Eric Dolphy はアルトサックス、フルートなどを演奏し、バスクラリネットをジャズのソロ楽器として取り入れたスタイルのマルチリード奏者。このアルバムは、ドルフィーがオランダを訪れ、現地の優れたジャズ・ミュージシャンらと共演した1964年6月2日の録音。レコーディングの幹部とスタジオの職員を招待したオランダのラジオ局の放送用録音とのことで、おそらく会場の人数は少ないのでしょう。スタジオライブ形式で観客の拍手もまばらです。この録音から1か月も経たない6月29日にCharles Mingus楽団のヨーロッパツアーに参加中、糖尿病による心臓発作のため、西ベルリンにおいて享年36歳で亡くなっています。
ドルフィーをアルバムとして聴くのは初めてで、独特の曲と、超人的な感性と発想で演奏される衝撃的なフレーズは私の今まで聞いてきた音楽の中でも類似するものが無くて、独特の世界観で共演してドルフィーに呼応するヨーロッパのミュージシャンの演奏もこれまた素晴らしい。
アバンギャルドなバス・クラリネットのブローから始まる「Epistrophy」のモンクを進化させてようなテーマと縦横無尽のバス・クラのアドリブで最初に不意打ちをくらいます。また、Hypochristmutreefuzz、Miss Ann などは抽象的でありながら法則性を感じる造形美のような美しさを感じます。You Don't Know What Love Is はドルフィーの世界観を保ちつつも凛としたフルート演奏でハッとする美しさがありどこかクラシックのような響きも美しい。このアルバムでドルフィーのプレイは感性的でありながら脳ミソを振り絞って思考もしているようにも感じてしまいます。
さてドルフィーのこのアルバム時期の色々なことを調べているうちに色々なことがわかってきました。これほどの演奏をする人だったのにギャラは安くてミンガスのグループとして渡欧したついでに、ついにアメリカで食うことを諦め、ヨーロッパを活動の拠点に定めようと決意したその門出になるハズだった録音がこれで、レコーディングの後、ドルフィーはトリオのメンバーに、彼らと再び仕事をする計画について手紙を書いていたそうです。
ちなみにColtraneは何度か彼と共演もしましたが, インプロバイザーとしての彼の才能を高く評価していたようで、遺品のバスクラリネットとフルートは両親からColtraneに受け継がれているそうです。
それではレビューです。Epistrophy オリジナルは お馴染みの Monk ですがバス・クラリネットでボーっとやられると、かなり不気味な曲になりミステリアスな曲となります。一発目から素晴らしい。South Street Exit は、Eric Dolphy自身のオリジナルで、ここではフルートでの一発をスリリングに爽やかな音色で吹いていますが、気の向くまままに吹いている感じが一味ちがいます。The Madrig Speaks, The Panther Walks これはアルトでの一発。持っている感覚が普通ではない、独特の音楽感が不気味に心地よい。Hypochristmutreefuzz やたら長い曲名です(ヒポクリストマトリーファズ)ピアノの Misja Mengelberg (ミシャ・メンゲルベルク)による楽曲で、この人も相当いかれた音階の感覚の持ち主なのでしょう。ピアノに注目して聴いていると改めて凄いなあと思っていたら、Eric Dolphy が乱入、いや同じような感じなので伴走ですね。うんこれも凄い演奏です。You Don't Know What Love Is は、クラシック現代音楽風です。ここら辺に垣根は無いのかもしれません。Miss Ann ラストは Eric Dolphy オリジナルで、徹底した世界観がここでも発揮されます。そして、アルバムの演奏が終わった最後には、この録音の前の4月にインタビューでの彼の肉声で締めくくられていて、ファンにとってはジンとくるものでしょう。When music is over, it's gone in the air. You can never capture it again.🎵
alto sax, bass clarinet, flute : Eric Dolphy
piano : Misja Mengelberg
bass : Jacques Schols
drums : Han Bennink
producer: Radio Jazz Club
recorded June 2, 1964, Hilversum, Holland.
1. Epistrophy
2. South Street Exit
3. The Madrig Speaks, The Panther Walks
4. Hypochristmutreefuzz
5. You Don't Know What Love Is
6. Miss Ann
▶ Miss Ann
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