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2024年2月10日土曜日

Brad Mehldau Trio / Art Of The Trio, Vol. 4: Back At The Vanguard

 

 青色の無機質なデザインのジャケットには、正直期待していなくて家の未試聴CDの山に長く眠っていた盤でありますが何と当たりでした。もったいない。私がリトマス試験紙として反応・評価を引き合いに出す、音楽好きの集う「おでんバー」でも珍しく万人に評価上々でした。「おでんバー」の住人は新しめのアーチストを味わう余裕は無いので、1970年生まれの Brad Mehldau に馴染みはありませんでした。(それでも現時点でメルドー53歳)
 私自身も Brad Mehldau の演奏を聴いた機会はそれほどなく不思議系と正統派ジャズのKurt Rosenwinkel / Deep Song ぐらいで、最近は購入していないジャズ雑誌にも名前は良く出ているので存在は知っていましたがピアニストに注目はしていませんでした。
 Mehldauの Art Of The Trio はVol5までシリーズ化していて、そのシリーズ第4弾のVillage Vanguard ライブです。これは中古盤屋で探してコンプリートしなければならないかなと思いますが、7枚組のボックスも発売されているようです。ボックスには7枚目のCDが Additional Recordings として収録されている模様。収集家としては1枚づつ購入して気に入ったらボックスも購入のパターン。コンプリート・ボックスみたいなものは企業の大人の販売戦略であると思ってはいます。しかしダブるのはもったいないんですが、ジャケットやライナーノーツもみて観たいし未収録曲も聴いてみたいのでコンプリート・ボックスは価値があれば企業の販売戦略にはまるのも致し方ないでしょう。


 数度聞き流していますが、深くは聴いていないこのアルバムのレビューは楽しそうです。さて、 All The Things You Are 誰もが良く知る曲で聴いたことのあるナンバーですが、何かの違和感があります。変拍子です。なるほどブツブツと至る所で分断される知っている部分が急展開でつながっていくこの感じは楽しいです。後半は変拍子がわからくなるのは腕ですね。Sehnsucht 邦題は憧れとありますメルドーのオリジナル。これはベースとピアノが何拍かズレているようで、ズレていない不思議な曲です。ズレていると感じるか感じないかは聴き手次第のような部分もあります。1曲目は変拍子のリズムによる遊び、2曲目は旋律での遊びですが、これも聴き進めるうちに違和感がなくなる魔法のような展開。ピアノソロではバロックの練習曲のような展開もあります。最後のワザと音程を外した終わり方も会心の演奏もこれで終わりだよと客に笑いかけながらの締めが想像できます。心にくい。Nice Pass もメルドーのオリジナル。マイクスターンにあるようなテーマの音の使い方です。マイクスターンの場合は、機械的にあるフレーズをギターの指盤で動かしていくとこのパターンになりますがピアノでも、多分同じ原理ですね。この曲もピアノが規則正しくパターンを弾きながら、ベースが微妙にかみ合わないようなパターンで弾くが何回かにピタッと合うところができて、それが聴く人に快感をもたらします。しかもそれをアドリブでやってしまうと言う超人的技術力と音感とリズム感。Solar は Miles Davis 作品です。序盤はベースの Larry Grenadier がバンドを引っ張りながらの変則的な演奏。それが終わるとテンポ早めのビバップとなり表情が変わります。これも良いですね。London Blues についてはメルドーオリジナル。アメリカで活動ですがロンドン・ブルースですから、ツアーの時に作ったんでしょうか。予想していましたが全くブルース的には聞こえません。コード進行はブルースなんでしょうか?I'll Be Seeing You は、出だし優しくとっつき易いです。1938年に発表されたブロードウェイ・ミュージカル Right This Way の挿入歌とのことで、聴いたこともありますね。同じようなフォーマットで飽きさせることの無い内容は脱帽です。最後は Exit Music (For A Film) 「ロミオ+ジュリエット」のために書き下ろされ、Exit Music(映画のクレジットのとこで流れる曲)として使われた曲です。物悲しい旋律を変拍子も無く淡々と演奏するのには逆に面食らい、進行するほど熱くなってくる演奏には聴いている側もコブシを握りしめるような展開になります。いや良いです。
 聴きどころは、1曲目の All The Things You Are だと思いますが、それぞれ聞かせどころ演奏のコンセプトが様々で、それぞれ明確で魅力あり、かつクリエイティブで、どこをとっても素晴らしいアルバムでした。このアルバムの保管場所は、直ぐに聴けるCD置き場行き決定です🎵

piano : Brad Mehldau
bass : Larry Grenadier
drums : Jorge Rossy

producer : Matt Pierson
recorded by : David Oakes

recorded January 5-10, 1999 at the Village Vanguard, New York, NY

1. All The Things You Are
2. Sehnsucht
3. Nice Pass
4. Solar
5. London Blues
6. I'll Be Seeing You
7. Exit Music (For A Film)


▶ Solar

2024年2月9日金曜日

Harold Mabern Trio / Maya With Love

 

 2019年9月に亡くなったの機に存在を知ってから、たまに聴いているピアニストです。特に好みのピアニストな訳では無いですが、これで The Leading Man 1993、Mabern Plays Mabern 2020 に引き続き3枚目のアルバム購入となります。メイバーンは1936年生まれのハード・バップ、ポスト・バップ、ソウル・ジャズの分野のジャズ・ピアニスト兼作曲家で、このアルバムは1999年録音なので63歳の録音となります。1959–1967は様々なバンドでのセッションを主とした活動で、1959–1967はリーダーとして活動しますが、1980年〜1990年代のピアノトリオ作品が人気のようで、ピアノ・スタイルはゴツゴツした男っぽい感じです。本アルバムはDIWというディスクユニオンのレーベルグループからの販売で、音楽関連だけでなく雑貨や衣料品などの輸入・販売も手掛けている会社のようです。ジャケットは、ジャズっぽくなく呪術系ブルースのアルバムにありそうな感じがインパクトあります。


 それではレビューです。To Maya Glenne With Love はメイバーンのオリジナルで、可愛らしい曲であり春を感じる曲です。らしくないと言えばらしなくない。なぜかと言えばメイバーンの恋心を寄せる35歳の女性の曲だからだそうで、なるほどわかりやすい。You Are So Beautiful は、1932に Richard RodgersとLorenz Hartが映画 Hallelujah, I'm a Bum の為に書いた曲です。これも明るくハッピーな曲で力強く直線的なピアノが心をウキウキさせてくれます。Hymn of the Orient は、Gigi Cryce の作曲で、今までよりも少しジャズっぽくスリリングさを強調したソロ部分が楽しい演奏となっています。それにしても力いっぱいの鍵盤を叩くような演奏である。好みは別れるんだろうなあ。A Song For Connie で、またもや女性の名前の曲です。これもメイバーンの作曲です。しかしライナーノーツの中では、A Song Forより親戚のオバサンであろうとの推測(寺島靖国氏)確かに活快でたくましいオバサンが想像できるかな。Lament は、JJ Johnson の曲ですね。定番の美しいバラードを、またもや、しっかりめで弾いています。わかりやすくて良いかも。Boogie For Al McShann は、メイバーン名の Boogie ピアノです。Al McShann は Jay McShann と言うピアニストの愛称でしょうか。検索では古いジャズ・ブルースの曲が聴けました。Speak Low は、定番の Kurt Weill の曲です。ピアノと親和性が高い曲ですね。テンポ早めで、しっかりとした発音のメイバーンのピアノは最初とっつきにくかったですが耳馴れしてくれば中々心地よい。Little Girl Blue Rodgers & Hart の曲となります。またもや女性絡みの曲ですが、これに特に意味は無さそうです。Blue Bossa は、Kenny Dorham の名曲ですね。これも発音がしっかりしているので教科書に出来そうな演奏ですね。Maybe September もスタンダードですが、これは適度な緩さがあって、最後の前にしてやっと息が抜ける感じの演奏でした。 Begin The Beguine は、Cole Porter ですね。軽めなのに重いというのがメイバーンの特徴であることを再認識してこのアルバムが終了します。
 十分重量感がある演奏ではあったのですが、メイバーンにしては春のような演奏の盤であるとのこと。他も聴き直してみます🎵

piano : Harold Mabern
bass : Christian McBride
drums : Tony Reedus

recorded by : Jim Anderson

produced by DIW Records Inc, Tokyo, Japan
recorded at Avatar Studios NYC, June 21st 1999.

1. To Maya Glenne With Love
2. You Are So Beautiful
3. Hymn of the Orient
4. A Song For Connie
5. Lament
6. Boogie For Al McShann
7. Speak Low
8. Little Girl Blue
9. Blue Bossa
10. Maybe September
11. Begin The Beguine





  

2024年2月2日金曜日

Robert Glasper / Covered

 

 R&Bのエッセンスを取り込んだリズムでピアノはジャズ。絶賛の雑誌批評ほど新しくはないと思いますが、スタジオのリラックスした雰囲気の中でのトリオの素晴らしい演奏でした。イメージとしては、電子楽器を駆使した Robert Glasper Experiment / Black Radio だったのですがアコースティックを駆使したアルバムなので、旧来の頑固なジャズ・ファンも魅了するアルバムになっているようです。かと言って従来のスタンダードなジャズの焼き直しではなく、Robert Glasper の iPodに入っている Radiohead、Joni Mitchell、Musiq Soulchild、John Legend、Bilal、Kendrick Lamar、Jhene Aiko と言った現代のヒップな音楽から古典の Stella By Starlight までをジャズ・ピアノで翻訳していくのが本作品のコンセプトのようです。


 それでは、レビューしてみましょう。Introduction では、Glasperがアルバムのコンセプトを説明し、メンバー紹介。I Don't Even Care は、Black Radio 2 の収録曲で、のリメイク。抽象的なイメージのピアノのアルペジオと現代風なベースラインとドラムのパターンの3つを機械的に足した変わった雰囲気の曲の中でピアノのアドリブ。後半はピアノだけフリーに近い状態になってからが盛り上がり。Reckoner は Radiohead のカバー。ドラムは8ビートで、ベースもアコースティックではありますが、基本原曲のベースライン採用と思われますが、安っぽいカバーの雰囲気はなくてジャズでは無いところで成立しています。Barangrill については Joni Mitchell のカバー。オリジナルは For The Roses(1972)となっています。原曲を聴いてみましたが、雰囲気はオリジナルを受け継ぐ演奏となっています。旋律をなぞるだけでなく Joni の歌が再現されているように聞こえるのも楽しいです。(流して聴いていた時はジャズ・フォーマットと思っていましたが3曲聴いた時点で既に違いますね)次は、In Case You Forgot で、これは Glasperのオリジナルの即興の中ベースとドラムが各シーンをぶった切るようにワンショットで締めます。各シーンの締めの中で頭の中で回想するように Time After Time、I Can't Make You Love Me が出てきます。中々意味深いような感じもする作品です。So Beautiful については、Black Radio にも参加していた Musiq Soulchild のカバーで、オリジナルは Onmyradio(2008)となっています。こちらについては、ソウル・バラード風のジャズ作品となっています。トリオ作品ではありますが、シーンによって音楽性が変わる奥が深い作品ですね。The Worst は、新進のアーチスト Jhene Aiko のカバーで、Glasper 自身の愛聴曲ではなく、従姉妹の愛聴曲からのピックアップとのこと。オリジナルは聴いていませんが美しい旋律を持つ曲で、歌っているボーカルの姿も想像ができます。喰わず嫌いであった Glasper 侮るべからず。Good Morning は  John Legend のカバー。とてもポップで穏やかな曲でこのピアノ・トリオの余裕を感じます。Stella By Starlight で、やっと Victor Young の有名スタンダードの出番です。しっかりジャズしてくれているのが嬉しい限り。Levels は Bilal のカバーで、この人はlasperのニュースクール大学時代からの盟友らしい。これも原曲知りませんが、美しいバラードでモチーフは抽象的。Got Over はオリジナル曲で、Harry Belafonte のボイスで2014年8月に起きたミズーリ州セントルイスでの黒人少年射殺事件(警察官が丸腰の黒人少年を射殺)がモチーフで人種差別への鋭いメッセージを投げ掛けまています。続く I'm Dying of Thirst は
Hip-Hopアーティスト Kendrick Lamar の作品のカバーで Glasperの6歳の息子らが近年の人種差別絡みの事件の犠牲者となった黒人被害者の名前を読み上げています。Dillalude 3 は
国内盤ボーナス・トラック。故J Dilla へのトリビュートで、現代的な楽曲です。
 黒人差別への批判メッセージあり、サウンド的にはビートは聴いているがアコースティックなトリオで色々な音楽的な仕掛けが満載と、よく聴くと濃い目の味付けでピリッとスパイスが効いているアルバムで聴き流しているより、じっくり聴いた方が良さがわかってくるアルバムでした🎵

piano : Robert Glasper
bass : Vicente Archer
drums : Damion Reid
producer : Robert Glasper

recorded live at Capitol Studios Hollywood CA. December 2nd and 3rd 2014.

1. Intro
2. I Don't Even Care
3. Reckoner
4. Barangrill
5. In Case You Forgot
6. So Beautiful
7. The Worst
8. Good Morning
9. Stella By Starlight
10. Levels
11. Got Over
12. I'm Dying of Thirst
13. Dillalude 3





  

2024年1月26日金曜日

Herbie Hancock / Empyrean Isles

 
 
 先日は、ディスコサウンド時代の Future Shock を懐かしんで聴いていたら、かなり脂ギッシュだったので口直しにジャズ時代の若い頃を聴いています。18年前の録音とはいえ余りの落差に同じ人とは思えません。さて、このアルバムのタイトル「Empyrean Isles」は古代宇宙論でいうところの 「天空の島」 、ギリシャ語が語源で「火と光の世界」だそうで、何やら難しくも謎めいたアルバム名です。1964年、Herbie Hancock は24歳のリーダー4作目です。1963年から始まる第2期のマイルス・デイビス黄金クインテットから、Wayne Shorter、Miles Davis が抜けて、ベース Ron Carter、ドラム Anthony Williams のリズム隊がそのまま、コルネットで Freddie Hubbard が加わった形です。
 コルネットという楽器に馴染みなく聴いている分には、ほぼ管楽器奏者でない私にとってはトランペットと区別はつきません。ググって見ると形状も、ほぼトランペットと思いきや、比較してみればトランペットよりズングリしています。管の巻きの数が多いので管長は同じでもコルネットの方が楽器が小型になるとのこと。音としては、倍音はトランペットの方が多いようです。

 



 それでは、再度聴きながらレビューです。One Finger Snap は、モードを使ったナンバーで、ひたすら吹きまくる Freddie Hubbard のコルネットから始まります。こういった突っ走る系は聴いていてスリリングで楽しいです。Oliloqui Valley は爽やかなナンバーですが、これもコードをモード的に処理する手法です。オーソドックスに聴こえながらも非常に力の入った演奏かと思います。Cantaloupe Island は、私には全くロックに聞こえませんが、ジャズ・ロックと言われるタイプの曲です。ここら辺からハービーの音楽に対するアプローチがファンク路線に行く伏線にあたるのでしょう。かなり有名な曲で、あちことで演奏されていますが、本アルバムが最初の録音のようです。The Egg は、一つのモードとパターンが繰り返されていく中で、次第に変わっていくモチーフが抽象的で印象的な作品です普通のジャズの形ではなく斬新な試みを施しているのが、聞き流しているだけでは気づけなかったことが再度の聴き直しではわかります。最後で、このアルバムの一番の長尺でした。
 ジャケット・デザインが、写真をモノクロにして色付けする手法ですので!と思いみて観ると、やはり Reid Miles でした。ここら辺でも楽しめますね🎵

piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Anthony Williams
cornet : Freddie Hubbard

design (cover) : Reid Miles

recorded by : Rudy Van Gelder
producer : Alfred Lion

recorded on June 17, 1964.

1. One Finger Snap
2. Oliloqui Valley
3. Cantaloupe Island
4. The Egg
5. One Finger Snap [Alternate Take]
6. Oliloqui Valley [Alternate Take]



▶ The Egg


  

2024年1月19日金曜日

New York Trio / The Things We Did Last Summer

 

 Swing Journal は買いませんが、ライナー・ノーツによると「Swing Journal 選定【ゴールドディスク】です。結論から言えば、その通りの秀作です。ピアノの Bill Charlap は実は初めて聴いたのですが、きちんとした優等生的で整然とした演奏は、背筋が伸びるような聴き心地でした。Bill Charlap は、1966年生まれで1994年にAlong with Me という初リーダーアルバムをリリース、2001年にこのトリオを結成してから2008年までベースの Jay Leonhart とドラムの Bill Stewart とアルバムを出しています。の音の構成も飛びぬけたハイセンスのものであり、ニューヨークのピアノ・トリオとの銘々に相応しい演奏を聴かせてくれます。発売は Venus Record という日本のレーベルで、1992年にジャズ専門レーベルとして設立され、個人が経営する独立系ジャズ・レーベルとしては現在、日本最大級の規模です。アメリカのミュージシャンを中心としてイタリア、オランダなどのヨーロッパにもレコーディングを拡大しているレーベルです。なるほど日本人好みの音のような気がします。


 さて、再度じっくり聴きながらレビューしていきましょう。The Shadow Of Your Smile トリオなのに、いきなりピアノの独奏から始まります。邦題は「いそしぎ」ほぼこの曲の名前で以外では使われない日本語ですので、何か調べてみたら鳥の名前「磯鴫」でした。お馴染みのこの曲は1965年に映画「いそしぎ」のテーマ曲として、Paul Francis Webster が作詞して、Johnny Mandel が作曲したものですね。The Things We Did Last Summer カクテル・ピアノになりそうでギリギリそっちではないタメの効いたピアノと雰囲気のあるベース、シャクシャクしたブラシ・ワークは気楽に聴けます。How Long Has This Been Going On? 印象的なテーマのスタンダードです。場末のスナックで、こんな演奏を聴きながらコックリしてしまうシーンが想像できます。How High The Moon ここで、少し上げてきます。歌詞は Nancy Hamilton 作曲は Morgan Lewis で、ホントに様々な人に愛される名曲です。Mona Lisa は、作詞作曲は J.Livingston/R.Evans です。印象的なのは Nat King Cole、Gregory Porter などのボーカルものが好きです。このピアノも悪くはないですが、教則本っぽくて熱いところが無いのが寂しいかもしれません。You'd Be So Nice To Come Home To あの有名な曲がこのトリオになるとこうなるよねと若干のつまらなさを感じたところでドラムのブラシのチキって音を合図にテンポ・アップします。テーマに忠実にがモットーのようなので、それほど崩していくことはありませんがなるほど9分13秒のこのアルバム一番の長尺です。It's Only A Paper Moon は、ライナーノーツを書かれている寺島靖国氏の批評通り、最初からスローテンポの曲であるかのような、ゆったりとしたバラードに仕上げているのが気持ち良いです。ためてから、ギリギリのところで発するコードも一つ一つが大切に発せられています。When Your Lover Has Gone は、Einar.A.Swan の作曲です。邦題は「恋去りし時」ですが曲名に反して、悪い恋の呪縛から解き放たれたのでしょうか、軽やかな浮きだつメロディのテーマです。軽いけど良いなあ。As Time Goes By が最後です。H.Hupfield の名曲ですね。
 聞き流していた時は、等生的で整然とした演奏で格式が高いと思っていましたが、改めて聴き直せば、どちらかと言えばイージー・リスニング的なアルバムでした。ライナーで寺島氏が「原曲から外れないアドリブ」と言われているがその通りで、私もインプロビゼーションにこだわらんでも良いものは良い🎵

piano : Bill Charlap
bass : Jay Leonhart
drums : Bill Stewart

producer : Tetsuo Hara, Todd Barkan

recorded April 3 and 4, 2002 at The Studio in New York

1. The Shadow Of Your Smile
2. The Things We Did Last Summer
3. How Long Has This Been Going On?
4. How High The Moon
5. Mona Lisa
6. You'd Be So Nice To Come Home To
7. It's Only A Paper Moon
8. When Your Lover Has Gone
9. As Time Goes By





  

2024年1月13日土曜日

Wes Montgomery / A Day In The Life


 タイトルはビートルズの「A Day in the Life」で、Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド)に収録されていたナンバーです。気になって調べてみると、ビートルズのアルバム発表は 1967年6月で、なんと本作レコーディングも1967年6月であり、なんとも素早い対応での録音です。レイ・チャールズで有名になった When a Man Loves a Woman なども収録されていますが原曲は1966年 Percy Sledge のデビュー・シングルで Billboard 1位の曲となっていますので、これも素早い対応で、アルバムのセールスの目的としての選曲が濃いアルバムということがうかがわれます。ピアニストは、Herbie Hancock ですがアルバイトみたいなもんでしょうか。あまりハンコックの良さを感じた気はしません。


 ジャケットも煙草の吸殻のド・アップで、今の時代なら批判を受けてしまいそうなもので、選曲含め色々と一過言あるジャズ好きに総攻撃されそうなアルバムですがレビューしていきましょう。 A Day in the Life もう解説してしまいましたが、ほぼ同時期の録音となったビートルズのヒット曲です。ベースに Ron Carter ですが、つまらない単音のベース・ラインをずっと弾いています。それに合わせてウェスがオクターブでメロディ・ラインを弾きますが、ウェスである必然性は全くないですね。 Watch What Happens 1964年のフランス映画「シュルプールの雨傘」に Michel Legrand が書いた曲です。曲としては良いですが、街の喫茶店で流れる有線のBGMみたいです。When a Man Loves a Woman これについても。前述していますが、ウェスがオクターブ奏法でテーマを弾いてオーケストラが味付けをしています。教則本の演奏みたいですね。California Nights これもカバーでスティング、追憶、007のテーマなどの作曲をした Marvin Hamlisch の楽曲です。確かに映画音楽っぽい。Angel 本作で唯一のウェスのオリジナルです。後のフュージョンにつながるような感じはします。Eleanor Rigby これはビートルズ・ナンバーで、ボサ・ロック風です。サンタナバンドを聴いている感じでウェスを聴いている感じでは無いです。それも途中まででオケが入ると安っぽい。Willow Weep for Me ビリー・ホリデイが良く歌うことで有名な曲で、他のジャズ・ミュージシャンも良くセッションで使っていますが、楽譜をナゾッて演奏しているだけの感じがします。ウェスは楽譜は読めなかったと言われていましたっけ。Windy は、聴いたことあります、ロック・グループの Association の楽曲ですね。もはや、イージー・リスニングと割り切って聴くしかありません。Trust in Me やっとジャズっぽいのが来ましたが、時すでに遅い感じがします。The Joker ミュージカルの楽曲ですね。でも、またサンタナがやってきました。ボサ・ロックです。
 全てがウェスのオクターブ奏法でテーマを弾いて、オーケストラで味付けをするパターンで一流ミュージシャンが、やればスタジオの録音時間は節約できたでしょう。プロデューサーの Creed Taylor は、これで一儲けと思ったのか、ジャズは古い、時代はこの流れと決意をもって作ったのか、面白い時代です🎵

guitar : Wes Montgomry
piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Grady Tate
percussion : Jack Jennings, Joe Wohletz, Ray Barretto

conductor : Don Sebesky
cello : Alan Shulman, Charles McCracken
harp : Margaret Ross
viola : Emanuel Vardi, Harold Coletta
violin : Gene Orloff, Harry Glickman, Harry Katzman, Harry Urbont, Jack Zayde, Julius Brand, Leo Kruczek, Lewis Eley, Mac Ceppos, Peter Buonconsiglio, Sylvan Shulman, Tosha Samaroff
woodwind : Phil Bodner, Stan Webb
flute (bass) : George Marge, Joe Soldo, Romeo Penque, Stan Webb
french horn : Ray Alonge

producer : Creed Taylor


1. A Day in the Life
2. Watch What Happens
3. When a Man Loves a Woman
4. California Nights
5. Angel
6. Eleanor Rigby
7. Willow Weep for Me
8. Windy
9. Trust in Me
10. The Joker


▶ Angel



  

2024年1月12日金曜日

Tommy Flanagan, John Coltrane, Kenny Burrell & Idrees Sulieman / Cats

 

 デトロイトのミュージシャンが集まって作ったアルバムとのこと。同じようなコンセプトは Kenny Burrell / Jazzmen Detroit ですが、こちらのメンバー はデトロイト生まれ : Kenny Burrell、Tommy Flanagan、デトロイト育ち : Paul Chambers、Pepper Adams:おそらく関係ない人 : Kenny Clarkeでした。メンバーは Kenny Burrell、Tommy Flanagan のみ一緒で他のメンバーは違いますが、こちらの録音は1956年、本アルバムは1957年の録音なので、この時の流行りなのか、デトロイト出身者が大いに盛り上がっているようです。
 先輩後輩関係で言うと1926年生まれの John Coltrane は、1930年生まれの Tommy Flanagan の4歳年下、このアルバムが作られた1957年時点では二人とも29才と25才と相当若い頃の録音です。このアルバムでは Tommy Flanagan がリーダー?となって、アルバム中の5曲中4曲に自作を提供しています。


 それではレビューです。Minor Mishap 日本語訳で「些少な事故」1961年に、Freddie Hubbard がこの曲をタイトルとしてレコーディングしています。この曲では Idrees Sulieman がトランペットを吹いています。曲としてはA部分でB♭のテーマがBではFmに転調する形式のABCA形式の32小節での曲構成が、ひとひねりの楽曲で大人でクールな演奏が好感。How Long Has This Been Going On は、このアルバムで唯一のスタンダードで、Gershwin の楽曲で、ギターと管楽器が入らないトリオ演奏のバラードで、厳かで品格のあるトミフラのピアノが光ります。Eclypso もトミフラではお馴染みの楽曲で、後の1977年のアルバム Eclypso でも取り上げています。ちなみに Eclypso は、「Eclipse」(日食や月食の"食"の意味)と「Calypso」(カリプソ。20世紀にカリブ海で起こった4分の2拍子の音楽)をミックスした造語で、イントロは Calypso で始まります。明るく軽快な楽曲はステージで、雰囲気を変えるのにもってこいの作品の位置づけだったのでしょうか。Solacium この曲ではコルトレーンが、長尺のソロを吹き続けるのですが何か苦しそうにフレーズを出してきている気がします。それに対比してバレルのソロは余裕で軽く弾いているのが印象的。 Tommy's Time 安直なネーミングのトミフラのオリジナルの軽いブルース。パソコンへのWalk Man 対応ソフトの Music Center for PC への取り込みで、Tommy's Tune になってますので直しときます。この現象はCDへのデータの登録時の作業ミスなのでしょう。たまに起きます。
 ジャケットのデザインが、Bobby Hutcherson / Happenings の Reid Miles の写真に紫の色を被せるパターンと同じなのが気になりましたが作者は調べてもわかりませんでした。ちなみにタイトルの「キャッツ(Cats)」とは、俗語で、ジャズ・ミュージシャンのことらしいです🎵

piano : Tommy Flanagan
bass : Doug Watkins
drums : Louis Hayes
guitar : Kenny Burrell (1, 3 to 5)
tenor sax : John Coltrane (1, 3 to 5)
trumpet : Idrees Sulieman (1, 3 to 5)

recorded by : Van Gelder

recorded in Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, April 18, 1957.

1. Minor Mishap
2. How Long Has This Been Going On
3. Eclypso
4. Solacium
5. Tommy's Time



▶ Eclypso


  

2024年1月7日日曜日

渡辺香津美 / Acoustic Flakes


 30代ぐらいまでは、渡辺香津美は聞いたことがある程度だったんですが、札幌勤務していた40代ぐらいからよく聞くようになりました。昔のフュージョンをバリバリと弾いていた香津美も良いですが、その後はジャズを基本としながらも様々なアプローチで世界的なギタリストとしてギターの魅力を語ってくれます。
 このアルバムも、そんなアコースティック・ギターで様々な音楽にアプローチした作品「Guitar Renassance」からの曲が中心となった作品で 5.Blue Monk、9.Adagio、12.Tochika Island はこのアルバムでの書下ろし(弾きおろし?)ビートルズあり、ジャズあり、ブルースあり、ボサノバあり、クラシックありなんですが、ジャンルの垣根を超えて散漫にはならずにギターという楽器の魅力を伝えてくれます。
 またギター弾きには、たまらない丁寧なライナーノーツで、本人の楽曲解説、インタビュー、使用アコースティックギターの解説など、ファンをくすぐる心意気も満点。


 さてレビューです。一発目は、バッハの無伴奏チェロ組曲第一番 完全クラシックでピック弾き、使用ギターは Imai matsu Gut。If I Fell ビートルズのカバーで、ライトでポップなサウンドです。これに、ガットギターの Maria Gut で格式を付け足したようなサウンド。Three Views of A Secret は、ジャコのナンバーです。香津美先生にも、ジャコは特別でインパクトを与えてくれた共演者だったとのこと。使用ギターはTaylor K14EC Steel でシャリシャリとした音色が、この曲にも合うんですね。Stella by Starlight こういった超メジャースタンダードを弾いてくれるのも嬉しい。Blue Monk これは Monk の中でも超メジャーなブルースです。モンクのような音の使いかたはせず、純粋にブルースのテーマとしてこの曲を演奏されています。ギター・ルネッサンスⅣの録音時のアウト・テイクをここに持ってきたとのこと。使用ギターは Paul Jacobson Gut。Blue Steel は、オリジナルとなっていて、ギターらしく低音の開放弦をボンボンと鳴らしながらアドリブを炸裂させていきます。ギターという楽器で誰しもがやる遊び方ですが先生がやると遊びではなくなって作品になります。Nuages
8. Minor Swing
9. ピアノ協奏曲第23番イ長調より第2楽章アダージョ
10. Jamming IBERICO
11. 翼
12. TOCHIKA ISLAND
13. SAYONARA

、指弾きなんでもありの渡辺香津美の懐の深さです。Three Views of A Secret は私のジャコ好きを抜きにしても美しい響きが素敵です。さらにリチャードストルツマンとのクラリネットデュオのBlue Monk、Blue Steel ではギター弾きなら思わずやってしまうジミヘンとかも混ぜて適当に弾くジャカジャカ的な曲で楽しいです。Stella by Starlight はソロギターのお手本。
 こんなに弾けるわけはないんですが、私たちアマチュア・ギタリストにも精進すると楽しい世界が待っているよ的な幻想も持たせてくれる気もします。縦横無尽に弾けたら楽しいんでしょうなあ。 精進しましょう!

guitar : Kazumi Watanabe
bass : Richard Bona (9)
clarinet : Richard Stoltzman (5)
vocals : Minako Yoshida (11)

1. 無伴奏チェロ組曲第一番よりPrelude
2. If I Fell
3. Three Views of A Secret
4. Stella by Starlight
5. Blue Monk
6. Blue Steel
7. Nuages
8. Minor Swing
9. ピアノ協奏曲第23番イ長調より第2楽章アダージョ
10. Jamming IBERICO
11. 翼
12. TOCHIKA ISLAND
13. SAYONARA