2023年9月24日日曜日

Bud Powell / Inner Fires

 

 1924年生まれのビバップ・スタイルのピアノの第一人者。同時代のピアニストのモンクとは深く親交があって音楽理論はモンクから学んだと言われていますがプレイは対照的に違います。この時代なので、この人もヤクとアルコールには手を出していたようですが、きっかけは不遇な状況であったようで、1947年ハーレムのバーで喧嘩をして、ビンで顔面を殴られたが彼の論理が意味不明で一貫していなかたとされ、州立病院に入院させられ電気ショック療法を受けさせられ1948年10月には退院しているが人種差別と主張していたらしい。それがもととなったのか、1950年代中期以降は麻薬、アルコール中毒に苦しみ精神障害を負っています。しかし不調期でも録音においても、「クレオパトラの夢」(Cleopatra's Dream)などの名演を遺しているのがこういった昔のプレイヤーの凄いところ。
 この録音は1953年ワシントンの Club Kavakos という小さなクラブでのセッションの録音でパウエルの精神状態がよかった時の録音のようです。プロデューサーの Bill Potts はジャズ・アレンジャーで、個人的にこの録音をコレクションしていたものが、30年後の1983年に発売されたものとのこと。なるほど音質はかなり悪いのはそのせい。


 さて、レビューに参ります。出だしは I Want To Be Happy パウエルが得意とするアップ・テンポなナンバーで、ピアノ8小節のイントロから始まり、ミンガスとの6コーラスを分け合ったソロで快調な滑り出し。Somebody Loves Me ガーシュインの楽曲でアップテンポのアレンジ、1コーラス目はテーマをなぞったアドリブ、そして完全なアドリブとミンガスの掛け合いです。録音が悪くて音がこもりがちなのでミンガスの音をもう少し鮮明に聴きたい。Nice Work If You Can Get It これもガーシュインの曲ですがアップテンポになってます。生き生きとしてガツンとしたピアノソロで調子の良さが伺えます。Salt Peanuts は、ガレスピの曲ですね。歌が入れば、ソルピーナ、ソルピーナって聞こえるヤツです。速さが命ですね。Conception は、George Shearing の作品で次の Lullabye Of Birdland と続けていますね。9曲目にも録音されていますがこちらは1分49秒です。潔いこのまとめ方も良しですね。Little Willie Leaps ここでマイルスの楽曲の登場です。コロコロと転がるようなピアノの音が気持ち良い。Hallelujah! これも高速で凄みがあります。Lullabye Of Birdland (Alternate Master) こちらは2分43秒の少し長め。Sure Thing は、ミュージカル五大作曲家の一人として有名で「煙が目にしみる」の Jerome Kern 作品です。やっとミドルテンポの曲が出てきます。Woody 'N' You は、ガレスピの曲ですね。最後まで硬質で体育会系なバドでした。最後インタビューは1963年の1月15日と5月6日のものでこのアルバムとリアルタイムではありません。多分フランス語での解説と陽気に歌うバドは舌が回らずにやばい感じがします。ただ「最近聴いたグッド・ミュージックは?」に対し「チャーリー・ミンガス、秋吉敏子」と答えていたり、アル・ヘイグは完璧なピアニストだと褒めています。マニアな記録ですね。
 録音状態は、いまいちですがパドの力強いピアノタッチが存分に味わえます。ひたすら速さと力強さを強調する暴走族のような演奏でした。これはこれで有りですね🎵

piano : Bud Powell
bass : Charlie Mingus
drums : Roy Haynes

producer : Bill Potts

recorded At Club Kavakos - Washington D.C., April 5, 1953

1. I Want To Be Happy
2. Somebody Loves Me
3. Nice Work If You Can Get It
4. Salt Peanuts
5. Conception
6. Lullabye Of Birdland
7. Little Willie Leaps
8. Hallelujah!
9. Lullabye Of Birdland (Alternate Master)
10. Sure Thing
11. Woody 'N' You
12. Bud Powell Interviews





  

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