2023年5月18日木曜日

Areski Brigitte Fontaine / Le bonheur

 

 Brigitte Fontaine(ブリジット・フォンテーヌ)は、フランスの歌手でジャンル的にはアバンギャルド・ミュージックとされています。ディスク・ユニオンのジャズ・ボーカルの棚にこれがあったので、たまたま手に取って購入してみましたが、この分野の音楽に触れることは滅多にないため不思議な感覚です。
 と言うことでもう少し Brigitte Fontaine を調べてみると歌手もやっているが、女優、作詞家、詩人、小説家でもあるマルチな才能の持ち主らしく、音楽的にもロック、フォーク、ジャズ、ワールドミュージックなど、多くの音楽のスタイルをオリジナルに融合させていった、フランス音楽シーンが誇るカリスマ的アーティストとのこと。1940年ブルターニュのモルレー生まれ。パリのソルボンヌ大学に入学後、実験演劇と歌手の両方で活動を開始したとのこと。
 そしてこのアルバムのもう一人の登場人物は Areski Belkacem(アレスキー・ベルカセム)。彼も1940年のフランスのベルサイユ生まれ。ダンスクラブや二流のレストランでヒット曲の演奏を始め、兵役の前には、ジャム・セッションのためにサン・ジェルマン・デ・プレの洞窟でドラマーとし活動。兵役後は、フランス中のロックやジャズクラブで多様な楽器を演奏しながらツアーをするマルチ・ミュージシャンです。Brigitte Fontaine とは、Art Ensemble Of Chicago と共に、Théâtre du Vieux-Colombierで、地下クラシックになる Comme à la radio アルバムで演奏し役者としても活動しています。


 先にも書きましたように、この手の音楽には馴染みがなく雑多にお音楽を聴いている私にも、耳慣れない響きです。フランス語は美しい響きの言葉であると言われるのを耳にすることはありますが、自分ではそれほど意識して美しいと感じたことはありませんでした。そこで、このアルバムを聴いてどう感じたのかと言えば美しいと言うよりは結構力強い響きであること。(演奏者の性格も出ているような気はします)
 さて、アルバムの曲のレビュー。テーマ曲である Le bonheur は、11曲含まれている楽曲のうち10曲目に配置されています。劇場での録音なのか、SE的な演出なのか、わかりませんが、出だしは観客と思われる人の笑い声から始まります。アルバム全体がフォーキーで、印象に残りやすいメロディーな曲は少ないのですが、その中で、かなり聴きやすいハッキリしたメロディでユニゾンをハモリながら進行していく印象深い曲。フォーキーでありながら語るように歌うのでお経のように聞こえるところもあり不思議な響き。楽曲としては、幸福と自由を求める若者たちへのメッセージを伝える歌詞で、曲の冒頭では、「幸福は自分で見つけなければならないものだが、それを見つけたら、人生は自由になるだろう」と歌われてるとのこと。当時のフランス社会において、政治的、社会的変革を求める若者たちの反逆の象徴となったとのこと。1969年にこの曲は書かれたとのことで1968年にフランスは五月革命というゼネストを主体とした学生、労働者、大衆の一斉蜂起がおこった頃です。なるほど力強い響きになってくるわけです。世界的には、アメリカではベトナム反戦運動の泥沼化、中国では文化大革命、日本は全共闘、東大紛争、ワルシャワ条約機構軍によるチェコへの軍事介入(プラハの春)などがあり、最近聴いているアルバムは、この辺に関するもの、時期のものが多く政治、戦争、音楽はこの時期には切れない縁があると再認識です。
 さて、アルバムに戻り冒頭の1曲目は、かぼちゃ La citrouille で歌いだしの奇妙な笑い声に聞こえるのは、ハエの前足をすり合わせるようなフォンティーヌの声とライナーノーツでは書かれているが歌詞の中身からしてもハエではないと思いたい。可愛らしいメロディーと奇妙な笑い声、カボチャは馬車になることが出来ると歌い、実は自分は灰色ネズミであるという中々シュールな曲のようで、アルバムは全体的にこのような雰囲気が漂っています。
 言葉はわからないけれど、美しさ、抒情性など芸術性を感じるアルバムで、1曲よりもアルバム全体を聴いた方がその感覚がわかると思います🎵

vocals , percussion (tambour) : Brigitte Fontaine
guitar, percussion, flute, music by : Areski
lyrics by : Brigitte Fontaine ( 1 to 4, 6 to 11)

producer : Pierre Barouh

recorded during the winter of 1975 in a theatre, a kitchen, a stable and a studio.

1. かぼちゃ La citrouille 
2. 芝居 Theatre
3. 星と豚 Les étoiles et les cochons
4. オーナー Le propriétaire
5. ブーダリ Boudali 
6. 痛い痛い Bobo
7. 果樹園 Les vergers 
8. メフィスト Mepfisto
9. ベーコンがある Y’a du lard
10. 幸福 Le bonheur
11. 忘却のうた L’oubliana





  

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