2024年2月10日土曜日

Brad Mehldau Trio / Art Of The Trio, Vol. 4: Back At The Vanguard

 

 青色の無機質なデザインのジャケットには、正直期待していなくて家の未試聴CDの山に長く眠っていた盤でありますが何と当たりでした。もったいない。私がリトマス試験紙として反応・評価を引き合いに出す、音楽好きの集う「おでんバー」でも珍しく万人に評価上々でした。「おでんバー」の住人は新しめのアーチストを味わう余裕は無いので、1970年生まれの Brad Mehldau に馴染みはありませんでした。(それでも現時点でメルドー53歳)
 私自身も Brad Mehldau の演奏を聴いた機会はそれほどなく不思議系と正統派ジャズのKurt Rosenwinkel / Deep Song ぐらいで、最近は購入していないジャズ雑誌にも名前は良く出ているので存在は知っていましたがピアニストに注目はしていませんでした。
 Mehldauの Art Of The Trio はVol5までシリーズ化していて、そのシリーズ第4弾のVillage Vanguard ライブです。これは中古盤屋で探してコンプリートしなければならないかなと思いますが、7枚組のボックスも発売されているようです。ボックスには7枚目のCDが Additional Recordings として収録されている模様。収集家としては1枚づつ購入して気に入ったらボックスも購入のパターン。コンプリート・ボックスみたいなものは企業の大人の販売戦略であると思ってはいます。しかしダブるのはもったいないんですが、ジャケットやライナーノーツもみて観たいし未収録曲も聴いてみたいのでコンプリート・ボックスは価値があれば企業の販売戦略にはまるのも致し方ないでしょう。


 数度聞き流していますが、深くは聴いていないこのアルバムのレビューは楽しそうです。さて、 All The Things You Are 誰もが良く知る曲で聴いたことのあるナンバーですが、何かの違和感があります。変拍子です。なるほどブツブツと至る所で分断される知っている部分が急展開でつながっていくこの感じは楽しいです。後半は変拍子がわからくなるのは腕ですね。Sehnsucht 邦題は憧れとありますメルドーのオリジナル。これはベースとピアノが何拍かズレているようで、ズレていない不思議な曲です。ズレていると感じるか感じないかは聴き手次第のような部分もあります。1曲目は変拍子のリズムによる遊び、2曲目は旋律での遊びですが、これも聴き進めるうちに違和感がなくなる魔法のような展開。ピアノソロではバロックの練習曲のような展開もあります。最後のワザと音程を外した終わり方も会心の演奏もこれで終わりだよと客に笑いかけながらの締めが想像できます。心にくい。Nice Pass もメルドーのオリジナル。マイクスターンにあるようなテーマの音の使い方です。マイクスターンの場合は、機械的にあるフレーズをギターの指盤で動かしていくとこのパターンになりますがピアノでも、多分同じ原理ですね。この曲もピアノが規則正しくパターンを弾きながら、ベースが微妙にかみ合わないようなパターンで弾くが何回かにピタッと合うところができて、それが聴く人に快感をもたらします。しかもそれをアドリブでやってしまうと言う超人的技術力と音感とリズム感。Solar は Miles Davis 作品です。序盤はベースの Larry Grenadier がバンドを引っ張りながらの変則的な演奏。それが終わるとテンポ早めのビバップとなり表情が変わります。これも良いですね。London Blues についてはメルドーオリジナル。アメリカで活動ですがロンドン・ブルースですから、ツアーの時に作ったんでしょうか。予想していましたが全くブルース的には聞こえません。コード進行はブルースなんでしょうか?I'll Be Seeing You は、出だし優しくとっつき易いです。1938年に発表されたブロードウェイ・ミュージカル Right This Way の挿入歌とのことで、聴いたこともありますね。同じようなフォーマットで飽きさせることの無い内容は脱帽です。最後は Exit Music (For A Film) 「ロミオ+ジュリエット」のために書き下ろされ、Exit Music(映画のクレジットのとこで流れる曲)として使われた曲です。物悲しい旋律を変拍子も無く淡々と演奏するのには逆に面食らい、進行するほど熱くなってくる演奏には聴いている側もコブシを握りしめるような展開になります。いや良いです。
 聴きどころは、1曲目の All The Things You Are だと思いますが、それぞれ聞かせどころ演奏のコンセプトが様々で、それぞれ明確で魅力あり、かつクリエイティブで、どこをとっても素晴らしいアルバムでした。このアルバムの保管場所は、直ぐに聴けるCD置き場行き決定です🎵

piano : Brad Mehldau
bass : Larry Grenadier
drums : Jorge Rossy

producer : Matt Pierson
recorded by : David Oakes

recorded January 5-10, 1999 at the Village Vanguard, New York, NY

1. All The Things You Are
2. Sehnsucht
3. Nice Pass
4. Solar
5. London Blues
6. I'll Be Seeing You
7. Exit Music (For A Film)


▶ Solar

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