2024年4月6日土曜日

Bluey / Leap of Face


 現代アシッドジャズの大御所 Incognite(インコグ)の総帥の Bluey。本名 Jean-Paul"Bluey"Maunick(ブルーイ)の初ソロアルバムです。ビッグ・ネームな人だけにながらソロは出していなかったことは少しビックリです。
 いつものインコグのサウンドではなく、ソウル、ダンスクラシックス、クラブ、ブラジリアンなどインコグに食傷気味になっていたらこれも良いかもしれません。そして全面にブルーイがボーカルをとっているのは珍しく、都会的な音楽性に変わりはないですが、いつもの売れるであろう商業的音作りではなく温もりや素朴さのようなものも感じます。


それではレビューです。Stronger タイトに弾かれるベース・ラインに合わせて淡々と進行するメローなサウンドとムーディなコーラス。スティーリーダンとマービンゲイが出会ったような音楽とはまさにその通りのライナーノーツ解説。Got To Let My Feelings Show は爽やか路線の曲ですがインコグ路線ではあります。若々しいポップス歌手のような歌声にはニヤけます。Ain’t Nobody’s Business But My Own は、ハウス手法での音作りですが、そこはブルーイのこと仕掛けは満載だろうと思いながら聴いていても結構、普通に終わります。 Take A Chance On Me そうです。これがインコグっぽい感じです。安心してしまいます。ボーカルも良い感じ。If You Really Wanna アコースティックに軽ーく作った感じがします。これをベースにホーンを入れて豪華に作りこむとアーなるのかと想像を掻き立てられる曲です。Live Like A Millionaire なんとモータウンっぽい感じ。これは新しい感じですね。 Keep Myself Together me メローでミディアム・スローのカーティス・メイ・フィールド風ボーカル。Sky インコグでも聞いたことのあるような気はするが気のせい?のボサノバ。 Why Did I Let You Go これはインコグのパターンですね。安心安心。Leap Of Faith はコンガにのせてインコグ風ですが少し怪しい感じが素敵な曲です。朗読系ボーカルですか。なるほど。Elevate The Feelin’ 最後はひねりも無く、優しくミディアムテンポのアーバンソウルで締めですね。
 音楽とは関係ありませんが、濃いなあ 濃い顔のジャケだなあと思っていたら、得意先に、そっくりな人がいたので、飲みに行った時に写真見せたら本人にもバカ受けでした(もちろん日本人)🎵

guitar, instruments : Jean-Paul "Bluey" Maunick
acoustic guitar, instruments : Richard Bull
Dominic "Ski" Oakenfull (3)

recorded at Livingston Studios, Primaudial Studios, The House Of Love, Higher Ground Studio

1. Stronger
2. Got To Let My Feelings Show
3. Ain’t Nobody’s Business But My Own
4. Take A Chance On Me
5. If You Really Wanna
6. Live Like A Millionaire
7. Keep Myself Together
8. Sky
9. Why Did I Let You Go
10. Leap Of Faith
11.  Elevate The Feelin’





  

2024年4月5日金曜日

Earth Wind & Fire / I am


 オープニング・ナンバー「In the Stone(石の刻印)」がヨハネの黙示録の基にした楽曲なので邦題は「黙示録」となっています。
 もちろんかなり売れたアルバムで、収録されている楽曲も素晴らしくのですがベスト盤には入らないマイナーな曲も秀悦な曲が多いのが特徴です。ディスコティックでスペーシーな印象があるアースですがブギ・ベースの曲をとりれたことにより、ポップなサウンドにもなっていることかと思います。シングルカットは3曲で、In the Stone、After the Love Has Gone、Boogie Wonderland で、 AORで著名な David Foster 作曲の After the love has gone は、リズムよりも曲を聴かせる楽曲で、このアルバムのアクセントとなっています。セッションメンバーには、TOTOからスティーヴ・ルカサーとスティーヴ・ポーカロが参加しているのも聞きどころ。


 それでは久しぶりに聴くアルバムとなりますが、過去擦り切れるほど(CDは擦り切れませんが)聴いたアルバムを再度聴きながらレビューしていきます。In The Stone 出だしのホーンアレンジが懐かしいです。バンドでコピーしたことありますね。インストでしたけど。これぞアースのアレンジとポップでファンクな楽曲でギターのカッティングの勉強になりました。Can't Let Go これもテンポ上げ気味のクールな楽曲。イントロのアレンジも凝ってます。楽曲に入ると安定の踊れるテンポとディスコ・サウンド。ファルセットのコーラスは今聴いても素晴らしい。After The Love Has Gone は、前述のAORで著名な David Foster 作曲。ゴージャスで憂いのあるメロディーがとにかく秀悦な作品です。Let Your Feelings Show 邦題は「天空に捧ぐ」で何か大袈裟な感じますが、いつものアース・アレンジのファンクで、ホーンアレンジとコーラスの絡み方が聴き手を高揚させてくれます。Boogie Wonderland これは流行りましたね。当時の踊りに言っていたら1日に数回かかるヘビロテだったことでしょう。ズンズンと突き上げるリズムパターンは、誰もが足でリズムをとってしまいます。コーラスは女性グループの The Emotions(エモーションズ)で、パーツは単純なのですが、盛り上げる組み合わせと展開です。Star ミディアムなテンポとモータウン風の楽曲で爽快。Aメロ、Bメロはよくあるパターンですが、サビのメロディで豪華な感じになり、終盤の昔風ファンクのソロ大会は更に盛り上がります。Wait バラードです。改めて聴いても、楽曲の配置も絶妙です、上げて上げて聴かせて落ち着かせて上げてよく考えられています。Rock That! インストのファンクですね。完全に私の大好きなスペクトラムの元ネタ、そのままですね。ギターにはこの曲は Steven Lukather が参加しているはずなので注意して聴いていましたが、ギターソロは1発目はおそらく違いますよね。後半のバッキングとオブリガードを混ぜた部分だけの控えめな参加でしょうか。You And I 綺麗にアルバムをまとめる楽曲を作ったって感じです。
 私の大好きなスペクトラムのメンバーも、このアルバムを聴きこんでいたことは必至の名アルバムで、これは何時までも色あせないサウンドで楽しめます🎵

vocals, congas, percussion : Philip Bailey
keyboards : Billy Myers, David Foster, Eddie Del Barrio
piano, synthesizer : Larry Dunn
synthesizer : Steven Porcaro
guitar : Al McKay, Johnny Graham, Marlo Henderson, Steven Lukather(8)
bass : Verdine White
drums : Fred White
vocals, drums, kalimba : Maurice White
percussion : Paulinho Da Costa, Ralph Johnson

alto sax, tenor sax, baritone sax : Don Myrick
sax : Fred Jackson Jr. , Herman Riley, Jerome Richardson
tenor sax : Andrew Woolfolk
trombone : Benjamin Powell, William Reichenbach, Garnett Brown, George Bohanon, Louis Satterfield, Maurice Spears
trumpet : Bobby Bryant, Jerry Hey, Michael Harris, Oscar Brashear, Rahmlee Michael Davis, Steve Madaio
french horn : Barbara Korn, Marilyn Robinson, Richard Perissi, Sidney Muldrow
harp : Dorothy Jeanne Ashby
timpani : Richard Lepore

cello : Daniel Smith (4), Delores Bing, Jacqueline Lustgarten, Jan Kelley, John Walz, Kevan Torfeh, Larry Corbett, Miguel Martinez (2)
viola : James Ross, Laurie Woods, Linda Lipsett, Marilyn Baker, Rollice Dale, Virginia Majewski
violin : Anton Sen, Sherman Bryana, Carl LaMagna, Cynthia Kovaks, Gina Kronstadt, Haim Shtrum, Harris Goldman, Henry Ferber, Henry Roth, Ilkka Talvi, Jack Gootkin, Jerome Reisler, Jerome Webster, Joseph Goodman, Joseph Livoti, Judith Talvi, Leeana Sherman, Marcy Dicterow, Pamela Gates, Pavel Farkas, Ronald Clarck, Rosmen Torfeh, Sheldon Sanov, William Henderson (2)

producer : Maurice White

recorded at Hollywood Sound Recorders, Sunset Sound Studio and Davlen Studio, Los Angeles, CA.

1. In The Stone
2. Can't Let Go
3. After The Love Is Gone sax : Don Myrick
4. Let Your Feelings Show
5. Boogie Wonderland vocals : The Emotions
6. Star trumpet : Rahmlee Michael Davis
7. Wait
8. Rock That
9. You And I





  

2024年3月31日日曜日

The Profile / Sands Of Time

 

 CDレーベル P-Vine の発売する Return Of Jazz Funk の「エンカウンター バーナード・バーディのお仕事場編」の一枚。Return Of Jazz Funk はオムニバスのシリーズだけかと思っていたら単体でも販売しているようです。改めて見返してみればオムニバスには、Return Of Jazz Funk Special とスペシャルの文字ですから、本流は単体の発売のようです。
 ちなみにエンカウンターは、Gatefold / Bernard Purdie の短命レーベルEncounterのことで、発売したレコードの年を見ていると、おそらく1973年の一年だけ活動の模様。
 ドラマーの Bernard Purdie は、あまり着目してこなかったので名前を知らなかったドラマーですが bernardpurdie.com を見てみると、芸名は Bernard Pretty Purdie 世界で最もレコーディングをしたドラマーで、Aretha Franklin, James Brown, B.B. King, Oates, Steely Dan などの作品に出演しているとのこと。私の所持音源を調べてみると驚くほどの参加率でなるほど世界で最もレコーディングをしたドラマーの別名は伊達ではありません。Roberta Flack & Donny HathawaySteely Dan / AjaHerbie Hancock / Fat Albert RotundaCornell Dupree / Teasin'Aretha Franklin / Young, Gifted And BlackAlice ClarkAretha Franklin / Live At Fillmore WestAretha Franklin / Amazing Grace The Complete RecordingsRichard Groove Holmes / Night GliderNina Simone / Silk & Soul


 さて、全部聴いてきましょう。99Baseball バロンズの「99ベースボール」からの記述を見かけたので調べてみました。おそらくアメリカのアラバマ州のバーミンガムのマイナーリーフ Birmingham Barons のことでしょうか。99が誰かの背番号かとも思いましたが、よくわかりませんでした。曲は簡単にノリの良いファンクで、とてもキャッチー。Let's Stay Together は、ソウルシンガー、Al Green の楽曲のカバー。原曲が良いのでアレンジしやすい感じです。Here's That Rainy Day は、Jimmy Van Heusen のスタンダードで、今までのファンク路線からグッと変えて、スローなオルガン・ジャズ。53年のミュージカル用に作られたものであるとのこと。Shaft は再びファンク路線で、Isaac Hayes の楽曲で、スタジオ・ミュージシャンとしては数多くの作品を残したがソロではあまり売れなかった人らしい。People Make The World Go Round は、The Stylistics ですね。せつないメロディーの曲の展開が素晴らしい。元曲の良さもありますが、かなり好きです。 Had A Dream 作曲者は Robert Bushnell となっていて、ジャズ・ソウル・ジャズ系に名を見る方らしい。残念ながら私の所有音源ではヒットせず。短めのソウルをインストアレンジした作品にしています。By The Time I Get To Phoenix 白人シンガー・ソングライターのJim Webb 作品で、King Curtis、Stevie Wonder にも取り上げられている曲のようですが私は今回初でした。
 ポピュラー・スタンダードなソウルを、きっちりアレンジしたインスト・アルバムで音源としては良質な音源でした。惜しむらくはインパクトは、あるようでない🎵

organ : Don Sands
guitar : Dave Barron
bass : Paul Martinez
drums : Bernard Purdie, Butchman Bateman
percussion : Norman Pride
tenor sax : Seldon Powell
trombone : Garnett Brown
trumpet : Jimmy Owens

executive producer : Lloyd Price
producer : Bernard Purdie

recorded in NY, 1973

1. 99 Baseball
2. Let's Stay Together
3. Here's That Rainy Day
4. Shaft
5. People Make The World Go Round
6. Had A Dream
7. By The Time I Get To Phoenix





  

2024年3月30日土曜日

David Sanborn / Here & Gone


 ギラギラしたフュージョンではなくムーディなサウンド、ジャズというよりはブルース系4ビートやビッグ・バンド風のサウンドを基調としたアルバムです。注目は、参加ミュージシャンで、ギターは Russell Malone、Derek Trucks、ボーカル、ギターで Eric Clapton、ドラムは全面 Steve Gadd の人気アーチストが華を添えています。そっちに注目しがちですが、もちろんサンボーン節のサックスは健在で、フュージョン時代のように尖らず、わかりやすい R&B 色が強いので、とても聴きやすいアルバムとなっています。
 プロデュースは30年ぶりの David Sanborn(メロウ・サンボーン 巨匠 Phil Ramone で、1959年、レコーディング・スタジオ「A&Rレコーディング」を立ち上げ、革新的な技術を積極的に用いるレコーディング・エンジニア、音楽プロデューサー。4トラックレコーダー、映画の光学式サラウンド音声、デジタル録音技術などがあり、A&Rスタジオでは初の一般販売用コンパクトディスク(CD)が製作されたそうです。
 

 それでは、ご機嫌なアルバムを再試聴しながらレビューをしていきます。St. Louis Blues は、W C Handy による名曲で、ムーディにググっと渋い演奏です。リラックスしたビッグバンドの演奏をバックに、自然体のいつものサンボーン節がたっぷりで素晴らしい。次はBrother Ray で、ギターの Derek Trucks が前面に押し出された作品で、もう既にギターと言う楽器の音を飛び越えた演奏で控えめではあるのに注目して聴いてしまいます。ある音域ではサックスの音色と寄り添うかのように、むせび泣くギターは極上です。次いではクラプトンの登場で I'm Gonna Move To The Outskirts Of Town。ジャジーなブルース演奏にボーカルは聴きなれた、あの声です。ギターはプリンとしながらギラっとしたノーマルなストラトの音でオブリガード主体でボソボソ弾いているのがまた渋い。バックの演奏でギターでひたすら4ツを刻んでいるのが Russell Malone かと思うとこれはまたゴージャス。Basin Street Blues ここからはサンボーンが主役となります。前の2曲はどうしてもギターとボーカルに注目してしまいますので、ナチュラルにサックスの音が楽しめるのですがバックの演奏も途中で拍をずらして前にのせたビートにしたり聴き飽きない仕掛けがにくい。Stoney Lonesome も、普通にビッグバンドなのですがソリスト・サンボーンが、するっと吹いている感じが凄く自然です。Russell Malone のギターソロも短いですが、いぶし銀です。 I Believe It To My Soul は、Ray Charles の楽曲で Joss Stone のボーカルが迫力あります。どんな貫録のある黒人のオバちゃんかと思って検索してみたら白人の綺麗な女性でしたので若干驚き。What Will I Tell My Heart は Irving Gordon, Jack Lawrence, Peter Tinturin によるスタンダード。R&B が濃くなってきたのでジャズ方向に修正です。Ella Fitzgerald が歌ってたバージョンも好きです。Please Send Me Someone To Love は Percy Mayfield のブルースナンバーです。ここらへんはサンボーンのサックスとしっくりときますね。しかしなんてことない曲でもサックスを聴いてこの人とわかるサンボーン節は凄い。I've Got News For You はボーカルに Sam Moore で大団円の楽曲。
 いや、ゴージャスでエンターテイメント性に優れるアルバムで楽しいアルバムです。たまに聴くよりは、もう少しヘビロテにしたいと改めて思い、保管は良く聴く棚に移動します🎵

alto sax : David Sanborn
electric piano , organ : Gil Goldstein (1 to 4, 6, 8)
organ : Ricky Peterson (2, 6, 8, 9)
guitar : Russell Malone、Derek Trucks(2), Eric Clapton(3)
bass : Christian McBride
drums : Steve Gadd
baritone sax : Howard Johnson (3)
tenor sax : Lou Marini
trombone : Mike Davis
trumpet : Keyon Harrold, Lew Soloff (1, 4, 6, 9), Wallace Roney (1)
bass clarinet : Charles Pillow (1 to 4, 6, 9), John Moses (5, 7, 8)
pro-tools programming : Dean Sharenow
vocals : Eric Clapton(3), Joss Stone(6), Sam Moore(8)

producer : Phil Ramone

recorded at Legacy Recording Studios and Hiatus Studios (New York City, New York); Studio 835 (Los Angeles, California)

1. St. Louis Blues
2. Brother Ray featuring : Derek Trucks
3. I'm Gonna Move To The Outskirts Of Town featuring : Eric Clapton
4. Basin Street Blues
5. Stoney Lonesome
6. I Believe It To My Soul  featuring : Joss Stone
7. What Will I Tell My Heart
8. Please Send Me Someone To Love
9. I've Got News For You featuring : Sam Moore





  

2024年3月29日金曜日

Incognito / 100°and rising


 アシッド・ジャズとジャズ・ファンクとUK・ソウルの明確な違いは未だによくわからず雰囲気で使っておりますが、この分野に私が傾倒したキッカケはこのアルバム。リーダーのギタリストのブルーイはジャケットの真ん中の美女を従える王様のようで、いかついですが、計算されつくしたインコグのサウンドの核を作っているのはこの王様。
 おそらく、これなら売れる!という方程式がブルーイの中では確立されていて、彼の頭の中には楽器やリズム、ボーカルまでもがひとつひとつのパーツとして組み込まれているに違いありません。しかもセンスが良いことから音楽的知能指数は世界のトップレベルと推測されます。そんな方程式があるからこそ、インコグは金も集まれば人も集まるので、贅沢に人を起用して最高のものを作って、更に儲かっていくという資本主義の象徴のようなものも感じます。ブルーイはある意味インコグというコミュニティのカリスマなんだと改めて実感。
 このアルバムは今までのファンクサウンドを受け継ぎながら、ストリングスを効果的に入れて包みこむように、楽曲を流れるような感覚にして聴きやすくしているのが特徴で、最初の1曲目〜5曲目までは1つのコンセプトで形成されているように感じます。そしてToo Far Gone では、ジャジーなアレンジでリズム楽器なしで分断し、After The Fall でのセンスあふれるインストで流れを変えるなど、計算されたアルバムつくりにはノックアウトです。そしてToo Far Gone での、ジャジーなアレンジのインストも最高。インコグはボーカルがドンドン入れ替わるバンドですが、このアルバムの Joy Malcolm、Pamela Anderson の双頭ボーカルは、このサウンドにとてもよく合っていると感じます。



lead Vocals : Barry Stewart (6) , Bluey (3), Joy Malcolm (1,3,6,8,9,12), Pamela Anderson (2, 4 to 6, 8)
backing vocals : Barry Stewart (2, 4, 6, 8), Elizabeth Troy (5), Bluey (3, 9), Joy Malcolm (1 to 6, 8, 9, 12), Pamela Anderson (4 to 6, 9)
electric piano : Graham Harvey (1, 3, 6 to 9, 13), Maxton Gig Beesley Jnr (11), Peter Hinds (2, 4, 5)
clavinet : Gary Sanctuary (4)
Mellotron : Gary Sanctuary (7)
guitar : Bluey (1 to 8, 10 to 13)
acoustic guitar : Richard Bull (1)
synth : Gary Sanctuary (7), Graham Harvey (5, 7, 8), Peter Hinds (5, 8, 13)
synthesizer programming : Richard Bull (12)
piano : Graham Harvey (1, 8 to 11), Peter Hinds (5)
electric Piano : Graham Harvey, Maxton Gig Beesley Jnr, Peter Hinds 
bass : Julian Crampton (2, 3, 5, 7, 9, 11 to 13), Randy Hope-Taylor (1, 4, 8)
bass programming : Bluey (10)
moog bass : Graham Harvey (6)
drums: Maxton Gig Beesley Jnr (2 to 4, 8), Richard Bailey (10, 13), Richard Bull (5, 12)
drum programming : Bluey (5, 8), Richard Bull (1, 2, 5, 7, 9)
percussion : Maxton Gig Beesley Jnr (1, 2, 4, 5, 7, 8, 10, 11, 13), Richard Bull (12), Snowboy (9)
handclaps : Bluey (8), Maxton Gig Beesley Jnr (8), Simon Cotsworth (8)
Voice : Claudia Rey (10), Carlos "Soul Slinger" (10), Bluey (7), Maxton Gig Beesley Jnr (7)

alto sax : Bud Beadle (2, 3, 4)
soprano Sax : Ed Jones (2), Jason Yarde (10)
tenor sax : Adrian Ravell (5, 9, 12), Denys Baptiste (10), Ed Jones (2)
baritone sax : Bud Beadle (2, 4)
trumpet : Gerard Presencer (5, 7, 9, 12, 13), Kevin Robinson (2 to 4, 11)
trombone : Fayyaz Virji (2 to 4, 11), Mark Nightingale (5), Richard Edwards (9, 12, 13)
flugelhorn : Gerard Presencer (5, 7, 13), Kevin Robinson (3, 11)
flute : Adrian Ravell (5), Bud Beadle (3)
bass flute : Rowland Sutherland (10)

1. Where Did We Go Wrong
2. Good Love
3. One Hundred And Rising
4. Roots (Back To A Way Of Life)
5. Everyday
6. Too Far Gone
7. After The Fall
8. Spellbound And Speechless
9. I Hear Your Name
10. Barumba
11. Millenium
12. Time Has Come
13. Jacob's Ladder






  

2024年3月24日日曜日

John Coltrane / Inner Man

 

 邦題は「バードランドのコルトレーンとドルフィー」帯には「絶頂期のコルトレーンとドルフィーが繰り広げる究極のインプロビゼイション」と何やら激しい煽り文句が書いてありますがどうなのか?その昔、岡本太郎が「芸術は爆発」だと言ってました。なかなかの激しさでこれが芸術なんだなあと思わせる作品でした。
 ちなみに音楽好きの集う「おでんバー」の住人は Eric Dolphy 好きな人が多数派を占めますので、このアルバムは皆様称賛でした。常連になればフリー・ジャズ、ノイズなども聴かされながら段々と洗脳され、私も慣れてきたので、今は普通に面白く聴けますが10年前はフリー・ジャズ、ノイズ、演歌は拒否派だったのが不思議です。
 エリック・ドルフィーは、フリー・ジャズではない伝統的なジャズの境界線に留まりながら、限りなくフリーキーな演奏を信条とするミュージシャン。コルトレーンは1965年からフリーのアルバムを発表していきます。本作は1962年の2日間のラジオ番組でのバードランドの演奏が収録されたものです。元音源は2日分あるため様々な組み合わせでアルバム化しており、ジャケットには様々なバージョンがあるようです。また、この収録はコルトレーンのAfrica Brass の録音の2日後で、Eric Dolphy 以外は同一のメンバーです。



 それではレビューしましょう。My Favorite Things バグパイプのようなコルトレーンのテナーが、印象的で自己を開放したプレイであると小川隆夫氏がライナーノーツで解説していますが、確かにその通り。荒々しい McCoy Tyner のピアノも意気込みを感じるしエリック・ドルフィーのフルートも優しい音色なのに荒ぶるアドリブで聴く方が疲れてしまうような熱のこもった演奏です。ちなみに My Favorite Things は My Favourite Things の誤植のままこのCDも発売されています。続く Body And Soul は、正調っぽく幕を開けますが、ドラムの Elvin Jones だけ最初の方はノリノリの煽りを入れていて空回りしているような気がします。演奏が進むと段々とクールダウンしているのか聴いているほうの耳が慣れてきているのか?ここではコルトレーンはいつも吹きまくり戦法なのでホッとします。4分15秒過ぎの人のしゃべり声を消したのか、マイクの位置が悪くてビビっているのか奇妙な音が気になりました。 Mr. P.C は、コルトレーンは最初から気合が入り、暴走機関車のように飛ばしまくっています。全精力を出し切ったかのようなプレイにエリック・ドルフィーも俺にも吹かせろとばかりに、コルトレーンのソロの終わりに被せててからの力技は壮絶。芸術性の前にパワーが炸裂しています。ここでも McCoy Tyner のピアノも荒ブっています。そりゃそうなりますよね。Miles' Mode は、コルトレーンがマイルスの元でモードのイディオムを身に付けた曲ですね。ゴージャスな感じでインテリっぽく夏量はありますが暴力的ではない演奏です。しかし、こんなライブはやっているほうも疲れますが聴いているほうも疲れます。深夜のラジオでこの演奏は酒を飲みながら聴いていたら、酔っぱらいそうですね。
 音質はあまりよくないものの、それによって演奏の熱量が減じて聞こえることも無く魅力のある一枚ですが、万人受けではないでしょう🎵

tenor sax, soprano sax : John Coltrane
alto sax, bass carinet, flute : Eric Dolphy (1, 3, 4)
piano : McCoy Tyner
bass : Jimmy Garrison
drums : Elvin Jones

radio broadcast at Birdland, New York City at midnight on February 9, 1962 (1, 3, 4)

track 1 is My Favorite Things. CD spells it My Favourite Things.


1. My Favorite Things
2. Body And Soul
3. Mr. P.C
4. Miles' Mode



▶ Mr. P.C


  

2024年3月23日土曜日

The Soulciety Funky Family


 London-Humburgを拠点とするレーベル Soulciety のクオリティ高めののコンピレーション。1990年代初頭のJazzy Hip Hop〜Jazz Funk~Acid Jazz音源が収録されています。本盤は、ドイツからの輸入ものです。マニアックな選曲で、素晴らしい完成度のコンピに仕上がっています。いつ購入したのか全く覚えていないのですが、1993年は発売なので、おそらくその付近で購入しているはず。本盤の他、赤青黄と合計4種シリーズで発売されているようで中古屋で見つけたら是非購入したいと思いつつ、既に30年が経過しているようです。私は基本、現物を中古CD屋などで視認してから購入する古いタイプの人間ですがコイツに関してはネット購入でないと揃いそうにありません。
 サイケを狙ったのかと思いますが、私には近未来的、ホラー的に見えるジャケットも好きなのですが、ライナーノーツなど何もない厚紙ジャケット製なのでプロデューサー、デザイン等のクレジットは一切なく費用も一切かけていないのが潔く増々興味がわくコンピです。

 

 それでは、ずっと聴き続けている愛聴盤でありながら、ほぼアーティスト情報について調べてこなかったアルバムを再試聴します。Venus Drops / Rad. は、アメリカのシンガーソングライターのRad(Rose Ann Dimalanta)の1993年のアルバムからの出品。懐メロではなくリアルなアーティストの曲を収録しているようです。オールド・アメリカンなムードが漂うが楽曲はとても素晴らしい。T.O.P.のホーンがアルバイトで参加している模様。 I Like It Like That / The JB Horns ほぼアーティスト情報について知らないと前述しましたが、The JB Horns自体は知っていました。暴君JBに反乱を起こしてバンドをやめてしまった Maceo Parker が主宰のバンドですね。暴君と仲たがいしたものの音楽的な資産は持って行って、しっかりこれで飯の種です。Love T.K.O. / The Human Body これも1993年発売のアルバムからの作品。The Human Body は、1980年代にZappに参加していた Roger Troutman のバンドで、なるほど楽曲にはメジャー感があります。I Wanna Dance / M'Blu Et Moi は、素晴らしくB級な楽曲がとても良いです。ワザと気持ち悪い音をぶつけるサックスのユニゾン?のアイデアが凄く斬新で、対比してアーバンでクールなベースとドラムの対比も良いです。Come My Way / Rad. これで2曲目の Rad. は完成された Jazz Funk サウンドで、Rad.のボーカルの完成度の高さが驚きで、この楽曲に関して言えばファズ・ギターのイカレ具合が適度にマッチ。 Sayin' It And Doin' It Is Two Different Things / PFunk-Ness はバンドのネーミングからするとPFunk好きな集団のように思えますが、サウンドはスマートさのある Acid Jazz で工夫も何もないストレートな録音。South Carolina  / Bus People Express は、いかれた雰囲気のボーカルのエレクトロ・ファンクです。系統としてはBlack Stupid 系です。2分25秒の短い曲です。Don't Throw Your Love In The Garbage Can / Vicki Anderson バンドの音は最新ですが、ボーカルの Vicki Anderson は声質と音の揺れ方からしてかなりの高齢を感じます。1972年の作品のボーカル部分だけを切り取って作った作品のようですが、ボーカルの切り取りで音質が劣化して高齢を感じる声になっているのと、バンド自体はデジタルにテンポを刻んでいるのですが当時のバンドではリズムが微妙に揺れているのでしょう。元録音には感じられない揺れが発生しているのが高齢感に拍車をかけているのでは?いや、作品としては文句なく良いのですが気になりました。Sunshine / Bobby Byrd ゴスペル基調のワールド系ソウル。バックボーカルに Carleen Anderson, Rad., Vicki Anderson が参加とありますので、このアルバムへの特別録音か元曲ありのリミックス版と思われます。リミックスとしたら、かなり凝っていますね。Bobby Byrd は、JBを発掘した歌手でもあるゴスペル・ソウル界の大御所。1934-2007 ですから、このアルバム1993年で60歳と言うことは未だ現役でもやれてそうだけど Rad.のバックボーカル参加が怪しいので後から被せのリミックスとも思えます。
 聞き流しているより色々なことを思いながら聴けたので再度聴いて楽しさ倍増でした。いや素晴らしいコンピを持っていたもんだと自分を褒めようと思います🎵

1.  Venus Drops / Rad.
vocals, organ, grand Piano : Rad.
guitar : Ray Obiedo
guitar : Roger Troutman
bass : Bobby Vega
congas : Michael Spiro
drums : David Garibaldi
horns : Tower Of Power Horn Section

2. I Like It Like That / The JB Horns
vocals : Jaye Ella Ruth
spoken words : Laura Jane Mazda
backing vocals, alto sax : Maceo Parker
backing vocals, tenor sax : Pee Wee Ellis
backing vocals, trombone : Fred Wesley
bass : Graham Silbiger
drums : Crispin Taylor
percussion : Jeff Scantlebury

3. Love T.K.O. / The Human Body
vocals, backing vocals : Bobby Glover
backing vocals : Shirley Murdock
drum programming : Lester Troutman
guitar : Rick Bray
keyboards, bBacking vocals : Dale DeGroat
bass, guitar, backing vocals : Roger Troutman

4. I Wanna Dance / M'Blu Et Moi
alto sax : Detlef Raschke, Matthias Gruber
tenor sax : Birdy Jessel
guitar : Hinrich Dageför
keyboards, percussion : Max Wulf
bass : Sören Böhme
drums : Mathias Trippner

5. Come My Way / Rad.
vocals, organ, grand Piano : Rad.
guitar : Ray Obiedo
guitar : Roger Troutman
bass : Bobby Vega
congas : Michael Spiro
drums : David Garibaldi
horns : Tower Of Power Horn Section

6. Sayin' It And Doin' It Is Two Different Things / PFunk-Ness
guitar : Bruno Speight
organ : Bart Anderson
bass : Jerry Preston
drums : Tony Byrd

7. South Carolina  / Bus People Express
guitar, organ, vocals : J.J.
congas, bass, vocals : Bo
drums, vocals : Muggy

8. Don't Throw Your Love In The Garbage Can / Vicki Anderson
vocals :  Vicki Anderson
horns : The Soulciety Horns
keyboards : Bart Anderson
guitar  Bruno Speight
bass : Jerry Preston
drums : Tony Byrd

9. Sunshine / Bobby Byrd
vocals : Bobby Byrd 
backing vocals : Carleen Anderson, Rad., Vicki Anderson
keyboards, backing vocals : Bart Anderson
guitar : Bruno Speight
bass, backing vocals : Jerry Preston
drums : Tony Byrd
horns : Tower Of Power Horn Section






  

2024年3月22日金曜日

James Cotton / Deep In The Blues


  2017年3月16日に亡くなったJames Cotton の 1995年録音のアルバムです。御大の歌声は、だいぶ苦しそうに聴こえます。喉頭癌で手術を受けられてから歌えなくなったので録音ですね。苦しそうな、かすれた歌声ですが、これがまた渋い味つけになっています。基本的にはホーン部隊を従えた若い頃のファンク・ブルースが大好きなのですが、このアルバムはドラムレスのアコースティック。ずっと聴き続けてきた激しいファンク・ブルースが信条の御大の、こんなブルースを聴いていると、しんみりとしてしまうものがあります。と書くと悲しみに溢れたアルバムのように感じるかもしれませんが、ファンクブ・ルースのオヤジのキレのあるハープは健在、しゃがれ声がさらに掠れていますが、ファルセットも出せます。
 ジャズ業界から Charlie Haden の応援も嬉しいし、1949年生まれのブルースの権威 Joe Louis Walker がアコースティックで参加とメンバーも話題となっています。


 それでは、改めて聴きながらレビューです。Down At Your Buryin' ギターは Joe Louis Walker でブルースですがフォークっぽい弾き方ですね。御大の語りかけるようなボーカルとキメのフーフーのファルセットが気持ち良い。All Walks Of Life 典型的なブルースですね。テンポは少しアップです。こういったアコースティック・ブルースだと Charlie Haden のアコースティック・ベースがバンドを引っ張るように活躍します。You Got My Nose  Open 古典的なイントロが嬉しいです。ベースレスの超シンプル。Dealin' With The Devil アコースティックで少しにぎやかなナンバーです。御大の盛り上げパターンのハーブのお決まりフレーズも連発で、大満足です。Strange Things Happen ピアノが入ったブギですね。こんなセッションに参加できるようにブギ・ピアノを練習再開しようと思わせてくれるほどシンプルに古典的で楽しいピアノです。Country Boy ロックンロール・タイプの跳ねるヤツですね。これは楽しい。Vineyard Blues ナショナルのスティール・ギター独奏です。レコーディングの合間にやったヤツが出来が良かったのでアルバムに入れた感じでしょうか。スティールギターも10年くらい触ってないかもしれないです。たまには弾こうと思います。 Worried Life Blues は、格調高い感じでギターレスのピアノ、ベースでの演奏となっています。ベースがズンズンきます。Two Trains Runnin' ではフォーキーな感じのセッションですね。ライナーノーツにはスティールギターのクレジットは無いので普通のアコースティックをボトルネックでオープンチューニングしているのでしょうか。そこが気になります。 Ozark Mountain Railroad どこの山の曲なんでしょう?調べてみればアメリカ中部の高原とあります。Charlie Haden のソロですがジャズ的ではなくアコースティック・ベースでフォーキーな曲になっていますが、唱歌のようなメロディーも出てくるので原曲ありでしょうかググってもわかりませんでした。Sad Letter 伝統のブルースです。マディーウォーターズの曲ですね。もともとは、この人のバンドのハーピストであったので、思い出の曲でしょうね。Play With Your Poddle ノリの良いブルース。プードルと遊ぶ歌なんてブルースらしいおバカな歌詞なんでしょうね。楽しい曲です。Blues In My Sleep スローブルースでドーン。って感じです。歌無しのゆったりインストで皆さんの余裕たっぷりの演奏が楽しめます。Everybody's Fishin' 締めは御大らしくハッピーな攻めのブルース曲です。やはりここでも御大の盛り上げハープのフレーズ連発です。これでなくては。ギターソロも、いつもよりサービス多めです。良いですな・・
 心底末永く愛聴させていただく一枚です🎵

vocals, harmonica : James Cotton
acoustic guitar : Joe Louis Walker ( 1, 2, 4, 6, 9, 11 to 14)
steel guitar (national) : Joe Louis Walker (7)
guitar : Joe Louis Walker (3)
piano : Dave Maxwell (5, 8, 13)
bass : Charlie Haden (1, 2, 4, 6, 9 to 14)

producer – John Snyder

performed on August 14 & 15, 1995 at Conway Recording Studios, Los Angeles, CA.

1. Down At Your Buryin'
2. All Walks Of Life
3. You Got My Nose Open
4. Dealin' With The Devil
5. Strange Things Happen
6. Country Boy
7. Vineyard Blues
8. Worried Life Blues
9. Two Trains Runnin'
10. Ozark Mountain Railroad
11. Sad Letter
12. Play With Your Poddle
13. Blues In My Sleep
14. Everybody's Fishin'





  

2024年3月17日日曜日

渡辺香津美 / esprit

 





 渡辺香津美氏がニューヨークで1996年にトリオで録音した作品です。パーカッション・プレイヤーの Mino Cinelu に一目ぼれで、このアルバム制作に至ったそうです。アルバムの中身は多彩で、インドから地中海をイメージさせる無国籍サウンドまで生ギターと電気ギターを使い分けての、ごった煮的サウンドです。それが故か、いつもの音楽好きの集う「おでんバー」では、弦楽器系のフュージョン作品はあまり好まれず、評判はあまりよくありませんでした。私的には極めて渡辺香津美を感じる日本的な緻密な作品は好きなのですけどね。店のコンポとの相性はあまり良くなくて薄っぺらく聞こえた気もします。
 ちなみに「esprit」 とは日本語で「精神」の意ですが、このアルバムの題名として色々な意味が込められているとのことを、渡辺香津美氏が自身で語っています。ライナーノーツと同じ内容のものがオフィシャルに掲載されていました。
 【おやつ】【遠足】とアルバムを続けてリリースする内に、すっかりアコースティッ クギターの持つパワーと可能性に目覚めた渡辺ですが、一方エレクトリックギターの 、あの官能の「クィ~~ン」は一度味をしめている以上、黙っていてもいつしか頭を もたげてきます。アコースティックギターの持つダイナミックレンジは、ある時はエ レクトリックよりもハードに、エフェクターを百万個繋げたよりもイマジネイティブ な表現ができるのだ、ということは確信していました。
 そして突き詰めると、エレク トリックギターも実はアコースティック楽器ではないか、ということに気づきました 。ラウドでなくとも、ドライブ感を表現できる…というのも地球上に「空気」という ものが存在するおかげです。
 そしてその空気《エアー》を媒体として、ミュージシャンはその精神《エスプリ》を 表現します。エスプリという言葉には、エスとプリというダブルミーニングが隠され ています。つまりエス…エスニック→ETHNIC→「民族の」、プリ→PREMI TIVE→「原始の」。
 そこに晴天の霹靂のように、素晴らしいヒントを与える人物が現れました。
 数年前、某野外フェスティバルのステージに登場したその男はたった一人で壷と太鼓 、ドラムセットからトライアングル、生ギターやボイスまで駆使して渡辺を桃源郷《 エクスタシー》へといざなってくれました。演奏が終わるやいなや渡辺は楽屋へ乱入 し、その男にむかって「いつか一緒にやろう」とラブコールを送ったのでした。その 男の名前は…ミノ・シネル。繊細かつ大胆、太鼓を叩けば雨が降るという呪術師の一 面を合わせもちつつ、ハイテクの鬼でもある。そしてなによりも音楽の身体性を熟知 している。
ユニットとしてより自由になるためには、もう一人相棒が必要でした。六弦ベースを まるで魔法のように操るスクーリー・スベリッソンの、現代音楽的ともいえるそのハ ーモニーと、プリミティブに回帰しようとでもするかのようなラインのセンスから、 彼もまた《光と影》のヒトである…と直感しました。
 東京生まれのギタリスト、マル ティニク生まれのパーカッショニスト、アイスランド生まれのベーシスト、そんな三 人がそれぞれのイマジネーションをどう《エスプリ》しているかを、皆さんと共有で きればと願っています。 渡辺香津美


 それでは「おでんバー」では評判が良くなかったこの作品をレビューしていきましょう。Havana 生ギターのシャリシャリの音でエスニックな曲です。リズムはパーカッションのシンプルな響きとポコポコのベースで、セッションの雰囲気が良く伝わる曲となっています。小沼ようすけ氏の作品にも、この作品のような展開の曲がよくあります。もっとも小沼氏よりも香津美氏の方が先輩なわけですから、こちらの方が元祖ですけどね。Tinkle これも小沼氏によくあるパターンですが、香津美氏はピック弾きの分フレージングが細かですがコードの混ぜ方のパターンとかは似ています。似せているのではなくギタリストなので似てくるののもあるかと思われます。La Lune では、エレクリック・ギターを巧みに操る香津美節が聴けます。縦横無尽のフレーズは派手さは無いですが相変わらず凄いです。Desperado は、エスニックに戻り複雑で展開が様々なテクニカルな曲、ベースの Skúli Sverrisson とのユニゾンは前半の聴きどころ、後半は香津美氏のギターのアイデアとテクニックが炸裂します。気持ち良い。Tears はベートーベンで、牧歌的に弾いてます。ここらへんはオジサン世代は音楽の時間に聴いてきた曲なので郷愁誘われます。Cascade はパーカッションの Mino Cinelu による楽曲です。即興のセッションと思われます。Puzzle Ring これはヒーリング・ミュージックのように頭の奥底に静かに響きます。懐の深さがうかがわれます。Astral Flakes~Axis 今までやってきた曲を混ぜているのでしょうか、抽象的なテーマがちりばめられた曲です。Morocco モロッコですか。行ったことは無いですが中近東的な音階が、それを感じさせてくれます。このトリオによく合います。Kara Kara は、カラッカラな砂漠のイメージを感じます。歪んだギターが太陽の日差しを表現しているような曲です。Lately 最後はスティービーワンダーですが、クラシック調で格調高い雰囲気です。ここら辺のまとめ方が香津美氏の魅力のような気がします。
 売れ線では無いですが、香津美氏が好きな方にはこれも、おすすめのアルバムです。ギター好きには心癒されるのでは無いでしょうか🎵

guitar : Kazumi Watanabe
bass : Skúli Sverrisson
percussion, drums : Mino Cinelu

recorded & mixed at Cinton Studio, New York.NY May 1996

composed by : Kazumi Watanabe (2-4, 6, 8-10), Koko Tanikawa (1, 7), Ludwig van Beethoven (5), Mino Cinelu (6), Skúli Sverrisson (8), Stevie Wonder (11)

1. Havana
2. Tinkle
3. La Lune
4. Desperado
5. Tears
6. Cascade
7. Puzzle Ring
8. Astral Flakes~Axis
9. Morocco
10. Kara Kara
11. Lately

▶ Havana