私は常に20枚ぐらいの未聴盤が家にあり、いつも行っている音楽好きの集う「おでんバー」で封を開けます。家にあるチープなシステムで小さな音で聴くのと全く印象が異なる、まずはバーのオーディオで爆音で聴くこととしています。と同時にマスターや知り合いの反応を見るのも楽しみであります。
と言うことで、最初は、あの唸り声が耳障りで仕方なかった Keith Jarrett はマスター他常連も好んで聴いてるので、最近耳馴れしてきて、今では私も頻繁に聞くピアニストとなっています。 standards Vol. 1 は、ジャズシーンを揺るがしたと言われる Keith Jarrett, Gary Peacock & Jack DeJohnette のトリオのデビュー作で、印象的な作品でした。これは Vol.2 も聴いとかなければいかんなと購入。マスターや常連は「当然昔聞いたことありますぜ」と何も言わずに聞き、昔聴いたことは覚えているものの中身がどんなだったことか忘れていたことを白状されていました。そうですよね。何十回も聴かないと音楽も忘れてしまうものは多いのです。私も数か月前に聴いたこのアルバムを再度思い出しながら聴いてみましょう。
1983年1月の Power Station の録音の1st 続きのアルバムのレビューです。So Tender スタンダーズのアルバム名ですが、これはキースのオリジナル。ですが、I've got a crush on you の冒頭フレーズが、そのままテーマになっているとのことで(聴いたことあります)大きな意味ではスタンダード。美しいピアノの旋律にキースの雄叫びが絶好調です。中盤からのアドリブは大きなうねりを魅せ、ベースソロへのバトン・タッチも心地よい。Moon And Sand は、 クラシックの作曲家 Alec Wilder, Morty Palitz 作。クラシックやミュージカルの作曲に一生を捧げたらしい。こういった、単純なテーマではない、しっかりジャズ・バラードはキースの得意とするところでしょう。テーマから発生するアドリブも雄叫びと共に聴くと狂気的にも感じ、感情の高まりがそのまま音に出来るキースの才能には改めて感心します。In Love In Vain は、Jerome Kern, Leo Robin 作は、また可愛らしい曲です。1946年の映画の主題歌とのことで恋愛を表現した可愛らしい曲なのに、アドリブの架橋で低い声のウーの連発には苦笑。アーの方が良い。ここに心を奪われなければホントに少女の恋心を表現したような可愛い曲が素晴らしい。Never Let Me Go は、Raymond Evans, Jay Livingston の楽曲です。これも、うっとり系の曲で、バラード続きは私には本来しんどいのですがライトに旋律を聴かせてくれるキースのピアノとトリオの息の合った演奏に改めてハッとしました。If I Should Lose You は、Ralph Rainger, Leo Robin の楽曲。やっとリズムに動きのある曲が出てきました。最初からキースはスキャットのようにピアノを弾きながら叫びまくります。やはり、キースのピアノは、複雑な動きをするピアニストのそれではなく、わかりやすいアドリブのフレーズの連続なのが、また安心して聴ける要素のようです。バラードではメロディー楽器のような DeJohnette のドラムも、ここではアグレッシブに Peacock とキースを煽ってくるのも美味しいですね。I Fall In Love Too Easily これで最後の曲。Sammy Cahn, Jule Styne による楽曲。やっぱり締めはバラードです。静けさの中にある美しさをキースが優しく表現し、単調になりがちな曲に DeJohnette が絶妙なブラシのタイミングで表情をつけていき、曲の進行を裏で Peacock で進める。全てがわかりあえたようなトリオ演奏が、平坦になりがちな曲に表情をつけているのが、感動的です。私はこれが一番好きかもしれない。
バラード集は私は退屈してしまうのですがこのトリオでは退屈しません。聴かせる小技が無限にあるのでしょう。素晴らしい🎵
piano : Keith Jarrett
bass : Gary Peacock
drums : Jack DeJohnette
producer : Manfred Eicher
recorded January 1983 at Power Station, New York City
1. So Tender
2. Moon And Sand
3. In Love In Vain
4. Never Let Me Go
5. If I Should Lose You
6. I Fall In Love Too Easily
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