2024年2月18日日曜日

Esperanza Spalding / Chamber Music Society

 


 Chamber Music とはクラシックの室内楽のことで、バイオリン、チェロ、ビオラと言った室内管弦楽に使われる楽器による小編成のバンドで、Junjo (2006) Esperanza (2008) に続く、3枚目のアルバムです。様々な表情を見せてくれるエスペランザのアルバムたちですが、今回は心に浸みるような楽曲と壮大な世界観を、小さな室内楽編成のバンドで表現しているのには、また惚れてしまいます。
 といっても、行きつけの音楽好きの集う「おでんバー」では評価は、それほどでもありません。マスターは、それなりに評価はしてくれていますが、表情が全く違うエスペランザを面白がっている感じで、ほぼ私と同年代の音の隙間にこだわるK氏の評価は得られません。まあ音楽とはそういうもので、何が自分の頭の中に響いてくるのかは好みや、それまで体験してきた音楽性、その時の自分の状況、体調によっても聴いている感覚は変わるものです。そしてエスペランザが好きと言った自己暗示もあり、このアルバムは心地よい音楽の良さを感じます。低音域のベースと高音域のボーカルを巧みに操る彼女の才能には今回も脱帽。


 それではレビューしていきましょう。Little Fly 可愛らしいメロディーで歌い上げるテーマはハエです。おぞましいハエではなくチョロチョロと動き回るハエを愛らしく見つめる歌でしょうか。Knowledge Of Good And Evil エスペランザらしい広がりを持つ曲で、彼女の持つ歌の音階は独特で中毒性があります。アドリブ部分はボーカルではなくまさにボイス。声も楽器です。Really Very Small 中近東的な音階のコーラスのイントロ、変拍子の動きの大きなベースライン、歌詞は無くボイスで全てが表現されています。何が小さいのか?またハエに戻ったのか?Chacarera 民族音楽的なリズムに抽象的なベースとワルツリズムのピアノですが何か室内楽的な響きの曲です。調べてみたら Chacarera はアルゼンチンの民族舞踊の名前とのことでなるほど。でもリズムはアフリカンな気もします。Wild Is The Wind 今度は風がテーマです。曲名からは嵐を連想しますが、ここでは嵐の前の静けさのような厳かな雰囲気が感じられます。包み込むように映画音楽を歌うかのようなエスペランザの最高潮に達する超高音もゾクゾクします。Apple Blossom ギターの Ricald Vogt とともに歌われるフォーク調の楽曲で普通の曲です。普通に良いですがエスペランザの普通にはビックリです。 As A Sprout も、普通に室内楽的な楽曲で41秒の小曲。What A Friend そして少し怪しい雰囲気の出だしですが、この曲はエスペランザ流ポップに分類されるような楽曲で、楽器編成が違うので少し厳かな雰囲気です。Winter Sun 冬の太陽は綺麗な空気の中に冷たく少し暖かな雰囲気の光が差し込むのが嬉しいもの。少し寒い日にグレイな雲を眺めながらブランケットを羽織っている。何が比喩されているのかはよくわかりませんが曲名よりは忙しい展開の曲です。Inútil Pasagem そしてアカペラのイントロ、ささやき系のボーカル。とても可愛らしくて好きですね。エスペランザの新しい一面のような楽曲ですが音の構成は、まさにエスペランザ・ワールドです。と思っていたら Antônio Carlos Jobim の曲でした。Short And Sweet 小さくまとめたような楽曲が心和みます。Midnight Sun 最後は彼女のボイスとベースのみの弾き語りですが、ベース上手すぎ、ボーカルも柔らかな広い声域で、超絶に上下する音階を細かに操る彼女の歌は素晴らしい。
 youtubeでエスペランザの図書館ライブなどを見ることもありますが、その活動の延長でしょうか。とても心に残る内容と音作りは、静かで豊かな心持になりたい時に聴きたいと思います。これを聴きながらウトウトするのも気持ち良いですね。豊かな気持ちになれるアルバムです🎵
acoustic bass, voice : Esperanza Spalding
piano, electric piano (rhodes) melodica : Leo Genovese
guitar : Ricald Vogt (Apple Blossom)
cello : David Eggar
drums : Terri Lyne Carrington
percussion, drums (candombe drums), bombo leguero : Quintino Cinalli
violin : Entcho Todorov
viola : Lois Martin

producer : Esperanza Spalding, Gil Goldstein

recorded at Bennett Studios - Englewood, New Jersey October 8-10, 2009 and January 14-19, 2010

1. Little Fly
2. Knowledge Of Good And Evil
3. Really Very Small
4. Chacarera
5. Wild Is The Wind
6. Apple Blossom
7. As A Sprout
8. What A Friend
9. Winter Sun
10. Inútil Pasagem
11. Short And Sweet
12. Midnight Sun





  

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