何となく手にしたBill Evans (ビル・エバンス)とフルートの Jerermy Steig(ジェレミー・スタイグ)のセッションですが、いつものエバンスと違います。繊細でリリカルな演奏が信条のエバンスが熱めの演奏を繰り広げています。Portrait In Jazz のような動の作品も聴いてきたのでびっくりする訳でもありませんが、こんな作品を聴いた時に何かを発見したようで楽しい気分になります。
こんな演奏になった起爆剤は、ジェレミー・スタイグのフルートで思いっきり呼気を吹き付けて尺八のようなこすれ具合により結構アグレッシブな印象を受けます。フルートの音色とともに楽器から大量に漏れていく呼気の音、大きな息継ぎの呼吸音のインパクトは大きく、フレーズもロングトーンは少なく勢いで押す紋切り型です。呼応するビル・エバンスもこの音に対応するべくパッションが溢れるフレーズになりタッチも力強くなってきてテンポもきっちりとした拍になっています。きっとジャズに一家言あるオジサンと聴いてたら、これがジャズの面白いとこなんだと言われるんでしょうが、私の行きつけの音楽好きが多めのバーはビル・エバンス否定派が多いので、多分これは持っていきません(いや敢えてこれなら否定派に聴かせても良いかなという感じはしますが)
ちなみにスタイグが、なぜこのような吹き方になったかというと1962年に交通事故に遭い顔面右側不随、片耳が聞こえなくなったため特殊なマウスピースを使用することが原因とのこと。エバンスがスタイグに出会ったのは1964年フロリダのデイトナビーチで演奏していたと言います。つまり結構大きい後遺症だったはずなのに2年でリハビリしてミュージシャンとして働いていたということで、考えてみればこれも凄いこと。てっきり、やり手プロデューサーのヘレン・キーンの仕掛けかと思いましたが、1968年にスタイグのアパートがビレッジ・バンガード、トップ・オブ・ザ・ゲートに近かったことからエバンス・トリオとのセッションに加わったのが縁とのことでした。調べていたらフルートとアートのオフィシャルサイト「His Flute Music and Art」を発見し多才な方だったのが伺えます。
印象に残る1曲目の Straight No Chaser はソロ部分に入ったフルートの辻斬りのような斬新さに心を奪われながら軽快なドラムとゴメスのソロも見事で緊張感溢れる演奏。ドラムのブラシ捌きは、聴いていて実に気持ちのよい演奏です。!Lover Man については落ち着いた曲だけにフルートのエモーショナルな部分が際立ちます。Autumn Leaves ではアップテンポにしている珍しい演奏で、エディ・ゴメスのソロが注目。そして Spartacus Love Theme 美しい進行とメロディの繰り返しの曲です。パッション溢れる曲が多いアルバムの中で一番動きの少ない楽曲なのに何か熱いものを感じさせてくれます。フルートも何か太いものを感じます。そのほか、聴いていてハッとするのは最後の So What でのフルートを吹きながら聞こえる声、呻き声(うめき声)かと思っていたら、最高潮に達したところでかなりハッキリとした声でフルートとはハモっています。ピアニストでは唸る方多いですが、フルートでもあるとは・・・ものすごい気迫が感じられましたね🎶🎹
piano : Bill Evans
flute : Leremy Steig
bass : Eddy Gomez
drums : Marty Morell
producer : Helen Keane
recorded at Webster Hall, N.Y.C.,on Jan.30, Feb. 3,4,5, and Mar.11,1969
1. Straight No Chaser (Thelonious Monk)
2. Lover Man (David, Sherman, Ramirez)
3. What's New (Haggart, Burke)
4. Autumn Leaves (Prevert, Mercer, Kosma)
5. Time Out For Chris (Evans)
6. Spartacus Love Theme (North)
7. So What (Hall, Davis)
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