2023年4月9日日曜日

Miles Davis / Filles De Kilimanjaro

 
 
 マイルスは、Miles In The Sky でエレクトリック化していくのですが、Miles In The Sky の録音は1968年1月5月。Miles In The Sky からハンコック、ロン・カーターが参加し、レコーディングでは限定的にエレクトリック・ピアノ、エレクトリック・ベースを使っており Miles In The Sky 録音以降のライブではアコースティック楽器を使いレパートリーは従来と同じだったそうです。そしてこのアルバムは、その直後の1968年6月19・20・21日の録音で、ハンコックはエレクトリック・ピアノ、ロン・カーターはエレクトリック・ベースを取り入れることとなります。その録音がギル・エバンスとの共作 3. Petits Machins (Little Stuff) で、2. Tout De Suite、4. Filles De Kilimanjaro はマイルスの単独作となります。
 作曲の側面でマイルスの流れを見ると、マイルスはメンバーに演奏、楽曲提供させながら成長を促していく方針をとり、マイルスの作曲は E.S.P. では4曲、Miles Smiles では1曲、Nefertitiではゼロになっていたのが、このアルバムでは作曲はなんと全てマイルスになっています。なお、このアルバムでも重要な役割を果たすメンバーのウェイン・ショーターが2023年3月2日89歳でロサンゼルスで亡くなりましたので、マイルス・バンドへの加入後のアルバムを列記しておきます。E. S. P. 、Miles Smiles、Sorcerer、Nefertiti、Miles In The Sky 、Filles De Kilimanjaro、In A Silent Way。
 ものすごく面倒なアルバム作成の背景を書いてしまいました。面倒なことを考えずに音を聴けば良いと思っていたものの、この作業が最近楽しくなってきているのが、段々と歳をとってきた証拠ですね。


 一聴すると地味に聞こえる本アルバムではありますが、アルバム制作の背景、メンバーを知ってから聴くと、ファンクとエレクトリックに照準を合わせ始めた作品として中々濃いアルバムに聞こえてきます。
 さて、そろそろレビューします。Frelon Brun 最初に聴いた時には印象が薄かったのですが、確かにロック、ファンクに近づく作品として聴くと、かなりロック的なトニー・ウイリアムスのドラムから始まり、ファンク的ではありますが手探りで状態のように聞こえるアコースティックベースとピアノにマイルスが切り込んでいく、ショーターも切り込んでいくが何か勝手が違うように聞こえる。ピアノも色々なフレーズを試してファンクの色を出しながら自分なりの正解を探しているように聞こえる。それでもまとまってしますのが凄いなるほどの出だし。Tout De Suite では、音数少な目になるがグッとバンドの音のまとまりが出てきたように感じます。ドラムはジャズよりで、ベースは余計なことはしない。リズムではなく低音の単発で曲を支えているため他のメンバーの自由度が増しているように聴こえます。ピアノはハンコックに交代でチックコリアよりメロディアスになって曲に柔らかさを与えているように感じます。Petits Machins (Little Stuff) は楽器はエレクトリックであるけどアコースティックな響きに戻ってきました。いや曲が進めばそうでもないか。エレクトリックな楽器の音の粒立ちの良さをうまく使ったピアノに変わってきているのかな。Filles De Kilimanjaro はタイトル曲で確かに地味だけど曲としてまとまっています。単調で動かないベースラインはマイルスの指示なんだろうけど狙いすぎも感じます。 Mademoiselle  Mabry (Miss Mabry) こちらは雰囲気のある曲でビロードに包まれているようなゴージャスな感じがします。マイルスも気持ちが入っているし、ショーターのサックスも曲を良くとらえている感じがします。Tout De Suite (alternate) は、ボーナストラック。
 先にも書きましたが地味だけどクインテットで進めていたアプローチにエレクトリックを導入した経緯の知識を得てから聴くのと、素の状態で聴くのは大違いの印象の完成度のあるアルバムでした。

trumpet, leader (directions in music) : Miles Davis
electric piano : Chick Corea (1, 5), Herbie Hancock  (2-4, 6)
electric bass : Dave Holland (1, 5), 
acoustic bass : Ron Carter (2-4, 6)
drums : Tony Williams
tenor sax : Wayne Shorter

producer : Teo Macero

written by M. Davis
 
Track 1, 5, 6 recorded 9/24/68, New York
Track 2 recorded 6/20/68, New York
Track 3 recorded 6/19/68, New York
Track 4 recorded 6/21/68, New York

1. Frelon Brun
2. Tout De Suite
3. Petits Machins (Little Stuff)
4. Filles De Kilimanjaro
5. Mademoiselle Mabry (Miss Mabry)
6. Tout De Suite (alternate)




  

2023年4月8日土曜日

Freddie Hubbard / Live At Fat Tuesday's

 

 少年時代にインディアナでウェス・モンゴメリーと親交があったとのことで、ウェスは1948年の7月から1950年の1月までライオネル・ハンプトンの楽団に参加、ハバードは1958年にニューヨーク進出してから音楽キャリアは始まる。その後はアート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズに参加しハード・バップの印象が強いのだが、コールマンの Free Jazz 、エリック・ドルフィーの Out to Lunch、ジョン・コルトレーンの Ascension など初期のフリー・ジャズの古典にも参加しています。私がここまでたどり着くのはもうちょっと先かもしれません。1970年代のハービー・ハンコックのV.S.O.P.クインテットに参加し、スムースジャズにも対応していたトランぺッターですがファンク方面には行っていないようです。若い頃は、ヨーロッパ旅行の折に雪山で気分がよくなり、ドラッグを食いまくった挙句トランペットを吹こうとしたところマウスピースが唇に張りつき、ペッターの命ともいえるそれを完全にぶっ壊し引退へ追い込まれたとかいう話もある結構やんちゃな人でもある。そんなことで晩年ハバードは健康状態の悪化、唇の病気で音楽活動から離れた時期もあったが、1990年ごろから復帰し2008年12月29日、心臓発作により70歳で亡くなっています。このアルバムの収録は1991年ですから復帰の時期ということで、唇の調子はおそらく良くない状態のようです。


 聴く人が聞くと Freddie Hubbard(フレディ)のコンディションは良くないので、音色や音域もキツそうでフレージングも良くないとのことで、そこらへんに集中して聴いても最初はよくわからなかったです。そう思って聴くとバンド・メンバーが強力にサポートし、フレディは控えめにトランペットを添えるだけのような演奏です。ですがバンドとしては非常に充実した演奏内容なので、そう思って聴かないとわからないですね。
 アルバム名は Live At Fat Tuesday's の通り、Fat Tuesday's と言うライブ・ハウスでの演奏が2日分2枚に渡って収録されています。Take It To The Ozone は、テーマに続くJavon Jackson(ジャヴォン・ジャクソン)のソロがブリっとしてカッコ良いし、Christian McBride(マクブライド)のベースも決まっている、Benny Green(グリーン)のピアノは力強くかっこよすぎる。Tony Reedus(リーダス)のへげしいドラミングがバンドを燃え上がらせる。そのカチッとしたサウンドの中でフレディのトランペットに注目して聴くと確かに音程の甘さなどは否めないような気がする。フレディの楽曲だが OZONE の曲名は、こんなアグレッシブなイメージではないけどまさか小曽根?なのだろうか。なんてことも思いながら聴いていますがバンド・アンサンブルとしては最高の最初の1曲。かなり心が掴まれます。Egad は Christian McBride の楽曲提供です。何かの頭文字が楽曲名と推測できますが何だろうか?曲は激しめではありますが最初から全開ではありません。ピアノのグリーンの力強い左手は魅力的です。フレディは1曲目よりは長めのソロ展開で頑張っておられますが、往年のがちっとした存在感は無いかもしれない。Phoebe's Samba は Benny Green の作曲のサンバです。イメージ変わってライトなサウンドに。テーマの後にフレディのソロですが、ここは調子が良さそうなソロ展開です。But Beautiful は美しいバラードのスタンダード。小休止のようにリラックスした感じです。結構好きかも。そして One Of A Kind で1枚目のディスクは終了。フレディの楽曲となります。ユニゾンのテーマが気持ち良くソロの出だしはピアノのグリーのリズミカルで激しい展開。そしてハバードのソロ。これまでで一番よく音が出ているかも知れない。そしてテーマに戻りドラムソロは観客が盛り上がりまくりです。ハードバップは良いなあと1枚目は終わります。そして2枚目は楽曲は全てハバードの作曲、C.O.R.E で凛々しくアバンギャルドに立ち上がります。特にテナーの Javon Jackson の突き抜け方が気持ち良いし、左手の力強い Benny Green のピアノがこれまた気持ち良い。フレディのトランペットも気持ちよく高音が突き抜けています。Destiny's Children は、重厚感のある曲で8ビートのドラムにカッコ良いテーマをサックスとトランペットのユニゾン。もぞもぞと地底をはい回るようなベースラインも良い。少しづつ定期的にアウトするのもゾクゾクします。First Light でラスト。最後はフリーのソロをフレディが延々と続けながら、ポップなピアノ・リフではじまます。曲とコード進行はワンパターンで単純ですが各人の技量で聴き飽きることがない19分となっています。
 サイドの素晴らしさだけでも聴く価値はありの一枚です🎵

trumpet, flugelhorn : Freddie Hubbard
piano : Benny Green
bass : Christian McBride
drums : Tony Reedus
tenor sax : Javon Jackson

producer : Joe Delia

recorded live at Fat Tuesday's, New York City, December 6 & 7, 1991.

【Disc 1】
1.Take It To The Ozone
2. Egad
3. Phoebe's Samba
4. But Beautiful
5. One Of A Kind

【Disc 2】
1. C.O.R.E
2. Destiny's Children
3. First Light



▶ C.O.R.E


  

2023年4月7日金曜日

Djani & The Public Works / Rocking You


 さわかやサウンドのレゲエです。若かりしころ関西在住時代に寝屋川のレゲエ野音に毎年行っていました。しかしレゲエなんて音楽は、ほぼこの野音の時ぐらいでしか聞かないので毎年野音の谷に勉強のために購入していた一枚です。
 というところで、最近レゲエと称する音楽は私の若い時と比べて随分変化していて、リズムを強調したクラブ仕様の音楽が最近のレゲエとなっているようです。私の知っているレゲエと言えば代表格はボブマーリーで、独特のリズムが主体となっていたり、ボブ・マーレイは政治的な背景が曲の中に合ってメッセージ性の強い音楽でしたが、寝屋川のレゲエ・フェスに出演していたのは、割と軽めのポップ色が強いレゲエ・アーチストで、ビッグマウンテンマキシプリーストインナーサークル 等が主役でした。ライトに聞けるレゲエで酒飲んで踊りまくるには良かったのですが、アクが少ない分印象には残りにくかったような気がします。私はアクの強い音楽のほうが中毒性があって好きかもしれません。

 

 このレビューをする前に曲名とか背景を調べるんですけど、このグループは残念なことに見事にネット上からも痕跡が消えています。ある意味レア盤?なのでしょうか。

1. Rocking You Baby
2. Too Late To Turn Back Now
3. Walking In The Rain
4. Revolutionary Conscious
5. A'int No Sunshine
6. Love In Jah
7. Ragamuffin Don't Play
8. Real McKoy
9. Love's Desire(HIp Hop Version)
10. Sweet Taboo
11. Breezin'


youTubeでも、これしかヒットしない
ある意味珍しいほど世の中から抹殺されているようで・・
それほどサウンド的にも悪くはないんですけどね


  

2023年4月2日日曜日

Keith Jarrett / Death And The Flower

 

 いつもの「おでんバー」では、マスターが定期的に Keith Jarrett(キース・ジャレット)や 明田川荘之 を連日かけまくっている時がある。店の口開けに行くとマスターが一人ノリノリで、これ一昨日もきいてたなと思うのです。別にモンクはありませんし私が余り聴かないタイプのピアニストだったので興味深く聴かせていただいておりました。すると人間不思議なもので、耳馴れすると心地よくなってきます。と言うことでキースのアルバムは未開封、未聴のものが何枚かあります。ケルン・コンサートも未開封です。


 で、そのうちの一枚 Death And The Flower 「生と死の幻想」を聴くことしました。持っていって、ビニールを爪で破いているとマスターは、これレコードもあるよ、とのことですが確かこの時は他のお客も多かったので、聴き比べはしていません。
 まずはタイトルも強烈ですが、ジャケ写のバラがハードボイルド的で骨太な中身を想像しました。邦題(曲名)に関しては直訳で「死と花」だけでインパクトのある題材が「生と死の幻想」となっているのは、かなりの落差があります。その元となっているのは、ジャケットの中に掲載されている、キースの詩であることは明白ですがどうでしょうか。「We live between birth and  Death    ・・・ 私たちは生(誕生)と死の間を生きている/あるいはそのように自分自身を納得させている/本当は自らの生の絶え間ない瞬間に、生まれつつあると同時に、死につつもあるのだ/私たちはもっと花のように努めるべきである/彼らにとっては毎日が生の体験であり、死の体験であるから/それだけに私たちは花のように生きるための覚悟を持たなければならないだろう」生まれたから死はやがて訪れる。生まれたから花のようにパッと咲いて後は散るのみ。いや花が咲いたら種が出来て生を遺すことが出来はず。でもこのジャケットのバラは切り花だから子孫は残せない。なんてことを思いながらアルバムを再度聴いていきます。
 バンドの構成は、ピアノ、テナーサックス、ベース、ドラム、パーカッション。知っているのはベースの Charlie haden、ドラムの Paul Motian ぐらいです。Charlie haden 以外は全員がパーカッションも演奏しています。タイトル曲の Death And The Flower アフリカンな雰囲気のパーカッションで始まり、大地の中に一人立って風景をながめているかのようなイントロはこれから何かが起こるぞと言う想像を掻き立てる。そしてヘイデンのエキゾチックな音階のベースになり、ゆっくりと進行する。?ベースはオーバーダビングしているようです。曲は何も無いように見える風景からゆっくりと植物が成長していくような展開です。デューイ・レッドマンのだるそうなサックスもムーディ(フリージャズ系の方のようです)全員がヒートアップした演奏になだれ込む後半は少しポップな雰囲気にもなったりしながら綺麗に花が散るようなラストはドラマチックな展開でベタに良いです。22分の大作。Prayer は、クラシックのような静かなピアノの出だしが美しく自然の中で植物が芽吹いて、ゆらゆら揺れ動いているような曲で移動できない植物はユラユラと揺れながら何かを祈っているような感じがします。キースとチャーリーのデュオで、テーマに自然に寄り添いながら即興される美しい旋律は心地よい。最後に Great Bird はパーカッシブなサウンドに、デューイ・レッドマンのサックスが溶け込みまた一つの風景が展開されます。ソプラノ・サックスはキースがオーバーダブで吹きこんでいます。適度なフリー加減が素敵で芸術は爆発だ的なフリーでない美しきアドリブを盛り込んだ演奏がまた心地よい。
 キースは最近聴き始めた感じですが、本作は独特のオリジナリティを感じる大作で心して聴いた方が楽しめるアルバムですね🎵
 今、改めて思いましたが、大作なのにこのアルバムではキースの唸り声は無いなあ。

piano, soprano sax, drum (osi drum), percussion, flute (wood), composed by : Keith Jarrett
tenor sax, percussion : Dewey Redman
bass : Charlie Haden
drums, percussion : Paul Motian
percussion : Guilherme Franco

producer : Ed Michel

recorded October 9 and 10, 1974, at Generation Sound Studios, New York City.

1.Death And The Flower
2.Prayer
3.Great Bird


▶ Prayer



  

2023年4月1日土曜日

Miles Davis / Gemini

 

 1969年のライブなのに、何故かジャケットにはデカデカとMONOの印刷。恥ずかしながら、このレビューを書くまで気づいていませんでした。プロデューサーの名前がクレジットされておらず、Original Recording by Joker Tonverlag Ag とあるので、この人がライブ会場で録音したものか?と、どうやらブートものらしいです。しかし発売元は NIPPON CROWN Co. Ltd なのでブートが正式盤に昇格したものっぽい。ググってみると実はこのライブ録音は1969年11月3日パリではなく、1969年10月27日のローマコンサートであるとかも発見しました。ブート・レグなので、そこらへんは盤への印刷が間違っていることは十分にありうることかと想像はできます。


 そして購入して、しばらく家で温めてから、いつもの「おでんバー」で初聴きとなります。Bitches BrewAgharta なんかは、時折爆音でかける店なので遠慮なしにかけさせて頂きました。何しろ1曲表示45分なので、どんなものか興味津々です。ファンクものかと思っていたら、フリージャズ的な感じで自由度の音の流れの中をマイルスや他のメンバーが徘徊しながらその場に応じて演奏していくフリージャズ、4ビート、8ビートなど多彩な変化を魅せます。この手の音楽は、聴き手の体調や聴くタイミングで印象が変わることが多いとは思いますが、この時には音のエネルギーの発散具合が不完全燃焼のような気持ちになってしまいました。マスターは、聴き終わると「なんだろうな、少し暗めだね」とのこと。すると横で黙って聴いていた常連さんの一人が「いやこれは気に入ったな。貸してくだせえ」とのこと。快く貸出です。返却時もベタ褒めでした。ので再度聴き直してみると初回に聴いた時よりも中盤の盛り上がりがあり初回の印象よりもエネルギッシュで悪くない感じです。
 アルバムタイトルの Gemini とはふたご座のこと、またアルバムのジャケットの中には警官に取り押さえられる若者が写っている。1969年のライブであることからすると1968年のチェコスロバキアの変革運動「プラハの春」とかをオマージュするものなのだろうか?ジャケットは数種あるようで、ブートなのでマイルスの意図はここにはないはずですが、制作者の意図も気になります。ライナー・ノーツは一応日本語でついているものの、マイルスの音楽史感についてしか書かれていないのでよくわからないので、どこかで見つけたらこのレビューに書き足そうと思います🎵

trumpet : Miles Davis 
tenor/soprano sax : Wayne Shorter
electric piano : Chick Corea
bass : Dave Holland 
drums : Jack Dejohnette

recorded live in Paris, Novenber 3, 1969

1. Gemini

Gemini



  

2023年3月31日金曜日

James Brown / Live At The Apolo


 James Brown (JB) の1962年アポロ・シアターでのライブ。ここで、既にあのエンターテイメントが確立されていることがわかる名盤です。ポップ・チャートの2位まで上昇し66週にわたって同チャートのトップ10位圏内に留まり、JBのアルバムの中でもポップ・チャートで最も好成績だった作品です。それほどコレクターな訳ではありませんが、JBの作品はと段々とリズムとパフォーマンス重視となってきているような気がしますが、この作品は非常にソウルを感じるJB29歳の作品です。おそらく今の日本ではJBは硬派なオヤジがウイスキー片手に楽しむような音楽となっているのに、この音源ではJBはアイドルだったのかと思うほどにアポロ・シアターが女子の悲鳴で溢れていて当時の人気っぷりがわかります。私のJBのイメージは脂ぎった汗かきのオジサンのイメージですが、当時の若き日のJBの写真では確かに当時は脂ぎっている感じではなくカッコいいですね。


 さて、このアルバムですが、オープニング・ファンファーレでMCによる“煽り”は Are You Ready For Star Time!! そこから観客もハイテンションです。そして傑作「I'll Go Crazy」で幕開けし、シャウトしながら客を更に煽ります。「Try Me」は、後の演奏より昔のソウルという感じで中々好感。そして客のギャルたちのギャーという叫び声で熱狂がわかります。「Think」も、高速でたたみかけクラッピング入り(これは後入れかな)「I Don't Mind」ではしんみりと歌い上げ観客のボルテージを下げときます。でも、きっとサビのシャウトで失神しそうな女の子はいるに違いありません。そして「Lost Someone」のイントロでは、延々とループするテーマで、JBのシャウトで徐々に観客の熱が帯びていき、上げて下げて歌ではじっくりと聴かせる最高の演出、「Please Please Please , You've Got The Power」のメドレー、Please Please Please は既に7年前にR&Bチャートのトップ5の名曲です。そして Night Train でクロージングですが、いかにもショーの終わりを感じさせるダンサブルな曲。とにもかくにもこのアルバムではステージの演奏の他、観客席の熱狂ぶりも録音されていて、聴くものもそのステージが想像できる名盤です🎵

lead vocals : James Brown
baritone/bass vocals (and keyboards on "Lost Someone") : Bobby Byrd
first tenor vocals : Bobby Bennett
second tenor vocals : Lloyd Stallworth
【Famous Flames】
music director, trumpet : Lewis Hamlin
bass : Hubert Perry
drums : Clayton Fillyau
guitar, road manager : Les Buie
organ, MC : Lucas "Fats" Gonder
tenor sax : Clifford MacMillan, St. Clair Pinckney
tenor sax, baritone sax : Al "Brisco" Clark
alto saxophone : William Burgess
trombone : Dickie Wells
trumpet : Roscoe Patrick, Teddy Washington

1. Opening Fanfare
2. I'll Go Crazy
3. Try Me
4. Instrumental Bridge1
5. Think
6. Instrumental Bridge2
7. I Don't Mind
8. Instrumental Bridge3
9. Lost Someone Pt.1 
10. Medley(Please Please Please , You've Got The Power)
11. Night Train


▶ Think



  

2023年3月26日日曜日

Red Garland / Soul Junction

 

 最近意識して未だ聴きこんでいないピアニスト作品を開拓するようにしています。知っているけどアルバムを持っていなかったので、Red Garland(レッド・ガーランド)を何枚か買い込んでストックしながら聴いています。いつもの「おでんバー」に持って行くと、おおこれね、レコードもあるよと言ってマスターが探し始めますがレコード棚は暗く、枚数も結構あるため見つかりません。とりあえず私のツマミを優先してもらうためにレコードは探さないでも良いですよとのこととします。CDとレコードを聴き比べると大差がない場合、レコードの音の臨場感に驚かされる場合の二パターンが多く、CDの方が良い場合はレコード盤が古くて状態が悪い場合はたまにある程度のような気がします。私はレコード・プレイヤーを持っていないので全てCD音源ですのでレコード盤の方が圧倒的に良い場合かなり悔しい思いをすることがあります。ただですねえ、CD持って行って聞き比べないと記憶だけでは判別しにくいのがこの聴き比べです。などと語ってしまいましたが、この盤は聴き比べていませんのでそのうち聴いてみようと思います。


 さてこの録音、メンバーを見るだけで、よだれが出る人も多いであろう1957年作品。ガーランドは1957~1959年にかけて膨大なアルバムを残しています。1956年にマイルス・クインテットに在籍して Round About Midnight 1957年には、わずか2回のセッションからの音源が、Workin'、 Steamin'Relakin'Cookin' となり、コルトレーン・バンドにも加わっています。このアルバムの録音も一夜のセッションが、All Morning Long, Soul Junction の2枚のアルバムとして発売されています。但し All Morning Long は、直ぐに1958年の販売され本番は三年近く以上経った1960年暮れのリリースとなっています。
 さて、曲のレビューです。タイトル曲は Soul Junction、いきなりの15分を超える長尺のガーランドオリジナル。ガーランドのソロが延々と続きます。ルーズな弾き方のブルースで典型的なフレーズが安心感あり、ジャズ・ブルースの教科書にできそうな安定の演奏。後半でやっとコルトレーン、バードが登場しますがガーランド同様にゆったりとしたソロ展開です。Woody'N You はディジー・ガレスピーがオリジナル。ガーランドが20歳の頃に初めて聴いたモダン・チューンの思い出の曲とのことで、菅の二人がフューチャーされています。バードの気合の入ったトランペットが気持ちよく響き渡り、コルトレーンもギアが入り、延々と続くのかと思いきやガーランドの流れるようなフレーズのソロに突入。1曲目との落差がとても気持ちよく響きます。うーんカッコイイ。Birk's Works もガレスピの作曲です。ここもテーマ部分は、高らかに鳴るホーン隊に重厚感あります。そしてガーランドのコロコロとした音使いながら甘いシングル・トーンのソロに始まりブロック・コードで盛り上げる定番の展開が硬派な感じです。コルトレーンが控えめなのは1曲目だけだったようですがこの曲は若干抑え気味のソロでバードに引き継ぎ、またガーランドに戻ります。カクテル・ピアニストと言われることもあるようですが、全くそのようなことの無い存在感のある演奏です。そしてデュークエリントンの書いたバラードの I've Got It Bad では、ゴロゴロとした硬派のピアノからロマンチックなタッチのピアノに変わり、バードの正確な音さばきながらどこか優しい音色に聞きほれ、情緒豊かなコルトレーンに酔いしれます。最後は Hallelujah
 で、Vincent Youmans という方の曲でアグレッシブに飛ばします。テイラーが力強いドラムで引っ張りながらのフロントの三人を盛り上げるのが実に良い。総合的にコルトレーン、ドナルド・バードの演奏も絶好調でガーランドだけが主役のアルバムではない各人のソロが引き立つつくりになっています。

piano : Red Garland
tenor sax : John Coltrane
trumpet : Donald Byrd
bass : George Joyner
drums : Art Taylor

producer : Bob Weinstock

recorded at November 15, 1957, Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey

1. Soul Junction
2. Woody'N You
3. Birk's Works
4. I've Got It Bad (And That Ain't Good) 
5. Hallelujah





  

2023年3月25日土曜日

Bobbi Humphrey / Satin Doll

 

 プロデュースは、以前聴いたアルバム 1973年 Blacks And Blues と同じ Chuck Davis, Larry Mizell で、このアルバムは1974年の発売となります。路線は基本的に同じですが、前作よりあか抜けた感じはします。この手のジャズ・ファンクの場合、思い切りダサいとか黒すぎるぐらいのアルバムが好みなのですが Larry Mizell プロデュースは中途半端に売れ線な感じです。このぐらいであれば前作よりこっちの方が好みかもしれません。
 アルバムの写真の女の子は彼女のお子様の女の子リッチ・リン。ジャケ写裏面は黄色のお揃いの服での幸せなそうな一枚。このアルバムのタイトルは Satin Doll、つまりデューク・エリントンの曲。エリントンは本作の制作前に亡くなり同時期に娘さんが生まれたとのことでこの作品は両者に捧げられたとのこと。なるほど普通フルート奏者のソロアルバムで Satin Doll のタイトルならジャズファンクは想像しにくいのはそのような訳ですか。


 主役の Bobbi Humphrey については1950年テキサス州生まれのジャズ・フルート奏者、マイゼル兄弟はボーカル、アレンジ、プロデュースを担当しております。マイゼル兄弟作品は、アルバム一曲目にがつんとした曲をもってくるのが特徴で、このアルバムも1曲目の New York Times が素晴らしい。先にも書いたようにエリントンへのオマージュですから、Satin Doll という曲を入れるのに意味があるのはわかりますがタイトルで2曲目の Satin Doll よりも1曲目の方がインパクトがあるのはどうなんだろうか?という気もします。San Francisco Lights はバラードで、メロー・グルーブと言うよりはダレ気味か? 一転してLadies Day はタイトなソウル系のジャズ・グルーブ。ボビのフルート・ソロの録音レベルが少し低いのが気になりますが、演奏自体はうまくはまっています。この曲を聴いて、ジャズ・ファンクやりたくなるフルート奏者もいるんではないでしょうか。続くFun House はゴリゴリ系ファンクの元祖みたいなスラップ・ベースが良い。P funk のギターが、きれいな音のフルートに置き換わるとこんな感じって感じでしょうか。My Little Girl は怪しい系のジャズ・ファンクで、ここら辺がもっと怪しいと嬉しいんですが、テーマで響く女性のコーラスがなんとも怪しいです。こういった曲ではフルートが効いてきます。Rain Again は、嵐の効果音から始まる。重めのメロー・ソウルのような出だし。これに歌メロがついてボーカルが入れば成立するんですが、ボーカル無しのカラオケのメロー・ソウルっぽくて、つまらんと言う人は多そうですが、このダサさは私的には「あり」で、最後は You Are The Sunshine Of My Life は言わずと知れた Stevie Wonder のカバー。ここら辺はレコードのセールスを気にしてる感じの選曲とアレンジと思いきや、ボビは Stevie Wonder と親交をがあり、このジャケ写の娘の洗礼で代父を務めているとのことで、この曲は Stevie Wonder へのお礼みたいなもののようです。あとベースでは、前作とも Chuck Rainey も参加を見逃してました。聴きなれない人には、全部似たような響きとテイストに聞こえてしまいそうなアルバムなのですが、前作や Donald Byrd のジャズ・ファンク期が好きな人には是非聞いていただきたい🎵

flute, vocals : Bobbi Humphrey
backing vocals, arranged by (background vocal arrangements) : Fonce Mizell, Freddie Perren, Larry Mizell
electric piano (fender rhodes) : Fonce Mizell, Larry Mizell
piano, keyboards : Jerry Peters
synthesizer (arp synthesizer) : Larry Mizell
synthesizer (moog synthesizer) : Don Preston
guitar : John Rowin, Melvin "Wah Wah" Ragin*
bass (electric) : Chuck Rainey
drums : Harvey Mason
congas : King Errisson
percussion : Roger Sainte, Stephany Spruill*
trumpet : Jerry Peters
trumpet, clavinet : Fonce Mizell

produced by Larry Mizell and Chuck Davis for Sky High Productions, Inc.

1. New York Times
2. Satin Doll
3. San Francisco Lights
4. Ladies Day
5. Fun House
6. My Little Girl
7. Rain Again
8. You Are The Sunshine Of My Life





  

2023年3月24日金曜日

山下達郎 / On The Street Corner 2


 On The Street Corner 1 が発売されたのは1980年で、当時私が中学生の頃で山下達郎ファンク時代の「ボンバー」とか「タクシードラーバー」とかを好んで聴いていました。On The Street Corner 1 は、レコードとカセットで発売を開始し1986年にCDで再販となったようで、確かに私の記憶もカセットで聴いていました。一枚目の On The Street Coner 1 はかなり衝撃的で、声だけの多重録音でこのような広がりが出せるのに興味を持ち自分でもアカペラの宅録をしたこともあります。
 この第二作はステージで披露するために制作された楽曲が大部分を占めていて一作目より選曲と編曲の幅を拡げています。またアルバム制作にあたってはテクノロジーの進歩で繊細なテンポの設定が出来るようになり The Four Freshmen のような、より複雑なコーラス・スタイルも取り上げられています。その結果、作品のコンセプトであった1950年代アメリカン・ストリート・コーナー・ミュージック、あるいはドゥーワップの範疇から更に幅を広げた作品となっています。続作が発売されているとのことなので引き続き収集は続けたいとは思っております。


 改めてアルバムを聴きながらレビューします。Amapola は原曲は1922年スペインのJoseph M Lacalle の作品。山下達郎は、映画の Once Upon A Time In America をアレンジの手本としてこの曲を収録したそうで耳に覚えのある人も多いのではないでしょうか。Ten Commandments Of Love は 1952年から1960年に活躍したドゥーワップ・グループThe Moonglows の作品です。第1作の Corner1で、Most Of All が取りあげられていました。曲調が似ているのか前作の収録とも似たアレンジです。グループ名 The Moonglows の名前は素敵です。So Much In Love は The Tymes のカバーで1963年Billboard Hot 100で首位の邦題で「なぎさの誓い」このアルバムでも最も耳に残る楽曲です。Make It Easy On Yourself は、Teddy Randazzo の作曲で、このアルバムのアレンジの元はThe Imperials の有名なシングル Going Out My Head のB面に入っていた曲だそうです。マニアな解説が山下達郎らしい。My Memories Of You 邦題は「あなたの思い出」は、Louis Armstrong, Duke Ellington, Francis Sinatra などのジャズ系ミュージシャンの他、Bette Midlerなどのカバーもされている名曲。Chapel Of Dreams は、The Dubs 1959年のヒット曲。You Make Me Feel Brand New は、Tom Bell の The Stylistics の為に書いた楽曲です。これは私も知っているぐらいだから有名ですね。バリトンとファルセットのリードの組み合わせが普通のグループではありえないと達郎氏の解説ですが、この曲を聴くと何の違和感も感じないのは達郎氏の実力。I Only Have Eyes For You は1934年の映画 Dames の主題歌。曲はメローソウルな感じがしますが、このコーラスの広がり具合は別世界で凄い。Silent Night は誰でも知っている名曲「きよしこの夜」1818年に創られた讃美歌109番。そういえば教会の讃美歌で子供たちと一緒に歌っていた。White Christmas は、1942年の映画、Holiday Inn で Bing Crosby によって歌われた名曲。讃美歌ではありません。
 第一作ほどの衝撃はありませんが、素晴らしいアレンジと広がりで、制作側からするとかなりオタクなアルバムに入るかと思います。楽しいです🎵

1. Amapola
2. Ten Commandments Of Love
3. So Much In Love
4. Make It Easy On Yourself
5. My Memories Of You
6. Chapel Of Dreams
7. You Make Me Feel Brand New
8. I Only Have Eyes For You
9. Silent Night
10. White Christmas