2024年8月27日火曜日

The Isley Brothers / 3+3


 名作が多すぎて何が何やらわからないアーティスト The Isley Brothers の1973年の18枚目のアルバムで、タイトルは3+3。ギター Ernie Isley、ベース Marvin Isley、ピアノ Chris Jasper が正式にメンバーに加わり、オリジナル・メンバーの O'Kelly Isley、Rudolph Isley、Roland Isley のボーカルと合わせて「3+3」体制となり、バンドとしてもターニング・ポイントとなったアルバムです。


 さて、お買い得シリーズの最後のアルバムのレビューをしていきます。That Lady はオリジナルですが、カーティス意識したんだなという曲です。ただ違うのは Ernie のギターソロが長尺のジミヘンギターを弾きまくるのでここら辺はPーFUNK がですね。大好きなパターンですよ。Don't Let Me Be Lonely Tonight 原曲は、James Taylor です。原曲も R&B的な要素も感じられるのですが、ここではゴリゴリのスイート・ソウルです。始まって2曲でもう大好きを感じます。If You Were There シュガーベイブの「Down Town」の元ネタとしても日本では有名で、クラビのこのパターンの使い方は日本人として Down Town を思い出し、歌メロを聞いては Down Town を思い出してしまいます。外国の方にはわかりずらい感じだと思います。しかし、ひとつ気になるのはドラムのドンドコ、ドンドコ。これはインパクトありますが、センス無いと思うんですが何か?You Walk Your Way は何か懐かしいメロディーのソウルナンバー。歌のメロディーのつなげ方もブツブツと曲の中で途切れないようになっていて変拍子的な響きがあります。そしてあの、Listen To The Music は、誰もが知っている Doobie Brothers のあの曲です。ドゥービーのブラス・ロックも良いですが、このファンク・アレンジも、かなり良いですね。オリジナルと比較して私的には同等レベルに好きかも。What It Comes Down To ああモータウンだと思うリズムですが、少し違いますね。ギターの単音リフの音がぶっとくて奇妙な感じもしますがインパクトあります。そして曲に似つかわしくない激しめに歪ませたギターソロが最後に挿入ですが、早弾きではないので変わった曲としては私的にアリ。Sunshine (Go Away Today) ギラギラした太陽に目がくらみ頭がいかれちまったようなサイケな出だしですが、その後はしっかり普通にファンクしてます。もっとイカレテほしかった。Summer Breeze オリジナルは Seals & Crofts で今回初めて聞きましたが、普通に暗めのアメリカン・ロックですが、Isley 気合を入れて違った曲に変貌させています。これは Isley に私は軍配を上げます。オリジナルでは The Highways Of My Life が最後の曲になります。これもイントロ長めで、インストかと思いきや歌が始まります。ソフトなロック路線ですがこれも良曲。
 全曲ハズレなしではないですが、どの曲も個性にあふれた曲になっていてインパクトは十分なアルバムとなっています。カバーでは、白人系の曲が中心になっているのは何か意味合いがあるのかも気になります🎶

お買い得シリーズは60年台から
70年初期の黄金期に入るまでが集められてます

The Brothers: Isley 1969
Get Into Something 1970
Giving It Back 1971
Brother Brother Brother 1972
 3+3 1973

piano (acoustic, electric), clavinet, synthesizer (moog), tambourine : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
guitar, percussion (tom-toms), maracas : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
congas : Rocky

producer : O'Kelly Isley, Ronald Isley, Rudolph Isley

original sound recording is owned by T-Neck Records Inc.
recorded at Record Plant West, Los Angeles

1. That Lady (The Isley Brothers)
piano : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
bass : Marvin Isley
electric guitar : Ernie Isley
congas : Rocky
drums : George Moreland
electric guitar : Ernie Isley
2. Don't Let Me Be Lonely Tonight (James Taylor)
piano, electric guitar : Chris Jasper
guitar (6-string), acoustic guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
3. If You Were There (The Isley Brothers)
piano, clavinet, electric piano : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
electric guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
4. You Walk Your Way (The Isley Brothers)
piano, electric piano : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
electric guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
5. Listen To The Music (Tom Johnston)
electric piano, clavinet : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
acoustic guitar (6-string), electric guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
6. What It Comes Down To (The Isley Brothers)
clavinet, electric piano, piano : Chris Jasper
orgas, tom tom : George Moreland
electrn : Truman Thomas
bass : Marvin Isley
drumic guitar, maracas, tom tom : Ernie Isley
7. Sunshine (Go Away Today) (Jonathan Edwards)
synthesizer (moog), clavinet, electric piano : Chris Jasper
electric guitar : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums : George Moreland
8. Summer Breeze (Seals & Crofts)
synthesizer (moog), piano, electric piano : Chris Jasper
acoustic guitar (6-string), electric piano : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
9. The Highways Of My Life (The Isley Brothers)
piano, electric piano, synthesizer (moog) : Chris Jasper
twelve-string guitar (12-string acoustic guitar) : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
10. That Lady(Live)





  

2024年8月26日月曜日

The Isley Brothers / Brother Brother Brother


 1972年作のメロー、ポップな路線のアルバム。フォーキー・ソウル路線は前作を継承しつつニューソウル的なアレンジが施されていて、さらにはハイトーンからピンと引き締めるボーカルワーク、メロディ、ハモリのつけ方なども円熟味が増してきています。またファミリー以外のミュージシャンも定着したようでこの面からも、バンドサウンドは変化してきているのかと思い、セールス的にも米チャート[29位(R&B5位)]の成功でした。アルバム自体の楽曲は、カバー4曲、オリジナル5曲で、カバーのうち3曲が Carole King 作品となっていてというのがアルバム全体の色合いを大きく左右しているとも思われ、ここら辺になってくると私的にも楽しく聞ける感じです。


 それではレビューしていきましょう。Brother, Brother 1曲目は、Carole King のカバーでオリジナルはこのアルバムの前年の1971年に発売。もともとのオリジナルもエレピとパーカッションのソウルで清々しい感じで心地よいですが、Isleys のカバーではインプレッションズのような黒さがにじみ出てきてます。Put a Little Love in Your Heart は、Randy Myers、Jackie DeShannon作の Jackie DeShannon の1968年のヒットのカバー。オリジナルの白人系ソウルよりも、1曲目と違った意味で黒くなってて心地よい。Chicago っぽくもあるかな。Sweet Season は再び  Carole King のカバー。Carole King のオリジナルは、ソウルだけどカントリー風に軽く流しているのに対し、Isleys のカバーは熱い。Keep On Walkin'は前曲の続きとしてメドレーとして足されています。Work to Do は Isley のオリジナル。3rdシングルとして全米R&Bチャート第11位となっていて、キャッチーなピアノ・リフでノリとしては Steely Dan への布石のような感じの曲です。フリーソウルの人気曲として多くの人にカバーされたりサンプリングされています。Pop That Thang は、SLY 的なファンクとなり、やっと来たかねって感じの2ndシングル、全米R&Bチャート第3位です。リズム部隊も Ronald のボーカルも良い感じです。Lay Away は1stシングル、全米R&Bチャート第6位と売れた曲ですね。モータウン的なリズムの使い方が当時の流行りだったのかなあと想像します。Ernie のギターがジミヘンとお友達であったことがわかるソロも好感ですが、短くてもったいない。It's Too Late スローテンポのブルースですね。Carole King のカバーとのことで、チェックしてみます。オリジナルのほうがソウルっぽいですが、あっさりとした曲調がとても好印象です。これは Carole King の方が好みです。でも10分31秒の長さでカバーするところをみるとBrothers も、かなりのお気に入りだったに違いありません。Love Put Me on the Corner は、メロー・ソウル風バラードでイントロ長めなのでインスト?と思った頃に Ronald のロー・ボイスが入ってきますが、これまた聞く人の心を打つ名作かな。
 きっちり大物感の存在を誇示するアルバムで聴きなおして評価ひとつアップです🎶

シリーズ4枚目

lead and background vocals : Ronald Isley (except 9)
background vocals, lead vocal : O'Kelly Isley, Jr. (9)
background vocals : Rudolph Isley
piano, keyboards : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
guitars : Ernie Isley
bass : Marvin Isley
drums, percussion : George Moreland
congs : Karl Potter
 
1. Brother, Brother (Carole King)
2. Put a Little Love in Your Heart (Randy Myers, Jackie DeShannon)
3. Sweet Seasons (Carole King, Toni Stern)
4. Keep on Walkin' (The Isley Brothers)
5. Work to Do (The Isley Brothers)
6. Pop That Thang (Herman Kelly, Clyde Otis, Ronald Isley, O'Kelly Isley, Rudolph Isley)
7. Lay Away (The Isley Brothers)
8. It's Too Late (Carole King, Toni Stern)
9. Love Put Me on the Corner (Chris Jasper)





  

2024年8月25日日曜日

The Isley Brothers / Givin' It Back


 全曲カバー曲でまとめられたアルバムで、ピーター・バラカン氏によれば、このアルバムはソウル/ファンクのグループとしてのアイズレー・ブラザーズが、ロック畑に「お返しする」という趣旨のもの。確かにアルバムタイトルの Givin' It Back は曲としてはアルバムに入っていません。ジャケ写も The Brothers Isley では、新興宗教のような赤い服でしたがアコギを抱えてフォーク・グループ風になっているのは、また何かイメージが違うような気がしますが(まだこっちのほうが良い)


 この頃は年に一枚のペースでアルバム作成していたので、商業的に売れることを意識していたのか、カーティス・メイ・フィールドあたりも意識しているような歌い方をしているのかと思っていましたが。改めて聴きながら時代背景を考えれば、当時ベトナム戦争で暗澹としたアメリカ社会を批判するような、メッセージ性の強い曲が選曲されていることからも、ルーツに感謝しながら当時のアメリカに対して物申すといった意味も強いような気がします。白人アーチストの曲が多いのも敢えて白人・黒人の垣根を超える意図もあったのかもしれません。
 Ohio/Machine Gun は、ジミヘンを意識したアーニーのギターとロナルドの力の入ったボーカルが印象的。Fire And Rain はアーシーなソウルでありながら、途中からフォーキーになる意外性の展開が凄い。ボブ・ディラン Lay Lady Lay は力を抜いてカントリー・ソウル。Spill The Wine ではラテンを取り入れながらも、しっかりアイズレー・サウンドに昇華しているラテン・ソウル。そしてこのアルバムでは一番アイズレーらしいファンクナンバー Nothing To Do But Today になって、このアルバムのコンセプトっぽくない曲調なのですが、何か安心感があります。そして私も大好きなビル・ウィザーズの Cold Bologna は、歌い方アレンジはマンマですね。このパターンのギターも歌いまわしも大好きと思って聞いていて参加アーチスト書いてたら Bill Withers 本人の参加でした(もう一回聴こう)ラストは2曲目のスティーヴン・スティルスのカバー Love The One You're With で、アレサ、ミーターズもカバーしている名曲で締めくくりです。異色作ではありますが良かったです。聴き直して満足🎵

お買い得5枚組ですが
時代を追って一気にアーティストの変化が聞き比べられるので面白い


lead and backing vocals : Ronald Isley 
backing vocals : O'Kelly Isley Jr. and Rudolph Isley
lead guitar  rhythm guitar, drums : Ernie Isley (1-5, 7)
bass guitar : Marvin Isley
piano : Chris Jasper
lead guitar, rhythm guitar : Chester Woodard (1-5, 7)
lead guitar : Bill Withers (6)
organ : Milton Westley
flute : John Mosley
drums, percussion : George Moreland
congas : Gary Jones (1-6)
congas : Buck Clarke (7)

1. Ohio / Machine Gun (Neil Young / Jimi Hendrix)
2. Fire And Rain (James Taylor)
3. Lay Lady Lay (Bob Dylan)
4. Spill The Wine (Eric Burdon & War)
5. Nothing To Do But Today (Stephen Stills)
6. Cold Bologna (Bill Withers)
7. Love The One You're With (Stephen Stills)






  

2024年8月24日土曜日

The Isley brothers / Get Into Something


 Motownを離れてレーベル T-Neck を立ち上げての3枚目の1970年アルバムです。魔法の絨毯らしき敷物に乗って飛び立とうとしてロナルドが両腕を水平に広げているジャケットは、いざ飛び立たん!なのでしょうが、誰の発案なのか若干趣味を疑ってしまいます。内容としては前2作の路線をさらに大胆に推し進めたファンク・アルバムでジャケットの滑稽さとは一味違って良かった感じです。ただ良い内容ではありますが、セールス的にはいまいちだったらしい。ジャケットのせいかもあるのでしょうか。これ持ってレコード屋のレジに行くのは恥ずかしいかなあ。


 さてこのアルバム、ボーカル・グループからファンク路線に完全に踏み切っています。Get Into Something は激しくファンクしていて、このアルバムの象徴のような曲でギター、ピアノ、ベース、ドラムとインスト・パートが一体となった激しいグルーブです。続く Freedom はシャッフル調のリズムでグルーヴするソウル的な曲。Take Inventory はミドルテンポの落ち着いたファンクでコーラスが曲を盛り上げています。Keep On Doin' はJB's の The Grunt と同じですがレコーディングはこちらの方が先のようです。Girls Will Be Girls はエンターテイメント色が濃いコミック的な感じがしますが、しっかりとした歌いまわしは本物。I Need You So はスローなバラードでアレンジがピアノとストリングスのアレンジで聴かせてくれます。If He Can You Can でサイケなファズギターのファンクに戻り、またもやバラード I Got To Find Me One です。ここら辺がアルバムとして凄く考えられているなと感じます。Beautiful はファルセットが美しい牧歌的な曲となり、ラストの Bless Your Heart は、大好きなパターンの粘っこいファンクナンバーで締めくくりです。アーニーのジミヘン風、ファズ・ギターや、メロー・ソウル的なところも取り入れたジャケットの見た目よりホント良質なファンクが詰まったアルバムです🎵

lead vocals and backing vocals : Ronald Isley
backing vocals : O'Kelly Isley Jr. and Rudolph Isley
bass guitar : Ernie Isley

guitars : Charles "Skip" Pitts
organ : Truman Thomas
keyboards : Everett Collins
drums : George Moreland

written by : O'Kelly Isley (1 to 6, 8 to 10), Ronald Isley (1 to 6, 8 to 10), Rudolph Isley (1 to 6, 8 to 10)

producer : O'Kelly Isley, Ronald Isley, Rudolph Isley

1. Get Into Something
2. Freedom
3. Take Inventory
4. Keep On Doin'
5. Girls Will Be Girls
6. I Need You So
7. If He Can You Can (J. Brantly)
8. I Got To Find Me One
9. Beautiful
10. Bless Your Heart

お買い得シリーズ2枚目





  

2024年8月23日金曜日

The Isley brothers / The Brothers : Isley


 The Isley brothers はオハイオ州シンシナティ出身のソウル・グループで、50年代前半に結成したゴスペル・グループが母体。デビューは1957年で O'Kelly(長男)バッキングボーカル、 Ronald (3男)バッキングボーカル, Rudolph (次男) リード・ボーカル を中心に Ernie Isley (5男) ギター、Marvin Isley (6男)ベース、Vernon Isley (4男)リード・ボーカル、Isley姓でないキーボードの Chris Jasper は Rudolph の妻の弟。デビュー当初はドゥーワップも歌っていてアイズレーは、1959年にゴスペル・ソウル「Shout」をヒットさせています。


 さて1969年制作のこのアルバム、新興宗教のような服装で日本庭園のようなバックのジャケットが印象的。この年はレコード会社のT-Neckへの移籍の関係もありライブ盤含めてDoin' Their Thing、It's Our Thing、Live at Yankee Stadium、The Brothers: Isley と大量4枚のアルバムを制作しています。
 これで12作目なのですが、全盛期へ向かう段階で自身のファンク・サウンドを完成に近づけていた頃。この時代のファンクは、Sly & The Family Stone を筆頭としたサウンドが流行だと思いますが、Isley は、その路線+ロック+ソウルの要素が強いサウンドです。
 I Turned You On はシングルでも発売され全米R&Bチャート第6位、全米チャート第23位となったヘビー&荒削りで、ワンコードで押し切るファンクの醍醐味が詰まった曲で、その後DJからサンプリングネタとして重宝されているらしい。またカーティスっぽくもあります。続く Vacuum Cleaner はイントロからずっと鳴っている単純なギターのフレーズが、もダークでカッコよくて良いですね。そしてメロー・ソウルな I Got to Get Myself Together となり、ここら辺がゴスペルを基本としたボーカル・グループとしての魅力が発揮される曲。Was It Good to You? ではグッとダイナミックなサウンドで The Blacker the Berrie  は無理やりグイグイと引っ張って行くようなロックなファンク。そして My Little Girl はオールドなスタイルのソウル・ファンクで懐かしい雰囲気。Get Down off of the Train は、正統派なソウル・チューンで、Ronald のボーカルの魅力、Holding On も別の意味で正統派なソウルで、ラスト Feels Like the World はバラードで締めくくりです。元々ボーカルグループだけあって歌にハズレはないですね🎶

このCDは5枚組お買い得シリーズの一枚


piano, percussion : Chris Jasper
organ : Truman Thomas
guitar, twelve-string guitar, electric guitar, percussion : Ernie Isley
bass, percussion : Marvin Isley
drums, percussion : George Moreland
percussion : George Patterson

executive-producer : Tony Martell
written by, arranged by, producer : O'Kelly Isley, Ronald Isley, Rudolph Isley
producer (Legacy'S Rhythm & Soul Series Director) : Adam Block

1. I Turned You On
2. Vacuum Cleaner
3. I Got To Get Myself Together (George Patterson)
4. Was It Good To You?
5. The Blacker The Berrie
6. My Little Girl
7. Get Down Off Of The Train
8. Holding On
9. Feels Like The World





  

2024年8月18日日曜日

Miles Davis / Decoy

 

 長年マイルス作品をプロデュースしてきたコロンビアのTeo Maceroと別れ、1984年に発表したマイルスのセルフ・プロデュース体制でレコーディングされたスタジオアルバム。マイルス復活後第4作目。マイルスが向かおうとしていたエレクトリック・ファンクの方向性が明確化された作品で、本作よりベースの Darryl Jones(ダリル・ジョーンズ)がマイルスのグループに正式加入しました。彼はこの時点ではシカゴで活動していたローカルなミュージシャンに過ぎなかったが、シンセの Robert Irving III, そのバンド仲間でマイルスの甥であるドラマーの Vince Wilburn Jr. の推移によりニューヨークの2700席クラスのコンサートホール、エイブリー・フィッシャー・ホールへの参加が要請されたとのことで、それまで数百人程度のディスコ、ライブハウスでの演奏しかしていなかったのでビビッたらしい。ちなみにこのコンサートホール、金管楽器が鳴りすぎ、低音が弱いとの評価でクラシック・ミュージシャンからは評判が悪く後に音響改修されることになったらしいので電化マイルスバンドには丁度良かったのでしょう。
 他、このアルバムには ソプラノサックスでBill Evans 、Branford Marsalis、先ほど紹介のRobert Irving III、ギターに John Scofield(g)、ベースは先ほど紹介の初参加 Darryl Jones、ドラムに Al Fosterm、パーカッションは Mino Cinelu が参加していて、Branford Marsalisをレギュラー・メンバーに起用しようと考えていましたが、それは実現できませんでした。


 それではレビューしていきます。Decoy シンセの Robert Irving III作品、ファンクっぽいけどジャズ・ファンクではない楽曲です。いわゆる売れ線的なリフとリズムとなっています。Robot 415 は1分10秒の実験的な感じがする曲で、シンセとパーカッションにワウのエフェクトがかかったトランペット。Code M.D. は、かなりファンクも入っていないフュージョン作品です。John Scofield のギターは、あまりウネウネしていないですね。マイルスも、あの音を探しながら吹くような感じの吹き方です。Branford Marsalisも参加ですが、デスクトップで作ったってイメージで、軽いですかね。Freaky Deaky はマイルス作曲で、シンセを担当でトランペットは吹いていません。これも抽象的で実験的な曲となっており緊張感とかは全くないヒーリングのような曲ですね。What It Is は、1983年7月7日、マイルス・バンドがモントリオール・ジャズ・フェスティバル出演時の録音です。かなりのファンクなフュージョンで。マイルスとジョン・スコフィールドの共作で、売れ線です。That’s Right は、アレンジにギル・エヴァンスのマイルスとジョン・スコフィールドの共作。本作はかなり、ゆっくりしたテンポで、どこかのソウル・ナンバーのオマージュかと思う曲です。That’s What Happend 実は前作 Star People の Speak と同じ曲とのことですが、前作は、かなりロック的な感じで、今作はファンクな感じ。前作のテーマらしきものは今作に反映させていないと思われ、同じ曲とはAIでも判別はできないものと思われます。これもマイルスとジョン・スコフィールドの共作。
 ロックに近い路線もあったが、よりファンクに寄せてきた実験作のような感じです。大衆受けを狙ったかと言えばそうでもない。アルバムのまとまりも無いような気もするし、、、うーん。面白くはあるかなあ🎶

producer : Miles Davis
recorded by : Guy Charbonneau

recorded at Record Plant Studios, N.Y.C.
Track 4 Recorded at A&R Studios, N.Y.C.
Track 5 Recorded Live at Festival International De Jazz De Montreal

1. Decoy (Robert Irving III) 
trumpet : Miles Davis
synthesizer, drum programming (electric) : Robert Irving III
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
guitar : John Scofield
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Branford Marsalis
2. Robot 415 (Miles Davis, Robert Irving III)
trumpet, synthesizer : Miles Davis
synthesizer, synthesizer (bass), drum programming (electric) : Robert Irving III
percussion : Mino Cinelu
3. Code M.D. (Robert Irving III) 
trumpet : Miles Davis
synthesizer, drum programming (electric) : Robert Irving III
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
guitar : John Scofield
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Branford Marsalis
4. Freaky  (Miles Davis)
synthesizer : Miles Davis
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
5. What It Is (Jhon Scofield, Miles Davis)
trumpet, synthesizer : Miles Davis
guitar : John Scofield
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Bill Evans
6. That's Right (Jhon Scofield, Miles Davis)
trumpet, synthesizer : Miles Davis
synthesizer : Robert Irving III
guitar : John Scofield
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Branford Marsalis
7. That's What Happened (Jhon Scofield, Miles Davis)
trumpet, synthesizer : Miles Davis
guitar : John Scofield
electric bass : Darryl "The Munch" Jones*
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Bill Evans

Decoy




  

2024年8月17日土曜日

Horace Silver / Blowin' The Blues Away

 

 1954年から1955年にかけてJazz Messangers を結成し、1956年に Art Blakeyブレイキーから離れ、自己のハード・バップ・クインテットを作り1959年録音のリーダー作8枚目。ピアニストのシルバー率いるクインテットは、ベースに Gene Taylor、ドラムに Louis Hayes テナーで Junior Cook、トランペット Blue Mitchellの編成。2, 4, 7曲目はベース、ドラムとのトリオでの演奏となっています。バップの複雑さとブルースやゴスペルのストレートな部分をとりれたハード系スイングが多く、各メンバーのソロはストレートで分かりやすいのが特徴です。このグループは結束が固く、この5年後 Horace Silver がバンドを解散した後も、残りの4人は Chick Corea と Blue Mitchell & Junior Cook Quintet として活動を続けています。


 さてアルバムレビューです。ちなみに8曲目を除くオリジナル収録曲は、全曲 Horace Silver 作曲でです。Blowin' The Blues Away 最初はタイトル曲で勢いがあります。ブルースですね。タイトルからして「ブルースをぶっ飛ばせ」ではなく「ブルーな気分を吹き飛ばせ」という意味でしょうか。The St. Vitus Dance ミドルテンポのバップで、流れるように曲が展開していきます。ホーン部隊は無しのトリオ演奏でしっとり・おしゃれ系ですね。Break City テンポ早めのハードバップです。Junior Cook,  Blue Mitchell も張り切ってソロを取っている感じで勢いがあります。Peace は Blue Mitchell がテーマ・ソロをとる落ち着いた曲です。隙間がいっぱいあって味があります。Sister Sadie 聴いていて素直に楽しそうだなと思える踊れるジャズって感じです。The Baghdad Blues 派手な曲が続きます。ピアノは、結構粗い感じでバンド全体も勢いで押す感じが潔くてよいです。Melancholy Mood アルバムとしては勢いばかりでは聴き手も飽きてきますのでバラードの登場です。前半はピアノは低音多用で重い感じで攻めてきます。そしてソロになりますが、やはり強いタッチが多めです。最後のほうで5分過ぎぐらいでニュアンス変えますが元に戻るかあ。少し単調に聞こえちゃいますかね。How Did It Happen Don Newey 最後は楽しく締めです。アップテンポが似合いますね。
 とにかく勢いがあって若いエネルギーほとばしるって感じのセッションかと思います。テクニックなどを聴くというよりは、音楽のエネルギーを感じたいときに聴くのが良いと思います。バンド全体のインパクトもシルバーに負けない位強烈です🎶🎹

piano, composed by : Horace Silver
bass : Gene Taylor
drums : Louis Hayes
tenor sax : Junior Cook (1, 3 to 7)
trumpet : Blue Mitchell (1, 3 to 7)

design (cover) : Reid Miles

producer : Alfred Lion

recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey
recorded on August 29 (1, 6), August 30 (3 to 5, 8) and September 13 (2, 7), 1959.

1. Blowin' The Blues Away
2. The St. Vitus Dance
3. Break City
4. Peace
5. Sister Sadie
6. The Baghdad Blues
7. Melancholy Mood
8. How Did It Happen (Don Newey) / Not part the original album
written by Horace Silver (1to8)


▶ Peace



  

2024年8月16日金曜日

The Roy Hargrove Quintet / Earfood

 

 Roy Hargrove は、1990年に Wynton Marsalis に見出されてデビュー、当時は若手ジャズ・トランペッターとして注目を集めていました。王道を突き進んできた方ですが、NYのクラブ・シーンでのセッションを通じて、ジャズ以外のミュージシャンと積極的に交流をはかり、2000年には D'Angelo の Voodoo に参加、その後のツアーにも加わり R&B/Hip
Hop系ファンからも知られるようになります。そのように様々なジャンルで演奏すし、RHQまたはRHS(ロイ・ハーグローヴ・クインテット)、RHB(ロイ・ハーグローヴ・ビッグバンド)、RHFactor(RHF)の3つの形態のバンドのリーダーでし、後期は主にRHQでの活動が主でした。
 本作は2007年録音の作品でストレートアヘッドなジャズ作品で、 2003年からはじまった Rh Factor で立て続けにアルバムをリリースしたあと。この時代のハーグローブは、ブラックミュージックと両立している時代となります。ジャズが仕事でRHFが趣味みたいな感じでしょうか。
 アルバム全体にはハード・バップな雰囲気流れますが、1~4曲目までは8ビートでポップな要素を盛り込んだライト・フュージョン。5曲目からは4ビート主体となりますが、「静」で聴きやすい曲となっています。ラストの13曲目だけはライブ収録となりゴスペル、ソウル的な演奏で盛り上がり、これはボーナスのようなもんでしょうか。


 それでは大好きなトランぺッターの一人でもある Roy Hargrove のクインテット作品をレビューします。I'm Not So Sure  は、Cedar Walton の作品でグレゴリー・ポーターをもっとジャズ寄りにしたようなソウルフルなリフのオープニングです。ジャズカルテットでありながら8ビートで爆進する心意気がとても心地よい。 Roy Hargrove節のトランペットも聴けます。Brown ハーグローブ作曲のナンバーです。1曲目よりもジャズよりです。Strasbourg は St. Denis の曲で、ソウル系のフィーリングの8ビート。こうやって互い違いに曲をだしてくるのだろうかと思いながら聴き直します。Starmakery は Lou Marini の作曲。ここではボサノバ調できました。。トランペットソロも鋭角でなく、ほのぼのしたトーンでの展開。The Stingerなるほど。Joy Is Sorrow Unmasked 8ビートに戻ってきません。けだるい雰囲気の幻想的な曲です。The Stinger は正調なジャズですね。芸は細かく懐は深いといった感じです。Rouge 今度は幻想的な路線です。ここでもサックスとトランペットのユニゾンが幻想的な世界に拍車をかけます。Mr. Clean は、Weldon Irvine Jr.の曲です。なるほど他人の曲は敢えてソウル的な曲を選んでいるのかと、ここまでではそう思っておきましょう。聞き流していると気付きませんね。Style はハーグローブ作。やはりジャズ寄りに戻ってきました。若干アバンギャルド気味で気持ち良いです。Divine ハーグローブ作の幻想曲ですね。やはり本人作曲はこのアルバムでは刺激少ない系です。To Wisdom The Prize Larry Willis の作曲。これはしっかりジャズですね。Larry Willisのクインテットのオリジナル音源に非常に近いですが、こちらの方が知的なイメージを受けます。Speak Low 有名なスタンダードですね。 しっかりとジャズに回帰しています。とりあえずオリジナルはジャズ路線ですが他人のオリジナルはソウル的な曲が多かったということですね。Bring It On Home To Me は Sam Cooke です。これだけはライブの収録です。
 ストレートにジャズとも言えるが、随所にソウル的な曲が登場して多彩な音楽の要素が入り混じる好きなアルバムではあります。良いのですが大衆的な分インパクトは弱いかもしれません。まだ私の中のロイ・ハーグローブのベストは Habana🎶

trumpet, flugelhorn : Roy Hargrove
alto sax, flute : Justin Robinson
piano : Gerald Clayton
bass : Danton Boller
drums : Montez Coleman

producer : Larry Clothier, Roy Hargrove

recorded September 19-21, 2007, at Capitol Studios, LA

1. I'm Not So Sure  (Cedar Walton)
2. Brown
3. Strasbourg / St. Denis
4. Starmakery (Lou Marini)
5. Joy Is Sorrow Unmasked
6. The Stinger
7. Rouge
8. Mr. Clean (Weldon Irvine Jr.)
9. Style
10. Divine
11. To Wisdom The Prize (Larry Willis)
12. Speak Low (Kurt Weill, Ogden Nash) 
13. Bring It On Home To Me (Sam Cooke)
written by Roy Hargrove (2, 3, 5 to 7, 9, 10)