2024年8月18日日曜日

Miles Davis / Decoy

 

 長年マイルス作品をプロデュースしてきたコロンビアのTeo Maceroと別れ、1984年に発表したマイルスのセルフ・プロデュース体制でレコーディングされたスタジオアルバム。マイルス復活後第4作目。マイルスが向かおうとしていたエレクトリック・ファンクの方向性が明確化された作品で、本作よりベースの Darryl Jones(ダリル・ジョーンズ)がマイルスのグループに正式加入しました。彼はこの時点ではシカゴで活動していたローカルなミュージシャンに過ぎなかったが、シンセの Robert Irving III, そのバンド仲間でマイルスの甥であるドラマーの Vince Wilburn Jr. の推移によりニューヨークの2700席クラスのコンサートホール、エイブリー・フィッシャー・ホールへの参加が要請されたとのことで、それまで数百人程度のディスコ、ライブハウスでの演奏しかしていなかったのでビビッたらしい。ちなみにこのコンサートホール、金管楽器が鳴りすぎ、低音が弱いとの評価でクラシック・ミュージシャンからは評判が悪く後に音響改修されることになったらしいので電化マイルスバンドには丁度良かったのでしょう。
 他、このアルバムには ソプラノサックスでBill Evans 、Branford Marsalis、先ほど紹介のRobert Irving III、ギターに John Scofield(g)、ベースは先ほど紹介の初参加 Darryl Jones、ドラムに Al Fosterm、パーカッションは Mino Cinelu が参加していて、Branford Marsalisをレギュラー・メンバーに起用しようと考えていましたが、それは実現できませんでした。


 それではレビューしていきます。Decoy シンセの Robert Irving III作品、ファンクっぽいけどジャズ・ファンクではない楽曲です。いわゆる売れ線的なリフとリズムとなっています。Robot 415 は1分10秒の実験的な感じがする曲で、シンセとパーカッションにワウのエフェクトがかかったトランペット。Code M.D. は、かなりファンクも入っていないフュージョン作品です。John Scofield のギターは、あまりウネウネしていないですね。マイルスも、あの音を探しながら吹くような感じの吹き方です。Branford Marsalisも参加ですが、デスクトップで作ったってイメージで、軽いですかね。Freaky Deaky はマイルス作曲で、シンセを担当でトランペットは吹いていません。これも抽象的で実験的な曲となっており緊張感とかは全くないヒーリングのような曲ですね。What It Is は、1983年7月7日、マイルス・バンドがモントリオール・ジャズ・フェスティバル出演時の録音です。かなりのファンクなフュージョンで。マイルスとジョン・スコフィールドの共作で、売れ線です。That’s Right は、アレンジにギル・エヴァンスのマイルスとジョン・スコフィールドの共作。本作はかなり、ゆっくりしたテンポで、どこかのソウル・ナンバーのオマージュかと思う曲です。That’s What Happend 実は前作 Star People の Speak と同じ曲とのことですが、前作は、かなりロック的な感じで、今作はファンクな感じ。前作のテーマらしきものは今作に反映させていないと思われ、同じ曲とはAIでも判別はできないものと思われます。これもマイルスとジョン・スコフィールドの共作。
 ロックに近い路線もあったが、よりファンクに寄せてきた実験作のような感じです。大衆受けを狙ったかと言えばそうでもない。アルバムのまとまりも無いような気もするし、、、うーん。面白くはあるかなあ🎶

producer : Miles Davis
recorded by : Guy Charbonneau

recorded at Record Plant Studios, N.Y.C.
Track 4 Recorded at A&R Studios, N.Y.C.
Track 5 Recorded Live at Festival International De Jazz De Montreal

1. Decoy (Robert Irving III) 
trumpet : Miles Davis
synthesizer, drum programming (electric) : Robert Irving III
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
guitar : John Scofield
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Branford Marsalis
2. Robot 415 (Miles Davis, Robert Irving III)
trumpet, synthesizer : Miles Davis
synthesizer, synthesizer (bass), drum programming (electric) : Robert Irving III
percussion : Mino Cinelu
3. Code M.D. (Robert Irving III) 
trumpet : Miles Davis
synthesizer, drum programming (electric) : Robert Irving III
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
guitar : John Scofield
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Branford Marsalis
4. Freaky  (Miles Davis)
synthesizer : Miles Davis
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
5. What It Is (Jhon Scofield, Miles Davis)
trumpet, synthesizer : Miles Davis
guitar : John Scofield
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Bill Evans
6. That's Right (Jhon Scofield, Miles Davis)
trumpet, synthesizer : Miles Davis
synthesizer : Robert Irving III
guitar : John Scofield
electric bass : Darryl "The Munch" Jones
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Branford Marsalis
7. That's What Happened (Jhon Scofield, Miles Davis)
trumpet, synthesizer : Miles Davis
guitar : John Scofield
electric bass : Darryl "The Munch" Jones*
drums : Al Foster
percussion : Mino Cinelu
soprano sax : Bill Evans

Decoy




  

2024年8月17日土曜日

Horace Silver / Blowin' The Blues Away

 

 1954年から1955年にかけてJazz Messangers を結成し、1956年に Art Blakeyブレイキーから離れ、自己のハード・バップ・クインテットを作り1959年録音のリーダー作8枚目。ピアニストのシルバー率いるクインテットは、ベースに Gene Taylor、ドラムに Louis Hayes テナーで Junior Cook、トランペット Blue Mitchellの編成。2, 4, 7曲目はベース、ドラムとのトリオでの演奏となっています。バップの複雑さとブルースやゴスペルのストレートな部分をとりれたハード系スイングが多く、各メンバーのソロはストレートで分かりやすいのが特徴です。このグループは結束が固く、この5年後 Horace Silver がバンドを解散した後も、残りの4人は Chick Corea と Blue Mitchell & Junior Cook Quintet として活動を続けています。


 さてアルバムレビューです。ちなみに8曲目を除くオリジナル収録曲は、全曲 Horace Silver 作曲でです。Blowin' The Blues Away 最初はタイトル曲で勢いがあります。ブルースですね。タイトルからして「ブルースをぶっ飛ばせ」ではなく「ブルーな気分を吹き飛ばせ」という意味でしょうか。The St. Vitus Dance ミドルテンポのバップで、流れるように曲が展開していきます。ホーン部隊は無しのトリオ演奏でしっとり・おしゃれ系ですね。Break City テンポ早めのハードバップです。Junior Cook,  Blue Mitchell も張り切ってソロを取っている感じで勢いがあります。Peace は Blue Mitchell がテーマ・ソロをとる落ち着いた曲です。隙間がいっぱいあって味があります。Sister Sadie 聴いていて素直に楽しそうだなと思える踊れるジャズって感じです。The Baghdad Blues 派手な曲が続きます。ピアノは、結構粗い感じでバンド全体も勢いで押す感じが潔くてよいです。Melancholy Mood アルバムとしては勢いばかりでは聴き手も飽きてきますのでバラードの登場です。前半はピアノは低音多用で重い感じで攻めてきます。そしてソロになりますが、やはり強いタッチが多めです。最後のほうで5分過ぎぐらいでニュアンス変えますが元に戻るかあ。少し単調に聞こえちゃいますかね。How Did It Happen Don Newey 最後は楽しく締めです。アップテンポが似合いますね。
 とにかく勢いがあって若いエネルギーほとばしるって感じのセッションかと思います。テクニックなどを聴くというよりは、音楽のエネルギーを感じたいときに聴くのが良いと思います。バンド全体のインパクトもシルバーに負けない位強烈です🎶🎹

piano, composed by : Horace Silver
bass : Gene Taylor
drums : Louis Hayes
tenor sax : Junior Cook (1, 3 to 7)
trumpet : Blue Mitchell (1, 3 to 7)

design (cover) : Reid Miles

producer : Alfred Lion

recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey
recorded on August 29 (1, 6), August 30 (3 to 5, 8) and September 13 (2, 7), 1959.

1. Blowin' The Blues Away
2. The St. Vitus Dance
3. Break City
4. Peace
5. Sister Sadie
6. The Baghdad Blues
7. Melancholy Mood
8. How Did It Happen (Don Newey) / Not part the original album
written by Horace Silver (1to8)


▶ Peace



  

2024年8月16日金曜日

The Roy Hargrove Quintet / Earfood

 

 Roy Hargrove は、1990年に Wynton Marsalis に見出されてデビュー、当時は若手ジャズ・トランペッターとして注目を集めていました。王道を突き進んできた方ですが、NYのクラブ・シーンでのセッションを通じて、ジャズ以外のミュージシャンと積極的に交流をはかり、2000年には D'Angelo の Voodoo に参加、その後のツアーにも加わり R&B/Hip
Hop系ファンからも知られるようになります。そのように様々なジャンルで演奏すし、RHQまたはRHS(ロイ・ハーグローヴ・クインテット)、RHB(ロイ・ハーグローヴ・ビッグバンド)、RHFactor(RHF)の3つの形態のバンドのリーダーでし、後期は主にRHQでの活動が主でした。
 本作は2007年録音の作品でストレートアヘッドなジャズ作品で、 2003年からはじまった Rh Factor で立て続けにアルバムをリリースしたあと。この時代のハーグローブは、ブラックミュージックと両立している時代となります。ジャズが仕事でRHFが趣味みたいな感じでしょうか。
 アルバム全体にはハード・バップな雰囲気流れますが、1~4曲目までは8ビートでポップな要素を盛り込んだライト・フュージョン。5曲目からは4ビート主体となりますが、「静」で聴きやすい曲となっています。ラストの13曲目だけはライブ収録となりゴスペル、ソウル的な演奏で盛り上がり、これはボーナスのようなもんでしょうか。


 それでは大好きなトランぺッターの一人でもある Roy Hargrove のクインテット作品をレビューします。I'm Not So Sure  は、Cedar Walton の作品でグレゴリー・ポーターをもっとジャズ寄りにしたようなソウルフルなリフのオープニングです。ジャズカルテットでありながら8ビートで爆進する心意気がとても心地よい。 Roy Hargrove節のトランペットも聴けます。Brown ハーグローブ作曲のナンバーです。1曲目よりもジャズよりです。Strasbourg は St. Denis の曲で、ソウル系のフィーリングの8ビート。こうやって互い違いに曲をだしてくるのだろうかと思いながら聴き直します。Starmakery は Lou Marini の作曲。ここではボサノバ調できました。。トランペットソロも鋭角でなく、ほのぼのしたトーンでの展開。The Stingerなるほど。Joy Is Sorrow Unmasked 8ビートに戻ってきません。けだるい雰囲気の幻想的な曲です。The Stinger は正調なジャズですね。芸は細かく懐は深いといった感じです。Rouge 今度は幻想的な路線です。ここでもサックスとトランペットのユニゾンが幻想的な世界に拍車をかけます。Mr. Clean は、Weldon Irvine Jr.の曲です。なるほど他人の曲は敢えてソウル的な曲を選んでいるのかと、ここまでではそう思っておきましょう。聞き流していると気付きませんね。Style はハーグローブ作。やはりジャズ寄りに戻ってきました。若干アバンギャルド気味で気持ち良いです。Divine ハーグローブ作の幻想曲ですね。やはり本人作曲はこのアルバムでは刺激少ない系です。To Wisdom The Prize Larry Willis の作曲。これはしっかりジャズですね。Larry Willisのクインテットのオリジナル音源に非常に近いですが、こちらの方が知的なイメージを受けます。Speak Low 有名なスタンダードですね。 しっかりとジャズに回帰しています。とりあえずオリジナルはジャズ路線ですが他人のオリジナルはソウル的な曲が多かったということですね。Bring It On Home To Me は Sam Cooke です。これだけはライブの収録です。
 ストレートにジャズとも言えるが、随所にソウル的な曲が登場して多彩な音楽の要素が入り混じる好きなアルバムではあります。良いのですが大衆的な分インパクトは弱いかもしれません。まだ私の中のロイ・ハーグローブのベストは Habana🎶

trumpet, flugelhorn : Roy Hargrove
alto sax, flute : Justin Robinson
piano : Gerald Clayton
bass : Danton Boller
drums : Montez Coleman

producer : Larry Clothier, Roy Hargrove

recorded September 19-21, 2007, at Capitol Studios, LA

1. I'm Not So Sure  (Cedar Walton)
2. Brown
3. Strasbourg / St. Denis
4. Starmakery (Lou Marini)
5. Joy Is Sorrow Unmasked
6. The Stinger
7. Rouge
8. Mr. Clean (Weldon Irvine Jr.)
9. Style
10. Divine
11. To Wisdom The Prize (Larry Willis)
12. Speak Low (Kurt Weill, Ogden Nash) 
13. Bring It On Home To Me (Sam Cooke)
written by Roy Hargrove (2, 3, 5 to 7, 9, 10)





  

2024年8月11日日曜日

The Tokyo Session

 

 本作はジャズ専門誌 JAZZLIFE のプロデュースによる教則用 CD BOOK の為に録音されたもので、選曲は誰もが知っているスタンダード・ナンバーであること条件でしたが、演奏内容はミュージシャンに一任されていました。東京市ヶ谷にある一口坂音楽スタジオで1991年の録音です。メンバーは、tenor sax : 佐藤達哉、guitar : 布川俊樹、piano : 福田重男、trumpet : 吉田憲司、drums : Peter Erskine、bass : Marc Johnson、bass : 納浩一、drums : 平山恵勇

  
 
 

 それではレビューです。Stanley Turrentine の楽曲の Sugar はファンキー・ジャズ。やはり和ジャズっぽい演奏で日本人としては好感です。佐藤達哉の最初のソロではアルフィーのテーマを引用、吉田憲司も落ち着いたソロ、布川俊樹はコーラスを深めにかけたコンテンポラリーなギター、福田重男ピアノでの曲がびしっと締まります。I Mean You はモンク作品ですが、布川俊樹のギター、福田重男のピアノがメインのフュージョンで、ギター部分は Oz Noy 風になってしまうところが、モンクとギターの親和性を再認識です。ピアノはハンコック風でモンク風ではありませんね。そしてモンク続きの Round Midnight は、布川俊樹のギターと佐藤達哉のテナーのデュオ。これはしっかりとテーマ、ソロ部分もわかりやすく教則の練習曲しても良いとは思いますが採用では無かったようです。次いではコールポーター作品で What Is This Called Love ? 邦題では「恋とはなんでしょう」です。別テイクと書いてあるので教則本に採用された演奏とは別テイクという意味のようです。先の曲よりも初心者には少し高度な演奏だと思いますので、これは納得。やはり全てが名スタンダードStella By Starlight の登場です。これも別テイクとあります。演奏としては非常にオーソドックスな演奏で、モダンジャズの香りがピンプンする演奏です。Koln,January,24,1975 Part 2 キースジャレットのピアノソロ作品、ケルン・コンサートのナンバーです。スタンダードと呼ぶには新しい作品ですが結構演奏されているらしいです。福田重男のピアノはまさに、その影響が感じられます。実に清々しいトリオ演奏です。最後は Things Ain't What They Used To Be ジャム・セッションの定番曲ですね。メンバーが楽しみながら演奏しているのが伝わりますが、決して羽目は外さないのは教則本用の収録だからでしょう。エンディングとしてもぴったりです。
 古くとも色あせないスタンダードが楽しめました。日本の一流ミュージシャンによる演奏は安定度も抜群で楽しめます。

produced and directed by JAZZLIFE
recoerded on September 2,3 1991 at Hitokuchizaka Studio. Tokyo

1. Sugar (Stanley Turrentine)
trumpet : 吉田憲司
tenor sax : 佐藤達哉
guitar : 布川俊樹
piano : 福田重男
bass : 納浩一
drums : 平山恵勇
2. I Mean You (Thelonious Monk)
guitar : 布川俊樹
piano : 福田重男
bass : 納浩一
drums : 平山恵勇
3. Round Midnight (Thelonious Monk)
tenor sax : 佐藤達哉
guitar : 布川俊樹
4. What Is This Called Love ? (Cole Porter)
tenor sax : 佐藤達哉
bass : Marc Johnson
drums : Peter Erskine
5. Stella By Starlight (Victor young)
tenor sax : 佐藤達哉
guitar : 布川俊樹
piano : 福田重男
6. Koln,January,24,1975 Part 2 (keith Jarret)
piano : 福田重男
bass : Marc Johnson
drums : Peter Erskine
7. Things Ain't What They Used To Be (Duke Ellington)
tenor sax : 佐藤達哉
guitar : 布川俊樹
piano : 福田重男






  

2024年8月10日土曜日

Cortijo & Y Su Combo Feat. Ismael Rivera / Fiesta Boricua

 


 本作は、Cortijo & Y Su Combo(コルティーホ・イ・ス・コンボ)コルティーホ楽団&イスマエル・リベーラが1950年代から60年代にかけて、ヘマ/ルンバ・レコーズに残した5作のうちの一つ。パーカッション奏者のラファエル・コルティーホ率いる楽団と、その相棒の名歌手イスマエル・リベーラの黄金タッグのクオリティの高さが光るエネルギッシュな演奏です。


 他の盤でも書いていますが、この楽団の最大の武器は Plena、Bomba のプエルトリコ系アフロミュージックの強力なリズムです。Plena は、2/4拍子でソロとコーラスの掛け合いで歌われ歌詞は町の出来事などを歌いこんだものが多く、Bomba は元々ロイーサ・アンデーアの黒人居住区で太鼓を伴奏に歌い踊ったもので、単純なフレーズを反復する素朴な音楽で、どちらも即興性が高くプエルトリコの暮らしの中で永年楽しまれてきた音楽です。


 豚の丸焼きを囲んで、楽しそうにメンバーが笑っているジャケットな訳はクリスマス・アルバムとして制作されたそうで、ところ変われば七面鳥でもなくケンタッキー・フライドチキンでもなく豚の丸焼きがご馳走になるのかと、お国柄も伺えます。 アルバム収録曲では、Oriza は、まず打楽器が先陣を切り民族音楽的なグルーブにのせた怪しげなコーラスの曲。1959年にキューバ革命が起きてプエルトリコも波乱の情勢の1960年に制作されたこのアルバム。時代特有のザワザワした雰囲気がこのアルバムにあるとライナーノーツで解説されていますが、私には混乱も音楽とダンスで吹き飛ばしてしまおうと言うラテン気質がすごいなと思います。またジプシー・キングスで有名になった Volare が3曲目。キリンの麒麟淡麗を思いだしてしまいます。また Y Pedro Flores は Bomba のリズムでのアルセニオ・ロドリゲスのカバーで、この当時の流行曲をカバーしているそうです。また Doña Chana はハチロクのリズム。いわゆる6/8拍子のリズムで日本人には複雑怪奇に思えますが一小節に二回アクセントが強調されるこのリズムはクセになります。
 リズムだけでなく、エネルギッシュで楽しいところが魅力です🎶

1. Oriza  (Ritmo Ganga)
2. Si Te Mueres No Me Lleves (Bomba)
3. Volare (Guaracha)
4. Que Le Paso (Bomba)
5. La Hija De La Vecina (Plena)
6. Madame Calalú  (Plena)
7. Y Pedro Flores (Bomba)
8. Mofongo Pelao (Bomba)
9. Sola Vaya (Guaracha)
10. Los Chismosos (Bomba)
11. Doña Chana (Bomba)
12. Me Voy A Marancagaya (Samba)
13. Yayabo (Comparsa) Bonus Track

▶ Oriza

▶ Volaré



  

2024年8月9日金曜日

Rachael & Vilray / I Love A Love Song!

 

 古き良きJazzが聴ける。それも現代の録音で、さらには新曲で。Rachael Price(レイチェル・プライス)とギタリストの Vilray(ヴィルレイ)のグッド・オールド・タイミーなデュオによる、古き良き音楽へのリスペクトを感じさせるサウンドです。前作 Rachael & Vilray (2019) が大当たりだったので、この新作が出て直ぐに購入しましたので、これは中古ではありません。
 Rachael Price の経歴を調べて見ると、1985年オーストラリア生まれテネシー育ちのシンガー。もともとの出発点は Lake Street Dive というボーダーレスでノンジャンルなマルチ・ミュージシャンバンドのボーカル。基本アコースティックな楽器を中心のレイドバックしたロック・サウンドで人気のバンドで、ジャズではありません。
 ギタリストの Vilray は、Lake Street Dive のメンバーの Mike "McDuck" Olson, Mike Calabrese とともにバンドを結成していたギタリストで、ボーカルとギターだけのソロ・アーティストとして活動していて Rachael と知り合いではあったとのことですが共演はせず。そして2015年にブルックリンのBar Below Ryeで1930~1940年代のトラディショナルなジャズを聴いていたRachael とのセッションがきっかけで、このコンビが始まったらしい。
 このアルバムは Vilray によるオリジナル楽曲と、Benny Goodman の Ella Jane Fitzgerald、 Petula Clark、Sarah Vaughan なども取り上げたHarry Revel & Mark Gordon のスタンダード・ナンバー「Goodnight My Love」が収録されています。前作同様に、1930年代~1940年代のテイストでスタジオ・ライブ形式でレコーディングしています。古くて新しい暖かで洗練されたサウンドは素晴らしいの一言。


 それでは聴く誰をも魅了するであろうこのアルバムのレビューです。 Any Little Time 言葉の話すリズムを考えて作られたとのこと。Little の t とTime の t は発音が異なり、ソフトな Little の t から、強いアクセントの Time の t に移るときに音楽的な躍動が生まれると感じての作曲とのこと。確かに躍動感はがある曲でボーカルがあることで良さが発揮される曲に感じますし、そう思って聴くと Little Time 以外にもリズミカルな歌詞の音の流れがあるようにも感じる。遊び心溢れるハッピーな曲です。Vilray のソフトな味のボーカルです。 Even in the Evenin'  2曲目で Rachael のボーカルのバラードです。昔のミュージカル映画のスタンダードなんじゃないかと思わせる曲で Vilray の作曲、Rachael の表現力に改めて感心します。Is a Good Man Real?  さらに Rachael のボーカルは冴えてくる。力強い毅然とした歌いっぷりです。曲としては上流社会にいて男性の行動はそれがカッコ良いのかといかぶる内容のようで歌詞の世界でも昔の映画を見ているような内容のようです。もっと英語が直ぐに聞き取れればもっとこの曲は楽しく聴けることかと思われます。Just Two 曲自体は単純な作りに思えますがシンプルなメロディに、男性ボーカルのハモリに Rachael の軽いレスポンスで実に聴きやすく耳に残る曲です。Why Do I? ダンサブルな曲調にクラリネットがまた昔の映画風で歌いながら軽く踊っている姿が想像できます。I'm Not Ready これも1950年代でよく聞くタイプのアレンジを効果的に用いている曲です。Rachael の歌での問いに対して、男性陣が She’s not ready と呼応するのが楽しいです。楽団員も皆役者ぞろいのソロ展開も良い。Join Me in a Dream 静かでとても優しい曲です。Larry Goldings の楽器のceleste はこのイントロとエンディングのオルゴールのような音の楽器で実物は小型のアップライト・ピアノのような形態です。Hate is the Basis (of Love)  往年のベテランシンガーが、共演しているような余裕と華やかさがあります。Larry Goldings のピアノもサラリと跳ねるようなソロが良い。A Love Song, Played Slow 2020年のパンデミックの初期に作った曲だそうですが、ビクトリア王朝時代ぐらいの恋人たちの様子を歌ったものとのこと。Vilray のボーカルです。Just Me This Year 幸せな独り者、解放されたもの、自由を謳歌しながら新年に向けて弾みをつけている人たちを祝うホリデイ・ソングとのこと。今度は Rachael のボーカルです。交互に歌われていますが本当に良き古き時代にタイムスリップしたかのように錯覚させてくれる役者です。I've Drawn Your Face イントロはまたオルゴールのような celeste 始まる Rachael のボーカル。ゆっくり四つを刻むギターの音も暖かい。このプロジェクトの初期に作った曲とのこと。ずっと眠れずに寝返りを打ちながら、もう二度と会わないとわかっている恋人のことを思いながら天井を見ていることが歌われているとのこと。最後になります。Goodnight My Love は、Harry Revel & Mark Gordonによる作品で、このアルバムで唯一のスタンダードとのこと。Vilray にとって、この類の曲の最初の入り口となった高校生時代に聴きこんだ曲とのこと。Rachael & Vilray の掛け合いで歌われる曲は勿論素晴らしい、アメリカのラブソングです。
 何回聴いても軽く聴けるポップスのような内容ながらオールド・タイプ。でも新しいという不思議なバンドです。Rachael の表現力も驚くものがありますが、Vilray と言う人はとてつもないオッサンは愛すべきマニアな作曲家でありボーカリストでありギタリストであることにも驚きます。私のヘビロテの棚行きは決定です🎶

vocals : Rachael Price
guitar : Vilray
bass : David Piltch
drums : Joe La Barbera
piano, organ, celeste : Larry Goldings
horn arrangement, alto sax, clarinet : Jacob Zimmerman (1, 4, 6, 7, 10)
tenor sax, clarinet : Nate Ketner (1, 7, 10)
trumpet Jim Ziegler (1 to 9, 11, 12)
trombone : Dan Barrett (1 to 9, 11, 12)
trombone : Joey Sellers (10)

written by : Harry Revel (12), Mack Gordon (12), Vilray (1 to 11)

recorded by, producer : Dan Knobler

recorded April 14-27, 2022 at United Recording in Los Angeles, CA
All songs were written by Vilray except for the 1930’s classic “Goodnight My Love,” which was written by Mack Gordon and Harry Revel.

1. Any Little Time (Vilray)
2. Even in the Evenin'  (Vilray)
3. Is a Good Man Real?  (Vilray)
4. Just Two (Vilray)
5. Why Do I?  (Vilray)
6. I'm Not Ready (Vilray)
7. Join Me in a Dream (Vilray)
8. Hate is the Basis (of Love)  (Vilray)
9. A Love Song, Played Slow (Vilray)
10. Just Me This Year (Vilray)
11. I've Drawn Your Face (Vilray)
12. Goodnight My Love (Harry Revel & Mark Gordon)





  

2024年8月4日日曜日

Lou Donaldson / Gravy Train


 Lou Donaldson は Blue Note時代、1952-1963年で17枚、1967-1974念で11枚と数多くのリーダー作を録音しています。現在の私所有音源では、バップ作品は Quartet Quintet Sextet plus five (1954)、Blues Walk(1958) 、Thelonious Monk 作品では Genius Of Modern Music Vol2、Art Blakey 作品では A Night At Birdland Vol1A Night At Birdland Vol2 など、ファンク路線は Hot Dog(1969) です。
 この作品は、1961年の Blue Note 録音、コンガ入りのワン・ホーン・クインテットのバップ作品です。メンバーは1957-1958年に Lou のコンボのレギュラー・ピアニストを務めた Herman Foster、 Art Pepper, Billy Taylor, Quincy Jones, Grant Green, Dexter Gordon, Hank Crawford, Junior Mance, Herbie Mann などサイドマンとして活躍する Ben Tuckerです。ドラムの Dave Bailey は、Blues Walk(1958) でもドラマーを努めていますが、私の所有音源では Grant Green / Green Street(1961)、Curtis Fuller / South American Cookin'(1961)などに参加のドラマー。コンガの Alec Dorsey は私の所有音源に参加はありませんでした。
 このアルバムは淡々とリーダーが気分良くアルトを吹くために、メンバーも特に難しいことはせずに気持ちよく演奏しているアルバムで、特に特徴があるわけではないのが特徴のようです。Gravy Train とは「あぶく銭をもらえる仕事のこと」


 それでは、レビューしていきましょう。Gravy Train は、Lou のオリジナルで、よくあるブルースです。あぶく銭という割には、明るく生真面目な感じで冒険はありません。ピアノソロの和音のみの部分はセンスが良いとは言えないと思います。そんなに固執する必要性はないと思います。ベースソロも無難なところで、盛り上がらずのフェイドアウト。うーん。こんなんだったか? South Of the Border 1曲目で不安になりましたが、この曲で不安は解消です。明るいピアノのリズムと明るいアルトで国境の南はメキシコを意味するのでしょうか、ラテンのリズムとコンガがトロピカルです。Polka Dots and Moonbeamsは、ムーディナナンバーで1曲目のピアノが嘘のように Herman Foster の繊細なタッチのピアノが印象的です。エンディングのアルトのロングトーンが劇場風ですね。Avalon でやっとコンガが存在を示し始めます。無難に卒なくは相変わらずで、ピアノの Herman Foster は、またソロでコード弾きをやっています。乗ってくるとこれなんでしょうね。1曲目よりは全然良いです。Candy は、あの Lee Morgan で有名なヤツです。テンポは若干晩めで、これも朗々とした印象ですが、ピアノの Herman Foster は今回も似たような弾き方ですがファンキーで良いです。 Lou の後半のソロは乗ってきているのが伝わります。Twist time はモロにブルースで、ブルースの演奏だとタイトル曲と同様のアレンジとソロに戻ってしまいます。息抜きタイムのような感じが良い人もいるんでしょうか。Glory Of Love は、どこで聴いたのか耳覚えありますが、同名の曲は持っていませんでしたので何回か聴き直していると、もしかしたら、モンキーズの Daydream Believer にイメージ重ねているのかも
 アルバム全体は可も無く不可もなくですが、敢えて言えばタイトル曲の Gravy Train が今いちかもしれません🎶

alto sax : Lou Donaldson
piano : Herman Foster
bass : Ben Tucker
drums : Dave Bailey
congas : Alec Dorsey

producer : Alfred Lion
recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey, April 27, 1961.

1. Gravy Train (Donaldson)
2. South Of the Border (Kennedy, Carr)
3. Polka Dots And Moonbeams (Burke-Van Heusen)
4. Avalon (Jolson, Rose)
5. Candy (Kramer, Whitney, David)
6. Twist Time (Donaldson)
7. Glory Of Love (Hill)
8. Gravy Train (Alt Take)
9. Glory Of Love (Alt Take)


▶ Candy



  

2024年8月3日土曜日

Chris Connor / Chris Connor At the Village Gate

 

 1963年のライブ録音で、邦題は「ヴィレッジ・ゲイトのクリス・コナー」私のCDでは Chris Connor At the Village Gate ですが、オリジナルは At the Village Gate : Early Show / Late Show と名前が付けられているようで、ニューヨークの老舗ジャズ・クラブのVillage Gate の2ステージを、収めたライヴ盤となっています。バンドはギターに Mundell Lowe(マンデル・ロー)が参加したカルテット編成で、前半はスイング、後半はブルージーな曲となっています。クリスの歌はフェイクや振り幅の大きいスイングはシャウトはせず抑制美のあるクールなスタイルで、ハスキーな歌声にローボイスで魅せる色気が特徴です。この会場では臨場感が伝わる観客の拍手などもバランスよく録音されていて聴いていて気持ちの良い録音です。
 Chris Connor(クリス・コナー)は1927年のカンサス生まれ。元々はクラリネットを習っていたのですが、1945年にジェファーソンシティにある大学の卒業式で歌った時、自らの歌に対する聴衆の反応が良かったことをきっかけに、本格的に歌手の道を目指し、1948年にニューヨークへ渡り、速記者をしながら楽団のコーラス、歌手で生計をたて、1953年にベツレヘム・レコードと契約し、1954年の Sings Lullabys of Birdland がヒット。2009年8月29日、癌によりニュージャージー州にて死去しています。私はこのアルバムの他 Sings Lullabys of Birdland しか持っていないので、これを聴いてもう少し音源を入手していきたいと思いました。
 

 それでは素晴らしい印象の Chris Connor At the Village Gate を再度聴きながらレビューです。演奏曲は全曲スタンダード。ライブではありますが全曲2分から5分程度にまとめられています。Lot Of Livin' To Do スピーディなスイングで1961年ミュージカル「Bye Bye Birdie」の挿入曲で、ライブがこの曲順だったとすれば最初に観客の気分を上げてくる短めのこの短めのナンバーで、つかみはバッチリです。Any Place I Hang My Hat Is Home ミュージカルからの楽曲で、1946年の「St. Louis Woman」 のオープニングです。Judy Garland Barbra Streisand Rosemary Clooney など多くの女性アーチストにカバーされている名曲です。私自身も全部は覚えていなかったけど、出だしの部分は耳に覚えがあります。小さい頃に聴いて覚えている曲は嬉しくなります。 All Or Nothing At All この曲は映画やミュージカルの挿入曲ではなく、1939年の当時ハリー・ジェイムス楽団の専属シンガーとしてデビューしたばかりだったフランク・シナトラが歌ったがヒットしなかった楽曲で、1943年にMCAに移籍後にヒットした楽曲となります。クリスの録音はこれが初めてでこれ以降に得意レパートリーになった楽曲とのこと。ラテンなパート、スイングが交互に歌われる3分の間に表情の変化が楽しめる。Something's Coming 1961年 Leonard Bernstein による West Side Story の楽曲で、これも目まぐるしい場面転換がある曲で緩急が極端で面白い。West Side Story は見たことがありますが、この曲は覚えていませんでしたのであしからず。You Came A Long Way From St. Louis オールド・ロックンロールですね。へえ。 Old Devil Moon この曲で Early Show は終わりです。これもミュージカル曲で1947年「 Finian's Rainbow」のポピュラーソング。この印象的なメロディーは聴いたことがあります。ラテンのリズム部分で言葉でリズムを詰め込むところが良いです。さて後半戦の Late Show です。I Concentrate On You ブルージーで夜の部だからかワザと色っぽく歌っているのでしょうか。そして、さらに色っぽく Black Coffee ペギーリーで有名な曲ですが、曲の途中で観客に何か色っぽいアピールでもしているのでしょうか。客の笑い声があり間奏、そして1分過ぎにkeep going と言って笑っています。何が起きているのか気になります。 Goodbye 1935年に書かれた Benny Goodman orchestra のクロージング・ソングであるとのことを見ましたが、しっとりしすぎていますね。曲名から曲順として早すぎるような気がしましたが、途中のバラードとしては良い選曲です。低音からじっくり攻めてきてサビで少しだけ声量を増して、ひたすらしっとり。客はうっとりでしょう。Only The Lonely 静かなブルース・イントロから、クリスの歌いだしがインパクト充分。低音でブルージーでハスキーで、途中マイクに近づきすぎての吐息が聞こえるのが、また色っぽい。最後は Ten Cents A Dance 語り調の歌で物語を歌い語り大団円となります。
 私クセのあるボーカルが好きなタイプですが、ストレートで、クール。時に色っぽい歌声。この魅力的なボーカルも良いではないかと再認識です🎶

vocals : Chris Connor
piano : Ronnie Ball
guitar : Mundell Lowe
bass : Richard Davis
drums : Ed Shaugnessy

producer : Michael Cuscuna
recorded live in 1963 at the Village Gate, New York City.

【Early Show】
1. Lot Of Livin' To Do (C. Strouse, L. Adams)
2. Any Place I Hang My Hat Is Home (H. Arlen, J. Mercer)
3. All Or Nothing At All (A. Altman, J. Lawrence)
4. Something's Coming (L. Bernstein, S. Sondheim)
5. You Came A Long Way From St. Louis (B. Russell, J. B. Brooks)
6. Old Devil Moon (B. Lane, E.Y. Harburg)
【Late Show】
7. I Concentrate On You (C. Porter)
8. Black Coffee (P. F. Webster, S. Burke)
9. Goodbye (G. Jenkins)
10. Only The Lonely (J. Van Heusen, S. Kahn)
11. Ten Cents A Dance (L. Hart, R. Rodgers)