りブルースです。年代物のアコースティック・ブルースは枯れたギターの音がする場合が多いですが、Buddy のアコギはとてもリッチな音がします。Riffin' も古典的なパターンのブルースで、これもピアノレス。Buddy Blues から Mance のピアノが登場ですが特にジャズっぽいフレーズとかはありません。Hoochie Coochie Man では、ピアノの存在感が増します。リズム隊はいないのに、そうとう躍動感ある演奏になっているのは、しっかりとしたピアノのリードがあってこそと思われます。Five Long Years では、メンバーの演奏も随分と打ち解けた感じの演奏になっています。古典的なパターンに合わせて各自のアドリブが生き生きとしています。Rock Me Mama では、Mance はお休みです。ボーカルは、Wells となって迫力あってカッコ良い。Ain't No Need は、Mance 復活でサビの手前のブレイクでは、Mance がギターと合わせてブレイクしていないのですが、3コーラス目だけは同じブレイクをしているので、ここら辺は、ぶっつけ本番のご愛敬といったところでしょうか。
 数年ぶりに聴きましたが、実に張りがあってドスの効いたアコースティック・ブルースは、今までよりも好印象です。素晴らしいアルバムです🎵

harmonica, vocals : Junior Wells
acoustic guitar, vocals : Buddy Guy
piano : Junior Mance

producer : Michael Cuscuna

recorded at Vanguard Studios, New York City on Dec. 18, 1969

1. Talkin' 'Bout Women Obviously
2. Riffin'
3. Buddy Blues
4. Hoochie Coochie Man
5. Five Long Years
6. Rock Me Mama
7. Ain't No Need




  

2023年9月29日金曜日

David Sanborn


 Taking Off に続くサンボーン2枚目は自身の名前がアルバム名。邦題は「メロー・サンボーン」となっています。サウンド的には、それほどメローではなくファンク、ソウル系が色濃い作品となっています。発売は当然、Warner Records で、プロデューサーは レコーディング・エンジニア、ミュージシャン、作曲家の Phil Ramone で、どちらかと言えばポップス、ロック、ブルース系の方のようです。私のサンボーン遍歴はマーカス色が濃くなって洗練されたサウンドになっていた頃の Straight to The Heart で始まり、次いで A Change Of Heart から始まっているので、このソウル色の強い、このアルバムは結構新鮮に聴けました。マーカスはいませんが Hiram Bullock は、このアルバムから参加しています。注意して聴いていましたが、この頃は未だ自己主張は少な目で、あのクリーントーンのギターの音ではありません。名曲「Smile」はボーカル入りで、このアルバムが原点というのも忘れてはいけない点ですね。サンボーンと言えば色男のイメージですが、ジャケットの裏写真は指名手配犯のような目つきの悪さです。


 さて、レビューです。レトロ・ファンクのようなサウンドで始まるのは Indio です。改めて聴き直すとファズを少し効かせたバッキング・ギターから、サビでの裏の取り方がトリッキーなカッティング・ギターなどハイラムは中々手の込んだギターを主張控えめにやっています。サンボーンのサックスはこの頃から完成されたサウンドと構成ですが少し黒さが濃いでしょうか。そして、あの名曲 Smile です。作曲者は C. Perkinson と言う方の作品で、元曲を探してみましたが残念ながら見つかりません。Mamacita は、歌物でもおかしくない完全にファンクです。昔風のエレピがカッコイイですね。Herbs は年代物の感じがするワウを効かせたギターが印象的。サックスとはもる女性のバッキング・ボーカルも昔風。力強いドラムとベースに合わせて歌うサンボーンのサックスも心地よし。Concrete Boogie も、ミドルテンポのソウル・パターン。アルトの音でしゃくるような音でのサンボーンのサックスはソロを吹きまくらなくても魅力的です。I Do It For Your Love ここで Richard Tee が登場です。短めの2分51秒は、サンボーンとのデュオのバラードとなっておりノリノリ・ナンバーでは無いところがやってくれますね。Sophisticated Squaw は、ファンク・ナンバーに戻ります。最後の 7th Ave とこの曲は、ドラムの Victor Lewis の作曲となっています。7th Ave では最後のギターソロがハイラムらしからぬテクニカルで軽めの音で珍しい。
 大好きなサンボーンの軌跡の一枚であり、黒さを前面に出した作風は良しです🎵
 
sax, flute : David Sanborn
keyboards : Rosalinda DeLeon (1-5,7-8)、Richard Tee (6)
guitar : Hiram Bullock
bass : Herb Bushler
drums : Victor Lewis
percussion : Jumma Santos

produced by Phil Ramone

This album is dedicated to Jonathan Sanborn.
Recorded at A&R Studios, N.Y.C.

1. Indio
2. Smile
3. Mamacita
4. Herbs
5. Concrete Boogie
6. I Do It For Your Love
7. Sophisticated Squaw
8. 7th Ave.

Indio

Smile



  

2023年9月24日日曜日

Bud Powell / Inner Fires

 

 1924年生まれのビバップ・スタイルのピアノの第一人者。同時代のピアニストのモンクとは深く親交があって音楽理論はモンクから学んだと言われていますがプレイは対照的に違います。この時代なので、この人もヤクとアルコールには手を出していたようですが、きっかけは不遇な状況であったようで、1947年ハーレムのバーで喧嘩をして、ビンで顔面を殴られたが彼の論理が意味不明で一貫していなかたとされ、州立病院に入院させられ電気ショック療法を受けさせられ1948年10月には退院しているが人種差別と主張していたらしい。それがもととなったのか、1950年代中期以降は麻薬、アルコール中毒に苦しみ精神障害を負っています。しかし不調期でも録音においても、「クレオパトラの夢」(Cleopatra's Dream)などの名演を遺しているのがこういった昔のプレイヤーの凄いところ。
 この録音は1953年ワシントンの Club Kavakos という小さなクラブでのセッションの録音でパウエルの精神状態がよかった時の録音のようです。プロデューサーの Bill Potts はジャズ・アレンジャーで、個人的にこの録音をコレクションしていたものが、30年後の1983年に発売されたものとのこと。なるほど音質はかなり悪いのはそのせい。


 さて、レビューに参ります。出だしは I Want To Be Happy パウエルが得意とするアップ・テンポなナンバーで、ピアノ8小節のイントロから始まり、ミンガスとの6コーラスを分け合ったソロで快調な滑り出し。Somebody Loves Me ガーシュインの楽曲でアップテンポのアレンジ、1コーラス目はテーマをなぞったアドリブ、そして完全なアドリブとミンガスの掛け合いです。録音が悪くて音がこもりがちなのでミンガスの音をもう少し鮮明に聴きたい。Nice Work If You Can Get It これもガーシュインの曲ですがアップテンポになってます。生き生きとしてガツンとしたピアノソロで調子の良さが伺えます。Salt Peanuts は、ガレスピの曲ですね。歌が入れば、ソルピーナ、ソルピーナって聞こえるヤツです。速さが命ですね。Conception は、George Shearing の作品で次の Lullabye Of Birdland と続けていますね。9曲目にも録音されていますがこちらは1分49秒です。潔いこのまとめ方も良しですね。Little Willie Leaps ここでマイルスの楽曲の登場です。コロコロと転がるようなピアノの音が気持ち良い。Hallelujah! これも高速で凄みがあります。Lullabye Of Birdland (Alternate Master) こちらは2分43秒の少し長め。Sure Thing は、ミュージカル五大作曲家の一人として有名で「煙が目にしみる」の Jerome Kern 作品です。やっとミドルテンポの曲が出てきます。Woody 'N' You は、ガレスピの曲ですね。最後まで硬質で体育会系なバドでした。最後インタビューは1963年の1月15日と5月6日のものでこのアルバムとリアルタイムではありません。多分フランス語での解説と陽気に歌うバドは舌が回らずにやばい感じがします。ただ「最近聴いたグッド・ミュージックは?」に対し「チャーリー・ミンガス、秋吉敏子」と答えていたり、アル・ヘイグは完璧なピアニストだと褒めています。マニアな記録ですね。
 録音状態は、いまいちですがパドの力強いピアノタッチが存分に味わえます。ひたすら速さと力強さを強調する暴走族のような演奏でした。これはこれで有りですね🎵

piano : Bud Powell
bass : Charlie Mingus
drums : Roy Haynes

producer : Bill Potts

recorded At Club Kavakos - Washington D.C., April 5, 1953

1. I Want To Be Happy
2. Somebody Loves Me
3. Nice Work If You Can Get It
4. Salt Peanuts
5. Conception
6. Lullabye Of Birdland
7. Little Willie Leaps
8. Hallelujah!
9. Lullabye Of Birdland (Alternate Master)
10. Sure Thing
11. Woody 'N' You
12. Bud Powell Interviews





  

2023年9月22日金曜日

Gregory Porter / Liquid Spirit


 70年代ソウルの影響がはっきり見えるバリトンボイスで、札幌タワレコの試聴で惚れまして購入。力強く緩急をしっかりと使い分けた歌唱力はものすごく説得力があって暖かい。
 ニューヨークはブルックリン出身で、ジャズ、R&B シンガーで、サウンドは洒落たジャズ・サウンド。帽子が印象的で"jazz hat"とも呼ばれているらしい。このアルバムを皮切りに、ほぼアルバムを揃えたのですが最高傑作は、このアルバムのように感じます。発売当時は知らなかったのですが、2014年の第56回グラミー賞では、【最優秀ジャズ・アルバム賞】を受賞したメジャーデビュー作とのこと。 


 さて、何度聞いたかわからない愛聴盤をレビューです。No Love Dying この一発目にガツンとやられて虜になりました。タイトル曲よりも、この曲のインパクトの方が私には大きかったです。静寂なピアノをバックに語り掛けてくるようなボーカルが非常に魅力的。Liquid Spirit 2曲目がタイトル曲は珍しいような気がします。ハンドクラップ、軽めの格好良い曲です。迫力あるピアノ・ソロも印象的。Lonesome Lover は Abbey Lincoln、Max Roach作。Emanuel Harrold のドラム・ソロで開始。疾走感ありビター・スイートなワルツ調スイングで、ひと昔前にタイムスリップしたような感じに聴かせます。Water Under Bridges は、ピアノとのデュオのバラードで、しんみりと聞かせたところで、サビの切ない感じのしゃくりは惚れない訳はないでしょう。Hey Laura 古いフォーク・ブルースと現代が混ざったような楽曲で、Keb'Mo っぽい作りの素晴らしい作品でソングライターとしての才能を感じます。Musical Genocide は、ジャンル的にはソウルなんだろうけどジャズ的なテイストもあり、ここら辺のとこを、じっくりと聴き手に聴かせる手腕がグレゴリー節な気がします。Wolfcry は、再びバックはピアノのみのバラードで、よりボーカルを聴かせるために寄り添った美しいピアノとともに伸びやかなバリトン・ボーカルは静かな中に凄みがあります。Free は、タイトルからも、繰り返し Free と叫び続けることからも、力強さと決意のようなものを感じる曲です。コンテンポラリーなジャズを装った根底はソウルなものを感じます。Brown Grass は、トリオ編成のバックに、優しい歌声で語りかけてくるポップス調の楽曲で、これもグレゴリー節ですね。Wind Song は、軽やかなピアノと軽やかなボーカルが魅力的な曲でビリー・ジョエルとかも感じて、作曲家としてホントに優れた人であることがわかります。The In Crowd は、Billy Page のスタンダードです。オールド・ファンキーなソウル・ジャズはこの人の真骨頂でもあります。これも大好き。Movin' は、Marvin Gaye 風なソウル。曲名も Movin' ですからね。When Love Was King は、男の哀愁モードで、舞台の歌曲のような感じで、場面が変わっていきます。Fall in Love Too Easily で、オリジナルの楽曲は終了です。Sammy Cahn 作詞、Jule Styne 作曲のスタンダード。しっとりとしたジャズ・バラードで締めくくりです。ボーナス・トラックとして収録は、Time Is Ticking で、ハイハットがチクタクと時計の役割をしている。何かアートな感じがする楽曲です。Water Under Bridges [Rubato Version] は、4曲目のルパート・バージョン。おまけでは、ありますが最後に相応しい曲になっています。他の曲も、ピアノとのデュオと、トリオの録音が全てとってあるような雰囲気もありますね。20年後とかに、未発表テイク完全収録とかで売り出されるんでしょうか🎵

vocals : Gregory Porter
fender rhodes , hammond : Glenn Patscha
piano : Albert Crawford Jr.
bass : Aaron James
drums : Emanuel Harrold
alto saxo : Yosuke Sato 
tenor sax : Tivon Pennicott
trumpet : Curtis Taylor

producer : Brian Bacchus
Recorded at Sear Sound, NY, March 28, 29, 30 and April 15, 2013.

1. No Love Dying
2. Liquid Spirit
3. Lonesome Lover
4. Water Under The Bridge
5. Hey Laura
6. Musical Genocide
7. Wolfcry
8. Free
9. Brown Grass
10. Wind Song
11. The "In" Crowd
12. Movin'
13. When Love Was King
14. I Fall In Love To Easily
15. Time Is Ticking
16. Water Under Bridges [Rubato Version]

▶ Liquid Spirit (Official Music Video)




  

2023年9月17日日曜日

P-Funk / Guitar Army Tributes To Jimi Hendrix


 本作は、George Clinton(ジョージ・クリントン) 監修の Jimi Hendrix(ジミ・ヘン)トリビュート・アルバムです。Eddie Hazel(エディ・ヘイゼル)Michael Hampton(マイケル・ハンプトン)DeWayne Stephen "Blackbyrd" McKnight(ブラックバード)の P-Funkギタリスト、そして James Glass、Ras Kente と言う私にとっては謎?の顔ぶれ。
 Eddie "Maggot Brain" Hazel(エディ・ヘイゼル)はジミ直系のスタイルで、P-Funk のカラーを決定づけてきたギタリスト。ジミ・ヘンと同じ所へ旅だったのは、1992年12月23日(wikiでは Eddie Hazel のミドルネームに "Maggot Brain" がついてます)Michael Hampton は、ジャズ・ソウル・ロック・ブルースと様々な分野に精通したP-Funk 全盛期以降のエディに次ぐギタリストです。Blackbyrd McKnigh は、The Headhunters にも参加していたギタリストで、ジャズテイストを聴かせたアバンギャルド性が魅力なギタリスト。そして正体不明な James Glass は、デトロイトでローカル・ブルースマンとしてジョン・リー・フッカーと共演し、サン・ラにも参加していたことがあるらしい。もうひとり、Ras Kente もデトロイトをベースに活動しているレゲエ畑出身とのこと。
 アルバム自体は100%オリジナルで、P Vine からの要請に、George Clinton が二つ返事でOKして実現とのことです。曲は単なるカバーだけではなく、ジミがモチーフの曲も多数あり、全てニューレコーディングの安直なトリビュートではないようです。
 
 

 さて、レビューです。Scuse Me While I Kiss The Sky はラップの John Sinclair がメインで、ギターは Ras Kente です。サイケなサウンドのギターはジミの直系と言うよりは発展形。レゲエ出身とは思えないロックなギターに ラップはファミリーからのトリビュートと納得ですがうーん。次は、安定の Eddie Hazel による Purple Haze 他のアルバムかライブで聴いたことがある安定の曲で、厳密には Purple Haze ではない、っぽいファンクですがセンスは抜群でエディーやっぱり大好きです。Pleasure With The Dirt Devil は、今までで一番ジミっぽい仕上がりです。高ぶるボーカルにはジミにプリンスが混ざっているが、それは高揚するときの表現としては正しい。Positivity は、全てのパートが Michael Hampton の宅録のような感じです。ジミ・フリークな現代ファンク・ミュージシャンの宅録みたいで全てこの感じだったら飽きる感じです。Look Now Baby は、James Glass と、そのハウス・バンド The Get To Gettin' Band による正統派なブルースで、このアルバムの中では浮いている感じです。Fly On は、Blackbyrd のいつもの王道パターンです。このグシャグシャ感とジミの音を、十分に感じるギターがたまりません。王道は、ワンパターンですが飽きることはありませんね。Reflections On Jimi Part 1 は、御大 George Clinton の発案によるラジオDJ的なもの、つなぎにしては3分22秒と長い。Funky Kazoo は、ジミと言うよりはプリンス的なテイストを感じるマニアックな楽曲。悪くはないんだけど。そう、こんなのもファンカデリックなんだよなあ。The Wind Cries Colours は、Ras Kente による作品で、なるほどレゲエです。レゲエに乗せたアコースティック・ギターが延々と7分35秒です。もはやジミの匂いは感じません(笑)Get To The Gettin'  は、James Glass。ただのブルースギタリストかと思っていたら、俺だってファンクはできるぜって感じの主張を感じますが、録音の加減かギターの音がペラペラなのが残念。でもまあ面白い。Future Past は、重厚なファンク・ロックですね。悪くはないですが、音の割に中身が薄目かな。Should'A Known は、ワシャワシャにギターを被せたファンク・ロックですが、これもかなりチープな感じの仕上がりで、ひねりは無いですね。しょうがない。で、Reflections On Jimi Part 1 は、先の Part2 よりは短めの1分2秒で、もはや後半はダレダレな感じです。最後は、Debbie Does To Voodoo Child で、ラップによって締めくくりですが、Voodoo Child は、どこにいるのか?心の中にいるのか、サウンド面からは全く不明なのが凄い。
 ジミヘン好き、ファンク系に興味もあるギタリストにとってはニヤリとしてしまうアルバムではありますが、??というところも、かなりあり好きでない人にとっては少し脂っこいかもしれない🎵

【guitar】 
Eddie Hazel、Blackbyrd、Michael Hampton、James Glass、Ras Kente、

producer : George Clinton
recorded New Orleans, Lousiana; East Detroit, Highland Park, Michigan USA 1994

1. Scuse Me While I Kiss The Sky / John Sinclair
2. Purple Haze / Eddie Hazel
3. Pleasure With The Dirt Devil / Blackbyrd
4. Positivity / Michael Hampton
5. Look Now Baby / James Glass And The Get To Gettin' Band
6. Fly On / Blackbyrd
7. Reflections On Jimi Part 1 / George Clinton
8. Funky Kazoo / Michael Hampton
9. The Wind Cries Colours / Ras Kente
10. Get To The Gettin' / James Glass And The Get To Gettin' Band
11. Future Past / Randall Lynch And Allen Lynch
12. Should'A Known / Randall Lynch And Allen Lynch
13. Reflections On Jimi Part 1 / George Clinton
14. Debbie Does To Voodoo Child / Point Black