2023年1月4日水曜日

Johnny Winter ONN55


 ジョニー・ウインターは、デビュー当時のCBSとの契約金が100万ドルだったので「100万ドルのギタリスト」と呼ばれていること。ブルースをやり続けていたためマディ・ウォーターズが「義理の息子」と呼んでいたことなどが知られています。
 ジョニーウィンターはこの一枚しか保持していませんが、YouTubeなどではとてもよく拝見する人で、色々なミュージシャンとの共演が多い人でした。キャリアは長いのですが来日は長い間実現していなかった人で、御年67歳にして2011年に初来日、2012年5月、2014年4月と来日公演され、2014年7月に亡くなっています。1990年に来日の機会はあったようですが当時所有が禁止されていた薬を持ち込み入国できなかったそうです。麻薬とは書いてありませんが、睡眠薬とかではないでしょうから、どんなドラッグだったのでしょうか。


 最後の来日時には、雑誌には椅子に座ってギターを弾いている姿が掲載され、普通のギターは多分重すぎるのか確かギターはヘッドレスのギターを使用されていました。てっきりスタインバーガーと思っていたら、アールワインというメーカーが製造した LASER というギターとのこと。
 さてこのアルバム、おそらく激安ワゴンセールなどありがちなライナーノーツ無しのぺラペラな紙一枚の廉価版。おそらく一枚ぐらいは購入しとこうかなと見つけて購入の一枚でしょう。発売元は Object Enterprises で品番はONN55 以外はよくわかりませんでした。写真で検索してみると内容は About Blues という名前で販売されているアルバムと同じですが、こちら Compilation コンピアルバムのようで、コンピですが写真を変えて色々な国でコピー販売されているようです。


 アルバムを聴いてみると Livin' In The Blues みたいなジミヘン意識の曲もあったり、ソウル系の Out Of Sight なんてのもあったりしてブルース一辺倒でもないのは意外ですね。でもイメージは Leavin' Blues、Going Down Slow のバリバリのブルース・ロックです。

1. Parchman Farm
2. Livin' In The Blues 
3. Leavin' Blues
4. 38, 32, 20
5. Bad News
6. Kind Hearted Woman
7. Out Of Sight
8. Low Down Gal Of Mine
9. Going Down Slow
10. Avacado Green





  

2023年1月3日火曜日

Tower Of Power / Live And Living Color


 今までこのアルバムは何百回聴いたんだろう?と記憶にないくらい聴きたおした名アルバムです。若い時に早朝釣りにく車の中で大きめの音量で聴いていたことが多かったような気がします。今ではタワー・オブ・パワー(T.O.P.) のライブ盤も数多くでているようですが、当時はこれぐらいしか出ていなかったように思います。私自身も生で見たのは1回しかなく、2015年の札幌シティ・ジャズフェスの芸術の森ステージでした。Down To The Nightclub などで始まり、お決まりの名曲も目白押しでしたが、ここでも聴かれるフレーズなどとも全く同一アレンジですし、次のキメはあれで・・ ここでこのセリフが・・という記憶と期待は、全て忠実に再現していただいておりました思わずニンマリしてしまいました。歴史が詰まった伝統芸なのですね。きっと、これは何回見ても飽きることはないんでしょう。


 本アルバムはタワー・オブ・パワー全盛期=ワーナー時代の最後1976年にリリースです。ホーンセクションも最強ですが、ドラムのDavid Garibaldi(デイヴィッド・ガリバルディ)とベースのFrancis Rocco Prestia(ロッコ)のコンビは、このバンドの象徴です。メンバーが変わりリズム隊のグルーブは変化してもT.O.Pの基本はホーンとリズム隊のきめ細かいリズム、キメです。ボーカルはこの時代は入れ替わり激しく、前作から加入のHubert Tubbs(ヒューバート・タブス)。ギターはBruce Conte(ブルース・コンテ)で、細かでキレのあるファンク・カッティングは何度聞いても素晴らしい。
 アルバムはライブのオープニングの定番 Down To The Nightclub で始まります。1972年の スタジオアルバム Bump City で収録されているものよりもはるかにグルーブ感がある曲になっています。次いで You're Still A Young Man も人気のバラードで同様に1972年の スタジオアルバム Bump City で収録されていますが、これよりも秀悦に感じます。ボーカルの Rick Stevens(リック・スティーヴンス)1970年-1972年との違いが大きいと言われているようです。What Is Hip? は1973年の3枚目アルバム Tower Of Power からの曲で、緻密なベースとドラムのグルーブが堪りませんしイントロのギターのフレーズと決めのカッコ良いことこのうえありません。盛り上がったところでのトランペットのトレモロのようなフレーズも最高です。Sparkling In The Sand は、1stアルバムの East Bay Grease からで、スローなバラードと透き通ったフルートがクールダウンしてくれます。締めは Knock Yourself Out で何と23分の熱演です。バリトン・サックスがカッコよく、ホーン部隊のソロ回しが気持ち良くて長さが全く気にならないのが凄いですね。永遠の名盤でこれを聴いていない人は人生を損するぐらいの名盤です。

lead vocals : Hubert Tubbs
organ, other (bass pedals), clavinet, vocals, synthesizer (arp string ensemble) : Chester Thompson
bass : Francis Rocco Prestia
drums : David Garibaldi
guitar, vocals : Bruce Conteb

tenor sax, alto sax(1st), flute : Lenny Pickett
tenor sax(2nd), vocals : Emilio Castillo
baritone sax, vocals : Steve Kupka
trumpet, flugelhorn, trombone, vocals, piccolo trumpet : Mic Gillette
trumpet, flugelhorn, vocals : Greg Adams

producer : Emilio Castillo, Tower Of Power

recorded live at Sacramento Memorial Auditorium and Cerritos College by the Record Plant, Sausalito.

1. Down to the Nightclub
2. You're Still a Young Man
3. What Is Hip?
4. Sparkling in the Sand
5. Knock Yourself Out





  

2023年1月2日月曜日

Bill Withers / Just As I am


 フォーク系のソウルの Bill Withers のアコースティック・ギターが印象的な1971年発売のデビュー・アルバムです。社会人になってから知った人ですが私かなりヘビロテで聴きこんでいる名盤です。このアルバムでは Ain’t No Sunshine が特に印象に残りますが、Lean on M、Use Me と言った名曲が後に発売され Just the Two of Us というボーカル・カバーもありますが、美しいメロディによりジャズ系ミュージシャン、フィンガー・ピッカーのアコースティック系ギタリストなどでも頻繁にカバーされる名曲も生み出しています。
 実はこの人かなりの苦労人で、デモテープを作って売り込んでいたがまったく相手にされず、海軍やめて彼女にふられ、泥棒に入られると絵にかいたようなどん底から、33歳で突然レコーディングが始まったのがこのデビュー作です。見出したのはプロデューサーのBooker T. Jones (ブッカー・T・ジョーンズ)でレコード会社」に送ったデモテープがきっかけで、急遽アルバムを作ることとなったので、レコーディングに参加したミュージシャンは Bill Withers の仲間ではなく、紹介されたセッション・ミュージシャンとのこと。


 ザクっとコードをかき鳴らすギターとタイトにリズムを刻むドラムが印象的な Harlem からアルバムは始まります。改めて聴き直すとデビュー一発目でストリングスがバックに入っています。多くの人が関わればそれだけ製作費もかかりますから、この人は売れると確信してのアルバム制作だったことが推測されます。続く Ain't No Sunshine は後にも様々なミュージシャンにカバーされる名曲で、じんわりとした曲調にI know, I know・・・のサビが印象的ですね。ここでもストリングスが入ってます。Ain't no sunshine when she was gone の歌いだしはストレートに失恋の物語で、映画 酒とバラの日々 をテレビで見た後に書いたと言われています。Grandma's Hands はブルージーな曲調で、おばあちゃんとの思い出が題材となった家族愛を描いています。これも素朴な曲調ですが好印象。Sweet Wanomi はカントリー・フォーク調のラブソングを Booker T. Jones のキーボードでソウル調に味付け。Everybody's Talkin' は、フォーク・ロックのフレッド・ニール作のカバーで売れ筋のアップテンポのソウルになっています。Do It Good は、女性コーラスも入ったりして jazz blues 的な味付けにしていて、ここらへんはプロデューサー Booker T. Jones の手腕が光っています。Hope She'll Be Happier はギターとオルガンがメインの幻想的なムードも漂う傷心のバラード。そして Let It Be は、ビートルズのカバーで、ゴスペルのような仕上がりのソウルとなっています。この翌年のヒット曲 Lean On Me に通ずるものを感じます。I'm Her Daddy あたりになってくると流行りのソウルっぽいアレンジ。久しぶりに聴いて結構パンチのある良い曲ですが、歌詞的には別れた彼女に自分との子供がいたってことを人づてに聞いたけど元気かい?っていう痛い中身です。In My Heartギターだけの弾き語りの傷心ソング。Moanin' And Groanin' はファンキーなバンドサウンドで Bill Withers の歌いまわし音づかいが良く表れている曲です。最後 Better Off Dead はパーカッシブなグルーブで少し雰囲気を変えてきています。奥さんと子供が出て行って有り金は残らず飲んじまった。俺なんか死んじまったほうがましさと And I'm better off Dead で、銃声一発でブツッとアルバムが終わる。フォーク調ソウルの素朴な曲調が売りのミュージシャンのデビュー・アルバムとしては中々斬新な一枚目なんですよね。

vocals, guitar : Bill Withers
guitar : Stephen Stills
keyboards, guitar : Booker T. Jones
bass : Chris Ethridge, Donald "Duck" Dunn
drums : Al Jackson, Jim Keltner
percussion : Bobbie Hall Porter

producer : Booker T. Jones 

recorded in "Sunset Sound Recorders" and "Wally Heider Recording Studio", Hollywood.

1. Harlem
2. Ain't No Sunshine
3. Grandma's Hands
4. Sweet Wanomi
5. Everybody's Talkin'
6. Do It Good
7. Hope She'll Be Happier
8. Let It Be
9. I'm Her Daddy
10. In My Heart
11. Moanin' and Groanin'
12. Better Off Dead






  

2023年1月1日日曜日

Lou Donaldson / Hot Dog

 

 Lou Donaldson といえば1926年生まれのアルト奏者で、最初の録音は1950年のチャーリー・シングルトン・オーケストラ。その後1952年にMilt Jackson(ミルト・ジャクソン)Thelonious Monk(セロニアス・モンク)と活動、1953年には Clifford Brown(クリフォード・ブラウン)Philly Joe Jones(フィリー・ジョー・ジョーンズ)Art Blakey(アート・ブレイキー)等と活動しています。現在の私所有音源では、ソロでの作品は、Quartet Quintet Sextet plus five (1954)、Blues Walk(1958) 、Thelonious Monk 作品では Genius Of Modern Music Vol2、Art Blakey 作品では A Night At Birdland Vol1A Night At Birdland Vol2 など、ほぼバップ作品に登場です。その後ソウル・ジャズに進出しているとのことですが、それとは知らずに購入していました。正直これを購入してから数か月は経っていて、いつもの「おでんバー」に何を持っていこうかと思いジャケットはソウル風だが、どうせ見掛け倒しの内容だろうとセレクトしました。マスターもこの音源は知らずに Lou Donaldson? ホー珍しい感じのジャケットですな。と聴いたところ思わずニヤリでした。何がニヤリかと言えば、ファンキーでダンサブルなサウンドが満載で Lou Donaldson がこんな作品を作っていたのかと拍手したい気分になります。どうやらこの前作の Say It Loud という作品からダンス・ミュージック路線となっているようです。ジャケ写もそっち路線ですね。


 完全に8ビートの Who's Making Love は Johnnie Taylor の1968年のヒットのカバーでCharles Earlandのオルガンがファンクしてて、Melvin Sparks のギターもお決まりのパターンが光ります。メンバーで遠くで歌いながら気持ちよく録音されています。Turtle Walk 
は Lou Donaldson 作品のソウルフルな楽曲でバップ時代とは違ってゆったりとリズムをとりながらのサックスで トランペットの Ed Williams のソロが引き締め、Melvin Sparks は完全にブルース・ギターのノリです。アンダー・グラウンドな感じの惰性のようなソロ回しがいかしてます。Bonnie は Tommy Turrentine の作品でのバラード。ダンスホールでのチーク・タイムようなテンポで朗々としたサックスにはバップ時代を忘れててサックスの響きを堪能しながら演奏しているかのよう。タイトル曲の Hot Dog は Lou Donaldson 作品で再びダンス的ファンキー曲で売れ筋路線です。It's Your Thing は The Isley Brothers の1969年のシングルのカバーで元曲の良さが際立ちます。少し遅めのため気味の演奏がレイジーな感じでだるくて良いです。
 この時代のB級ジャズ・ファンクを少し聴きやすくした感じの音はソウル・ジャズとB級ファンクの中間系で、私かなり好みですが、B級マニアとしてはもう少しダサいくらいがかえってカッコ良いかなと思いました。

alto sax : Lou Donaldson
organ : Charles Earland
guitar : Melvin Sparks
drums : Leo Morris
trumpet : Ed Williams

producer : Francis Wolff
recorded by : Rudy Van Gelder

recorded April 25, 1969.

1. Who's Making Love
2. Turtle Walk
3. Bonnie
4. Hot Dog
5. It's Your Thing


▶ Hot Dog



  

2022年12月31日土曜日

Keb' Mo / Bluesamericana


 私の趣味は音楽で楽器を演奏したり、こうやって増えすぎてしまった音源を整理しながら記録をつけたりしながらユルユルと楽しんでいます。音楽的な趣向は雑多でジャズも聴けば、ロック、ファンク、ソウルは当然としてラテンも有りです。音楽的な原点としては、やはりブルースはずっと聴いてきましたが、基本的にはシカゴ・ブルースが好みで、その中でもジャンプ・ブルースとかハーピストが主体のブットい音が好みです。しかし Keb'Mo というブルースマンはちょっと毛色が違うブルース・マンですよね。泥臭いブルースの中に知的さや繊細さがうかがえるスタイルで曲によってはポップ性も感じます。


 イメージ的にはカントリー、フォーク系のアコースティック・ギターのイメージがありますが、今作は赤のストラト系のギターをピックで弾いている姿がアルバム・ジャケットになっています。なにせハズレのないKeb'Moですから、しっかりと奥行きのある楽曲です。ミドルテンポの楽曲が多くしっとり系より明るい曲が多い印象です。やっぱり品格があります。
 冒頭 The Worst Is Yet To Come は、Keb' Mo はバンジョーとギターを弾いています。マンドリンも入っていてカントリー色が出ている曲です。Woke up this morning wrong side of the bed, Whatever happend last night I'm feelin' in my bed ベッドから起きたが昨晩に何があったか覚えていない。昔のブルースマンなら酒を飲み過ぎて気分が悪いとか色気のある女性の話とか俗っぽい方向に歌は続くものですがここは Keb' Mo の世界で bad feeling はあるものの何か爽やかです。Somebody Hurt You はゆっくり目ミドル・テンポのブルースでsomebody hurt you , somebody loves you とひたすら繰り返します。なんで品が良く感じるのか不思議。Do It Right はフォーク調の爽やかブルースで、このアルバムで一番キャッチーな楽曲に感じます。I'm Gonna Be Your Man は昔風のブルースでスライド・ギターなんかも入っていますがサビの最後のコード展開が幻想的に曲が続く仕掛けがあったりしておしゃれで泥臭くないんですね。素晴らしい。Move は昔のディスコとかが流行った時代のような感じ。悪くはないけど・・ For Better Or Worse は出ました。じっくり聴かせるバラード系です。この語り掛けるように人の心に浸みこむような歌はこの人の真骨頂ですね。ゆっくりと寒い冬に暖かい部屋で珈琲でも飲みながら静かに聴きたい曲です。That's Alright では、硬派なビートに変えてきました。王道の単純なブルース進行でメロディーも単純ですが深みあり。The Old Me Better は、The California Feet Warmers というブラスバンドがバックに入ったニューオーリンズ風ブルースで楽しいです。こんな曲をアルバム途中で挟めるブルースマンは Keb' Mo ならでは。More For Your Money は、アコースティック・ギターでコピーしたくなる曲です。これも良いですね。締めは So Long Goodbye で、Keb' Mo の作曲者としての一番らしい曲であると思います。これで Bluesamericana というタイトルのアルバムが締めくくられるのかと思わせる聴いていて奥行きの深いアルバムです。

1. The Worst Is Yet To Come
guitar, banjo, harmonica, tambourine : Keb' Mo'
backing vocals : Kevin So, Michael Hicks
bass : Brian Allen
drums : Keio Stroud
handclaps : Colin Linden, Joe Wood
mandolin : Colin Linden
organ : Michael Hanna

2.  Somebody Hurt You
bass, electric guitar, keyboards : Keb' Mo'
backing vocals : Darcy Stewart, Michael Hicks, Moiba Mustapha, Rip Patton
drums : Casey Wasner

3. Do It Right
acoustic guitar, banjo, slide guitar, organ, harmonica : Keb' Mo'
bass : Casey Wasner
drums : Keio Stroud

4. I'm Gonna Be Your Man
bass, electric guitar, Rresonator guitar, slide guitar, keyboards, harmonica : Keb' Mo'
drums : Keio Stroud
organ : Michael Hicks
tenor sax : Jovan Quallo
trombone : Roland Barber
trumpet : Quentin Ware

5. Move
guitar, electric piano, banjo : Keb' Mo'
bass : Brian Allen
drums : Tom Hambridge
organ : Michael Hicks
pedal steel guitar : Paul Franklin

6. For Better Or Worse
bass, guitar – Keb' Mo'
drums : Keio Stroud
organ, piano : Tim Lauer
pedal steel guitar : Paul Franklin

7. That's Alright
bass, slide guitar, electric guitar, organ, harmonica : Keb' Mo'
drums : Steve Jordan

8. The Old Me Better
backing band : The California Feet Warmers
drums : Keio Stroud
guitar, banjo : Keb' Mo'
organ : Tim Lauer
piano : Michael Hanna

9. More For Your Money
bass, guitar : Keb' Mo'
cello, mandolin : Tim Shinness
drums : Casey Wasner

10. So Long Goodbye
bass, acoustic guitar, organ, piano : Keb' Mo'
backing vocals : Ronnie Brooks Moore
drums : Keio Stroud

producer : Keb' Mo'




  

2022年12月30日金曜日

Masao Nakajima Quartet / KEMO・SABE

 

 最近忙しかったり、腰が痛かったりして出歩いて音源を見に行くこともしていなかったので、久しぶりに新宿を徘徊してみた。徘徊と言ってもお決まりのディスク・ユニオンとタワレコのハシゴで気が向けばツタヤに行くぐらいです。ディスク・ユニオンは相変わらずでしたが中古販売フロアのソウル系の品揃えが少し縮小気味。中古販売フロアで10枚ほど見繕ってレジに預けると丁寧に包装をはがしタグを外す可愛い店員さん。しかし急にトイレに行きたくなってきて私は若干イライラです。この店の中には客用のトイレは無いはずなので緊急事態です。早く会計をお願いしますと心の中で叫び、店員さんも落ち着きのない私の動作を見て袋に入れますか?いやその時間がもったいないので直接自分の鞄に入れて会計を済ませます。近くのパチンコ屋に駆け込んでギリギリ、セーフでした。思うのですが本屋とレコード屋に入ると急にしたくなる事が多いような気がします。
 まったく本作のピアニスト中島政雄には関係のない話でした。事前にこの人を知らず店頭で気になってのこの日の2件目タワレコでの購入です。


 さてこの中島正雄というピアニストの名前は初耳なのでググって見ます。があまり詳しい情報はありません。断片的ですが70年代に西城秀樹のバンマスをされていたそうで、その後アメリカへ渡り、帰国後にこのアルバムを発表されたとのこと。これぐらいしか見つからないのでCDの文字が極小のライナーノーツを見てみます。まずは生まれは1950年で16歳から自由が丘のファイブスポットで鈴木勲のセッションに加わってプロ活動を開始。1973年、23歳でグレンミラーのジャパンツアーに参加し、その後2か月渡米。1977年には約1年間ニューヨーク生活をしているとのこと。現在はジャズ界からクラシック音楽界に移り、今国内外のオーケストラの指揮者としてご活躍しておられるキャリアの持ち主。このアルバムは1973年4月4日にテイチク杉並スタジオでの録音で今は無きユピテル・レコード というレーベルからのリリースです。
 冒頭曲の Kemo-Sabe はキモサベと読むらしく西海岸でバンドを組んでいた時のキーボード奏者 マイク・ノック から日本に帰ったときに演奏してほしいとプレゼントされた曲とのこと。躍動的な曲で本田俊之のサックスから入りピアノも快調に飛ばし、ドラムのドナルド・ベイリーの細かな刻みも気持ちよいです。Beloved Diane は中島のオリジナルでダイアンは恋人の名前で月の名前を意味するバラード。確かに静かな夜に月を眺めているような感覚の曲です。Tell Me A Bedtime Story はハービー・ハンコックの作品でフルートによる清涼感がある作品となっています。Third Plane はロン・カーターの作品でボサ・ノバとのリズムとフォービートが交互に繰り返されるテーマはコミカルで楽しくベース・ソロも楽しめるつくりになっています。Moments Notice はコルトレーンのブルー・トレインからの作品で、メンバーの気合が伝わる渾身の1曲ではないでしょうか。My Love は、ボブ・ジェイムス作品で本田のサックス無しのトリオ演奏となっていますが格調高い演奏で、おそらく思い入れもかなりある感情のこもったピアノ演奏でした。
 繊細で洗練された演奏で、最近気になる和ジャズという感覚から言えばアルバムの作りは和ジャズではあるけど、感覚的には洋に属する作品でしょうか。和ジャズの名盤復刻とのことで中々のものでした。

piano : Masao Nakajima(中島政雄)
bass : Osamu Kawakami(河上修)
drums : Donald Bailey
flute, alto sax, soprano sax : Toshiyuki Honda(本田俊之)

producer : Tadao Shimo

recorded on 4 April 1979

1.Kemo-Sabe
2.Beloved Diane
3.Tell Me A Bedtime Story
4.Third Plane
5.Moments Notice
6.My Love



▶ My Love


  

2022年12月25日日曜日

Weather Report / Heavy Weather


 大学に入ってジャズ研に入り、そこで周りのみんなが聴いていたのは David Sanborn(サンボーン)やら Weather Report(ウェザー・リポート)やら、ロックしか聴いてこなかった私は、フュージョンなる音楽はすごいことになっていると当時衝撃を受け、当時もっとも聴いていたアルバムの一つです。何が驚いたかと言えば当時流行っていた The Manhattan Transfer(マントラ)の Birdland を先に聴いていたのでこのアルバムを聴いた時に、これが元バージョンかとマントラのコピーの正確さにも驚いていたのもあってのめりこみました。


 さてこのアルバム Weather Report の通算7枚目の作品となります。録音は1976年でこの年には大ヒットした1月に Black Market を録音し10月には本作を録音しています。この録音の前年にジャコはジョー・ザビヌルと出会いデモテープを渡し、初のソロ・アルバム「ジャコパストリアスの肖像」を録音、パットメセニーの初作品 Bright Size Life にも参加など一挙にジャコの露出が高まってきた頃で、当然このアルバム大ヒットで50万枚を超えるセールスを記録しています。
 冒頭曲 Birdland は、イントロでのジャコのハーモニクスが印象的の曲で、これを聴いた世のベーシストは一度はこのメロディーに挑戦しているに違いありません。これまでプログレッシブな要素が強かった楽曲がこのポップでメロディーが印象的な偉大な曲です。先述したマントラのカバーでは楽器の音色まで肉声で忠実に再現していたとわかった時には、どちらも凄いなと感心しました。。続く A Remark You Made については、抒情的なメロディーに乗せてWayne Shorter のテナーと Jaco の寄り添うようなベースがクルクルと表情を変えるこれも名作。Teen Town は Jaco の楽曲で様々なアルバムに収録されていますが、やはりこのアルバムの曲は全てにおいてバランスがとれています。ライナーノーツ読み返したらこの曲は Jaco がドラムまでも叩いています。そして Harlequin は、Shorter の作曲の幻想的な曲です。アフリカンな歌声とともに始まるパーカッションソロは Rumba Mama。このアルバムのど真ん中にこれをもってくると言うのも非凡な選曲センスです。一転して都会的なフュージョンに仕上げたShorter 作品の Palladium は、コンガによる細かなビートで全員が伸びやかな演奏でジャコの steel drum の演奏もピリッと効いてます。The Juggler は Zawinul 作品でここらへんでいつもの宇宙的なペースに戻ってくる感があります。締めのHavona で Jaco 作品でベースの暴れ方が秀悦です。
 いや何度聞いても凄いアルバムでまさに Weather Report 代表作と言われるだけある迫力がここにあります。

Joe Zawinul : ARP 2600 (all tracks except 5), Rhodes electric piano (all tracks except 1,5,8) , Yamaha grand piano (1,4,7),  Oberheim polyphonic synthesizer (all tracks except 5,6,7) , vocals (1), melodica (1,3), guitar and tabla (7)
Wayne Shorter : Soprano saxophone (all tracks except 2,5), tenor saxophone (1,2,6)
Jaco Pastorius : Fretless bass (all tracks except 5), mandocello (1,7), vocals (1), drums (3), steel drums (6) 
Alex Acuña : Drums (all tracks except 1,5), congas and tom-toms (5), handclaps(7) 
Manolo Badrena : Tambourine (1) , congas (3,5,6), vocals (4,5), timbales (5),  percussion (6,7)

co-producer : Jaco Pastorius
producer (assistant) : Wayne Shorter
producer (producer/orchestrator) : Zawinul

recorded at Devonshire Sound Studios, North Hollywood, California.

1. Birdland
2. A Remark You Made
3. Teen Town
4. Harlequin
5. Rumba Mama
6. Palladium
7. The Juggler
8. Havona



▶ Havona


  

2022年12月24日土曜日

David Sanborn / Song From The Night Before


 David Sanbornは、1975年に最初のソロアルバム Taking Off から24枚のアルバムをリリースし、グラミー賞を6回受賞、8枚のゴールドアルバムと1枚のプラチナを獲得してきました。キャリアの最初は Paul Butterfield(ポール・バターフライフィールド)共演で、以降スティービー・ワンダー、ストーンズなど様々なミュージシャンと共演し数えきれないほどのミュージシャンと交流してきました。そして マーカスとの出会いでファンク・フュージョン・サウンドを牽引し、1991年の Another Hand ではメローなジャズ路線、1992年 Upfront では再びファンク路線にと音楽性は様々に変化します。

 
 この1996年の作品 Song From The Night Before はフュージョン系サウンドですが、ポップ系のサウンドから少しメローになってきています。プロデューサーがキーボードの Ricky Peterson になったことで、元気印のマーカスからアダルト路線にサウンドを変わり、バラエティよく曲を配置しバランスもよくうまくまとめていると感じます。しかし明確な方向性はあまり感じられないので、アルバムとしては落ち着いた味わいと言えばそうなんですが、私にとっては、やや地味との印象を受けてしまいます。
 このアルバムの曲は大きく3タイプに分類できます。アダルト・フュージョン系で Relativity、D.S.P.、Spooky、Rumpelstiltskin。ひと昔前っぽいフュージョン Listen Here、Southern Exposure、サンボーンをゆっくり聴く、Rikke、Missing You、Infant Eyes など。私はマーカス時代のファンク・フュージョン路線から大ファンになりました。若干おとなしめのこのアルバムは嫌いではないけど印象は薄め。プログラミング主体で軽めのせいもあるかもしれません。

alto sax : David Sanborn
keyboards bass and drum programming : Ricky Peterson
programming, guitar : Paul Peterson
guitar : Dean Brown, Philip Upchurch
percussion : Don Alias

Additional Musicians
bass : Will Lee (6)
fretless Bass : Pino Palladino (3)
guitar : Philip Upchurch
additional drums : Steve Jordan

Horn Section
bass clarinet, alto flute : John Purcell
soprano sax, clarinet, flute : George Young
tenor sax, flute : Dave Tofani
trumpet : Randy Brecker

producer : Ricky Peterson

1. Relativity
2. D.S.P.
3. Rikke
4. Listen Here
5. Spooky
6. Missing You
7. Rumpelstiltskin
8. Infant Eyes
9. Southern Exposure


Spooky



  

2022年12月23日金曜日

Donald Byrd / I'm Tryin' To Get Home (Brass With Voices)

 

 最近、中古盤を購入してから未試聴のストックが大体20枚ぐらいあるのですが最初に聴くのは、行きつけの「おでんバー」で良い音で聴くのが習慣となってきています。音源を持って飲みに行く時には大体2枚選んで行きます。この日はドナルド・バードとルー・ドナルドソンでした。最初に聴いたのがこのアルバムです。Donald Byrd は好きなトランぺッターなので段々とコレクションも増えてきていますが、通算して聴いていると当たり外れがある印象(いや好みではないものも若干ありますと言い換えた方が良いですかね)ですが、このアルバムにはマスターも「当たりですね」の一言


 1955年初リーダーアルバムを発表し、トランジション・レーベルから発表しその後ジャズメッセンジャーズに参加するなどの活躍、ハードバップ系のトランぺッターとして1958年から Blue Note レーベルを中心に数多くの作品を発表していますが、このアルバムは1964年の作品で、1963年の New Perspective からのゴスペル色を取り込んだコーラスとジャズとの融合が始まった頃の作品です。楽曲は Donald Byrd と Duke Pearson が半分ずつの作品です。Duke Pearson は1932年生まれのジャズ・ピアニスト。録音メンバーには後にジャズから旅立ってゆく piano の Herbie Hancock、guitar は Grant Green などの大御所も参加していて、その過程にはこのようなゴスペル的なアルバムへの参加も感覚の変化の大きな原動力となっていたのかということも想像するだけで何かを発見した気分にもなります。
 Brother Isaac はドナルドの作曲で、ゴスペルの合唱隊によって始まり、リズムセクションとドナルドのソロから始まる楽曲で、最初に聴いた時にはこれがドナルド・バードのアルバムの始まりの曲なのかと正直驚きました。Noah はデューク・ピアソンの作曲で、雄大な自然に向かって旅を始めるかのようなイメージで、もしかしたらノアの箱舟のイメージなのだろうか?ゴスペル的な楽曲とこの題名で教会的を感じます。I'm Tryin' To Get Home はまたドナルドの作曲で、激しく歌われるゴスペル的な手法の曲でンス・ミュージックのような仕上がりでもあります。ミュージカル映画でも使われそうな軽快な楽曲で踊っている映像が似合います。Freddie Roach のオルガンが盛り上げてくれますし Grant Green のギターのカッティングも地味ですが良いですね。I've Longed And Searched For My Mother もドナルドの楽曲で、教会の鐘の音から始まります。ここで改めてテーマはゴスペルなんだねと確認。鐘の音は母の葬儀に参加できなかったドナルドの母のためのものでドナルドの心の中に両親はいつまでも生きていることが表現されているとのこと。March Children は デューク・ピアソンの作曲。行進曲のような楽曲ですがハンコックのピアノ・ソロが気持ちよくスイングし余裕に満ちたドナルドのソロは安定感があります。最後の Pearly Gates も デューク・ピアソンの作曲。「天国へ入る人」を描写したものらしく活発にスイングし踊りながら天国の門へ向かう人たちが思い浮かびこのアルバムのコンセプトをうまくまとめているものだと思います。
 少しマニアックな作品であるとは思いますが、新たなドナルド・バードの進化過程を聴けたことで満足しております。

trumpet, flugelhorn : Donald Byrd
organ : Freddie Roach
piano : Herbie Hancock
guitar : Grant Green
bass : Bob Cranshaw
drums : Grady Tate
tenor sax : Stanley Turrentine
french horn : Jim Buffington, Bob Northern
trumpet : Clark Terry, Ernie Royal, Jimmy Owens, Joseph Ferrante, Snooky Young
trombone : Benny Powell, Henry Coker, Jay Jay Johnson, Jimmy Cleveland
tuba : Don Butterfield
vocals (eight voices) : unknown artist
conductor (band and voices) : Coleridge Perkinson

recorded at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, December 17 (1, 3, 5) & 18 (2, 4, 6), 1964

1. Brother Isaac
2. Noah
3. I'm Tryin' To Get Home
4. I've Longed And Searched For My Mother
5. March Children
6. Pearly Gates