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2024年3月17日日曜日

渡辺香津美 / esprit

 





 渡辺香津美氏がニューヨークで1996年にトリオで録音した作品です。パーカッション・プレイヤーの Mino Cinelu に一目ぼれで、このアルバム制作に至ったそうです。アルバムの中身は多彩で、インドから地中海をイメージさせる無国籍サウンドまで生ギターと電気ギターを使い分けての、ごった煮的サウンドです。それが故か、いつもの音楽好きの集う「おでんバー」では、弦楽器系のフュージョン作品はあまり好まれず、評判はあまりよくありませんでした。私的には極めて渡辺香津美を感じる日本的な緻密な作品は好きなのですけどね。店のコンポとの相性はあまり良くなくて薄っぺらく聞こえた気もします。
 ちなみに「esprit」 とは日本語で「精神」の意ですが、このアルバムの題名として色々な意味が込められているとのことを、渡辺香津美氏が自身で語っています。ライナーノーツと同じ内容のものがオフィシャルに掲載されていました。
 【おやつ】【遠足】とアルバムを続けてリリースする内に、すっかりアコースティッ クギターの持つパワーと可能性に目覚めた渡辺ですが、一方エレクトリックギターの 、あの官能の「クィ~~ン」は一度味をしめている以上、黙っていてもいつしか頭を もたげてきます。アコースティックギターの持つダイナミックレンジは、ある時はエ レクトリックよりもハードに、エフェクターを百万個繋げたよりもイマジネイティブ な表現ができるのだ、ということは確信していました。
 そして突き詰めると、エレク トリックギターも実はアコースティック楽器ではないか、ということに気づきました 。ラウドでなくとも、ドライブ感を表現できる…というのも地球上に「空気」という ものが存在するおかげです。
 そしてその空気《エアー》を媒体として、ミュージシャンはその精神《エスプリ》を 表現します。エスプリという言葉には、エスとプリというダブルミーニングが隠され ています。つまりエス…エスニック→ETHNIC→「民族の」、プリ→PREMI TIVE→「原始の」。
 そこに晴天の霹靂のように、素晴らしいヒントを与える人物が現れました。
 数年前、某野外フェスティバルのステージに登場したその男はたった一人で壷と太鼓 、ドラムセットからトライアングル、生ギターやボイスまで駆使して渡辺を桃源郷《 エクスタシー》へといざなってくれました。演奏が終わるやいなや渡辺は楽屋へ乱入 し、その男にむかって「いつか一緒にやろう」とラブコールを送ったのでした。その 男の名前は…ミノ・シネル。繊細かつ大胆、太鼓を叩けば雨が降るという呪術師の一 面を合わせもちつつ、ハイテクの鬼でもある。そしてなによりも音楽の身体性を熟知 している。
ユニットとしてより自由になるためには、もう一人相棒が必要でした。六弦ベースを まるで魔法のように操るスクーリー・スベリッソンの、現代音楽的ともいえるそのハ ーモニーと、プリミティブに回帰しようとでもするかのようなラインのセンスから、 彼もまた《光と影》のヒトである…と直感しました。
 東京生まれのギタリスト、マル ティニク生まれのパーカッショニスト、アイスランド生まれのベーシスト、そんな三 人がそれぞれのイマジネーションをどう《エスプリ》しているかを、皆さんと共有で きればと願っています。 渡辺香津美


 それでは「おでんバー」では評判が良くなかったこの作品をレビューしていきましょう。Havana 生ギターのシャリシャリの音でエスニックな曲です。リズムはパーカッションのシンプルな響きとポコポコのベースで、セッションの雰囲気が良く伝わる曲となっています。小沼ようすけ氏の作品にも、この作品のような展開の曲がよくあります。もっとも小沼氏よりも香津美氏の方が先輩なわけですから、こちらの方が元祖ですけどね。Tinkle これも小沼氏によくあるパターンですが、香津美氏はピック弾きの分フレージングが細かですがコードの混ぜ方のパターンとかは似ています。似せているのではなくギタリストなので似てくるののもあるかと思われます。La Lune では、エレクリック・ギターを巧みに操る香津美節が聴けます。縦横無尽のフレーズは派手さは無いですが相変わらず凄いです。Desperado は、エスニックに戻り複雑で展開が様々なテクニカルな曲、ベースの Skúli Sverrisson とのユニゾンは前半の聴きどころ、後半は香津美氏のギターのアイデアとテクニックが炸裂します。気持ち良い。Tears はベートーベンで、牧歌的に弾いてます。ここらへんはオジサン世代は音楽の時間に聴いてきた曲なので郷愁誘われます。Cascade はパーカッションの Mino Cinelu による楽曲です。即興のセッションと思われます。Puzzle Ring これはヒーリング・ミュージックのように頭の奥底に静かに響きます。懐の深さがうかがわれます。Astral Flakes~Axis 今までやってきた曲を混ぜているのでしょうか、抽象的なテーマがちりばめられた曲です。Morocco モロッコですか。行ったことは無いですが中近東的な音階が、それを感じさせてくれます。このトリオによく合います。Kara Kara は、カラッカラな砂漠のイメージを感じます。歪んだギターが太陽の日差しを表現しているような曲です。Lately 最後はスティービーワンダーですが、クラシック調で格調高い雰囲気です。ここら辺のまとめ方が香津美氏の魅力のような気がします。
 売れ線では無いですが、香津美氏が好きな方にはこれも、おすすめのアルバムです。ギター好きには心癒されるのでは無いでしょうか🎵

guitar : Kazumi Watanabe
bass : Skúli Sverrisson
percussion, drums : Mino Cinelu

recorded & mixed at Cinton Studio, New York.NY May 1996

composed by : Kazumi Watanabe (2-4, 6, 8-10), Koko Tanikawa (1, 7), Ludwig van Beethoven (5), Mino Cinelu (6), Skúli Sverrisson (8), Stevie Wonder (11)

1. Havana
2. Tinkle
3. La Lune
4. Desperado
5. Tears
6. Cascade
7. Puzzle Ring
8. Astral Flakes~Axis
9. Morocco
10. Kara Kara
11. Lately

▶ Havana



  

2024年3月10日日曜日

Grant Green / I Want To Hold Your Hand

 


 最初の試聴はいつもの音楽好きの集う「おでんバー」で、普通に常連の皆さんとともに、このアルバムを聴いて、皆さんの評価も良いもなく悪いもなく聴いてきたのですが、再度自宅で聴き直しながらレビューを始めようと思ったとこころ、なんと表題の曲はあの Beatles 1963年のヒット曲で全く気付いていませんでした。私生まれてはいなかったものの、さすがにこの曲は知っています。同じくビートルズのヒット曲をタイトルにしたジャズ・アルバムと言えば、1967年 Wes Montgomery の A Day In The Life 1969年 Basie On The Beatles なんてとこがあります。ジャズ業界もレコード売り上げが低迷してきて、ポップス業界の人気アーチストのカバーでリスナー開拓の作戦と推測はつきますが、ライナーノーツには少し違った見方も書かれています。「ジャズミュージシャンたちは時代のポピュラーソングをレパートリーに加えてきた。それらを自分たちの個性の表現として用いてきたのだ /  Ira Gitler」確かにスタンダードと言われる曲のほとんどは昔の映画音楽やミュージカルの曲です。もともとの曲のエッセンスとも言えるテーマを取り出して、それを基に独自の解釈では発展させ、同じ曲を異なるミュージシャンが演奏するものを、どの演奏が良い、このメンバーのものが最高だ、などと批評するのがスタンダードジャズの楽しみ方の一つでもあります。Beatles の曲を取り上げたのはセールスの為ではないとは書いてはいないが、文脈にそれがうかがえるのはどうなんだろうか。ビジネス的な要素が全くないとは言えるのかは怪しいところだと私は思います。


 さてレビューしましょう。I Want To Hold Your Hand は前述のようにビートルズのヒット曲。メロディーラインははっきりしているものの、原曲を感じられないので軽薄には感じられません。Larry Young のオルガンによって映画音楽のような軽めのジャズになっています。Grant Green は無難に弾いています。タイトルにしてはジミな印象です。Speak Low は良い感じにジャズしてます。テンポは速めです。この曲は Walter Bishop Jr.Trio / Speak Low のイメージが強いですが、Grant Green の方が好きかもしれません。Elvin Jones のうねる様なドラムも快適でこれは良い。 Stella By Starlight は。Larry Young のオルガンによる味付けが素晴らしいです。どうやら、ビートルズより往年のスタンダードの方がジャズに愛称は良いようです。Corcovado これも選曲が良いですね。グリーン特有のブルージーでソウルフルなジャズギターで凄みはないものの上質な音楽を感じます。This Could Be The Start Of Something 1956年 Steve Allen により書かれた楽曲です。Allen's NBC talk show のために書かれたものであるとのことで非常に親しみやすいテーマでさりげなくポップな一面も感じるライトな曲になっています。ラストは、1975に American jukebox musical comedy film のために書かれたスタンダード At Long Last Love です。ミディアムテンポのリラックスしたブルース・セッションのような雰囲気で曲は進行します。コンサートのラストはこれで締めくくると落ち着きます。これも選曲が良いですね。
 結果、私はタイトル曲が今いちだったものの、オルガンを入れた自由度のある親しみやすい演奏に、ライブを見に行っているかのようなリラックスを感じる印象でした🎵

guitar : Grant Green
organ : Larry Young
drums : Elvin Jones
tenor sax : Hank Mobley

producer : Alfred Lion

recorded on March 31, 1965 at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey

1. I Want To Hold Your Hand
2. Speak Low
3. Stella By Starlight
4. Corcovado
5. This Could Be The Start Of Something
6. At Long Last Love





  

2024年3月9日土曜日

Larry Carlton


 アルバム購入は若い頃ではなく40代の時に、どこかの中古屋で手にして「そういえば、これも若き日の思い出」と何気なしに手に取ったはず。カールトンは1971年から1976年まで Crusaders に参加していて、このアルバムはクルセイダーズから独立して、ワーナーでの第一弾の作品1977年リリースの作品。邦題で「夜の彷徨」「ルーム335」収録の懐メロです。世代ではありますが、これを聴いて育ったもは私よりも少し上の世代でしょうか。ラジオや喫茶店ではさんざんかかっていたので、いやと言うほど耳にしていたので335は間違いなく私の中に何かを残しています。
 改めて聴くと、この Room 335 には色々な発見がありました。まずはレコーディングスタジオの名前が Hollywood のラリーの自宅スタジオ「Room 335」であるということ。ギターはもちろんGIBSON ES-335、アンプはメサブギーのMkⅡcとのこと。またこの曲には元曲があり、Steely Dan / Ajan の楽曲の PEG であること。ギターは Larry Carlton で、モチーフと書いてありましたが結構マンマです。ちなみに Room335 で検索してたら出雲の松江にある カラオケルーム335 がヒットしました。さぞやオーナーは ラリーカールトン好きかと思いきや、DANCE☆MAN とコラボしたカラオケでした。(全く関係ありませんね)


 正直 Room 335 と Rio Samba しか記憶に残っていないアルバムですので再度聴き直してレビューしてみましょう Room 335 youtubeでも様々なバージョンが録音されていますし、この曲の完全コピーをしているギタリストも多数います。改めて元祖を聴くとストリングスが入ったリッチなサウンドです。改めて聴いてもギターソロは、細かできっちりと計算されたような構成とテクニックで完成された音楽です。名曲中の名曲。Where Did You Come From はボーカル曲です。当時のフュージョン・アルバムには結構な確率でボーカル曲が入っているもので、そこそこの完成度なのですがマニアックなものが多いです。こうやって聴くと日本の Spectrum もアースだけでなくここら辺にも影響があるのかなと思います。Nite Crawler は、Crusaders のアルバムにも収録されているナンバーでサックスパートがギターソロに変更されています。Point It Up ロックっぽい硬派な音が魅力のフュージョンで、今ではこの程度の速弾きは速弾きとは言わないのかも知れませんが、当時では驚異的に正確なピッキングの速弾きだったと思われます。Rio Samba ここで、やっとギター・フュージョン・サンバの名曲が登場です。キーボードの Greg Mathieson のソロも鮮烈です。I Apologize は、アメリカンなボーカルナンバー。Don´t Give It Up は、ジェフベックでも聴いたことのあるタイプのシャッフルのリズムのロック・フュージョンです。曲としては良いのですが335の出来が良すぎてかすみます。 (It Was) Only Yesterday 最後に哀愁のバラードですが、もっとブットい音が似合う曲で Larry Carlton のギターは今一軽い。
 正直、再度聴いても Room 335 は飛びぬけて出来の良い名曲で、アルバムのバランスも何もあったもんじゃありません。たまに他の曲も聴いて思いだすこととします🎵

guitar, vocals : Larry Carlton
keyboards : Greg Mathieson
bass : Abraham Laboriel
drums : Jeff Porcaro
percussion : Paulinho Da Costa
backing vocals : William "Smitty" Smith

producer, engineer : Larry Carlton
recorded by (strings) : Paul Dobbe

recorded & mixed at Room 335, Hollywood, CA
strings Recorded at Western Studio #1, Los Angeles, CA

1. Room 335
2. Where Did You Come From
3. Nite Crawler
4. Point It Up
5. Rio Samba
6. I Apologize
7. Don´t Give It Up
8. (It Was) Only Yesterday





  

2024年3月3日日曜日

Eric Dolphy / Last Date

 

 Eric Dolphy はアルトサックス、フルートなどを演奏し、バスクラリネットをジャズのソロ楽器として取り入れたスタイルのマルチリード奏者。このアルバムは、ドルフィーがオランダを訪れ、現地の優れたジャズ・ミュージシャンらと共演した1964年6月2日の録音。レコーディングの幹部とスタジオの職員を招待したオランダのラジオ局の放送用録音とのことで、おそらく会場の人数は少ないのでしょう。スタジオライブ形式で観客の拍手もまばらです。この録音から1か月も経たない6月29日にCharles Mingus楽団のヨーロッパツアーに参加中、糖尿病による心臓発作のため、西ベルリンにおいて享年36歳で亡くなっています。
 ドルフィーをアルバムとして聴くのは初めてで、独特の曲と、超人的な感性と発想で演奏される衝撃的なフレーズは私の今まで聞いてきた音楽の中でも類似するものが無くて、独特の世界観で共演してドルフィーに呼応するヨーロッパのミュージシャンの演奏もこれまた素晴らしい。
 アバンギャルドなバス・クラリネットのブローから始まる「Epistrophy」のモンクを進化させてようなテーマと縦横無尽のバス・クラのアドリブで最初に不意打ちをくらいます。また、Hypochristmutreefuzz、Miss Ann などは抽象的でありながら法則性を感じる造形美のような美しさを感じます。You Don't Know What Love Is はドルフィーの世界観を保ちつつも凛としたフルート演奏でハッとする美しさがありどこかクラシックのような響きも美しい。このアルバムでドルフィーのプレイは感性的でありながら脳ミソを振り絞って思考もしているようにも感じてしまいます。
 さてドルフィーのこのアルバム時期の色々なことを調べているうちに色々なことがわかってきました。これほどの演奏をする人だったのにギャラは安くてミンガスのグループとして渡欧したついでに、ついにアメリカで食うことを諦め、ヨーロッパを活動の拠点に定めようと決意したその門出になるハズだった録音がこれで、レコーディングの後、ドルフィーはトリオのメンバーに、彼らと再び仕事をする計画について手紙を書いていたそうです。
 ちなみにColtraneは何度か彼と共演もしましたが, インプロバイザーとしての彼の才能を高く評価していたようで、遺品のバスクラリネットとフルートは両親からColtraneに受け継がれているそうです。


 それではレビューです。Epistrophy オリジナルは お馴染みの Monk ですがバス・クラリネットでボーっとやられると、かなり不気味な曲になりミステリアスな曲となります。一発目から素晴らしい。South Street Exit は、Eric Dolphy自身のオリジナルで、ここではフルートでの一発をスリリングに爽やかな音色で吹いていますが、気の向くまままに吹いている感じが一味ちがいます。The Madrig Speaks, The Panther Walks これはアルトでの一発。持っている感覚が普通ではない、独特の音楽感が不気味に心地よい。Hypochristmutreefuzz やたら長い曲名です(ヒポクリストマトリーファズ)ピアノの Misja Mengelberg (ミシャ・メンゲルベルク)による楽曲で、この人も相当いかれた音階の感覚の持ち主なのでしょう。ピアノに注目して聴いていると改めて凄いなあと思っていたら、Eric Dolphy が乱入、いや同じような感じなので伴走ですね。うんこれも凄い演奏です。You Don't Know What Love Is は、クラシック現代音楽風です。ここら辺に垣根は無いのかもしれません。Miss Ann ラストは Eric Dolphy オリジナルで、徹底した世界観がここでも発揮されます。そして、アルバムの演奏が終わった最後には、この録音の前の4月にインタビューでの彼の肉声で締めくくられていて、ファンにとってはジンとくるものでしょう。When music is over, it's gone in the air. You can never capture it again.🎵

alto sax, bass clarinet, flute : Eric Dolphy
piano : Misja Mengelberg
bass : Jacques Schols
drums : Han Bennink

producer: Radio Jazz Club

recorded June 2, 1964, Hilversum, Holland.

1. Epistrophy
2. South Street Exit
3. The Madrig Speaks, The Panther Walks
4. Hypochristmutreefuzz
5. You Don't Know What Love Is
6. Miss Ann





  

2024年2月25日日曜日

Thelonious Monk / The Classic Quartet

 

 1963年5月23日、東京放送テレビ(TBS)のスタジオGでのスタジオライブ音源です。マスタリング界の巨匠バーニーグラインドマンによりオーディオ修復、リマスタリングが完璧に行われたと書いてあります。しかしながら音質は完璧ではありませんでした。
 いつもの音楽好きの集う「おでんバー」に本アルバムを持っていったところ見慣れないジャケットにマスターも興味深々。今のところモンクは今一という人はこのバーにはいません。モンク好きではありますが、全ての音源を聴いている訳では無く、この音源は聴いたことが無いそうなので期待度大でした。しかしながら、聴き進んでも何かパッとするものがありません。他に客はいない中、つまみを作ってくれていたマスターも、途中で「何かつまんんないね」と一言。テレビのスタジオライブの音源なので録音状態は良いものと思っていましたが、モノラルでの録音でもあり残念ながら音質が良くない。このライブは演奏のクオリティの前に音源として何かが欠けているような気がします。音に覇気がなく何か惰性で演奏しているような、ただの録音のような気がしてしまいます。
 録音が悪いのか、そのような時代だったのか?1963年は Columbia に移籍して Monk's DreamCriss Cross などを発表し5月21日のサンケイホールのライブ Monk in Tokyo などが録音されています。Monk in Tokyo は、この録音の2日前だけに聴いてみたいものであります。


 それではレビューしてみましょう。Epistrophy 収録はお馴染みのナンバーばかり。1941年のモンクとケニークラークの共作。ミントンズのプレイハウス時代から各セットの最後を飾る曲。正調な感じで録音されていてモンクの崩し方、チャーリーラウズも迷うことなくソロを吹いている。Ba-Lou Bolivar Ba-Lues-Are B♭のブルースで Briliant Corners が初録音、私の所有コレクションでは  Live At The It Club にも収録されています。淡々としたブルースの演奏であります。冒頭曲から淡々とした演奏で特に盛り上がるところも無い。Frankie Dunlop のドラムソロあたりで、そんなことを思い始める。モノラル録音なのも単調な感じを増幅させているかもしれません。Evidence は The Nonet!Piano Solo On VogueMisteriosoLive At The It Club の数多くの作品に登場します。この作品では、ひたすら機械的にコードを規則的に不規則に弾き続けるのが印象的。ただ何かの義務感のように演奏しているかのようです。Just A Gigolo は20年代に作曲されたスタンダードで珍しいように思ったが、Monk's DreamThe Thelonious Monk Trio に収録されている常連曲。Blue Monk は、モンクが数多くの作品で演奏しているブルースです。
 録音状態だけで、これほど聴き手の印象に影響を与えるものかと、何か何かモヤモヤする作品です🎵

piano : Thelonious Monk
tenor sax : Charlie Rouse
bass : Butch Warren
drums : Frankie Dunlop

producer : Takeo Yokota

recorded at T.B.S. TV, G. Studio on May 23, 1963.

1. Epistrophy
2. Ba-Lou Bolivar Ba-Lues-Are
3. Evidence
4. Just A Gigolo
5. Blue Monk





  

2024年2月24日土曜日

Tony Monaco Yosuke Onuma & Gene Jackson / Live at Cotton Club , Japan


 オルガン、ギター、ドラムのトリオ編成です。トニー・モナコは、8歳からアコーディオンを始め、ジミー・スミスの演奏を見てジャズオルガンを目指します。10代で地元オハイオ州コロンバスのジャズクラブで演奏を始めましたが、15歳で神経性筋委縮症で入院。退院後に両親からはハモンド・オルガンをプレゼント7された。そしてジミー・スミスのオフィスにデモテープを送付し16歳からジミースミスに師事して20歳で師匠と初共演。しかし1980年~2006年までは父親からの願いと早くに結婚し子供もできたことにより音楽ではない仕事についていた。2000年に友人のジョーイ・デフランセスコのプロデュースでアルバムをリリースし、ジャズウィークのTOP10入りし2枚目の作成を目指す。それからオルガン一本で生計を立てている。
 そんなジミー・スミスの愛弟子トニー・モナコと、2011年5月のコットンクラブ公演を機に結成されたオルガン・トリオで、2012年6月29日のコットンクラブ公演の2ndセット全曲が演奏順に収録された生音源で、収録は実は2日間4セット行われているとのこと。つまりは数十年後にコンプリート版が出る可能性もあるということですね。


 それではレビューです。Answering Service オープニングはブルース・セッションでお出迎えです。軽めのお気軽セッションで肩慣らしといったところでしょうか。Nice To Be With You モコモコ・サウンドから突き刺すようなサウンドまで変幻自在なオルガンサウンドで始まり小沼氏のオーソドックスなスタイルのギターが非常に気持ち良いオルガン・ジャズ・サウンド。Happy Play Ground は小沼氏のギターから始まるアシッド・ジャズ風のファンク・ジャズです。息もピッタリのご機嫌なナンバーです。主役は小沼氏になり樹生無尽の弾きっぷりはさすが。Aglio E Olio は、パスタ料理のアーリオ・オーリオが楽曲名になっています。どなたの曲かは不明ですがテーマの進行具合からしても即興セッションではない?のでしょう。高速で進行します。Happy Sergio もどなたの曲かはわかりませんでした。ボサノバであることからして Sergio Mendes を祝う曲であることは確かでしょう。Called Love は、ボーカルものです。歌は Tony Monaco です。ファンサービスのようなものですね。アットホームな雰囲気がとても良いです。I`ll Remember Jimmy これはトニーモナコの曲でしょう。師匠のジミースミスの賛歌ですね。Slow Down Sagg でライブは終了します。これは師匠 Jimmy Smith の曲です。耳覚えもありますが本家の演奏を聴いたのか?誰かのカバーかは覚えていませんがメンバーも最後はノリ良く演奏しています。小沼氏も珍しく荒々しくギターをかき鳴らしています。オルガンでベンドのような芸当も飛び出して客も大喜び。
 ハモンドオルガンという楽器は、刺激的で味があります。濁っていて音に揺れがあって肉声的であるのに、機械的な音伸びがありますし、私は細かいリズムのバッキングよりも、ロングトーンで、ビブラート効かせたキメの時にグッときます。小沼ようすけ氏の、指弾きならではの絡みつくようなギターフレーズも相性良くオルガンと絡んでいます🎵

organ : Tony Monaco
guitar : Yousuke Onuma
drum : GeneJackson

1. Answering Service
2. Nice To Be With You
3. Happy Play Ground
4. Aglio E Olio
5. Happy Sergio
6. Called Love
7. I`ll Remember Jimmy
8. Slow Down Sagg



2024年2月23日金曜日

Folklore(AOKI.hayato haruka nakamura)


 AOKI.hayato と haruka nakamura が2012年に、CDショップ「雨と休日」3周年演奏会結成されたギターDUO。このアルバムは2014年秋にリリースされています。
 そしてアルバム名の「FOLKLORE」と銘打ったDOUでライブツアーに回っていたとのこと、ギター片手の旅は大変そうですがカッコ良い生き方でうらやましいです。出会った人々、見えた風景、経過していった時間、溢れ出す感情を旋律にしながら奏でる。二人で旅を重ねながら1曲づつ曲を構築して2年かけて出来上がったのが本アルバムとのこと。
 風景絵画のように流れる音楽で、静かに語りかけてくる音に惹かれます。

 アルバムには全14曲が収録され、別CDにはAOKIとnakamuraが出会ってはじめて行ったセッションの 録音をまとめたものが収録されています。
 いつもなら、全曲レビューとするところなのですがアルバム全体を通して聴いて1枚のようなアルバムで、特にこの曲がということでもないような気がします。Ⅰで序章、days は出だし曲、FOLKLORE で歌メロ1、call で一休みのような感じです。このアルバムからシングルカットは恐らくありません。メロディーのある環境音楽のようなもので、二人のアーティストが語りかけるように奏でるメロディーはずっしりと、ゆったりと時間を刻みます🎵

【Disc1】
1. I
2. days
3. FOLKLORE
4. call
5. メア
6. fog
7. 夕べ
8. 水声
9. もうひとつの時間
10. TALKING
11. 灯り
12. XII
13. coda
14. g

【Disc2】
1. 二一時二〇分
2. 二一時五七分
3. 二二時三八分





  

2024年2月18日日曜日

Esperanza Spalding / Chamber Music Society

 


 Chamber Music とはクラシックの室内楽のことで、バイオリン、チェロ、ビオラと言った室内管弦楽に使われる楽器による小編成のバンドで、Junjo (2006) Esperanza (2008) に続く、3枚目のアルバムです。様々な表情を見せてくれるエスペランザのアルバムたちですが、今回は心に浸みるような楽曲と壮大な世界観を、小さな室内楽編成のバンドで表現しているのには、また惚れてしまいます。
 といっても、行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」では評価は、それほどでもありません。マスターは、それなりに評価はしてくれていますが、表情が全く違うエスペランザを面白がっている感じで、ほぼ私と同年代の音の隙間にこだわるK氏の評価は得られません。まあ音楽とはそういうもので、何が自分の頭の中に響いてくるのかは好みや、それまで体験してきた音楽性、その時の自分の状況、体調によっても聴いている感覚は変わるものです。そしてエスペランザが好きと言った自己暗示もあり、このアルバムは心地よい音楽の良さを感じます。低音域のベースと高音域のボーカルを巧みに操る彼女の才能には今回も脱帽。


 それではレビューしていきましょう。Little Fly 可愛らしいメロディーで歌い上げるテーマはハエです。おぞましいハエではなくチョロチョロと動き回るハエを愛らしく見つめる歌でしょうか。Knowledge Of Good And Evil エスペランザらしい広がりを持つ曲で、彼女の持つ歌の音階は独特で中毒性があります。アドリブ部分はボーカルではなくまさにボイス。声も楽器です。Really Very Small 中近東的な音階のコーラスのイントロ、変拍子の動きの大きなベースライン、歌詞は無くボイスで全てが表現されています。何が小さいのか?またハエに戻ったのか?Chacarera 民族音楽的なリズムに抽象的なベースとワルツリズムのピアノですが何か室内楽的な響きの曲です。調べてみたら Chacarera はアルゼンチンの民族舞踊の名前とのことでなるほど。でもリズムはアフリカンな気もします。Wild Is The Wind 今度は風がテーマです。曲名からは嵐を連想しますが、ここでは嵐の前の静けさのような厳かな雰囲気が感じられます。包み込むように映画音楽を歌うかのようなエスペランザの最高潮に達する超高音もゾクゾクします。Apple Blossom ギターの Ricald Vogt とともに歌われるフォーク調の楽曲で普通の曲です。普通に良いですがエスペランザの普通にはビックリです。 As A Sprout も、普通に室内楽的な楽曲で41秒の小曲。What A Friend そして少し怪しい雰囲気の出だしですが、この曲はエスペランザ流ポップに分類されるような楽曲で、楽器編成が違うので少し厳かな雰囲気です。Winter Sun 冬の太陽は綺麗な空気の中に冷たく少し暖かな雰囲気の光が差し込むのが嬉しいもの。少し寒い日にグレイな雲を眺めながらブランケットを羽織っている。何が比喩されているのかはよくわかりませんが曲名よりは忙しい展開の曲です。Inútil Pasagem そしてアカペラのイントロ、ささやき系のボーカル。とても可愛らしくて好きですね。エスペランザの新しい一面のような楽曲ですが音の構成は、まさにエスペランザ・ワールドです。と思っていたら Antônio Carlos Jobim の曲でした。Short And Sweet 小さくまとめたような楽曲が心和みます。Midnight Sun 最後は彼女のボイスとベースのみの弾き語りですが、ベース上手すぎ、ボーカルも柔らかな広い声域で、超絶に上下する音階を細かに操る彼女の歌は素晴らしい。
 youtubeでエスペランザの図書館ライブなどを見ることもありますが、その活動の延長でしょうか。とても心に残る内容と音作りは、静かで豊かな心持になりたい時に聴きたいと思います。これを聴きながらウトウトするのも気持ち良いですね。豊かな気持ちになれるアルバムです🎵
acoustic bass, voice : Esperanza Spalding
piano, electric piano (rhodes) melodica : Leo Genovese
guitar : Ricald Vogt (Apple Blossom)
cello : David Eggar
drums : Terri Lyne Carrington
percussion, drums (candombe drums), bombo leguero : Quintino Cinalli
violin : Entcho Todorov
viola : Lois Martin

producer : Esperanza Spalding, Gil Goldstein

recorded at Bennett Studios - Englewood, New Jersey October 8-10, 2009 and January 14-19, 2010

1. Little Fly
2. Knowledge Of Good And Evil
3. Really Very Small
4. Chacarera
5. Wild Is The Wind
6. Apple Blossom
7. As A Sprout
8. What A Friend
9. Winter Sun
10. Inútil Pasagem
11. Short And Sweet
12. Midnight Sun





  

2024年2月17日土曜日

Weather Report Jazz Fusion Guitar & Piano


 あの Weather Report(ウェザーリポート)の曲のカバー・アルバムかと思って購入したんですけど、どうも違うようです。それでも新解釈かと思って必死に聞いてたんですが、どう聴いても、あの Weather Report は、どこにも出てきません。全く関係ありませんでした。実態は、那須基作(Kisaku Nasu)のセレクトによるフュージョン・コンピレーション・アルバムでした。伝統的ジャズから進化したグルーヴ・ジャズのさまざまなバリエーションを聴くことができるダンサブルな一枚で、ライトで爽やかな曲が選曲されています。
 帯の売り文句は「賞味期限無し!ジャズっててカッコ良い。時を超えて残る真のクラシックスのみ厳選!アンチ”使い捨て”!職人復興!つまりルネッサンス」という、興奮して書いたのか何を言ってるのか結構わかりずらい煽りと、誤植を一か所発見です。「ってて」
 もっとわかりやすく書いてある箇所もありました。「パット・メセニー、トニーニョ・オルタの名曲をカヴァーした新人日本人ジャズ・グループSOLID NEXASから美麗ピアノ・ハウスの新定番INTER SELECTOR、さらにはシカゴ・ハウスの巨人LARRY HEARDまでを収録」こちらの方がわかりやすいですね。要は色んなのオムニバスなんだと言うこと。那須基作氏は「JAZZ integral 所属の選曲家で、コンピは Jazz For More / El Dorado を他に所有しています。こちらも素晴らしい選曲を楽しませていただいております。


 それではレビューです。First Friendship は Lars Bartkuhn ドイツのフランクフルトのギタリスト、コンポーザーで1990年代から現在に至るまでハウス、ジャズ・シーンで支持を受けるアーチストとのこと。フュージョンとハウスが混ざったハッピーな楽曲。キメとブレイクがカシオペアっぽいところが日本人も好きなパターンですね。ギターは野呂さんタイプではなくファンク系とフュージョン系のミックス。 The Piano Live は Interselector の楽曲。1990年都内クラブでDJとして活動を開始した日本人クリエイター 草島 卓也氏 の活動名がこの名前らしい。DJミックスにキーボード、ギターを被せた録音のようです。ズンズンくるベースとリズムにラテン風味のハウスのキーボードがメイン。Aquelas Coisas Todas は Solid Nexus の楽曲。ネオ・エイジ・ジャズを体現したバンドで、リーダーのギター本吉大我はバークリー音楽院に留学。2005年ギブソン・ジャズ・ギター・コンテストでSolid Nexusを率いて出場し優勝しています。楽曲はスチール・パンが印象的なラテンにフルートっぽい音のギターシンセ。文字上は熱い音楽のようになりますがメチャクチャライトです。 Brazilian Love Affair は Shakatak です。お馴染みアドリブ偏重ではなくメロディと編曲を重視した親しみやすい1980年代にレベル42と人気を分かち合ったブリティッシュ・ジャズ・ファンク。名前だけ知ってて、あまり聴いてこなかったバンドです。耳に馴染みやすいジャズファンクで、これは王道。Summer Knows は Fusik(フュージック)の楽曲で、i-depの藤枝伸介(Sax)と、DJ/クリエイターcharichariこと井上薫のユニット。ここではギターのフラメンコギタリスト沖仁をゲストで迎えての楽曲です。スパニッシュですが、これも基本ライトなフュージョンの仕様です。Better Days Ahead です。Solid Nexus で2曲目になります。この曲はスチールパン無しのシンセギターとピアノが主役です。ジャズしてる感じですが、PCなどの機械で録音していくと、このタイプになりがちな若干無機質感もあります。ドライで良いです。Summer Daze は Nick Holder による楽曲。トロント出身のヒップホップ、ハウスDJ、プロデューサーとのこと。聞き流し系のポップなサウンドです。Amateras  またまた Solid Nexus です。かなり 那須基作氏 の推しですね。DJ系のアーチストは一つのパターンを展開するとかブロック・パーツを組み合わせて楽曲に仕上げる感じが多いのに対し、このバンドはしっかり曲を作っているので、やはりアルバムのアクセントとして重要な役割を果たしていると感じます。Treasure Everywhere は Lars Bartkuhn & His Passion Dance Orchestra なるバンドです。この Lars Bartkuhn の参加する楽曲は私このアルバムで初めて聴きますがタイプです。1曲目の First Friendship よりもUKジャズファンクにブラジル要素が加わった感じはかなり良い。Tejal は DJ Fudge の曲で、この前の曲の Lars Bartkuhn とリズムテンポがほぼ同じなのでメドレーのように次の曲に移行してきました。DJの流すサウンドトラックにピアノで即興しているタイプですね。スキですが聞き流すタイプの曲です。Love's Arrival は Larry Heard で シカゴハウス、ディープハウスの先駆者とのこと。ハウスのリズムにジャズテクニックのエレピの親和性は鉄板ですからこの曲も気持ちよく聴けます。オオトリは、Reaching Out Of Love で 日本人のセッション Seikou Nagaoka Feat. Pamela Driggs です。やはり私は日本人。最後にこのサウンドは落ち着きます。和の音階は無いですが実に日本人好みの洋系の和ものですね。締めにこの曲を持ってくるあたりは、共感。
 きっちり作りこまれたコンピは、聴いていて楽しいです。聞き流しても良し、じっくり聴きこんで個々の曲や、アルバムの構成を聴くも良し🎵

manufactured by  Rambling Records
compiled by Kisaku Nasu

1. Lars Bartkuhn / First Friendship
2. Interselector / The Piano Live (Original Mix)
3. Solid Nexus / Aquelas Coisas Todas
4. Shakatak / Brazilian Love Affair
5. Fusik / Summer Knows (Album Version)
6. Solid Nexus / Better Days Ahead
7. Nick Holder / Summer Daze (Original Mix)
8. Solid Nexus / Amateras
9. Lars Bartkuhn & His Passion Dance Orchestra / Treasure Everywhere
10. DJ Fudge / Tejal
11. Larry Heard / Love's Arrival
12. Seikou Nagaoka Feat. Pamela Driggs / Reaching Out Of Love