2024年1月5日金曜日

Keith Jarrett, Gary Peacock & Jack DeJohnette / Standards, Vol.2

 

 私は常に20枚ぐらいの未聴盤が家にあり、いつも行っている音楽好きの集う「おでんバー」で封を開けます。家にあるチープなシステムで小さな音で聴くのと全く印象が異なる、まずはバーのオーディオで爆音で聴くこととしています。と同時にマスターや知り合いの反応を見るのも楽しみであります。
 と言うことで、最初は、あの唸り声が耳障りで仕方なかった Keith Jarrett はマスター他常連も好んで聴いてるので、最近耳馴れしてきて、今では私も頻繁に聞くピアニストとなっています。 standards Vol. 1 は、ジャズシーンを揺るがしたと言われる Keith Jarrett, Gary Peacock & Jack DeJohnette のトリオのデビュー作で、印象的な作品でした。これは Vol.2 も聴いとかなければいかんなと購入。マスターや常連は「当然昔聞いたことありますぜ」と何も言わずに聞き、昔聴いたことは覚えているものの中身がどんなだったことか忘れていたことを白状されていました。そうですよね。何十回も聴かないと音楽も忘れてしまうものは多いのです。私も数か月前に聴いたこのアルバムを再度思い出しながら聴いてみましょう。


 1983年1月の Power Station の録音の1st 続きのアルバムのレビューです。So Tender スタンダーズのアルバム名ですが、これはキースのオリジナル。ですが、I've got a crush on you の冒頭フレーズが、そのままテーマになっているとのことで(聴いたことあります)大きな意味ではスタンダード。美しいピアノの旋律にキースの雄叫びが絶好調です。中盤からのアドリブは大きなうねりを魅せ、ベースソロへのバトン・タッチも心地よい。Moon And Sand は、 クラシックの作曲家 Alec Wilder, Morty Palitz 作。クラシックやミュージカルの作曲に一生を捧げたらしい。こういった、単純なテーマではない、しっかりジャズ・バラードはキースの得意とするところでしょう。テーマから発生するアドリブも雄叫びと共に聴くと狂気的にも感じ、感情の高まりがそのまま音に出来るキースの才能には改めて感心します。In Love In Vain は、Jerome Kern, Leo Robin 作は、また可愛らしい曲です。1946年の映画の主題歌とのことで恋愛を表現した可愛らしい曲なのに、アドリブの架橋で低い声のウーの連発には苦笑。アーの方が良い。ここに心を奪われなければホントに少女の恋心を表現したような可愛い曲が素晴らしい。Never Let Me Go は、Raymond Evans, Jay Livingston の楽曲です。これも、うっとり系の曲で、バラード続きは私には本来しんどいのですがライトに旋律を聴かせてくれるキースのピアノとトリオの息の合った演奏に改めてハッとしました。If I Should Lose You は、Ralph Rainger, Leo Robin の楽曲。やっとリズムに動きのある曲が出てきました。最初からキースはスキャットのようにピアノを弾きながら叫びまくります。やはり、キースのピアノは、複雑な動きをするピアニストのそれではなく、わかりやすいアドリブのフレーズの連続なのが、また安心して聴ける要素のようです。バラードではメロディー楽器のような DeJohnette のドラムも、ここではアグレッシブに Peacock とキースを煽ってくるのも美味しいですね。I Fall In Love Too Easily これで最後の曲。Sammy Cahn, Jule Styne による楽曲。やっぱり締めはバラードです。静けさの中にある美しさをキースが優しく表現し、単調になりがちな曲に DeJohnette が絶妙なブラシのタイミングで表情をつけていき、曲の進行を裏で Peacock で進める。全てがわかりあえたようなトリオ演奏が、平坦になりがちな曲に表情をつけているのが、感動的です。私はこれが一番好きかもしれない。
 バラード集は私は退屈してしまうのですがこのトリオでは退屈しません。聴かせる小技が無限にあるのでしょう。素晴らしい🎵

piano : Keith Jarrett
bass : Gary Peacock
drums : Jack DeJohnette

producer : Manfred Eicher

recorded January 1983 at Power Station, New York City

1. So Tender
2. Moon And Sand
3. In Love In Vain
4. Never Let Me Go
5. If I Should Lose You
6. I Fall In Love Too Easily





  

2024年1月4日木曜日

Herbie Hancock / Future Shock

 

 1983年のスクラッチ、シンセを駆使したディスコ・サウンドに殴りこんだ作品です。当時やたら流行っていて、TV、ラジオ、喫茶店の有線と至る所で Rockit が流れていました。私はジャズには全く興味が無かった頃だったので、Herbie Hancock とは、この世界の人なのだとインプットされてしまったのは、まさにこの作品です。この作品のせいで、Herbie Hancock は聴かなくても良いだろうと敢えて避けてジャズを聴いてきたのですが、色々な作品を聴いていると、やはりジャズ・ピアニスト Herbie Hancock は避けては通れません。リーダー作は聴かないものの、あらゆるところに登場してきますので、やはり聞いておこうかと思ったらジャズ作品の方が多いのに驚いたのは割と最近の話です。
 行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」でも Herbie Hancock は、おそらく余り好まれてはいないものと思われますが、最近は頻繁に持ち込んで私の家よりも遥かに良いオーディオ環境で聴かせてもらっています。好きなタイプの音ではありませんが、収集家としては、こんなものも再度聴いておこうかと購入しました。初回試聴は、やはり「おでんバー」で行ったのですが、良いオーディオ環境で聴くと私の家のチープな環境よりもスカスカな音のイメージでした。原因はドラムの音だと思います。グルーブ無しの機械的なループはテクノとかでは良い方向に働くのでしょうが、こういったエレクトリック・ファンク系ではマイナス作用である気がします。


 それでは、レビューをしていきましょう。流して聴くより発見が多いものです。何かあるでしょうか? Rockit 昔から聴いていたあれです。改めて聴いてもあまり新鮮味はありませんが、曲としてはしっかりしているとは思いますが、スクラッチなどは現代の方が芸の細かいあ人がたくさんいるかと思い古い時代を感じます。Future Shock これは、Curtis Mayfield のカバーですね。リズムマシンに合わせてドラムを叩いているものと思われますが人間味を感じます。原曲のカーティスのファルセットが印象に残っているので Dwight Jackson Jr. の女性ボーカルは違和感を感じません。でも音はペラペラしていますよね。生のバンドには負けるかなあ。ギターの Pete Cosey は頑張っていますが、これも少し中途半端なイメージです。TFS 同じようなパターンのシンセです。楽器の機能としても当時は限りがあるのでしょう。曲としては意外とこのアルバムの中ではセンスは良い部類に入るような気はします。 Earth Beat は、スローながらも凝った作りの楽曲になっています。若干ジャズ魂が見えるような気もしますが、単純にフレーズの一つ一つを寄せ集めた感じもあり未だ中途半端な感じもします。Autodrive うーんなんと表現したらよいのか。惰性っぽい楽曲かな。でもシンセよりエレピで弾いている時の方が表情豊かで良いと思いますので改めてシンセに、こだわらずに作ったらもっと良い曲になっていた感じ。Rough は、コーラスとか申し訳ない程度に出てくるベースのスラップ・フレーズなどサンボーンの Love & Happines を聴いて作ったんだろうと思われる作品です。Rockit (Mega Max) はよくある編集者です。元のバージョンより聴きやすくなっています。やはり、この手の音楽は技術の集合体でもあるんだなあと思います。
 懐かしかったものの、感動には乏しい作品かな。記録ですね。🎵

piano, synthesizer, Fairlight CMI, keyboards : Herbie Hancock 
keyboards : Michael Beinhorn 
electric guitar : Pete Cosey
bass : Bill Laswell
turntables, "FX" : D.ST. 
drums, percussion : Sly Dunbar
percussion : Daniel Poncé
lead vocals on "Future Shock" : Dwight Jackson Jr.
lead vocals on "Rough" : Lamar Wright
backing vocals : Bernard Fowler, D.S.T., Roger Trilling, Nicky Skopelitis

producer : Herbie Hancock

basic tracks recorded at OAO Studios, Brooklyn, N.Y.
New York overdubs recorded at RPM Studios, N.Y.C.
Keyboard overdubs and additional recording at Garage Sale Recording, Los Angeles, CA.
mixed at Eldorado Recording Studio, Los Angeles, CA.

1. Rockit
2. Future Shock
3. TFS
4. Earth Beat
5. Autodrive
6. Rough
7. Rockit (Mega Max)

▶ Rockit


▶ Rough


  

2024年1月3日水曜日

Oz Noy / Twisted Blues Vol2


 イスラエル出身のギタリスト「Oz Noy」アウトなフレーズでジャジー、ポップなフレーズの連発は変態的でとても魅力的です。Vol1のインパクトの強さに感動して目につくアルバムは全て購入してしまいました。
 オープニングの「You Dig」はGreg Leisz(グレッグ・リーズ)がスライド・ギターで特別ゲスト参加。そのリフにファンクがのって変態度は少な目。「Rumba Tumba」は変態℃が少し高めのルンバでチックコリアがピアノ。「Come Let Me Make Your Love Come Down」は、スティーヴィー・ワンダーのリフにインスパイアされて作った曲だそうですがSRVに近いものを感じます。「EJ's Blues」はエリック・ジョンソンのための曲で本人参加。「Get Down」は音色的にもストレンジ加減もいかにもオズ・ノイ。「Slow Grease」はスロー・ブルース。「Blue Ball Blues」はウォーレン・ヘインズが特別ゲスト「Freedom Jazz Dance」は気落ちよくジャム🎵


 このアルバムに関しては、オズ・ノイ本人談の和訳が出ていましたので掲載
1曲目「You Dig」はオープニング・トラック。この曲ではグレッグ・リーズが特別ゲストとして参加していて、グレッグのスライド・ギターと僕のギターが入っている。グレッグとは一緒にプレイしたかったんだよ。頭の中でこんなギター・リフがしばらく流れていてね。たぶん誰かが弾いたリフを盗んじゃったんだと思うけど…。このリフの上にファンキーなグルーヴを乗せてみた。ベースにはウィル・リー、ドラムにキース・カーロック、キーボードにジョン・メデスキー。これ以上の組み合わせはないね。
2曲目「Rumba Tumba」は俺なりのルンバ・チューン。デイヴ・ウェックルがドラムを、ウィル・リーがベースを、ジェリーZがオルガンをプレイしている。彼らとプレイした後、何かが足りないと思ったんだ。そこで思い付いたのがピアノ。ラッキーなことにチック・コリアが弾いてくれることになって、特別ゲストとして参加してくれた。チックがフェンダー・ローズで弾いたプレイは、曲に凄いヴァイブをもたらしてくれたよ。彼に参加してもらって本当に良かった。
8曲目「Just Groove Me」ではデイヴ・ウェックルのドラムがフィーチャーされている。彼のプレイはいつも通り驚異的だ。これはロック・チューンだね。
6曲目「Get Down」はたぶん今回のレコードで作曲時期が一番古い曲だ。これはこれまで作った中でベストな曲だと思っていて、録音するなら良いものにしたかった。その点で今回のメンバーは完璧だったね。ウィル・リーがベース、キース・カーロックがドラム、ジョン・メデスキーがオルガンをプレイしている。
2曲目「Come Let Me Make Your Love Come Down」には誕生秘話がある。この曲のメイン・リフはスティーヴィー・ワンダーのリフで、そのリフにインスパイアされて作った曲なのさ。ある意味で、スティーヴィー・ワンダーと俺のコラボレーションと呼べる曲だね。彼が嫌じゃなければ…っていうか、彼が気に入ってくれると嬉しいな。この曲にはグレゴア・マレが特別ゲストとして参加し、ハーモニカを披露してくれている。彼は現在のジャズ・ハーモニカ界で最高のプレイヤーだと俺は思っていて、彼にプレイして欲しかった。快く参加してくれた彼は本当に優しい人だよ。
9曲目「Slow Grease」は、クリス・レイトンのグルーヴにインスパイアされて作ったスローなブルース曲。サウンドチェックのときにクリスがプレイしてくれたグルーヴがスローなテキサス・シャッフルっぽいものだった。「これで曲を作らなきゃ」と思ったのさ。デモよりもジャズのスウィングっぽい曲に仕上がったけど、聞いてみたらこの曲に非常に合っていることに気付いたよ。プレイしているのは、クリス・レイトン、ロスコー・ベック、リース・ワイマン。その後で特別ゲストとしてアラン・トゥーサンが参加してくれた。彼のピアノがかもし出すヴァイブは彼にしか出せないものだよ。アランは最高だね。
5曲目「EJ's Blues」は友達のエリック・ジョンソンのために作った曲なんだ。もちろん彼からかなりインスパイアされている。エリックが特別ゲストとしてこの曲に参加しているし、ドラムはアントン・フィグ、ベースがロスコー・ベック、ジョン・メデスキーとリース・ワイマンがオルガンを担当しているよ。エリックはセカンド・ギターとしてプレイしてくれている。
4曲目「Come Dance With Me」は面白い曲だよ。仲良しのジュリオ・カルマッシから連絡があって、彼の曲を弾いて欲しいと言われたのさ。そこで一緒にプレイしたんだけど、その曲の中に本当に美しいパートがあって、ジュリオに「このパートを使ってもいいかい?」と確認をとった。そのパートはこんな感じだったと思う。このパートがとても叙情的に思えて使いたかったのさ。既に作り始めていたコードがあって、それを加えて、この曲を書き上げたんだよ。だから、この曲の作曲者は僕とジュリオってことになるね。
7曲目「Blue Ball Blues」はクリス・レイトンのグルーヴにインスパイアされて出来上がった曲。「このグルーヴで曲を書かなきゃ」って思ってね。友達のウォーレン・ヘインズが特別ゲストでセカンド・ギターを弾いている。ロックしているだろ?
10曲目「Freedom Jazz Dance」はウィル・リー、キース・カーロック、ジョン・メデスキーとのジャムから生まれた曲だよ。ほんと、完全にジャム・チューン。アルバート・キングやフレディー・キングなどの時代のファンクをジャズと融合させてみたかった。そこそこ上手く出来ていると思うけどね。
 なるほど🎵

1. You Dig
guitar, steel guitar : Oz Noy
lap steel guitar : Greg Leisz
organ, electric piano : John Medeski
bass, tambourine, harmonica, vocals : Will Lee
drums : Keith Carlock

2. Rhumba Tumba
guitar : Oz Noy
organ : Jerry Z.
electric piano  : Chick Corea
bass : Will Lee
drums : Dave Weckl

3. Come Let Me Make Your Love Come Down
guitar : Oz Noy
harmonica : Gregoire Maret
organ : Reese Wynans
bass : Roscoe Beck
drums : Chris Layton

4. Come Dance With Me
guitar : Oz Noy
organ, electric piano : John Medeski
bass : Will Lee
drums : Keith Carlock
trumpet : Lew Soloff

5. EJ’s Blues
guitar : Oz Noy
organ : John Medeski, Reese Wynans
rhythm guitar : Eric Johnson
trumpet : Lew Soloff
flute : Giulio Carmassi
bass : Roscoe Beck
drums : Anton Fig

6. Get Down
guitar : Oz Noy
organ : John Medeski
bass : Will Lee
drums : Keith Carlock

7. Blue Ball Blues
bass : Roscoe Beck
drums : Chris Layton
guitar : Warren Haynes
guitar : Oz Noy
organ : Reese Wynans

8. Just Groove Me
guitar : Oz Noy
organ : Reese Wynans
bass : Will Lee
drums : Dave Weckl

9. Slow Grease
guitar : Oz Noy
organ : Reese Wynans
piano : Allen Toussaint
bass : Roscoe Beck
drums : Chris Layton

10. Freedom Jazz Dance
guitar : Oz Noy
organ : John Medeski
bass : Will Lee
drums : Keith Carlock

Oz Noy Twisted Blues Volume 2 - Album Promo Video

Get Down

Freedom Jazz Dance 
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2024年1月2日火曜日

類家心平 / 4AM


 類家心平の2013年のライヴでT5Jazz Recordsというレーベルから荻久保のライブハウス「Velvet Sun」での録音。力いっぱいで荒々しい演奏は70年代のマイルスのDNAを感じるジャズ・ロック・ファンクで気持ち良い。類家心平は菊地成孔ダブセクステットのメンバーで、時々仕入れる Japan Jazz 音源の中でも、出現頻度が上がってきていて私の中で存在感が増してきているトランぺッターです。渋谷ストリートでは300人以上の集客し、ジャズとポップ、ロック、R&Bなどジャンルを超え、いち早くクロスオーバーの旗手として注目を浴びています。2004年にメジャーデビューを果たし人気を博したジャズ系バンドurb(アーブ)のトランペッターでもあります。
バンド編成としては、これまでの類家のソロとしてはスタンダードとなっていた4人編成にエレキ・ギターを加えた5人編成バンド。若々しくも荒々しいそのサウンドは70年代マイルス・ デイビスのバンドを想起させるロック色の強いサウンド。今回のレコーディングではその荒々しいエネルギ ーを全て記録するため、敢えて荻窪にある小さなライヴ・ハウスにおけるライヴ・レコーディングを敢行。バラード曲では類家心平の比類なき美しい音色が響きつつも、作品全体としてはこれまで になくエネルギッシュで熱い作品となっています。


 さてレビューです。KARAGI は、のっけから混沌としたディストーション・サウンドと思いましたが、ギターの音はクランチで最初はバッキングしてワウ掛け、これにトランペットが乗れば確かにマイルスが想起される。ですが切り口は確かにマイルスだが本質はどうだろうか?フリーとも言える演奏ですが一定の決め事はあるようで、もっとサウンド・システムとしては統一されているのかも知れません。HAOMA は、もっとモード寄りのジャズになっています。田中 "tak" 拓也 氏のギターの切れっぷりと音色はかなり好きです。効果音のようなギターの使い方は昔プログレで、こんな人もいましたね。大部分は即興なので一合一会のサウンドなのでしょう。ピアノも色んなメロディーが入ります。私にはわかりませんがクラシックやジャズの美味しいところがオマージュされていそうなフレーズもフンダンに登場します。知っていると楽しさ倍増でしょう。いやイヤ熱いライブです。SPLICING 曲名は見慣れない単語が並んでいますので、おそらく造語と想像しますが文字から受ける感じはスパニッシュでも入っているのか?と思えますがバラードっぽい曲になっていました。こう言った展開の場合ライブ会場で見ながら聴くとかなり心が奪われそうです。GURU 今度はどんな曲だったか思いだせませんが、文字から見るに宗教的な感じかな?と思ったらベースソロは、どこかの山奥での修行のような低音の羅列で3分間。そこからマイルス・パターンに入ります。うーんカッコ良い。変態な音の羅列に聞こえますが、ピアノやギターともシンクロしてるところから見ると楽譜ありでしょうか。偶然の産物で無いところも凄いなと。 4 AM がラストになります。ここはギター単独ソロから入ります。個人技がまた皆さん素晴らしい。それに合わせた類家氏の様々な音色のトランペット。脱力した低音フルートみたいな音色がまた良いです。いつの間にかベースとピアノ、ドラムも入ってきていて何やら感動的な展開です。この曲は確かに朝のイメージ、山の中の朝モヤがゆっくりと移動しているイメージです。
 何度か聞いていて、ひたすらエレクトリック・ファンク・マイルスのイメージでしたがじっくり聴けば実に多彩な音楽でやっぱり、これも良いですね🎵

trumpet : 類家 心平
piano : 中嶋 錠ニ
guitar : 田中 "tak" 拓也
bass : 鉄井 孝司
drums : 吉岡 大輔

1. KARAGI
2. HAOMA
3. SPLICING
4. GURU
5. 4 AM





  

2024年1月1日月曜日

Bobby Hutcherson / Happenings

 

  まずは、この中身がジャズであるとは想像できない斬新なジャケットに惹かれます。ジャケットを手掛けたのは Reid Miles なるグラフィック・デザイナーで、1956~1967年のBlue Note で400枚余りのアルバムを手掛けていたとのこと。これほどの仕事をしているのに、好きな音楽はクラシックであったとのことで仕事と趣味は別物であったようです。少し調べてみただけで、Reid Miles のお仕事は Cookin' Bags GrooveSomethin' ElseThe SidewinderBlue TrainSoul StationMidnight BlueSearch For The New LandGreen Street・・・・色付け写真、文字のみジャケなど、様々なパターンがありますが一定の法則はありそうな感じです。


 得てしてジャケットに反してイモな音であることも良くあるかと思いますが内容がまた良かった。ボヤボヤしていない輪郭がはっきりした vibraphone のサウンド。これにセンスの良いピアノ・サウンドは Herbie Hancock でした。なので、Maiden Voyage も収録されています。vibraphone と言えば、スイングの Lionel Hampton、モダン化の Milt Jackson ですが、そういった先陣のサウンドを進化させたのが Bobby Hutcherson と言えるのではないかと、このアルバムを聴いていて思います。演奏は脂がのっていますが、サウンドはクールです。
 さてレビューです。 Aquarian Moon は、イントロが始まったと思ったら直ぐに疾走感がありながらも透明感のあるプレイに魅了されます。ハンコックのピアノも絶好調でメロディー楽器で有りながら打楽器でもある両楽器の相性の良さを感じながらもスリリングなプレイは爽快。Bouquet は、どこか抽象的で前衛的な神秘的な楽曲で心に安定感をもたらしてくれます。Rojo はボサノバですが、音使いが不思議な曲です。正しい音使いがあるとすれば、そこから0.5ぐらいズレた音の選択をし続けることによって不思議な感覚が生まれます。Maiden Voyage は言わずもがなのハンコックの持ち込み曲です。1965年にハンコックは発表で、この録音はその翌年です。ハッチャーソンよりも、やはりハンコックの世界観で進行していると感じるので、オリジナルの方が印象としては好いかもしれません。Head Start ここで高速バップで主役はハッチャーソンに戻ります。どこかで聞いたことのあるテーマですが、そこは気にしない。When You Are Near は、ゆったりめのバラードで、vibraphone の、ゆらぎを聴かせるプレイです。The Omen は、怪しいフリーな曲です。Omen は日本語では「前兆」ですが何の前兆なのかを知りたいところ。嵐ではなく何か不思議なことの起こる前兆のようなホラーな雰囲気でした。アルバムの締めをこの曲にするところに芸術性を感じます。
 とりわけ好きな音って訳では無いですが、何か心に引っかかるものを遺してくれる作品でした🎵
 
vibraphone, marimba : Bobby Hutcherson
piano : Herbie Hancock
bass : Bob Cranshaw
drums : Joe Chambers

producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder
photography, design : Reid Miles
recorded on February 8, 1966.

1. Aquarian Moon
2. Bouquet
3. Rojo
4. Maiden Voyage
5. Head Start
6. When You Are Near
7. The Omen


▶ Rojo



  

2023年12月31日日曜日

The Neville Brothers / Valence Street


 Neville Brothers (ネヴィル・ブラザーズ)を聴き始めたのは、私がソウル・ファンクに凝って聴いていた北海道時代の頃。名前は知っていたものの田舎っぽい音を想像していましたが、どちらかと言えば都会的な音でした。しかし暫く聴かないと音を忘れてしまいます。
 バンド略歴もおさらいしておきましょう。ネヴィル家の4兄弟が1977年に結成したR&Bバンドで、前身としてメンバーのアートは1960年代半ばにはジョージ・ポーターJr.らと The Meters(ミーターズ)を結成し、ミーターズの後期にはシリルもメンバーに加わっています。つまりネヴィル・ブラザーズの前身がミーターズで、後にネヴィル・ブラザーズともニューオーリンズを代表するR&Bバンドとなっています。


 この Valence Street (ヴァレンス・ストリート) は、1999年発売の9枚目のアルバムです。それまで在籍していたA&Mから5枚のアルバムを発表し、CBSに移籍後の第1弾としてこのアルバムは発表されました。アルバム・タイトル曲のヴァレンス・ストリートは彼等が育ったニューオーリンズの通りの名前でファンキーなブルース・インスト曲です。ジャケ写にはこのルイジアナ州の川沿いや街並みが使われ、ライナーノーツには、おそらく兄弟の実家であろう写真が使われています。



 本作はバラエティ豊かな楽曲が収録されており、お馴染みファンク・ナンバー、美しくメロウなソウル・バラード、ジャズ・フレイバーの強いナンバーと楽めるアルバムになっています。また ステージでは既に演奏されてレパートリーの1つだったThe Dealer がはじめてスタジオ録音され、ワイクレフがプロデュースした Mona Lisa が再録音されています。そのほか推しはしっとり系が美しく芯のある音の Until We Meet Again。完全ファンク系ではReal Funkは、あれ P-FUNK?なんてのもあります。
 メンバーではサンフランシスコ在住の日本人JAZZピアニストで作曲家の、沙耶斎藤こと斉藤沙耶(Saya Saito)さんが初の女性メンバーとし参加しているのも注目の点です。
 改めて再び彼等の育った故郷に立ち返りルーツであるニューオーリンズ・ファンクと真摯に向き合ったメンバーの思い入れのあるアルバムでありました🎵

vocals, tambourine : Aaron Neville, Cyril Neville 
vocals, keyboads : Art Neville 
vocals, sax : Charles Neville
background vocals : Earl Smith
keyboards : Eric Kolb, Saya Saito
guitars : Shane Theriot
bass, background vocals : Nick Daniels
drums : Willie Green

producer : The Neville Brothers 

1. Over Africa
2. Utterly Beloved
3. Little Piece Of Heaven
4. Valence Street
5. If I Had A Hammer
6. Until We Meet Again
7. The Dealer
8. Mona Lisa
9. Dimming Of The Day
10. Real Funk
11. Give Me A Reason
12. Tears





  

2023年12月30日土曜日

Eric Clapton / Backless


 地味ではありますが実はこのアルバムは愛聴盤の人も多いのではないでしょうか。前作の「スローハンド」の成功でプロデュースは、再びグリン・ジョンズで当然「スローハンド」路線を踏襲した内容です。1978年発表の、このアルバムでのヒット曲は Tulsa Time、Promises。肩ひじ張らないライトでポップスよりの音作りです。以前のレビューでは「ひたすら地味なアルバム」と書いていましたが、少し失礼かと思いますので今回の再レビューでは撤回いたします。しかしながら、これでも一発儲けようとする気はまるでないようなアルバムであることは事実で、この盤でのクラプトンは我が道を突き進んでいます。


 今作ではヒットは狙わずによりクラプトンが好きな曲が中心にセレクトされているようです。クラプトンは他のアルバムもカバーは多いのですが、本アルバムでは Bob Dylan から2曲で、Walk Out In The Rain、If I Don't Be There By Morning 元曲よりはビートを効かせて聴きやすくしていますが売れ線ではありません。またクラプトンが敬愛している J. J. Cale の楽曲もあります。 I'll Make Love To You Anytime は、独特のカントリーと融合したスタイルのブルース・ロックになっています。オリジナルの Roll It は、ABなしサビ無しの一発もののブルース・セッションをそのまま3分半で、ゆたっりしたスライドギターで遊んでいます(ここらへんは初心者の若者バンドがリフが単純だからとマネをしてライブで披露するとケガするパターン)Early in the Morning はクラシック・ブルースで、枯れたクラプトンの歌声とギターのオブリガードが自然です。こういった何でもない普通の曲をサラリとやって聴かせてくれるのが魅力の一つですね。Tell Me That You Love Me はビートを効かせたクラプトンの売れ線サウンドが嬉しい。そしてカントリーのスタンダード Promises なんて楽曲が出てくるのもクラプトンっぽい、原題は You らしい。クラプトンのオリジナルは Watch Out For Lucy、Roll It、Golden Ring の3曲。ちなみにこのアルバムで売れ線の曲は、このWatch Out For Lucy ですね。
 クラプトンのファンには十分楽しめますが入門者には誤解されかねないアルバムと書いて結ぼうと思っていましたが、お勧め3曲をセレクトしていたら、意外と初心者でも結構楽しめるかもしれないと思います🎵

guitar vocals : Eric Clapton
keyboads : Dick Sims
vocals : Marcy Levy
guitar : George Terry
bass vo :Carl Radle
drums percussion vo : Jamie Oldaker

producer : Glyn Johns

1. Walk Out in the Rain
2. Watch Out for Lucy
3. I'll Make Love to You Anytime
4. Roll It
5. Tell Me That You Love Me
6. If I Don't Be There by Morning
7. Early in the Morning
8. Promises
9. Golden Ring
10. Tulsa Time

2023年12月29日金曜日

Tommy Flanagan / Sunset And The Mockingbird The Birthday Concert

 

 1997年3月16日、Village Vanguard での Tommy Flanagan(トミ・フラ)の67歳のバースデイ・コンサートのライブ録音。1998年以降は体調を崩し2001年11月16日、動脈瘤による合併症のため71歳で永眠されています。1950年代から活躍するモダン・ジャズのピアニストで、自身のリーダー作よりセッション的に名演と言われるアルバムにはトミ・フラの名前がクレジットされていることが多く、デトロイト生まれなのでデトロイト系ミュージシャンとの共演も多数ある。ソロ作品より Ella Fitzgerald などの歌手との相性は抜群のようなイメージです。私の持っている晩年の作品は Let's (1993) 最初に購入したソロ作品でした。


 この作品、演奏自体はリラックスした感じで「やりたいことをやった」演奏です。プロデュースも奥方の Diana Flanagan で、メンバーもベースとドラムのみの気の知れた仲間との演奏で派手さはありませんが、滋味あふれると言う言葉がしっくりきます。曲目は当然同世代のジャズ仲間がつくったスタンダードが中心で安心感は抜群でした。
 さて、改めて聴きながらのレビューです。Birdsong は Thad Jones の作品で、Bird は当然 Charlie Parker のことかと思いますが、追悼曲ではなくイメージだそうです。テーマの伴奏は モンク作品でも聴いたことのあるフレーズですが、めんどくさいので追いません。軽快にライトにスリリングに楽しい演奏です。 With Malice Toward None は、Tom McIntosh 作品で、曲名はリンカーンの名言で、メロディーの元は賛美歌とのことで、テーマの節々にゴスペル的なまとめ部分があるのに納得。エレガントで有りながらポップさも感じる曲です。選曲が良いですね。Let's これも、Thad Jones の作品。前述した1993年の Let's (1993) のタイトル曲でこの1993年バージョンよりもテンポ早めでコロコロしたピアノの音色とキメの細かさが決まっていることから、トリオでかなりご用達の曲なのでしょう。ドラムは前作でも Lewis Nash でした。I Waited For You は、John Gillespie, Gil Fulle 作品のバラード。マイルス作品で聴いたこともありますが、このピアノ・トリオの演奏の方が管楽器が入るより、やはりキラキラした曲に仕上がります。このアルバムの中では短めの5分22秒ですが聴いた後の余韻が残ります。Tin Tin Deo 続けて John Gillespie, Gil Fulle 作品となります。長めのイントロはメドレーのような構成でイントロの不思議感から一挙にラテン風に転じるのがとても素敵な展開です。Sunset And The Mockingbird テーマ曲になります。Tom Macintosh 作品で、作者はトロンボーン吹きのようですが、スローなロマンティックな作品で、途中ブルージーになるところに思わず聴き惚れながら、曲の中で色々とシーンが変わっていくような展開に、なるほどタイトル曲に相応しいと感じながら聞き入ります。そして、The Balanced Scales/The Cupbearers のメドレーです。前半はドラム・ベース無しのソロ演奏でしんみりとしながら後半の快調なスイングへのイントロ的な役割を果たしています。締めは Good Night My Love で Mark Gordon 作品です。Ella Fitzgerald が若い時に Benny Goodman & His Orchestraで歌っていた作品ですが、ここでは軽快さは消してバラード作品としています。しんみり来ます。そして最後みんなが「Happy Birthday、Tommy」と合唱してコンサートは終わります。お客も最後はハモっているのが良い感じですね。
 強烈な印象は無いですが、トミ・フラの人柄も伝わるような演奏とアット・ホームな環境での好演で良盤です🎵

piano : Tommy Flanagan
bass : Peter Washington
drums : Lewis Nash

producer : Diana Flanagan

recorded live at the Village Vanguard on March 16, 1997, Tommy Flanagan's 67th birthday.

1. Birdsong
2. With Malice Toward None
3. Let's
4. I Waited For You
5. Tin Tin Deo
6. Sunset And The Mockingbird
7a. The Balanced Scales
7b. The Cupbearers
8. Good Night My Love