オルガンファンクの巨匠と言えば、Jimmy Smith、Jimmy McGriff、Jack McDuff、Johnny “Hammond” Smith なんかが挙げられますが、この Richard Groove Holmesは、1931年生まれでバップ、ソウルジャズで活躍し1965年の Misty が最も有名なアルバムとのこと1991年7月29日で亡くなってます。1961年 Groove でデビューし1991年 Hot Tat まで生涯現役ですか。40枚アルバムを発売されているオルガンファンクの巨匠のひとりですね。
1曲目「Night Glider」は歌物ソウルでも定番のノリの楽曲です。オルガンのソロが終わってサックスが入ってきたところは、人間のボーカルが入ってきたのかと一瞬思ってしまいました。パーカッションが絡むブレイクも恰好良いですね。キャロル・キングの名曲「It's Going To Take Some Time」「Go Away Little Girl」なんかも収録されているのはうれしい限り。ラストのジャズスタンダードの「Young And Foolish」も泣かせてくれる。
たった3枚ですが、この時代のアシッド・ジャズ・ブームを作った Ronny Jordan とも向こうを張れる技術とセンスのあるギタリストであっただけにその後のアルバムが聞けないのが非常に残念で仕方ありません。私が一時アシッド・ジャズに、はまったのもこの人の影響は非常に大きいです。
彼のギターは、クリーン・トーンで歪は使わないタイプです。このアルバムのライナーノーツで手にしているのはリアにハム・バッキングも搭載したシングル・コイル系のエレキですが、Laidback では、セミアコを抱えたジャケットです。当然ジャズ系の音使いでほぼチョーキングは無しなのですが Ronny Jordan よりも、ジャズ系の匂いが少なくロック系でもない進化系のギターです。打ち込み的なリズムに合う正確なリズムとピッキングも魅力です。
さてレビューです。Breakfast At The Epiphany は、16秒の一人ブルースのイントロです。ザカリー好きな人は直ぐにコピーできます。次いで Cafe Reggio いかにもザカリーらしいアレンジとギターです。イージー・リスニングっぽいんですが、流れるようなギター・フレーズと手癖が、いつものあれだなって感じです。控えめに入ってるホーン部隊がさりげなくて良いです。 I Told You は、軽ーく作ってみましたって感じだけど、このさりげなさが渋いです。フルートとのユニゾンもアイデアですね。Never Can Say Goodbye は、アースっぽいイントロから始まると思っていたら、Jackson 5 のカバーらしい。この手の曲は大歓迎です。最近コテコテのジャズばっかり聴いてたんで、この軽さが懐かしくポップな中にちりばめられた難しげなフレーズが心に響きます。The Thrill Is Gone は、ザカリーがボーカルをとっています。私の大好きなハイラム・ブロックが歌わなきゃ良いのにって思う感じに似てます(目立ちたがりのギタリストは歌いたがるもんです)そして After 2:00 AM On The West Coast で、ギターソロに Steve Lukather が登場です。派手ではないけど丁寧に考えられたようなギターソロで、ザカリーと全く違うアプローチは印象的。そしてマイルスの All Blues ですが、リズム&ブルースっぽいアプローチでハーモニカまで入れてきてジャズっぽくないのが好感。Back Into Time は、ザカリーの作曲だと直ぐにわかるパターンです。基本的にパソコンに向き合って作っているかのような無機的なパターンに、ジャズ的要素を加えていくとこうなるんでは無いかなと思います。このパターン、スキです。そしてタイトル曲の Uptown Groove はオルガン・ジャズ・ファンクになります。いやハマります。やっぱりザカリーの好きな音楽性と私は合致しています。楽しいです。Flavors Of My Mind では、また軽くフルートとの共演です。センス良しですね。The 135th St. Theme では、ちょっとテクニカルなギターを入れたパソコンで作った的な楽曲です。ワンパターンが安心感あります。そして、After 2:00 AM On The East Coast を再度入れてます。アコースティック・アレンジにして今度は Ted Dunbar がリード・ギターです。なるほど、タイプの違うギターが少しだけ参加することで飽きの来ないつくりにもなっている訳ですね。最後は I Love This Life は、ジャズ・ブルースのジャムで締めくくりですかと思っていたら、Ted Dunbar とザカリーが何か話していますが何を話しているのかは聞き取れませんが、延々と6分半のおしゃべりのみです。アイデアが良いですね。面白い。
2023年の現在で、結成から43年の、未だメンバーを入れ替えながら活動してる息の長いバンドの Tower Of Power(T.O.P)の1995年アルバム。1970年にデビューなのでこのアルバムの発売時で25年。最新アルバムは Step Up (2020年) ですが、これは持っていません。
ボーカルは Brent Carter で力強い太い声。嫌いな声ではないが、T.O.P. で聴くと若干の違和感があるかな。(好みの問題ですね)
アルバムを聴いていると、曲名は違うのですが何処かで聴いたフレーズやリフ・パターンのオンパレードです。サウンドは、いつもの T.O.P. より重めでしょうか。まあファンなんで好きですけど Back To Oakland、Bump City とかの細かで緻密な細工が施されているサウンドの方が好きかなあという感じです。ちなみに、いつもの「おでんバー」の音楽好きの面々は T.O.P. には、ほぼ無反応でした。この手のファンクを聴いて心は踊らないようです。残念。
古参の結成当初からのメンバーは、テナーの Emilio Castillod、バリトンの Stephen "Doc" Kupka だけになってしまっていますが、メンバーを変えながら息の長い活動を続けているバンドです。曲調も、細かいストロークを中心としたブラスの細かなアレンジのファンクの形態はずっと継承されていますが、リズム隊のメンバーが入れ替わったり、ボーカルが変わったりすることで少しづつ色がか変わっているのを聴くのもこのバンドの楽しみの一つ。ただ今回聴いて思ったのは、楽曲のパターンや元ネタは結構一緒で何かに類似した曲が多いのは嬉しいような気もするが少し残念な感じでもありました。あとものアルバムについて調べていると、メンバー以外のアレンジャーを登用しているのがわかり、これがこのアルバムの多様性を広げているのか、一貫性はあるものの少し物足りなさを感じる要素になってきているような気もします。Barry Danielian (1, 5, 7 to 10, 12), Bill Churchville (2 to 4), Dave Eskridge (6, 11), David Mann (1, 5, 8 to 10, 12)
さてレビュー行きましょう。Souled Out はタイトル曲なんですけど、インコグにこんな曲があったような気がします。いつもの T.O.P. よりポップな感じもします。Taxed To The Max も歌メロが聞いたことがあるような部分があり、これは T.O.P. の昔の曲の中からかな? まさかのアイデアの枯渇?ベースラインは好きな感じですが全体のアレンジは今風。Keep Comin' Back についてはラテン的な要素も感じるポップです。コーラス部分は昔からのパターンの使いまわしですね。Soothe You は柔らかい感じのバラードです。昔だったらこのパターンのバラードでもリズム隊はもっと緊迫感のある細かなリズムを入れてきていたような気がします。Do You Wanna (Make Love To Me) は、昔のあったパターンですが、このお決まりのパターンは好きです。ベース・ラインも好きです。こうゆう曲をジャムりたいですね。Lovin' You Forever は、またソウルっぽいポップっぽい曲になります。でも歌メロの基本はいつもの奴ですか。Gotta Make A Change は、細かい16ビートが気持ち良い曲です。この速さでやる16が気持ち良いです。変拍子っぽいキメを入れてあるところも私にはかなりツボです。このアレンジは中々のものですが曲の進行は少し単調かなあ。Diggin' On James Brown は昔からやってるヤツですね。安心して聴けます。Sexy Soul は、サザンソウル風です。このぐらい昔風に振り切っていれば気持ち良いですね。Just Like You はミドル・テンポのソウルで少しナンパな感じがします。歌メロにインコグ系が入ってるのが気になるかな。Once You Get A Taste は、なんか軽いですね。Undercurrent は、最後なんでファン・サービス的なブラス・アレンジが気持ち良いボーカルレスの曲。バンドとして進化は必要だとは思うけど T.O.P. は、この路線でいいんじゃないのかなって思います。過去に素晴らし過ぎるアルバムが多いので少し辛口になってしまったような気もします。これが T.O.P. じゃなかったら合格ってしてるんですけどね🎵
【Tower of Power】
Brent Carter : lead and backing vocals
Emilio Castillo : tenor saxophone, backing vocals, lead vocals (8)
Stephen "Doc" Kupka : baritone saxophone
David Mann : alto saxophone, tenor saxophone, horn arrangements (1, 5, 8, 9, 10, 12), tenor sax solo (8, 9, 12)
Bill Churchville : trombone, trumpet, flugelhorn, horn arrangements (2, 3, 4), lead trumpet (2, 3, 4, 6, 9, 11), trumpet solo (7), trombone (11)
Barry Danielian : trumpet, lead trumpet (1, 5, 7, 8, 10, 12), horn arrangements (1, 5, 7-10, 12), flugelhorn solo (6), trumpet solo (12)
Nick Milo : keyboards, Hammond B3 organ solo (2), Minimoog solo (3)
Carmen Grillo : guitars, guitar solo (11), backing vocals
Rocco Prestia : bass
Herman Matthews : drums, percussion, hum-drum (12)
Stevie Ray Vaughan(スティービー・レイ・ボーン)は、1990年、8月26日、ウィスコンシン州イースト・トロイのアルパイン・ヴァレイ・ミュージック・シアターで行われたブルース・フェスティバルに出演した。出演者は エリック・クラプトン、バディ・ガイ、ロバート・クレイ、ジミー・ヴォーン。このコンサートの終了後の8月27日にシカゴ行きのヘリコプターに乗り込み、アルパイン・ヴァレイ・リゾートにあるスキー場のゲレンデに濃霧で視界を失ったヘリコプターが墜落、エリック・クラプトンのボディガードを含む乗員全員と共に死去した。
このアルバムは軽快なロックンロールで幕を開け、Howlin' Wolf のカバーの Love Me Darlin' まで収録されています。またキーボードの Reese Wynans の参加によりロックン・ロール感が増しています。
さて曲のレビューといきます。The House Is Rockin' は、とにかく明るく始まりロックンロール・ピアノがイントロから印象的な曲です。飲み屋で楽しくやってるから遠慮せずにノックして来いよ。フロアで踊ろうぜという楽しい曲です。これがライブ・ハウスとかでレイボーンの演奏で聴けたら最高でしょう。Crossfire は、少し重めのブルース・ロックでホーンも入った演奏で重厚感あります。Tightrope は、オルガンが軽めに入ったブルース・ロックとなっています。手癖のあるフレーズが最初から連発で、少し歪みが多めのギターの音も好きです。こうやって聴くと一辺倒に聞こえてたギターの音も、少しづつ音色変えてるのがわかりますね。Let Me Love You Baby は、伝統的なスタイルのブルースが激しくなりカッコよく演奏されています。ギターの音色は、少し歪み少な目にしてトレブルを上げた音色です。Leave My Girl Alone はスロー・ブルースです。ギターはクリーンに音色設定してるのが、これまた素晴らしい。途中からズブズブに歪ませるとこもゾクゾクしますね。ロングトーンの音の揺れ具合も素敵です。Travis Walk は、お得意のインスト・スタイルのロックン・ロールです。テクニックも音使いも素晴らし過ぎる。ピアノも効果的で、やっぱりこのアルバムは当たりだ。Wall Of Denial は変則的なギターのイントロが印象的な曲で、伝統的なブルースだけでなく、こんな技も使うとこが作曲にも非凡なところがあるのを感じますよね。と書いたところで、Scratch-N-Sniff でロックン・ロールに戻ってきます。録音のリバーブ感がライブ・ハウスで聴いているかのようなザクザク感が楽しいなあ。そして、ハウリン・ウルフの Love Me Darlin' です。グシャグシャ加減が気持ち良いブルースです。ギターも凄いけどいきって歌ってるレイボーンのボーカルも好きです。Riviera Paradise はクリーンなインスト曲です。この曲は今聴いても好いなあ。今更ながらコピーでもしようかな。ベーシストと二人でやったら渋いですよね。
Lee Morgan といえば大ヒットは1963年録音・1964年発売の The Sidewinder で、次いで1965年に録音・1966年発売の The Rumprolle は、The Sidewinder の路線。本作はその前の年の 1964年に録音されたいましたが、The Sidewinder のヒットにより同類の The Rumprolle を優先して販売で同年の1966年に発表となったアルバムです。売れそうなアルバムは、売れる時に売ると、日本のアイドル並みのペースでのアルバムリリースとなっています。しかし全てのアルバムが売れたのかと言えば残念ながら The Sidewinder 以外のセールスは残念な結果となっています。The Rumprolle はBillboard 200入りを逃し、本作はBillboard 200で143位となり3週にわたりトップ200入りの結果です。200位に入れば十分かと思いますが、このアルバムは Lee がコケたアルバムと言われているらしい。
さて、この作品のレビューとしましょう。8ビートも無く全体的には陰鬱でダークな雰囲気が漂い重い作品です。作曲はすべて Lee Morgan ですが1曲目の Search For The New Land の始まりかたは、なかなか斬新でハンコックのピアノがシンセチックに使われていて斬新です。そこから地底から這い上がってくるようなテーマが始まり盛り上がるのかと思いや重さを留めたまま元に戻り、ショーターのソロ、ダークなテーマ、Leeのソロ、テーマ、影薄めのグラント・グリーンのラテン風味のソロと、面白みに欠けるような気もするが、意外性のある展開が面白くもある。不思議な曲です。そして次の曲 The Joker は、普通に明るくバップしてるのが1曲目の意外性のある曲に続けるのは、なんともアンバランスですが、曲としては伝統的なノリで安心。Mr. Kenyatta も、普通にラテン風ジャズですがショーターの方が調子が良いような感じでグラント・グリーンも頑張りますが意外性は無いかなあ。 Melancholee は、ゆったりめのバラード?のようなダークな曲です。気が滅入るようなメロディーです。どうせなら、こちら方面の方向性をアルバムに持たせた方が良かったのではないかとも思えます。Morgan The Pirate はワルツ風。ドラムスの Billy Higgins が頑張っています。普通ですが、これは好きです。
全体的にコンセプトがよくわからないような曲の集合体のような気もしますが、冒頭で述べた過渡期の Lee Morgan のアルバムなので、実験をしながら何かを模索しているのが中途半端な印象となっているのでしょうか。そう思うと音源としては面白いかも🎵
trumpet, composed by : Lee Morgan
piano : Herbie Hancock
bass : Reggie Workman
drums : Billy Higgins
guitar : Grant Green
tenor sax : Wayne Shorter
producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder
recorded on February 15, 1964 at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.
すっかり歳をとってしまわれたメンバーは、土岐英史(sax)、山岸潤史(g)、続木徹(key) で、結成は1986年でした。前作は1990年に発表の CHICKENSHACK VI で、23年ぶりの2013年の発売で、10作目となります。昔はもっとネチッとしたサウンドでクロスオーバーとブラコン的な要素が強かったのが、今回は軽めになったソウル、R&B系フュージョンで円熟味を増した演奏に変化していると感じます。
さてレビューです。Have Yourself a Merry Little Christmas は、クリスマス・ソング。発売日は2013/06/12です。?と思っていると、どうやら'91年のChickenshackのライブ盤で Prime Time の最後の曲です。この盤がベスト盤やコンピ盤、リユニオン盤を除けば実質的なラストアルバムになるので、その続きという訳ですね。続くは Flow は歌物です。歌詞は Wornell Jones 作曲は 続木徹 と書いてあるのでこのアルバムのための書下ろしのようです。Go は 山岸潤史 の作曲のゆったりとしたフュージョンでトリッキーなこともなく落ち着いて聴ける聴きやすい曲で各自のソロも取りやすい進行です。ギターソロの音使いは私のツボに入る感じ。It’s Rainin’ on my Heart は、土岐英史の作曲のブルース。それも泥臭いヤツです。こんな曲はこのメンバーなら何にも考えずに手癖のみで演奏でしょう。王道すぎて楽しい。October Sky は山岸潤史で、アースのセプテンバーがモチーフですね。だから曲名もオクトーバーと納得。私の世代の人は嬉しい楽曲ではないでしょうか。You Make me Feel Brand New は、スタイリスティクスですねえ。山岸さんの趣味でしょうか。Thrill ain’t Gone (we’re still together) は、続木徹の作曲で王道のコード進行と構成で Fourplay が好きな人にはばっちりです。Have You met Johnny G ? は、また土岐英史の作曲。Johnny G とは、Johnny ''Guitar'' Watson のことでしょうか。The Gadd Gang っぽい楽曲です。ピアノは Richard Tee、ギターは Cornell Dupree に随所でなりきってます。Christmas Time is Here は、Vince Guaraldi Trio の Charlie Brown の Christmas アルバムでは子供たちが合唱している曲です。渋い選曲かな。最後の Walk Alone は山岸潤史で締めくくりです。モチーフは Peple Get Ready ですよね。もしかしたらコード進行だけかもしれませんが、メロディだけ女性ボーカルを入れてきたり、ジェフベックみたいな音を入れてきたりと確信犯だとは思います。こういった遊び心が随所に入っているのも熟練されたミュージシャンの余裕を感じますね🎵良きアルバム。
10年ぐらいは眠らしていたでしょうか?久しぶりに聴きます。大学時代にジャズをかじっていたものの、ジャズ・ギタリストには全く詳しくなくて行きつけの「おでんバー」のマスターに何人かご紹介を受けたギタリストの一人で何を購入しようかタワレコで迷ってタル・ファーローで Tal なら間違いは無かろうと思って購入を決めたような記憶です。
さてこの作品のレビューにしましょう。1曲目は、Isn't It Romantic? です。なんといっても特徴はハーモニックスによる演奏。最初はギターのブリッジの方(後ろの方)で弾いているのかと思ったら音程が高いのでおかしいなとは思ってググったらハーモニクスを使っているとのこと。多分ピッキング・ハーモニクスとは思いますがそこら辺については発見できませんでした。次いで、テンポ良い There Is No Greater Love は正調なビバップですが、少し弾きつらそうにテンポがもたつく箇所も度々出てきます。おそらくとんでもない運指で弾いているものと思われます。一転して How About You? は、違う人のようにガンガン流れるように弾きまくります。ドラム不在で、このリズミカルな演奏は Vinnie Burke の職人のような途切れなく音を埋め尽くすベース・プレイと弾きまくるギターに触発されたかのよなガンガンプレイの Eddie Costa の技が光ります。Anything Goes は最初から突っ込んだイントロと高速バップが特徴的です。最初より中盤の方がテンポアップしているような感じもあります。凄いですね。Yesterdays は、Jerome Kern による1933年の楽曲で、いつもこの曲を聴くとチュニジアを思いだしてしまいます。どっちが先何だろうとググってみるとチュニジアが1945年のガレスピ作なので Yesterdays の方が先に創られています。You Don't Know What Love Is は、いかにも、ぶっとい弦を張っていますという感じの低音ギターから始まりソロ部分はネチッとした中域広域のレンジの音まで幅広く使われているテンポ遅めの聴かせる曲。うって変わって Chuckles はテンポ早めのダンサブルな曲でライブでこのような曲は受けたに違いない楽曲です。Broadway は最後に相応しいスタンダード。Bill Byrd Teddy McRae Henri Woode が作曲となっています。軽やかでいかにもジャズですと言う感じでタルとエディー・コスタのアドリブの掛け合いが楽しい。
そしてこのアルバムのもう一人の登場人物は Areski Belkacem(アレスキー・ベルカセム)。彼も1940年のフランスのベルサイユ生まれ。ダンスクラブや二流のレストランでヒット曲の演奏を始め、兵役の前には、ジャム・セッションのためにサン・ジェルマン・デ・プレの洞窟でドラマーとし活動。兵役後は、フランス中のロックやジャズクラブで多様な楽器を演奏しながらツアーをするマルチ・ミュージシャンです。Brigitte Fontaine とは、Art Ensemble Of Chicago と共に、Théâtre du Vieux-Colombierで、地下クラシックになる Comme à la radio アルバムで演奏し役者としても活動しています。
さて、アルバムの曲のレビュー。テーマ曲である Le bonheur は、11曲含まれている楽曲のうち10曲目に配置されています。劇場での録音なのか、SE的な演出なのか、わかりませんが、出だしは観客と思われる人の笑い声から始まります。アルバム全体がフォーキーで、印象に残りやすいメロディーな曲は少ないのですが、その中で、かなり聴きやすいハッキリしたメロディでユニゾンをハモリながら進行していく印象深い曲。フォーキーでありながら語るように歌うのでお経のように聞こえるところもあり不思議な響き。楽曲としては、幸福と自由を求める若者たちへのメッセージを伝える歌詞で、曲の冒頭では、「幸福は自分で見つけなければならないものだが、それを見つけたら、人生は自由になるだろう」と歌われてるとのこと。当時のフランス社会において、政治的、社会的変革を求める若者たちの反逆の象徴となったとのこと。1969年にこの曲は書かれたとのことで1968年にフランスは五月革命というゼネストを主体とした学生、労働者、大衆の一斉蜂起がおこった頃です。なるほど力強い響きになってくるわけです。世界的には、アメリカではベトナム反戦運動の泥沼化、中国では文化大革命、日本は全共闘、東大紛争、ワルシャワ条約機構軍によるチェコへの軍事介入(プラハの春)などがあり、最近聴いているアルバムは、この辺に関するもの、時期のものが多く政治、戦争、音楽はこの時期には切れない縁があると再認識です。
さて、アルバムに戻り冒頭の1曲目は、かぼちゃ La citrouille で歌いだしの奇妙な笑い声に聞こえるのは、ハエの前足をすり合わせるようなフォンティーヌの声とライナーノーツでは書かれているが歌詞の中身からしてもハエではないと思いたい。可愛らしいメロディーと奇妙な笑い声、カボチャは馬車になることが出来ると歌い、実は自分は灰色ネズミであるという中々シュールな曲のようで、アルバムは全体的にこのような雰囲気が漂っています。
1964年のマイルスは忙しい。1964年2月にニューヨークのリンカーン・センターのフィルハーモニック・ホールで行われた2公演のバラードを「My Funny Valentine」に高速バップは「Four & More」の2枚に収録され「静」と「動」として対をなす傑作を録音。この時のサックスはGeorge Coleman。そしてサックスが Sam Rivers の編成になって、初の日本公演を1964年7月に果たし Miles in Tokyoというライブアルバムを遺しています。そして Art Blakey And The Jazz Messengers で頭角を現した Wayne Shorter を迎え入れて第2期クインテットが確立し、10月のドイツでのライブが本アルバムです。その他この1964年ライブ・アルバムとしては、Miles in Berlin も発表されています。このヨーロッパ・ツアーは以下の日程で組まれていた記録がありました
September 25: Berlin Philharmonie
September 26: Concertgebouw, Amsterdam
September 29: Le Théâtre Municipal, Lausanne
September 30: Kongresshaus, Zürich
October 1: Salle Pleyel, Paris (two concerts)
October 3: Johanneshov Isstadion, Stockholm
October 4: KB-Hallen, Copenhagen
October 6: Messuhalli, Helsinki
October 8: Stadthalle, Sindelfingen (two concerts)
1曲目は Autumn Leaves です。何回か聴いても、聴き始めは音が今いちだという印象がありますが、聴き始めてしばらくするとテンポ早めの音数多めのマイルスのトランペットに耳を奪われ気にならなくなります。ショーターのリズムにのったサックスも素晴らしい。ハンコックはソロになると唸りをあげ気分が盛り上がっているのがよくわかります。So What ももともと大好きな曲、テーマの部分から凝っているのが嬉しい。文句なし。そこから All Blues で、お互いの技量を確かめ合うかのような演奏がすごい。途中のテンポを変えるところのメンバーの反応具合も良く勢いを感じます。そしてOleo ですか。おいしい曲が連発です。Ron Carter のベースがとても良い感じでメンバーを煽っています。マイルスも狂ったように吹きまくりハンコックが、各人のソロの始まりにそれぞれに違った感じの煽りを入れるのも良いですね。Walkin' / The Theme もスリリング。一枚目で十分に堪能できる内容ですが、2枚目に続きます。またもや名曲 Milestones です。まだまだ早いテンポで聴き手を煽り続けています。疲れそうなライブになってきました。ここで一息の No Blues です。今までよりも方の力が抜けたこなれた楽曲になり、ブルースって展開が見えやすくてホッとするなあと感じます。All Of You で、さらにクールダウンしてきます、今まで聴く方も一生懸命だったのが、ゆっくり席に座って目を閉じて音を聴くような感じ。ショーターが変則的な音と間合いでソロを取り始めるところにロン・カーターのベースの音の入れ方がカッコよく感じます。Joshua / The Theme で一旦ライブが終了します。これからはフィンランドでのライブとなり音質が変わります。Autum Leaves は少しテンポを落として聴かせるタイプの演奏。音のこもり具合が気になります。So What の出だしのアレンジは1枚目とほぼ一緒の感じですが、録音の具合もあるのか、なんとなく熱量が少ない。Stella by Starlight は、やはりしっとりと聴かせてくれます。Walkin' は、煽り気味に戻りますが、これも今まで聴いてきた中では不完全燃焼気味です。終わりがテープが終わったりしたのでしょうか?次の The Theme と合わせてうまく編集しているような感じです。聴いてきて思うのはフィンランドになると落ちている演奏側の熱量です。さすがの強者たちも疲れが見えているんですかね。
このツアーは Autumn Leaves、So What、Stella by Starlight、So What、Walkin' などの過去のレパートリーに終始しています。しかし演奏はウェイン・ショーターの参加によってモーダルな方向に加速しているのがわかります。Miles in Berlin は未だ持っていないのですが、曲目はほぼ同じなのを見ましたので、どのような違いがあるのか是非聴いてみたいものです。おそらく最初の公演なので熱い演奏なのかと期待ですね🎵
trumpet : Miles Davis tenor sax : Wayne Shorter piano : Herbie Hancock bass : Ron Carter drums : Tony Williams
Stadthalle, Sindelfingen, Germany 8th Oct 1964
【Disc 1】 1. Autumn Leaves 2. So What 3. All Blues
4. Oleo 4. Walkin' /The Theme
【Disc 2】
1. Milestones
2. No Blues
3. All Of You
4. Joshua / The Theme
Bonus Tracks Messuhalli, Helsinki, Finland 6th Oct1964