2023年1月22日日曜日

Duke Pearson / Now Hear This

 

 マンネリ気味、偏り気味の音源の幅を広げるべく、あまり聴いたことが無いミュージシャンの音源をあえて購入するパターンで購入の一枚。購入店舗は、おそらくディスク・ユニオンだったはず。このような買い方をするときは、何が入っているのか?参加メンバーは?などと気にすることなく、安くて名盤っぽい売り文句があれば購入してしまいます。ロック系はこの買い方で失敗する(2度と聴かない)ことは多いのですが、ジャズに限っては後悔することは少ないですよね。
 と言うことで、私がこの Duke Pearson(デューク・ピアソン)に関しては、ほぼ知識が無いことは察していただけることかと思いますのでググって見ます。1932年生まれのピアニスト、作曲家。有名曲はよくわかりませんが、アート・ファーマー、ベニー・ゴルソン、私の好きなドナルド・バードなどと共演されているとのこと。Duke Pearson の名前は、デューク・エリントンにあやかって「Duke」とおじさんにつけられた愛称とのこと。1963年には Blue Note でスカウトを担当し1963年から1970年までセッションに参加しながらプロデューサーを務めています。1966年にブルーノートがリバティ・レコードに買収されピアソンも1971年に Blue Note を引退しクラーク大学で教鞭を採りその後ビッグバンドを結成してのこのビッグ・バンド・アルバムの録音となったようです。
 でピアノを弾き、Herbie Hancook / Speak Like A Child ではプロデューサーでした。つまり全くしらないオジサンでは無かった訳です。


 さてこのアルバムもうおわかりの通り、晩年のビッグ・バンド作品で1968年の録音です。メンバーは有名どころではトランペットで Randy Brecker、サックスは Frank Foster、バリトン・サックス Pepper Adams 先の Herbie Hancook / Speak Like A Child でドラムを叩いていた Mickey Roker なんかが参加しています。
 ただ聴いているときよりも面白くなってきました。それではレビューですが、まずは Disapproachment これは Frank Foster のオリジナル。ザ・ビッグ・バンドって感じの派手でカッコ良い曲なんですが、ソロ回しでサックスがノリノリでソロが終わってトロンボーンの出番となります。少したどたどしいかなと思いつつ聴いていると、3分9秒ぐらいから素人でもわかるレベルで音を外し始め?となりました。放送事故っぽいレベルのような気がします。で気を取り直して I'm Tired Cryin' Over You ブルース・ピアニストのバディ・ジョンソンのブルースでボーカルもので一休みって感じですが一休みが2曲目は早いなあと思います。Tones For Joan's Bones はチック・コリアのオリジナル曲でチックコリアの初リーダーアルバムのタイトル曲とのこと。オリジナルを聴いて比較したいですね。Amanda はピアソンのオリジナルでボッサです。ピアノ、ベース、ドラムのトリオで始まり、トロンボーン・ソロ 1分16秒4あたりが、また音程があやしい。4人いますが犯人は誰なのか気になります。Dad Digs Mom もピアソン・オリジナルのバラードです。パパはママを探し当てる(ママもパパを探し当てる)みたいな意味でしょうか。抜き足差し足でにじみよっていくような曲です。Minor League は景気の良いビッグ・バンド・アレンジでドラムが楽しそうにバカバカやってます。トロンボーン大丈夫だろうな?と思いながら聴いているとこの曲ではソロは回ってこなくて終了です。ホッとした。Here's That Rainy Day は Jonny Burke の作曲でチーク・タイムにかかるやつですね。甘いヤツです。テナー・サックスがエロい感じです。Make It Good もピアソンのオリジナルで豪快なパターンで Pepper Adams のバリサキが暴走族みたいで素晴らしい。最後は名曲 The Days Of Wine And Roses です。甘美な旋律の美しい曲ですが確か曲名とは裏腹に悲しい曲だったんですかね。間違いなく安定した演奏です。これはトロンボーンが率先してのソロ。出だし怪しいところは少しありましたが、うまくクリアです。ホッとしました。
 最初はふーんって感じだったんですが結局は聴きこんでしまったアルバムでした。面白かったかな。

piano : Duke Pearson
bass : Bob Cranshaw
drums : Mickey Roker
alto sax : Al Gibbons, Jerry Dodion
tenor sax : Frank Foster, Lew Tabakin
baritone sax : Pepper Adams
trumpet : Burt Collins, Jim Bossy, Joe Shepley, Marvin Stamm, Randy Brecker
trombone : Benny Powell, Garnett Brown, Jimmy Cleveland, Kenny Rupp
vocals : Andy Bey (2)

recorded by : Rudy Van Gelder
producer, arranged by : Duke Pearson

recorded on December 3, 1968.

1. Disapproachment
2. I'm Tired Cryin' Over You
3. Tones For Joan's Bones
4. Amanda
5. Dad Digs Mom (And Mom Digs Dad)
6. Minor League
7. Here's That Rainy Day
8. Make It Good
9. The Days Of Wine And Roses


▶ Amanda



  

2023年1月21日土曜日

Kenny Burrell / Jazzmen Detroit


 多くのジャンルをミュージシャンがニューヨークを目指した1950年代。盛んにジャズが演奏された都市で派閥を分類するとしたらシカゴ、デトロイト、フィラデルフィアでしょうか。デトロイトのジャズ・クラブの Blue Bird Inn では、ポール・チェンバース、ケニー・バレル、サド・ジョーンズ、トミー・フラナガンが入れ替わりでセッションをしていたそうです。そこでデトロイト出身ミュージシャンを中心とするセッションのアルバム名。デトロイトと言えば自動車の街のイメージ、そんな街にゆかりのミュージシャン。と思って改めて略歴を眺めていたら完全にそうであるとは言えないようで、デトロイト仲間でアルバムを作るか録音したが、全員は賄えなかったようですね。

デトロイト生まれ : Kenny Burrell (ケニー・バレル)、Tommy Flanagan (トミー・フラナガン)、デトロイト育ち : Paul Chambers (ポール・チェンバース)、Pepper Adams(ペッパー・アダムス):おそらく関係ない人 : Kenny Clarke(ケニー・クラーク)
 
 でジャケットを見ていたら四人しかいない?おそらくデトロイト関係ないリストのドラムのケニー・クラークがいないってのはしょうがないけど、アルバム録音は一緒にやってるんだから問題あるんじゃねえのか?などと余計なお世話なことを思いながら濃い目の珈琲を飲みながらこのアルバムを聴き直しております日本版はケニーバレル名義ですが、海外のアルバムは、Kenny Burrell, Tommy Flanagan, Pepper Adams, Paul Chambers, Kenny Clarke : Jazzmen: Detroit 実はこのアルバムリーダーはいないようであります。


 さてレビューですが、都会的なブルース・フィーリングのジャズをやりながらもポップさも感じます。録音は 1956年4月30日(4.~6.)、5月9日録音(1.~3.)です。この録音当時は20歳代後半ぐらいの「若者たち」を中心としたセッションであるにも関わらず落ち着いたリラックス度が高くやっている本人たちが楽しそうな演奏内容でやっぱりケニーバレルのギターは響くなあと感じます。
 Afternoon In Paris は1949年にピアニスト John Lewis によって書かれたスタンダードで、やはりトミフラ・メインの展開ですがリラックスした演奏で肩ひじ張らずにゆったりと聴ける演奏。You Turned The Tables On Me ではケニーバレルが主導権を握ります。ペッパー・アダムスのバリサキがアダルトな雰囲気で格調高く続くバレルのソロも滑らか、ピアノソロはそつなく平常心、モコモコしたチェンバースのベース・ソロはもまとまっています。Apothegh は、ペッパー・アダムス作。バリサキとギターでユニゾンしながらの展開し、ソロ部分の各人の絡みあうところとか譲り合うところが聴いててわかる気ごころ知れた仲の良さそうな人たちならではの演奏。Your Host はバレル作の曲でアダルトって感じの渋い演奏ですね。お酒が似合います。Cottontail はエリントンのカバーですが、テーマの後に直ぐに始まってしまうギターとサックスの掛け合いでしょうか。とても仲が良さそうにしゃべっているような掛け合いがとっても素敵で、この曲はワクワクします。Tom's Thumb もバレル作の曲です。Tomってトミフラのことでしょうか?親指の使い方に特徴でもあるのかな?などと思いながら小気味よい演奏はリラックス。

guitar : Kenny Burrell
piano : Tommy Flanagan
acoustic bass : Paul Chambers 
drums : Kenny Clarke
bariton sax : Pepper Adams

producer : Ozzie Cadena
recording on April 30, 1956 (4 to 6), May 9, 1956 (1 to 3).

1. Afternoon In Paris
2. You Turned The Tables On Me
3. Apothegh
4. Your Host
5. Cottontail
6. Tom's Thumb





  

2023年1月20日金曜日

Donald Byrd Live Cookin' With Blue Note At Montreux July 5, 1973

 

 Donald Byrd(ドナルド・バード)はトランぺッターのジャズをもっと聞いてみたいと思って結構最近になって聴き始めた人で、私の周囲にもそれほど詳しい人はいないのです。したがって年代はバラバラに聴いてみています。1955年初リーダーアルバムを発表し1955年末にはジャズメッセンジャーズにケニー・ドーハムの後がまとして入隊。ブルーノートを中心にハードバップの作品を数多く残し、1960年代はゴスペルを取り入れ1970年はファンク・ロックを取り入れるというトランぺッターにありがちな最終ファンク路線の人なので、時代ごとにアルバムごとに音楽性はかなり変化するため、ある意味買ってから聞くまではどんなものが出てくるかわからない人です。そこが面白いと最近思うんですが正体つかめないので私の周りには残念ながら愛好家は見当たりません。


 これはタワレコの新品で「全盛期の凄まじい熱量や勢いをそのままパッケージ。ジャズ・ファンのみならず全ての音楽ファン必聴のライブ盤」の帯につられての買いです。これは家で寝かせずに購入して直行で「おでんバー」で聴きました。マスターも「ジャズ・ファンクかい?好きだね、あんたも相変わらず」的な顔をしています。しばらく経ってから「これは誰?」で「誰でしょう?」とジャケットを見せてもわかりません。ドナルド・バードであることを告げると「えっ」の顔でした。ここら辺がマニアの集いの楽しいところで気分が良い。
 ということで、これを読む人にはもうわかってしまいましたが、ドナルド・バードが1973年にモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演した際に録音されていたライヴ音源で中身はジャズ・ファンクでございます。
 1973年は傑作アルバム Black Byrd を発表しており、ライブの冒頭は Black Byrd から始まる構成となっております。コーラス・ボーカル入りのファンクで、だるそうに歌うのがカッコイイ曲です。スタジオ盤よりアップテンポになっているので、ジャズ・ファンクよりもファンクよりに聞こえます。You’ve got It Bad Girl は Stevie Wonder(スティービー・ワンダー)が作曲で Quincy Jones の同じ1973年に販売したアルバムの曲を早くも取り入れているようです。The East はバードのオリジナルですが作曲というよりセッション用のバッキングだけ用意したような曲でファンク度が高くて良いです。そして Introductions はメンバー紹介です。Introductionsだから最初にメンバー紹介をしているんでしょうか。アルバムでは真ん中に持ってきたんですね。Kwame はアフリカンな音使いのシンセ・サウンドがイントロになり7拍子でひたすら同じフレーズが繰り返されるカオスな曲でファンクに振り切れているのが凄い。Poco-Mania では、激しいギターのカッティングから始まるファンクでJBを意識している感じですが演奏に関しては先輩のJB’sに軍配は上がります。私にとってはこれは当たりで素晴らしいアルバムですが万人受けはしないかな。

★ブルーノートの社長ドン・ウォズは、今回の商品化について「2013年にバードが亡くなった直後、私たちはイギリスの著名な音楽アイコン、ジャイルズ・ピーターソンから、1973年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでの伝説的な演奏について問い合わせのメールを受け取った。なんと、そのテープはブルーノートの保管庫にしまわれていたのだ。16トラック、2インチのアナログ・マスター・テープは、ドナルド・バードの70年代の音楽がより生々しく、よりハードなものであることを明らかにしてくれた。このジャズ界の不滅のレジェンドへの特別なトリビュートとして、またブルーノートの社員と同じように、彼が残した音楽を大切にしている多くの愛好家への贈り物として、我々は誇りをもって、1973年7月5日のモントルーでのライヴ音源である本作をお届けする」とコメントしている。

trumpet, flugelhorn, vocals : Donald Byrd
electric piano : Kevin Toney
synthesizers : Larry Mizell
electric guitar : Barney Perry
electric bass : Henry Franklin
drums, vocals : Keith Killgo
congas, percussion : Ray Armando
trumpet, vocals : Fonce Mizell
tenor saxophone, flute : Allan Barnes
tenor & soprano saxophone : Nathan Davis
 
produced for release by Rachel Jones
recorded live by Chris Penycote at Montreux Jazz Festival Montreux, Switzerland,July 5,1973

1. Black Byrd
2. You’ve got It Bad Girl
3. The East
4. Introductions
5. Kwame
6. Poco-Mania





  

2023年1月15日日曜日

Mike Stern / Is What It Is


 最近聴いていなかった Mike Stern(マイク・スターン)を久しぶりに聴いてみることにします。 大学に入ってロック小僧からジャズ研に入ったはいいけどジャズって聞いたことがない。何を聴いてったら良いのだろう?と悩んでいた時、ジャズよりはロックに近い演奏をしていたマイク・スターンには、かなり傾倒しました。しかし難し過ぎてコピーしたのは数曲でした。当時マイク・スターンがどのようなバンドで活動していたのかには、全く興味も無く、その後社会人になり色々なアルバムを聴くにつれ、マイク・スターンの名前が色々なアルバムに出てくることに気づきましたので、改めて略歴を追ってみると新発見もあります。まず知らなかったのは Blood, Sweat & Tears(BS&T)に1976年に参加していたこと。確認しましたが私の BS&T 所有のアルバムは、Child Is Father To The ManBlood, Sweat & Tears と古いので残念ながら名前はクレジットされていませんでした。たまに BS&T の棚はチェックしているんですが置いてあるアルバムは非常に少ないので、これからもチェックですね。略歴としてはその後ビリー・コブハムのフュージョン・バンドに参加し、マイルス・バンドへの加入、ジャコのツアーのバンドに参加しソロ・デビュー。ブレッカー・ブラザースにも参加されていました。

 
 さてこのアルバム、ソロ・アルバムとしては7枚目で1994年発売で、再結成されたブレッカーブラザーズに参加は1992年ということから見てもキャリアとしては十分に積みあがって安定していたころの作品です。すっかりスターンのパターンが出来上がっております。この手のフュージョン系ギタリストで手癖の塊りみたいな人は少ないので、ぶれない一辺倒のフレーズに感心するばかりです。
 さてレビューですが、初っ端 Swunk から、マイク・スターン特有の半音使いの少しづつ機械的にずれていくテーマの作り方、手癖ばりばりのソロが健在です。A Little Luck は、きれいなメロディのテーマでここら辺がマイク・スターンの非凡なところなんだよなと感心しつつ Jim Beard のピアノの展開の仕方がにくい演出です。What I Meant To Say もしっとりきます。歌もののようなわかりやすいメロディーが良いなと感じながら、クリーンな音色のギターが時々切なげな音をたてます。今まで注目してなかったけど良いですね。Showbiz はファンク・フュージョンな作品で、これがマイク・スターンのイメージピッタリです。テーマのメロディーの作り方はスターンの法則があるんでしょうね。Believe It は再度聴いて思い出しました。これがこのアルバムで一番のお気に入りでした。ブルース・ギタリストみたいな音使いがたまらんです。Wherever You Are では、アコギ?の音がイントロで使われマイク・スターンぽくない曲で、やはり手癖だけではないプロなんだと再認識。違う人が弾いているみたいで楽器が変わると弾き手の感情も変わるんだと思いながらしんみり。Ha Ha Hotel で静からいきなり動に変わります。曲名のごとくホテルで大騒ぎしている感じのあるマイク・スターン節が堪能できます。お馴染みフレーズのオンパレード。Signs では、また静の世界にもどります。このアルバムは極端な静と動を繰り返す感じですね。55 Dive では、動に近い楽曲で Bob Malach が後半サックス頑張ってます。私的にはMichael Brecker (マイケル・ブレッカー)と音使いが似ているサックス奏者のような気がしますので一つのアルバムにこの二人はもったいないような気もします。個人的には Believe It がこのアルバムでは一番のおすすめでした。奥が深い感じがします。

guitar, written by : Mike Stern
piano, synthesizer : Jim Beard
bass : Will Lee (1 to 5, 7 to 9)
drums : Ben Perowsky (6 to 9), Dennis Chambers (1 to 5)
sax : Bob Malach (7 to 9), Michael Brecker (1, 2, 5)

producer, engineer (additional engineering) : Jim Beard

recorded at Skyline Studios, New York, NY
additional recording at Carriage House Studios, Stamford, CT

1. Swunk
2. A Little Luck
3. What I Meant To Say
4. Showbiz
5. Believe It
6. Wherever You Are
7. Ha Ha Hotel
8. Signs
9. 55 Dive


▶ Showbiz



  

2023年1月14日土曜日

Rachael & Vilray

 

 私の音源は主として中古レコード屋で調達しているのですが、たまには新品を見ておこうと思ってタワレコなどは定期的にチェックすることにしています。しかし世の中音源をわざわざ買いに行く人はもう少なくなっているようで店舗はどんどん縮小していて寂しい限りです。アメリカのタワレコは相当数が閉店しているのはかなり前に、記事で見ていたがその波も私の愛用している新宿のタワレコにも訪れているようで、最盛期は4フロアあったと思うのだが今は2フロアとなってしまっていて、いつ行っても人はまばらであります。まあ今は流行りの曲はダウンロードするのが主流だろうし試聴もネットできるのでダウンロードでなくともネット通販で購入するほうが多くなったんでしょうね。しかしながら私としては「今日はパチンコで勝ったから2万円分買うぞ」と意気込んでレコード屋を歩いて回るのはそれぞれの店の店員さんのクセ(個性)あふれる推しが見れるのが好きなところでありますので実店舗もなくならないでいて欲しいと思う今日この頃です。


 そこでパチンコで勝った金を握りしめ中古でない新品も買ってもいいかなとタワレコを訪れたところ、タワレコのロングセラーとして紹介されていたのがこの一枚です。この日はタワレコとディスク・ユニオンをハシゴして疲れてしまったのでツタヤの中古コーナーには行かずに、いつもの「おでんバー」に直行です。早い時間の到着ですのでマスター以外誰もいませんので遠慮なしに買ってきたばかりのCDの20枚程度を自慢げにバサバサと広げこの日は4枚ぐらいを店でかけさせて頂きました。
 このアルバムを変える時には、マスターにタワレコ・ロングセラーの売り文句につられて買ったことは伝えていました。楽しそうに聴いているし反応としては悪くはなかったので私も気分を良くしてライナーノーツは無いかと見てみますが輸入盤なので日本語解説もなく参加ミュージシャンが曲別に書かれているぐらいのものでした。そして一体いつの発売なのだろうと裏面の小さな文字を見てビックリの2019年発売でした。マスターに「これいつ頃の録音と思います?」と聴くと「1950年ぐらいの録音かとは思うけど音が良いから65年ぐらい?」との返事。私だけではなく皆さんそう思うのは当然でしょう。発売から3年のロングセラーだった訳です。いやビックリでした。
 さて前置きがかなり長くなりましたがレビューです。Without a Thought for My heart トレモロのかかったギター、ピアノ、ベースをバックに Rachael Price がささやくように歌いと少し枯れたような声になり色っぽくてうっとりとさせられます。これに似合うのはブランデーでしょう。Do Friends Fall in Love? では、Vilray とのデュオになり、ラグタイム調で戦前にタイムスリップです。Rachael Price は1曲目より声を大きく出しているので少し艶っぽい声質になっています。ソロが口笛であるのもほんわかさせてくれました。Alone at Last では、クラリネット、テナー、トロンボーンが参加したレイジーな曲です。クラリネットが良い仕事し過ぎです。Treat Me Better は再び Vilray とのデュオとなりますが、交互に歌う Vilray はジャケットの写真よりもずっと男前な歌声でスイングって良いなと思わせてくれます。Nosotros は、キューバのペドロ・ジュンコが43年に書いた曲で、スペイン語で歌われていてスパニッシュ・ギターのリズムとスペイン語でグッと雰囲気が変わります。恐れ入りました。At Your Mother's House は、アップテンポで昔こんなスタンダードがあったのかと思わせてくれる曲で、今後この曲がスタンダードとしてジャズ・ボーカリストに歌われる可能性も感じます。古くてカッコ良い典型。 I Can't Go to Sleep は Vilray のギター1曲目に使われたトレモロ仕掛けのレトロな雰囲気が気持ち良い曲でハワイアンっぽい。 I Love the Way You're Breaking My Heart はトランペットの使い方が映画時代の曲ような雰囲気で Rachael Price はノリノリで世界に浸っています。The Laundromat Swing はフォーク調のテンポ良い曲でライブで近くで聴きたい楽しい曲ですね。Go On Shining はピアニスト Jon Batiste がフューチャーされたナンバーで右手だけで高いキーをコロコロ鳴らしていて可愛い楽曲にこれが合っているのもセンスの良さ Let's Make Love on This Plane は正調なジャズで今までの楽しい曲よりも少し格調高い店で酒でも飲む際に流れているようなナンバー。 There's No True Love でラストになります。寂しいけど暖かなメロディーが閉店をお知らせしますというアナウンスをバックに流れている感じでしょうか。
 ジャケットの白黒の写真と同様に小さな店でミニ・コンサートをお酒を飲みながら聴けたら楽しい音楽であり「まるでどこかの中古レコード屋の片隅でずっと眠って忘れ去られていたような、懐かしくも普遍的な魅力溢れるジャズ・ヴォーカル・プロジェクトである」と書かれていたことに同感!!

vocals : Rachael Price
vocals, guitar, written-by : Vilray
piano : Akie Bermiss
drums : Jason Berger

producer : Dan Knobler

1. Without A Thought For My Heart
2. Do Friends Fall In Love?
3. Alone At Last
4. Treat Me Better
5. Nosotros
6. At Your Mother's House
7. I Can't Go To Sleep
8. I Love The Way You're Breaking My Heart
9. The Laundromat Swing
10. Go On Shining
11. Let's Make Love On This Plane
12. There's No True Love





  

2023年1月13日金曜日

Soulive / Break Out


 2005年に BlueNote を離れ、Concord Records に移籍してリリースしたアルバムで、今までのインスト・ファンク路線を変更したので今までのファンが戸惑った作品ですね。作りては古いスタイルを踏襲し続ける人もいれば、新しい音を追求するための路線を変更する人もいる。ファンと言う購入者は、購入前に既に今までの昔の作り方が気に入っているためにそれを期待する人が圧倒的に多いので大幅な路線変更ではこういったことが起きるんでしょうね。作り手としては気に入らなかったら買わなきゃ良いだけの話で勝手に残念がられても迷惑な話かもしれません。そのような面倒なことが起きるのを防ぐために、この私の音楽レビュー・ブログを参考にしていただければと思います。但し基本音源と言うものは基本作り手が一生懸命作った作品ですのでネガティブな発言は避けるような言葉選びをしているのでそこは察していただければと思います。


 さて封建派からは酷評されることも多いこのアルバム、今までののジャズ・フォーマットから離れて Soul/R&B 色が強め、多数のボーカリストを起用しています。でもバンドの基本フォーマットはオルガン、ギター、ドラムのスタイルにブラスを追加した音作りで、ジミヘンの Crosstown Traffic なんかも持ってきているのは昔のギター小僧なら嬉しい曲も入っています。ちなみにこのアルバムはアメリカと日本発売の中身は曲順や曲目が微妙に違うようですが私は日本版だけ所有しとります。曲によっては長さも違うのでおそらくアレンジとかも変えてきているんでしょう。
 それでは嘆き悲しむよりも、このアルバムの良さを探りましょう。出だしの Reverb は今までの Soulive の路線は引き継いでいて違和感なく安心して聴けます。久しぶりにこのバンドを聴くと改めてオルガンの足で踏むペダルのベースって弦楽器よりもパンチが効いてて気持ち良いですね。ギターのリフもソロも良いではないですか。次いで Got Soul ではボーカル  Ivan Neville のソウルものになっています。曲はソウル何ですが演奏はアレンジはデジタルな感じの処理でイントロから「おや?」と思った人もここら辺から多いのかな。Cachaca は、フラメンコ風のアコースティック・ギターのイントロにリズム・ボックスっぽいドラミング。曲はスペイン風の旋律が取り入れられていますがここらへんの手法は他のアルバムでもあったような気がします。Back Again はいつもの Soulive ではありませんが低音でズシズシと刻みながら一流のボーカルを配した中々の売れ筋の作りです。Break Out ではいつものパターンに戻ってきてホッとします。シンプルながらメロディーの良さが光るインスト・ジャズ・ファンクです。She's はボーカルに Reggie Watts を起用したポップなセンスが光ります。プリンス入ってるかなあ。Vapor は少しいつもの Soulive よりポップ寄りのジャズ・ファンク。これは良い! Crosstown Traffic は言わずもがなジミヘンです。ダサ目のギターがカッコ良いですなあ。What Can You Do はバラードで Robert Randolph のpedal steel を起用でペダルのベースのカッコよさが際立ちます。Headphones はライブ風な音作りのジャズ・ファンクでいつもの奴です。ガシャガシャしてるけど落ち着く・・Left Behind は戻ってきました Soulive って感じでボーカルものではありますがガシガシとしたリズムが堪らんです。Glad Ta Know Ya も Cochemea Gastelum のサックス入りでコテコテのギター・ソロがたまりません。楽曲良さというより単純なカッコ良いリフの勝利。Crosstown Reprise はがっちり Robert Randolph のペダルが暴れます。最高です。Take It Easy は Ivan Neville をボーカルに廃しての楽曲ですがしっかり "Soulive!"
 結局よく聞いてみたら様々なタイプの楽曲が入っていますが本質は "Soulive”でしたね。異色ではあるけど期待が外れたと騒ぐほどの変質はないんではないかい? 
 しかしですね続きあります。このレーベルは1枚で2007年にスタックス・レコード移籍で「No Place Like Soul」1枚で終了。2009年以降はロイヤル・ファミリー移籍で「Up Here」発表以降落ち着いているようです。

electric guitar, acoustic guitar : Eric Krasno
organ , keyboards , clavinet, piano : Neal Evans
drums : Alan Evans

percussion : Daniel Sadownick
tenor sax, alto sax : Ryan Zoidis
trombone : Lasim Richards (5) , Robin Eubanks
trumpet : Rashawn Ross
backing vocals : Jordan Battiste (8)

producer : Alan Evans, Eric Krasno, Soulive

recorded : New York, NY
released : September 13, 2005.

1. Reverb
2. Got Soul / Feat  Ivan Neville
3. Cachaca
4. Back Again / Feat  Chaka Khan
5. Break Out
6. She's / Feat Reggie Watts
7. Vapor
8. Crosstown Traffic / Feat : Robert Randolph
9. What Can You Do / Feat Reggie Watts
10. Headphones
11. Left Behind / Feat Reggie Watts
12. Glad Ta Know Ya / Feat : Cochemea Gastelum
13. Crosstown Reprise / Feat : Robert Randolph
14. Take It Easy / Feat Ivan Neville




▶ Vapor



  

2023年1月8日日曜日

Paul Desmond / From The Hot Afternoon

 

 どのような音楽も雑多に聴いているような気になっていますが、知らないミュージシャンの音源にはなかなか手が伸びないもので、たまに冒険するのがジャケ買いでありジャズなんかでは帯の文言に惹かれて購入する帯買いがあります。このアルバムは後者の方の帯買いにあたります。帯の文言は「デイブ・ブルーベックとの活動でおなじみ、彼独特のリリカルで美しいアルトの音色が、まろやかに聴く人を包む」でした。
 ということでPaul Desmond(ポール・デスモンド)自体には注目して聴いてこなかったので、ほぼ初心者なのですがサイドマンとして私の所蔵音源に辛うじて2枚参加されており、その2枚は The Dave Brubeck Quartet / Jazz at OberlinJim Hall / Concierto 。やはりデイブ・ブルーベックは入っており、私の所有音源の中でも比較的格調が高めのジャズでしょうか。
 ポール・デスモンドは1924年サンフランシスコ生まれで1946年にデイヴ・ブルーベックのバンドでデビュー、その後ジェリー・マリガン、ジム・ホールなどと共演しています。デイブ・ブルーベックとのバンド在籍時にあの名曲5拍子の名曲 Take Five(テイク・ファイヴ)は、ポール・デスモンドの作曲であるとのことも発見。


 本作品は A&M レーベルから1969年の Rudy Van Gelder のスタジオの録音で、ブラジルの代表的作曲家 Milton Nascimento & Edu Lobo(エドゥロボとミルトンナシメント)の作品集であるとのこと。基本的にストリングスを加えたビッグ・バンドで綿密にアレンジしたサウンドに、ポールデスモンドが軽くサックスをのせてアルバムなので、おそらくこの人の真骨頂はもっと別のアルバムも聴きこまないとわからないような気もします。ストリングス・アレンジはDon Sebesky(ドン・セベスキー)
 ゆったりとしたブラジル・テイストでありますが、アレンジも凝っているせいか割とこってりとしています。ムード歌謡のような昭和感のあり昔の喫茶店でかかっていたかのような雰囲気を感じます。
 さてアルバムですが October はストリングスが入ったイントロから始まり映画のテーマ音楽のようなアダルトな曲調にのせて Paul Desmond が肩慣らしで軽くサックスを吹いています。全く脱力な感じ。Round N' Round 軽くリズムを刻むボサノバ・ギターが印象的ですが曲自体はブルースの進行です。Faithful Brother はムーディなブラジル音楽で軽めのアルトサックスとストリングスです。何回か聴きこみましたが、ここで思ったのはどれも3分~4分程度に短くまとめられているのでアルバムとしては聴きやすい。To Say Goodbye では、ボサノバの特徴である「ささやき系ボーカル」が出てきます。そしてムードのあるアルトのソロ。やっぱり昭和を感じるなあ。From The Hot Afternoon では少しテンポ・アップしたボサになります。今までは真夏の深夜薄暗い部屋で濃い珈琲でもすすりながら聴く感じですが、ここら辺は昼間を感じますが、けだるい昼間に少し明るい系のボサノバって感じでしょうか。Circles はサックスに焦点を当てたイントロに透明感のあるボーカルが静かにハモっています。この曲は好いかも。Martha & Romao はミドルテンポですが少しミステリアスでダンサブルな曲です。これはクソ厚い昼下がりに日光を避けた家の中から海を静かに見つめているような感じでしょうか。メロディー的にはボサを外せばポップス的に聞こえます。Catavento は細やかなリズムとパーカッションを使ったアップ・テンポで夜になって軽くカクテルでも飲んで軽くハイな気分になっている感じでこれも良きかな。 Latin Chant は古臭い映画の暗く静かなアダルトな映画のワンシーンと思っていたら、展開で明るいパッとしたガヤガヤした部屋に連れていかれた感じになり、そして疲れてお休みしてから朝になります。アレンジ凄いですね。Crystal Illusions で終了となりますが中東風の音使いで始まり少しポップなボーカルが入っています。正直、刺激が少ないなあと思っていましたがアレンジとかに注目して聴いていると少しイメージ変わりました。

alto sax : Paul Desmond
bass : Ron Carter
keyboards (keyboard instruments) : Patrick Rebillot
guitar : Dorio Ferreira (1 to 5, 8, 9), Edu Lobo (6, 7, 10)
drums : Airto Moreira
percussion : Airto Moreira, Jack Jennings, Stan Webb, Jr.
sax, clarinet, oboe : George Marge, Phil Bodner
trumpet, flugelhorn : Irvin Markovitz, Marvin Stamm
french horn : Jim Buffington
bass trombone : Paul Faulise
flute, alto flute : Don Hammond, Hubert Laws, Stan Webb, Jr.
harp : Margaret Ross
violin : Avram Weiss, Eugene Orloff, George Ockner, Lewis Eley, Matthew Raimondi, Max Pollikoff, Paul Gershman, Raoul Poliakin, Sylvan Shulman
cello : Charles McCracken, George Ricci
vocals : Edu Lobo, Wanda De Sah

arranged by Don Sebesky

producer : Creed Taylor

recorded at Van Gelder Studios June 24, 25; August 13, 14, 1969

1. October
2. Round N' Round
3. Faithful Brother
4. To Say Goodbye
5. From The Hot Afternoon
6. Circles
7. Martha & Romao
8. Catavento
9. Latin Chant
10. Crystal Illusions


▶ October

▶ Circles



  

2023年1月7日土曜日

Nina Simone / Silk & Soul

 

 行きつけの「おでんバー」のジャズ・アルバムは聴いたことがある程度で、ほぼ名前だけ知っている程度だったのですがボーカルものも開拓しているので気になってディスク・ユニオンで中古で購入です。確かジャズの棚にあったのですがバリバリにソウルです。
 これを最初に聴いていたのは、行きつけの「おでんバー」でマスターと私の二人だけのまったりとした時で、かけ始めると「ウハっ」と声がでてしまうような迫力のボーカルで、マスターもソウルでも「やっぱりすごいね」の感想。「すごいね」の中身は迫力です。しばらくすると常連のKさんが入ってきて「ソウルですか、なかなか渋いとこですね」しばらくしてから机の上のジャケットを見て「ウヘっ女性ですか?」「ああニーナ・シモン」とかなりの強い反応でした。新しいのを店でかけて、こだわりの強いマスターや常連さんの反応を見るのが楽しみでもありますので、この手のアルバムは中々効果は絶大で愉快です。


 さてあまりよく知らない Nina Simone(ニーナ・シモン)なので経歴をググって見るとアフロアメリカンのジャズ歌手、フォーク、ブルース、R&B、ゴスペル歌手、ピアニスト、公民権活動家、市民運動家とのことで、守備範囲はかなり広いようです。4歳からピアノを弾き始めクラシック音楽のトレーニングで有名なジュリアード音楽院でレッスンを受けたとあり、音楽エリートかと思いきやカーティス音楽学校への進学を試みたが断られる。50年代前半のことであり、黒人であったために差別された疑いがある。とのこと才能があってもこの時代は黒人の方はまだまだ大変な時代ですね。しかし1954年にはアトランティック・シティのアイリッシュ・バーで、ピアノを弾くことになり1957年にベツレヘム・レコードから Nina Simone And Her Friends と言うジャズ・アルバムでデビューからのスタート。
 本アルバムは1967年のレコーディングですから、かなりキャリアを積んだ時点でのアルバムになります。時代的には、Aretha Franklin(アレサ・フランクリン) が I Never Loved A Man The Way I Love YouAretha Arrives などでヒットを飛ばした頃なので、かなりアレサを意識してのレコード会社も期待のアルバムだったに違いありません。
 他の作品はあまり聴いていないので、よく知らないのですが、このアルバムはいつも彼女よりも明るい異色作であり屈指のSoulアルバムであるとのこと。つまりこれを期待して他のアルバムを購入すると痛い目にあうと言うことですか(それも面白い)
 さてレビューしていくと It Be's That Way Sometime は当然のパワフル・ボーカルでバンドの演奏も時代を反映するホーン入りのソウルがカッコ良い。と思いながらメンバーを見ると Eric Gale(エリック・ゲイル)がギターにいます。ここにも居たかって感じですね。ヒット作には、かなりの確率で登場します。The Look Of Love は、音量抑え気味で渋い感じです(奥村チヨまでがカバーもしているらしい)Go To Hell は、明るく怖い声で、地獄へ行けと命じられてしまいホーン部隊のパンチを効かせたヒット音は銃撃のようです。Love O' Love はゴスペル調に歌い上げます。プロテスト・ソングかとも思いましたがラブ・ソングでもないかな。人類愛みたいな感じでしょうか。Cherish はヒット曲のカバーでマルチ録音での彼女のデュエット・ボーカルが効いているソフトロックでザ・フーとかでも出てきそうなメロディ。I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free はソウルに戻りますが最初はソフトに次第に盛り上がりながら熱を帯びてくる典型的な盛り上がりが素晴らしいパフォーマンス。Turn Me On は、少し古臭いブルースを思わせるクラシック・ソウル・バラード。Turning Point はハープシコードを入れたフォーク調の曲でストレートな歌声が素朴な優しいおばさんが歌っている感じで彼女っぽくはないけど好きですね。Some Say はモータウン風なアレンジの曲でリズミックで楽しい。Consummation は彼女の作品でバッハ風フーガに基づいているけれどソウルフルな愛の歌で聴かせてくれます。
 流して聴いている時には粗野で男性的なイメージがありましたが聴きこんでいくと、きめ細やかに作りこんいる作品と感じることが出来ました。なるほどアルバム名も Silk &  Soul ですか。良い作品です。声は怖いけど・・

piano, vocals : Nina Simone
piano, harpsichord : Ernie Hayes
guitar : Eric Gale, Rudy Stevenson
bass : Gene Taylor
drums : Bernard Purdie
arrangements, conductor : Sammy Lowe 

producer : Danny Davis

recorded june 12, 21, august 25,26, 1967

1. It Be's That Way Sometime
2. The Look Of Love
3. Go To Hell
4. Love O' Love
5. Cherish
6. I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free
7. Turn Me On
8. Turning Point
9. Some Say
10. Consummation





  

2023年1月6日金曜日

Tommy Flanagan / Thelonica

 

 John Coltrane、Thad Jones、Wes Montgomery、Kenny Burrell、Curtis Fuller などのサイドマンとしては聴いていた Tommy Flanagan(トミフラ)のソロアルバムをはじめて聴いたのが Let`s Play the Music of Thad Jones でした。これを皮切りに徐々に Tommy Flanagan も聴くのが面白くなってきました。ピアノ・ジャズも最近聴きこんできているのであまり詳しくは語れないですが、この方は自己主張はそれほど強くないとは思います。サイドメンとしても数多くのアルバムに参加しているのでスタイルも色々もっていらっしゃるようでその分聴きやすく聴き手に優しい演奏が多いような気がします。
 トミフラは、行きつけの「おでんバー」では、それほど愛聴されていない雰囲気ですがモンクは非常に頻度高くかかります。そこで見つけたこのアルバムを持って行くと・・若干反応は薄かったようです。


 そうなんです。このアルバムはトミフラの1982年録音のモンク作品集なんです。器用なイメージのあるトミフラがモンクを演奏したらどうなるんだろう?あのリズムや 6th のぶち込み方をどのように表現するのだろうか?と思いながら聴いている人たちにはモンク集とは言わずにかけていたところ、モンクの曲とは皆さん認識していますが私も含めてインパクト的には弱かった感じです。皆さん楽器をやらない耳年間ですが総じた感想をまとめると「モンクの楽曲を楽譜に落としてインパクト無視で普通のジャズっぽく演奏するとこんな風になるんだろう」と言った感じでしょうか。モンクをあまり知らない人がこのアルバムを聴いたら普通に、時に力強く時に静かに美しく格調のあるトミフラの演奏が楽しめるアルバムです。おそらく意識的にそうしたことに違いないのですがもう少し遊んでいただいても聴者としては良かったかなと思います。
 さて酷評しているのか、なんなのかよくわからないレビューになってきましたが、North Of The Sunset についてはモンクの独特のメロディーとコード使いの曲なのでここら辺はモンク集なので始まった始まったと期待に胸膨らませる出だしです。Light Blue については、モンクのテーマをベースに美しく静かに拡張高く表現していて熱量は抑え気味にしているところが洒落た印象です。Off Minor も大好きな曲なのでテーマ始まると、オオこれね、と思いながら聴けます。しかし私的にはここらへんから何かが違うな?と異変を感じ始めます。Pannonica になると何かクラシック的なアプローチなのかなと思い始め、美しいバラードに仕上げているのでモンクは無いですがモンク集だけどモンクのコピー的要素は少ないアルバムなのだと気付きます(遅いか)Ask Me Now はピアノがリードしながら進むバラードでゆったりとエンディングまで美しい。モンクが演奏するのとは違った楽曲の良さが表現されています。Thelonious はアーリー・ジャズのようなピアノのソロのイントロから始まり、トリオになってからはリズミカルにテイラーのドラム・ソロも正調ジャズで繰り広げられます。きっちりとした演奏がカッコ良い。Reflections は、悲しいメロディーのテーマですが進むにつれて哀しみが希望に変わっていくような展開に不思議な魅力を感じます。ワルツ・アレンジの Ugly Beauty も悪くない。原曲とは全く違う魅力的な展開です。最後はタイトル曲のThelonica。ピアノ・ソロでの締めくくりです。この曲はトミフラの作曲で、Thelonious + Pannonica ですね。モンクの音楽的特徴を少しだけ意識させる部分もありますがモンクと、その音楽をサポートしたニカ夫人への感謝を表現している美しい曲です。
 レビューを書きながら改めてアルバムを丁寧に聴き直すと書き始めの最初の少し残念な印象とは変わってきました。モンクのピアニストとしての側面よりも作曲家としての側面を意識したアルバムと表現したら、このアルバムが良くわかるかと思います。また録音的も非常によく Art Taylor のドラムの緻密な表現が良くわかる録音でした。

piano : Tommy Flanagan
bass : George Mraz
drums : Art Taylor

producer : Horst Weber, Matthias Winckelmann

recorded on Nov. 30 & Dec. 1, 1982 at Eurosound, New York City.

1. North Of The Sunset
2. Light Blue
3. Off Minor
4. Pannonica
5. Ask Me Now
6. Thelonious
7. Reflections
8. Ugly Beauty
9. Thelonica