2024年2月2日金曜日

Robert Glasper / Covered

 

 R&Bのエッセンスを取り込んだリズムでピアノはジャズ。絶賛の雑誌批評ほど新しくはないと思いますが、スタジオのリラックスした雰囲気の中でのトリオの素晴らしい演奏でした。イメージとしては、電子楽器を駆使した Robert Glasper Experiment / Black Radio だったのですがアコースティックを駆使したアルバムなので、旧来の頑固なジャズ・ファンも魅了するアルバムになっているようです。かと言って従来のスタンダードなジャズの焼き直しではなく、Robert Glasper の iPodに入っている Radiohead、Joni Mitchell、Musiq Soulchild、John Legend、Bilal、Kendrick Lamar、Jhene Aiko と言った現代のヒップな音楽から古典の Stella By Starlight までをジャズ・ピアノで翻訳していくのが本作品のコンセプトのようです。


 それでは、レビューしてみましょう。Introduction では、Glasperがアルバムのコンセプトを説明し、メンバー紹介。I Don't Even Care は、Black Radio 2 の収録曲で、のリメイク。抽象的なイメージのピアノのアルペジオと現代風なベースラインとドラムのパターンの3つを機械的に足した変わった雰囲気の曲の中でピアノのアドリブ。後半はピアノだけフリーに近い状態になってからが盛り上がり。Reckoner は Radiohead のカバー。ドラムは8ビートで、ベースもアコースティックではありますが、基本原曲のベースライン採用と思われますが、安っぽいカバーの雰囲気はなくてジャズでは無いところで成立しています。Barangrill については Joni Mitchell のカバー。オリジナルは For The Roses(1972)となっています。原曲を聴いてみましたが、雰囲気はオリジナルを受け継ぐ演奏となっています。旋律をなぞるだけでなく Joni の歌が再現されているように聞こえるのも楽しいです。(流して聴いていた時はジャズ・フォーマットと思っていましたが3曲聴いた時点で既に違いますね)次は、In Case You Forgot で、これは Glasperのオリジナルの即興の中ベースとドラムが各シーンをぶった切るようにワンショットで締めます。各シーンの締めの中で頭の中で回想するように Time After Time、I Can't Make You Love Me が出てきます。中々意味深いような感じもする作品です。So Beautiful については、Black Radio にも参加していた Musiq Soulchild のカバーで、オリジナルは Onmyradio(2008)となっています。こちらについては、ソウル・バラード風のジャズ作品となっています。トリオ作品ではありますが、シーンによって音楽性が変わる奥が深い作品ですね。The Worst は、新進のアーチスト Jhene Aiko のカバーで、Glasper 自身の愛聴曲ではなく、従姉妹の愛聴曲からのピックアップとのこと。オリジナルは聴いていませんが美しい旋律を持つ曲で、歌っているボーカルの姿も想像ができます。喰わず嫌いであった Glasper 侮るべからず。Good Morning は  John Legend のカバー。とてもポップで穏やかな曲でこのピアノ・トリオの余裕を感じます。Stella By Starlight で、やっと Victor Young の有名スタンダードの出番です。しっかりジャズしてくれているのが嬉しい限り。Levels は Bilal のカバーで、この人はlasperのニュースクール大学時代からの盟友らしい。これも原曲知りませんが、美しいバラードでモチーフは抽象的。Got Over はオリジナル曲で、Harry Belafonte のボイスで2014年8月に起きたミズーリ州セントルイスでの黒人少年射殺事件(警察官が丸腰の黒人少年を射殺)がモチーフで人種差別への鋭いメッセージを投げ掛けまています。続く I'm Dying of Thirst は
Hip-Hopアーティスト Kendrick Lamar の作品のカバーで Glasperの6歳の息子らが近年の人種差別絡みの事件の犠牲者となった黒人被害者の名前を読み上げています。Dillalude 3 は
国内盤ボーナス・トラック。故J Dilla へのトリビュートで、現代的な楽曲です。
 黒人差別への批判メッセージあり、サウンド的にはビートは聴いているがアコースティックなトリオで色々な音楽的な仕掛けが満載と、よく聴くと濃い目の味付けでピリッとスパイスが効いているアルバムで聴き流しているより、じっくり聴いた方が良さがわかってくるアルバムでした🎵

piano : Robert Glasper
bass : Vicente Archer
drums : Damion Reid
producer : Robert Glasper

recorded live at Capitol Studios Hollywood CA. December 2nd and 3rd 2014.

1. Intro
2. I Don't Even Care
3. Reckoner
4. Barangrill
5. In Case You Forgot
6. So Beautiful
7. The Worst
8. Good Morning
9. Stella By Starlight
10. Levels
11. Got Over
12. I'm Dying of Thirst
13. Dillalude 3





  

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