2023年4月28日金曜日

The Jazz Funk Masters featuring Lonnie Smith / Live Jam!


 こういったレア盤を見つけると何か心躍るものがあります。1992年5月12日に高円寺のJIROKICHI にて収録された吾妻光良、梅津和時のセッションに緊急参加のジャズ・ファンク界の誇るハモンド・オルガン奏者 Lonnie Smith をフューチャーしたセッションです。
 Lonnie Smith と言えば、ターバン姿と白熱の鍵盤さばきがトレードマーク。ジミー・スミスやラリー・ヤングなど伝説的名手のスピリットを継承しながら、今日のオルガン・ジャズを描き続ける名匠です。2021年9月28日に肺疾患の肺線維症のため、フロリダ州フォート・ローダデールの自宅で79歳で逝去されています。


 アルバムの情報としてはCDのライナー・ノーツが頼りで、栗山太郎という方がピーター・バラカンさんのラジオ放送向けに宛てた手紙がもとになっています。さてこのライブ Lonnie Smith が参加する雑誌などの告知が一切ないライブだったそうで、1部終了後2部の途中で Lonnie Smith が到着して参加、3部ではメンバーが変わって Lonnie Smith が主役になった編成で登場。ハモンドとレスリースピーカーから大音量で響き渡った瞬間に鳥肌がたったそうです。1曲目の Slouchin' は、BlueNote 時代のアルバム Think! 等で有名な曲で、これは予定通りの演奏だったものの、その後は自分のやりたい曲を弾き始めるのでメンバーはついてゆくのが大変だったとか。曲順は、Willow Weep For Me、Milestone、Satin Doll でその後はブルース・ジャムだったそうです。このアルバムでは、Willow Weep For Me は残念ながら収録されていません。アルバムでは演奏曲順と収録曲順は異なるようで、2曲目は Satin Doll で、これはメンバーも演奏はしやすい曲でしょう。3曲目 Skin Games 4曲目 Blue Turban はロニーのオリジナルとなっているのですが、これが手紙に書かれていた即興のブルース・ジャムにあたるような感じがします。Skin Games では、吾妻光良 のギターは比較的クリーンな音でジャズ・ブルースっぽい感じですが、Blue Turban はスローなブルースですが、ほぼR&Bのギタリストになりきっています。後半は激しい歪みを加えて盛り上がる大団円が嬉しい。そして最後は Milestone ですが、気合が入りすぎているのか、テーマ部分のホーンが走り気味になってロニーがそれを抑えながら弾く部分もあったりするのがライブって感じで良いです。全体としても、くどいメンバーの熱い演奏が最高で強烈な印象です。JIROKICHI は、それほど広くないライブハウスですので、この大迫力ライブが直ぐ近くで見れてお客さんは幸せだったに違いない🎵

organ : Lonnie Smith
guitar : 吾妻光良 Mitsuyoshi Azuma
drums : 佐野康夫 Yasuo Sano
alto sax : 梅津和時 Kazutoki Umezu
tenor sax : 片山広明 Hiroaki Katayama

producer : Isao Washizu

live recorded at Koenji "Jirokichi", may 12, 1992.

1. Slouchin'
2. Satin Doll
3. Skin Games
4. Blue Turban
5. Milestones





  

2023年4月23日日曜日

Buddy Rich / Just Sings

 

 私がジャズを全く聴いていなかった中学生時代に、FMラジオから、たまたま録音したビッグ・バンドの迫力にビックリして更にバカテクのドラムにびっくりしてこの人の名前を記憶していました。大学時代にビッグ・バンドにも参加したものの、ハマることは無かったのですっかり Buddy Rich(バディ・リッチ)の名前を忘れていました。最近になってからバディ・リッチをたまに購入したのが、this one's for Basie (1956)Big Swing Face (1967)となり、これが3枚目の1957年の作品となります。
 演奏は細かでスピーディでなフレーズを正確に叩いて長時間持続が可能な人で、ハイテンションで崩れないグルーブ感が持ち味です。1917年9月30日、ニューヨーク州ブルックリン生まれで、1歳よりドラムスティックを持ち11歳でバンドリーダーとしても活動を始める天才です。1937年からジョー・マーサラ楽団に加入し、スウィング・ジャズ・バンドで活動し、1950年代はハリー・ジェイムス楽団、カウント・ベイシー楽団等もゲストとして演奏され、1966年に自楽団を結成し1970年代にはファンク色の強い演奏もされ1987年4月2日、ロサンゼルスで死去されています。


 さて本アルバムを聴き始めると、いつもの激しめのビッグ・バンドと何か違う。というより、ギターがイントロのドラムレスです。CDの帯を見直すと「名ドラマー、バディ・リッチがなんとヴォーカルに専念した珍しいアルバム。超一流のミュージシャンをバックに本職顔負けの渋い歌声を聴かせる楽しい作品」「世界初CD化」とあります。なるほど!ですが、バディ・リッチが叩いている曲も一曲ぐらいあるだろうと思ったら、なんとゼロでした。
 バディ・リッチのアルバムでドラムを叩くのは大変緊張することであろうと察しますが、その役は Alvin Stoller が努めています。1925年生まれで1940~1950年代で活躍されていたドラマーで、私の所有する音源に参加されている作品はありませんでした。Mitch Miller というポピュラー・ミュージックの choral conductor おそらく(コーラスの指揮者、アレンジャー)の方とのレコーディング作品 The Yellow Rose of Texas が最も有名な作品とのことでドラミングは控えめなサポート役に徹しています。Howard Roberts は1929年生まれで1950年代には Sonny Stitt、Dexter Gordon、Buddy DeFranco 1960年代は自身のカルテットでアルバムを制作していたギタリストで、中々渋いギターです。Paul Smith は1922年生まれで Les Paul、Tommy Dorsey らと共演し 1958~1978年は Ella Fitzgerald のサポートもしていたピアニストで、コロコロとしたリズム感のある演奏でバンドを締めています。そしてバンドの要としてこのアルバムをぐっと聴きやすくしているベースの Joe Mondragon は1920年ニュー・メキシコ生まれの結構売れっ子のスタジオ・ミュージシャンだったそうです。
 そして今回のドラムを叩かないシンガーとなった Buddy Rich は、意外と良い喉をしています。確かに本職のシンガーのような歌いっぷりですが、全体的に抑揚が少な目で曲による変化が少ないため少し単調に聴こえます。ここら辺がCD化されずにいて、マニアのためにやっとCD化した理由でしょうか。そしてもう一つこの企画の大きな理由が想像されるのは1956年 Pacific Jazz Records から発売された Chet Baker / Sings のヒットでしょう。Verve も、このヒットに続けと売れっ子で歌の上手かった Buddy Rich に、この企画を持ち掛けたことは容易に想像ができます🎵

vocals : Buddy Rich
piano : Paul Smith
guitar : Howard Roberts
bass : Joe Mondragon
drums : Alvin Stoller
tenor sax : Ben Webster
trumpet : Harry Edison

1. Cathy
2. Between the Devil and the Deep Blue Sea
3. It's All Right With Me
4. Over the Rainbow
5. You Took Advantage of Me
6. Can't We Be Friends
7. It's Only A Paper Moon
8. Melancholy Baby
9. Cheek to Cheek
10. It Don't Mean A Thing (If it Ain't Got That Swing)
11. I Hadn't Anyone 'Til You
12. That Old Feeling

▶ Cathy




  

2023年4月22日土曜日

Eagles / Best Selection



 ホテル・カリフォルニアが流行ったのは1976年。私が未だ小学生の時で、流行っていた瞬間にリアルタイムで聴いていることはなく、中学生になってからFMラジオでのオンエアやなどでカセットテープに録音して聴いていた記憶があります。その頃はFMでイーグルス特集が頻繁にあったので、イーグルスのみでテープが何巻になっていました。


 中学に上がりたての頃なんて洋ロックに初めて触れたので、ホテル・カリフォルニア以外はヘビーなロックのような記憶があったのですが、改めて聴くとカントリー・ロックの要素が強かったので人間の記憶は経年で変わるものと改めて感じます。これは社会人になりたてぐらいの時に改めてイーグルスを聴きたいと思ったので、全部アルバムを買わんでも良いかととりあえずベストを購入したものです。
 しかし、このベストには私が好きだった曲が入っていなかったので、どの曲だったかずっとモヤモヤしていて、アルバムを6枚組そのままライナーノーツ無しでパックした廉価版パックを購入して探し出したのが、The Long Run に収録の Heartache Tonight でした。その廉価版のパックに入っていたアルバムも列記しておきます。

1. Take It Easy
2. Peaceful, Easy Feeling
3. Desperado
4. Already Gone
5. On The Border
6. One Of These Nights
7. Lyin' Eyes
8. Hotel California
9. Life In The Fast Lane
10. Wasted Time
11. Victim Of Love
12. Pretty Maids All In A Row
13. Try And Love Again
14. Is It True
15. Good Day In Hell
16. After The Thrill Is Gone





  

2023年4月21日金曜日

Magnum Band / La Seule Difference


 ファンクに凝っていて、ジャケ買いに果敢に挑戦していた若いころにジャケットに写るメンバーの写真を見て、そのカラフルさにてっきりアース系なんかのサウンドが聞けるのではないか?と想像しながら購入したら全く違うラテンだったという落ちがあるアルバムです。最も今これを聴き直しながらアルバムタイトルを見ていたら英語圏でないことぐらいわかっただろうにファンクではなさそうだぐらい推測できたとも思うのですが、ジャケ買いなんでタイトルなんて見るわけもなし、基本的にジャンルにこだわることはなく聴くタイプなので全く問題はなし。
 ラテンと言ってもカリブ系のデジタルな楽器を駆使したラテンやレゲエが収録されています。あまり私にはなじみがないんですが海外系のバーとかでよくかかっているヤツで全世界的にはこっちの方が標準サウンドなのでしょうか。アジア系、ヨーロッパ系問わず、お酒があって踊れるようなところでは好まれるようで、この手の音を聴いても血が騒がないのは、私のような日本人だけで少し感覚が違うんであろうことを感じます。


 このバンドに関する日本語のサイトは見つからないのですが海外サイトで断片的に記述はありました。ハイチのバンドであり、リーダーのギター Dadou Pasquet は、その筋の中では伝説的なギタリストということまでは発見。確かにクリーンなストラト系シングル・コイルのギターでレゲエのリズムもしっかりとこなしながらかなり細かな決めフレーズ、楽曲によってはスパニッシュなフレーズを入れたりと印象的なギターです。ギタリストがリーダーのラテンバンドってあまり無いので、そこらへんもレアな感じです。
 楽曲で印象に残るのは、Ki Mele'm で、坂本九の「スキヤキ」「見上げてごらん星空を」のメロディーが最初の方に少しだけ出てくるのですが、メドレーなんでしょうか?ドンドン曲調やメロディーは変わってゆき後半には全くでてこない8分の大作です。

leader, lead vocals, chorus, guitar : Dadou Pasquet
lead vocals, chorus, percussion : Yvon Mondesir
Keyboards : Chris Fletcher
bass : Nasser Chery
chorus : Carlos Pasquet
congas : Varnel Pierre
cowbell : Ernest Gabriel
drums : Tico Pasquet
sax : Bob Curtis
trombone : Rom Warfel
trumpet : G. Veilleux

1. Pike Devan (Zouke)
2. Way To Heaven (Gran Chimin)
3. Ki Mele'm
4. Courage
5. Pa Pale La





  

2023年4月16日日曜日

Sonny Clark / Cool Struttin'

 

 Sonny Clark は1931年生まれのピアニストで1963年に1月13日、ヘロインの過剰摂取により31歳で亡くなっています。地味なスタイルのせいか本国アメリカでは全く売れず知名度がないのに日本では人気のピアニストとのこと。また他の説では、麻薬常習者のためキャバレーカードが発行されずジャズ・クラブでの演奏が出来なかったため知名度が無かったという説もあります。しかしサイドマンとしては、1954年1月、Billy Holiday のケルン公演、 Lee Morgan / Candy(1958)、や Dexter Gordon / Go! 等にも参加しています。
 本作は、New York Times 紙は「いつまでも残るハードバップのクラシック (enduring hard-bop classic) と評されているとのことで、少々古臭い曲調ではあります。Cool Struttin'は(気取って歩く)の意味で、Francis Wolff という人が撮っておられますジャケットのセンスは非常に良いと思います。日本のジャズ喫茶史上最も多くプレイされたアルバムの一枚でとも言われております。確かに、いかにもわかりやすいインパクトのある1曲目はジャズ喫茶でかかれば、心して聴く構えが出来る曲でアルバムをセレクトする側としては重宝するものであったことが予想されと思っていたら、ジャズ喫茶「メグ」のオーナー寺島靖国氏の著書「ジャズの聴き方に法則はない」には、真逆の記述がありました。Art Blakey / Moanin'、Mal Waldron / Left Alone なんかは1日にリクエストが何回もかかり「ヒット・パレード」物と称して差別待遇をして当時は「さっきかかった」「盤に傷がついた」などと称して断っていたことがあるとのこと。なるほどヒットし過ぎるとそうなのかと納得し、何かに似ていると思ったら Moanin' の印象と似ているのかと納得。


 本盤は参加メンバーも有名どころが揃っています。Sonny Clark(p)、Art Farmer(tp)、Jackie McLean(as)、Paul Chambers(b)、Philly Joe Jones(ds)が参加しているところを確認しレビューです。
 オープニングはタイトルトラックの Cool Struttin' で、ジャケットの女性がカッカッと気取って歩いている様かと思うと古臭いと思われるテーマもクールに聴こえてくる。時代が時代なら違った聴こえかたをしたに違いありません。ソロでは Art Farmer がいかにもブルースな演奏をして Jackie McLean がブイブイ言わせ、弓ベースのソロもまとまっています。Clark はリーダーで目立ちすぎるということも無く程よいアンサンブル。次は、Cool Struttin' と同じく Clark のオリジナル・ナンバーの Blue Minor。ブルージーで親しみやすいメロディーでありながら途中のテーマ部分のラテン・アレンジも魅力的で、McLeanとFarmer は伸びやかにソロを撮っています。1曲目より Clark は存在感があり粋がった感じのピアノがとても良い。Sippin’ At Bells は、小気味よいドラムソロのイントロと管2本のポップで印象的なテーマ。聴く人が聞くとバド・パウエルの影響があるらしいスタイルらしいが私には未だそこを聴きとる力はなく、ただただ軽やかな推進力のあるスイング感が好き。そして Deep Night で仕上げです。My Funny Valentine の作者として有名な Lorenz Hart / Richard Rodgers の作品で、非常にかっこよい曲で Clark のピアノ がとても粋な感じにキマっています。
 全体的にアルバム全体の曲の構成、長さ、王道で潔い演奏は、聴きやすく黒く煮詰めた珈琲と薄暗い空間が良く似合うアルバムですね🎵

piano : Sonny Clark
bass : Paul Chambers
drums : "Philly" Joe Jones
alto sax : Jackie McLean
trumpet : Art Farmer

producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder

recorded on January 5, 1958. Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey

1. Cool Struttin'
2. Blue Minor
3. Sippin' At Bells
4. Deep Night





  

2023年4月15日土曜日

Billie Holiday / Last Recording

 

 Billie Holiday は「レディ・デイ」の呼称で知られ、Sarah Vaughan、Ella Fitzgerald ドと並ぶ、女性ジャズ・ヴォーカリスト御三家です。その生涯は人種差別や薬物依存症、アルコール依存症との闘いであり、乱れた生活にもかかわらず名声を勝ち得た彼女はジャニス・ジョプリンをはじめとする多くのミュージシャンに影響を与えました。1915年4月7日、メリーランド州ボルチモアに生まれ、1959年7月15日、ニューヨーク州メトロポリタン病院で44歳の短い人生を終えますが、(本当かどうかは分からないが)10歳でレイプされ、14歳でブロードウェイの娼婦となったが、、禁酒法時代のハーレムの真ん中で、非合法のナイトクラブに出入りするようになり有名なジャズクラブ「ポッズ&ジェリーズ」でも歌い始めるようになったことをきっかけに歌手生活に入り、ジャズ史上最高のシンガーといわれた方です。


 Billie Holiday については、所有しているアルバムは Billie's Blues だけで聴きこんでいる訳では無いのですが、このアルバム、44歳とは思えない晩年を感じさせる枯れた歌声であるのに哀しさも感じます。実際、このレコーディング時には、周囲は彼女がもう長くはないことに気づいていて、何とか最後の歌声を録音しようと彼女にもちかけ、しぶる彼女は「私の好きな連中を集めてくれれば」と、Hank Jones(p)、Milt Hinton(b)、Billy Byers (tb)、Osie Johnson(ds)、Joe Wilder(tp)、Harry Edison(tp)を指名してこの最後の仕事を弾く受けたとのことです。
 ビリーの声はともかく、Ray Ellis And His Orchestra のアレンジ、演奏は最高のデキであると思います。ビリーの声を優しく包むように控えめにいたわるようです。でも録音を聴いた時に全盛期のそれではない。彼女にとってはこのアルバムが最後とわかっていた訳ではないのですが、自分の嗄れた声を聴きビリーの目には涙があふれていたそうです。
 さて哀しい話ではありましたが、最後のアルバムを聴いていきましょう。All of You は、ビリー独特のしゃくりあげた歌い方ですが、やはり音程のキープが苦しそうで歳を感じてしまいます。Sometimes I'm Happy は、若い頃に一緒に活動していたレスターの名演で知られ。この録音の10日後にレスターがこの世を去っている不思議な因縁があります。ビリーは安心しきった感じで幸せそうな歌声です。You Took Advantage Of Me はローズマリー・クルーニーの代表曲で、ビリーは軽く歌い流していますが、ゆったりと椅子に座って話かけるような歌いかたでリラックスを感じます。When It's Sleepy Time Down South  はサッチモの名称で知られる曲です。この曲に関しては深く歌い上げているのが印象的で歌とともにオーケストラの包み込むようなアレンジも改めてハッとします。There'll Be Some Changes Made は20年代の古いスタンダードでブルージーな曲です。メンバーもゆったりとした演奏でサックスとトロンボーンソロになり未だ未だ続くところでフェードアウトしています。Deed I Do も古いスタンダードで曲で2分17秒であっさり。Don't Worry' Bout Me は、このアルバムを最もよく表す曲名で、この頃の彼女の心境と上手く一致した歌詞となっています。そして All The Day、Just One More Change、It's Not For Me To Say、I'll Never Smile Again とバラードが続き、最後は Baby Won't You Please Come Home はビックス・バイダーベックの時代から演奏されているジャズスタンダードの名曲。
 これらの吹き込みの10日後、レスターが亡くなり彼の葬儀で歌うことも許されず、同年の1959年7月17日に亡くなっています🎵

vocals : Billie Holidayt
orchestra : Ray Ellis And His Orchestra
arranged by, conductor : Ray Ellis
piano : Hank Jones
guitar : Barry Galbraith (1 to 7, 12), Kenny Burrell (8 to 11)
bass : Joe Benjamin (8 to 11), Milt Hinton (1 to 7, 12)
drums : Osie Johnson
alto sax : Gene Quill (2 to 4, 7)
tenor sax : Al Cohn (1, 5, 6, 12)
tenor sax, alto sax, bass clarinet : Romeo Penque (8 to 11)
bass sax : Danny Bank (1, 5, 6, 12)
trombone : Billy Byers (1, 5, 6, 12), Jimmy Cleveland (2 to 4, 7 to 11)
trumpet : Harry Edison (1 to 7, 12), Joe Wilder (1, 5, 6, 12)
harp : Janet Putnam (2 to 4, 7, 8 to 11)

tracks 8, 9, 10, 11 : recorded: NYC, March 3, 1959
tracks 2, 3, 4, 7 : recorded: NYC, March 4, 1959
tracks 1, 5, 6, 12 : recorded: NYC, March 11, 1959

1. All Of You
2. Sometimes I'm Happy
3 You Took Advantage Of Me
4 When It's Sleepy Time Down South
5 There'll Be Some Changes Made
6 'Deed I Do
7 Don't Worry' Bout Me
8 All The Way
9 Just One More Change
10 It's Not For Me To Say
11 I'll Never Smile Again
12 Baby Won't You Please Come Home





  

2023年4月14日金曜日

The Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomery


 Wes Montgomery (ウェス・モンゴメリー) が Riverside に残した1960年のスタジオ録音の Full House と並ぶ歴史的名作。「Incredible」 とは「とんでもない」の意で、本アルバムにはオクターブ奏法で複雑なフレーズもバリバリと弾きまくる技が展開されています。
 おそらくギターを弾かない人には理解しずらいと思うんですが、ギターでオクターブの音を出すということは、2本の弦を鳴らさなければならず、2本の弦にオクターブは隣接していないので実質3本の弦を使うことになります。そうなると使用できるポジションも限られてくるので素早く上下させないと弾けませんので、素早く音が飛ぶフレーズでの上下運動はかなり面倒なことになります。オクターブの音は単音と比べて聴く人に強く耳に残る音になります。普通の人は弾きやすいフレーズを選んだりすると思いますが、ウェスは弾きやすい弾きにくいは関係なくオクターブで弾きまくっています。ウェスのこのオクターブ奏法をどうして始めたのか? もともとオクターブで演奏していたわけではなく1950年代中盤に地元インディアナ・ポリスで、ジョニー・ザ・クライング・トンプソンというブルースマンのバンドに参加していたところ彼のプレイのフレーズを全て覚えてしまいユニゾン、ハーモニーを付けて演奏していて、これが評判が良くオクターブの上下のユニゾンでプレイするようになる。ある日、ジョニーの弦が演奏中に切れてしまうアクシデントがあり咄嗟にオクターブでのプレイを始めたのが始まりとのこと。咄嗟ということですが、それなりに練習していなけりゃできないことでしょうけどね。
 さらに有名な奏法としてはウェスはピックを使わずに右手の親指のみで弦をはじきます。1948年~1950年までLionel Hampton楽団に所属したのですが、ウェスは家族と暮らしたいために退団し故郷のインディアナポリスに戻ります。奥さんと7人の子供たちを養うために朝の7時~15時まで工場で働き、夜9時~深夜2時ごろまでジャズ・クラブで演奏し家族が寝ている夜しか練習できなかったので、こっそりと音を小さくする必要があったために親指でそっと弾くようになったとのこと。
 多くのジャズを学ぶギタリスト達にお手本とされているギタリストではありますが、フレーズのコピーをすることはできても、本質的にその特徴的な奏法や音をマネすることは非常に困難なことであるとも言える過去現在とも唯一無二のギタリストであります。


 本作はそのウェスの作品の中でも重要作にあたると思われます。冒頭の Airegin からシングル・ノートの素早いフレーズとオクターブを取り混ぜた演奏です。最も技巧的な曲で、「Incredible」「とんでもない」と言うアルバム名からも、これを印象付けたいということで、この曲を頭に持ってきたのかと思われます。また名盤請負人といわれる Tommy Flanagan のピアノ・プレイもこの曲でのプレイが一番激しいアプローを魅せます。Tommy Flanagan は一方では Polka Dots And Moonbeams では、ゆったりとしたプレイと響きの素晴らしいを見せてくれます。Four On Sixはウェス自作の曲でテーマ部分や展開もギタリスト向けの今なお多くの演奏家に演奏され続けている名曲であります。ギターだけでなく Percy Heath のひたすらテンポよくウォーキングし続けるベースはソロ部分でもそのまま続けられ、こんなベースソロもカッコよいではありませんか、と言いたいです。ドラムの Albert "Tootie" Heath は、Percy Heath の兄弟であるとのこと。メンバーも素晴らしく息があっており、かつウェスの特質が盛り込まれ魅力を堪能できる快作です🎵

guitar : Wes Montgomery
piano : Tommy Flanagan
bass : Percy Heath
drums : Albert "Tootie" Heath

Producer : Orrin Keepnews
Recorded in New York, January 26 & 28, 1960.

1. Airegin
2. D-Natural Blues
3. Polka Dots And Moonbeams
4. Four On Six
5. West Coast Blues
6. In Your Own Sweet Way
7. Mister Walker
8. Gone With The Wind

▶ Airegin




  

2023年4月9日日曜日

Miles Davis / Filles De Kilimanjaro

 
 
 マイルスは、Miles In The Sky でエレクトリック化していくのですが、Miles In The Sky の録音は1968年1月5月。Miles In The Sky からハンコック、ロン・カーターが参加し、レコーディングでは限定的にエレクトリック・ピアノ、エレクトリック・ベースを使っており Miles In The Sky 録音以降のライブではアコースティック楽器を使いレパートリーは従来と同じだったそうです。そしてこのアルバムは、その直後の1968年6月19・20・21日の録音で、ハンコックはエレクトリック・ピアノ、ロン・カーターはエレクトリック・ベースを取り入れることとなります。その録音がギル・エバンスとの共作 3. Petits Machins (Little Stuff) で、2. Tout De Suite、4. Filles De Kilimanjaro はマイルスの単独作となります。
 作曲の側面でマイルスの流れを見ると、マイルスはメンバーに演奏、楽曲提供させながら成長を促していく方針をとり、マイルスの作曲は E.S.P. では4曲、Miles Smiles では1曲、Nefertitiではゼロになっていたのが、このアルバムでは作曲はなんと全てマイルスになっています。なお、このアルバムでも重要な役割を果たすメンバーのウェイン・ショーターが2023年3月2日89歳でロサンゼルスで亡くなりましたので、マイルス・バンドへの加入後のアルバムを列記しておきます。E. S. P. 、Miles Smiles、Sorcerer、Nefertiti、Miles In The Sky 、Filles De Kilimanjaro、In A Silent Way。
 ものすごく面倒なアルバム作成の背景を書いてしまいました。面倒なことを考えずに音を聴けば良いと思っていたものの、この作業が最近楽しくなってきているのが、段々と歳をとってきた証拠ですね。


 一聴すると地味に聞こえる本アルバムではありますが、アルバム制作の背景、メンバーを知ってから聴くと、ファンクとエレクトリックに照準を合わせ始めた作品として中々濃いアルバムに聞こえてきます。
 さて、そろそろレビューします。Frelon Brun 最初に聴いた時には印象が薄かったのですが、確かにロック、ファンクに近づく作品として聴くと、かなりロック的なトニー・ウイリアムスのドラムから始まり、ファンク的ではありますが手探りで状態のように聞こえるアコースティックベースとピアノにマイルスが切り込んでいく、ショーターも切り込んでいくが何か勝手が違うように聞こえる。ピアノも色々なフレーズを試してファンクの色を出しながら自分なりの正解を探しているように聞こえる。それでもまとまってしますのが凄いなるほどの出だし。Tout De Suite では、音数少な目になるがグッとバンドの音のまとまりが出てきたように感じます。ドラムはジャズよりで、ベースは余計なことはしない。リズムではなく低音の単発で曲を支えているため他のメンバーの自由度が増しているように聴こえます。ピアノはハンコックに交代でチックコリアよりメロディアスになって曲に柔らかさを与えているように感じます。Petits Machins (Little Stuff) は楽器はエレクトリックであるけどアコースティックな響きに戻ってきました。いや曲が進めばそうでもないか。エレクトリックな楽器の音の粒立ちの良さをうまく使ったピアノに変わってきているのかな。Filles De Kilimanjaro はタイトル曲で確かに地味だけど曲としてまとまっています。単調で動かないベースラインはマイルスの指示なんだろうけど狙いすぎも感じます。 Mademoiselle  Mabry (Miss Mabry) こちらは雰囲気のある曲でビロードに包まれているようなゴージャスな感じがします。マイルスも気持ちが入っているし、ショーターのサックスも曲を良くとらえている感じがします。Tout De Suite (alternate) は、ボーナストラック。
 先にも書きましたが地味だけどクインテットで進めていたアプローチにエレクトリックを導入した経緯の知識を得てから聴くのと、素の状態で聴くのは大違いの印象の完成度のあるアルバムでした。

trumpet, leader (directions in music) : Miles Davis
electric piano : Chick Corea (1, 5), Herbie Hancock  (2-4, 6)
electric bass : Dave Holland (1, 5), 
acoustic bass : Ron Carter (2-4, 6)
drums : Tony Williams
tenor sax : Wayne Shorter

producer : Teo Macero

written by M. Davis
 
Track 1, 5, 6 recorded 9/24/68, New York
Track 2 recorded 6/20/68, New York
Track 3 recorded 6/19/68, New York
Track 4 recorded 6/21/68, New York

1. Frelon Brun
2. Tout De Suite
3. Petits Machins (Little Stuff)
4. Filles De Kilimanjaro
5. Mademoiselle Mabry (Miss Mabry)
6. Tout De Suite (alternate)




  

2023年4月8日土曜日

Freddie Hubbard / Live At Fat Tuesday's

 

 少年時代にインディアナでウェス・モンゴメリーと親交があったとのことで、ウェスは1948年の7月から1950年の1月までライオネル・ハンプトンの楽団に参加、ハバードは1958年にニューヨーク進出してから音楽キャリアは始まる。その後はアート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズに参加しハード・バップの印象が強いのだが、コールマンの Free Jazz 、エリック・ドルフィーの Out to Lunch、ジョン・コルトレーンの Ascension など初期のフリー・ジャズの古典にも参加しています。私がここまでたどり着くのはもうちょっと先かもしれません。1970年代のハービー・ハンコックのV.S.O.P.クインテットに参加し、スムースジャズにも対応していたトランぺッターですがファンク方面には行っていないようです。若い頃は、ヨーロッパ旅行の折に雪山で気分がよくなり、ドラッグを食いまくった挙句トランペットを吹こうとしたところマウスピースが唇に張りつき、ペッターの命ともいえるそれを完全にぶっ壊し引退へ追い込まれたとかいう話もある結構やんちゃな人でもある。そんなことで晩年ハバードは健康状態の悪化、唇の病気で音楽活動から離れた時期もあったが、1990年ごろから復帰し2008年12月29日、心臓発作により70歳で亡くなっています。このアルバムの収録は1991年ですから復帰の時期ということで、唇の調子はおそらく良くない状態のようです。


 聴く人が聞くと Freddie Hubbard(フレディ)のコンディションは良くないので、音色や音域もキツそうでフレージングも良くないとのことで、そこらへんに集中して聴いても最初はよくわからなかったです。そう思って聴くとバンド・メンバーが強力にサポートし、フレディは控えめにトランペットを添えるだけのような演奏です。ですがバンドとしては非常に充実した演奏内容なので、そう思って聴かないとわからないですね。
 アルバム名は Live At Fat Tuesday's の通り、Fat Tuesday's と言うライブ・ハウスでの演奏が2日分2枚に渡って収録されています。Take It To The Ozone は、テーマに続くJavon Jackson(ジャヴォン・ジャクソン)のソロがブリっとしてカッコ良いし、Christian McBride(マクブライド)のベースも決まっている、Benny Green(グリーン)のピアノは力強くかっこよすぎる。Tony Reedus(リーダス)のへげしいドラミングがバンドを燃え上がらせる。そのカチッとしたサウンドの中でフレディのトランペットに注目して聴くと確かに音程の甘さなどは否めないような気がする。フレディの楽曲だが OZONE の曲名は、こんなアグレッシブなイメージではないけどまさか小曽根?なのだろうか。なんてことも思いながら聴いていますがバンド・アンサンブルとしては最高の最初の1曲。かなり心が掴まれます。Egad は Christian McBride の楽曲提供です。何かの頭文字が楽曲名と推測できますが何だろうか?曲は激しめではありますが最初から全開ではありません。ピアノのグリーンの力強い左手は魅力的です。フレディは1曲目よりは長めのソロ展開で頑張っておられますが、往年のがちっとした存在感は無いかもしれない。Phoebe's Samba は Benny Green の作曲のサンバです。イメージ変わってライトなサウンドに。テーマの後にフレディのソロですが、ここは調子が良さそうなソロ展開です。But Beautiful は美しいバラードのスタンダード。小休止のようにリラックスした感じです。結構好きかも。そして One Of A Kind で1枚目のディスクは終了。フレディの楽曲となります。ユニゾンのテーマが気持ち良くソロの出だしはピアノのグリーのリズミカルで激しい展開。そしてハバードのソロ。これまでで一番よく音が出ているかも知れない。そしてテーマに戻りドラムソロは観客が盛り上がりまくりです。ハードバップは良いなあと1枚目は終わります。そして2枚目は楽曲は全てハバードの作曲、C.O.R.E で凛々しくアバンギャルドに立ち上がります。特にテナーの Javon Jackson の突き抜け方が気持ち良いし、左手の力強い Benny Green のピアノがこれまた気持ち良い。フレディのトランペットも気持ちよく高音が突き抜けています。Destiny's Children は、重厚感のある曲で8ビートのドラムにカッコ良いテーマをサックスとトランペットのユニゾン。もぞもぞと地底をはい回るようなベースラインも良い。少しづつ定期的にアウトするのもゾクゾクします。First Light でラスト。最後はフリーのソロをフレディが延々と続けながら、ポップなピアノ・リフではじまます。曲とコード進行はワンパターンで単純ですが各人の技量で聴き飽きることがない19分となっています。
 サイドの素晴らしさだけでも聴く価値はありの一枚です🎵

trumpet, flugelhorn : Freddie Hubbard
piano : Benny Green
bass : Christian McBride
drums : Tony Reedus
tenor sax : Javon Jackson

producer : Joe Delia

recorded live at Fat Tuesday's, New York City, December 6 & 7, 1991.

【Disc 1】
1.Take It To The Ozone
2. Egad
3. Phoebe's Samba
4. But Beautiful
5. One Of A Kind

【Disc 2】
1. C.O.R.E
2. Destiny's Children
3. First Light



▶ C.O.R.E