2023年2月11日土曜日

Indigo Jam Unit / 10th album




 真っ白なジャケにエンボスで曲名が文字加工してあるCDジャケットは無機質。実際に音を聞いてみるとピアノ、アコースティック・ベース、ドラムと全て生楽器なのに、楽曲が基本的にドラムとベースが同じリフを正確に繰り返すバンドサウンドも無機質に聞こえます。無機質ではありますが、ベースとドラムの重低音感はかなりのもので、この音圧とスピード、正確さでウッド・ベースを1曲弾き続けるのは相当の剛腕の持ち主であります。
 Indigo Jam Unit は2005年に結成されたインストユニットで結成10年目で本作は10枚目のアルバムです。デビューアルバムの Demonstration から既に強力なビート感と重低音のベースを武器にインパクトのあるサウンドでした。そのデビューから夏にレコーディング、冬にリリース、年明け全国ツアーというスケジュールを、メンバーチェンジも一度も行わず10年間続けてきた彼ら4人にしか出すことができない力強いサウンドが売りです。本作品も、約2ヶ月間にわたり、ほぼ毎日セッション、リハーサルを繰り返しつくられレコーディングは全曲一発録音。ダビングや修正を一切行わないのがポリシーとのこと。


 楽曲の構成自体はファンクでよくある16ビートのリズムとフレーズの反復と同じ手法でサウンド的なアプローチは基本ジャズ。そして繰り返されるビートの中にクラシック的な透明感のあるフレーズのピアノが時にはジャズ的なメロディーやラテンのリフも時に駆使しながらでバンドの音を装飾します。これが楽曲の展開の基本形のようです。ピアノの樽栄氏はクラシック、ドラムの清水氏はジャズ、ベースの笹井氏はファンク、パーカッションの和佐野氏はラテンが音楽的なルーツが根底にあり、このルーツが見事に混ざり合った音楽は独自のクロスオーバーサウンドとなっています。
 さてアルバムのレビューですが、10 は、単純に聞こえるが難しいフレーズをベースとドラムが繰り返し繰り返しピアノが少しづつ色付けしていきドラムとパーカッションのソロのような部分に突入。ピアノが少し派手な色付けする。激しめですな。Horizon は、10よりも少し複雑なフレーズの繰り返しで、ピアノも10よりもアドリブ要素が強くなります。ダンサブルな要素が加わったフレーズです。Steps は更にメロディックにダンサブルになり、テーマのメロディーは覚えやすいので頭にこびりつきます。ドラムソロもカッコよくベースの上下運動も激しい。Move は美しめのテーマで激しさは押さえた楽曲です。相変わらず同じパターンの繰り返しですが、途中で入るブレイクにハッとして、また演奏が地始まるところドラムがひたすらジャズな感じも良い雰囲気。Gladiator は、邪悪な低音域のベースが主体で疾走感があります。途中のビ・バップにチェンジするところもにくい演出です。Detective まで来ると、このパターンに頭が耳が侵されてきます。アルバムの曲が進むにつれてジャズ、ポップの方向性も見せ始めたところで練習のようなパターンに再度突入。聴きながらも作業に集中できるヤツです。Raindance Synchronic ここで曲名のイメージが音で表現されているのがわかりやすい曲です。パーカッションの入れ方が雨だれみたいです。・・がこんな激しい雨だれに打たれたらビチャビチャですね。Synchronic は、普通の楽曲のイントロに出てくるようなテーマがレコードの針が飛ぶように繰り返されるのですが途中で針は飛ばずに曲が進行して、また元に戻ってくるといったような不思議な印象を受ける曲ですが大丈夫です。最後には発展してくれます。Moments は、普通のジャズのように聴こえます。何かホッとします。ここで Indigo の繰り返しの美学のようなパターンの方が意外と聴いている人が何か緊張感を持つのだと気づかされます。不思議な感覚です。最後の Light も、きっちり曲名が曲のイメージを体現しています。一筋の光が見えるような線の細いメロディーが美しい曲です。
 どうやらこの手のジャズは音楽的な分類学では Club Jazz がしっくりきますが、他のヒップホップ的な手法を取り入れたものとは明らかに異なる「音質」であり「ライブでは狂ったように押し寄せるビートで踊りまくれるので楽しい」とこのバンドを聴くことを進めてくれた名古屋時代の友人に感謝です。2016年夏で活動休止はもったいない。
 
piano : 樽栄嘉哉
bass : 笹井克彦
drums : 清水勇博
drums,percussion : 和佐野功

1. 10
2. Horizon
3. Steps
4. Move
5. Gladiator
6. Detective
7. Raindance 
8. Synchronic
9. Moments
10. Light


▶ Horizon



  

2023年2月10日金曜日

Derek And Dominos / Layla And Other Assorted Love Songs


 クリーム解散後、ブラインド・フェイスを経て結成したデレク・アンド・ドミノスの唯一のスタジオ録音アルバム1970年の「Layla」+ライブ録音。エリック・クラプトンの最高傑作とも言われ、ロック小僧に限らず世界中のギタリストが最も持っているあるいは聞いたことがあるアルバムの一枚ですね。ビルボードのポップアルバム・チャートで最高16位を記録し、RIAAのゴールドアルバムを獲得し、1972年と1977年にはBillboard 200でチャートインした。2011年にはイギリスのアルバムチャートで68位を記録、2000年はグラミー栄誉の殿堂入りしています。本作のスーパーデラックス・エディションは2011年に発売され翌年にはグラミー賞最優秀サラウンドサウンド・アルバム獲得の超ロングセラーです。
 クラプトン使用ギターは、前作のソロ・アルバム Eric Clapton(エリック・クラプトン・ソロ)から使用された1956年製フェンダー・ストラトキャスター、通称ブラウニーです。



 改めて久しぶりに聞いてみても難解聴いても飽きない素晴らしい内容で売れ続ける理由がわかります。買った当時から数十年聞いてない人も多いでしょうから、たまにもう一回聞いてみると良いのではないでしょうか。本作には、オリジナルではないセッションやライブなどが多数収録されているので、また新たに購入されても十分楽しめる内容となっています。
 さてアルバムの内容です。I Looked Away Eric クラプトンとウィットロックの共作でライトなサザン・ロック。地味な曲ですがアルバムの冒頭にこの地味な曲をもってくるってことは本当は、これがやりたい音楽の一つの形だからわかってくれというような強い自己主張を感じます。Bell Bottom Blues クラプトンによる作曲で、単純なブルースの進行ではなくメロディックなコードな流れがクラプトンらしい曲で売れ筋の要素満載の曲で、やはり良いです。Keep On Growing これもクラプトンとウィットロックの共作で、私的にはこのバンドのイメージをよく体現している曲と思います。Nobody Knows You When You're Down And Out ジミー・コックのカバーで、後のアルバムのMTVアンプラグドのバージョンの方がわかりやすいアレンジで印象にある人ものではないでしょうか。こっちの方が泣きのブルースって感じですね。I Am Yours はニザーミの詩にクラプトンが曲をつけたもので静かな曲ですが耳に残ります。Anyday は再びクラプトンとウィットロックの共作で方向性は Keep On Growing と同じタイプ。ギターソロに入る流れがとても好みです。 Key To The Highway はチャールズ・シーガー、ウィリー・ブルーンジーのブルースの古典曲です。スタジオ・ジャムを録音していたのを出来が良かったから入れたような体裁です。従ってクラプトンとオールマンのギターソロもわかりやすく自己主張のフレーズ満載でクラプトン・ファンのギター小僧は絶対好きなパターンで、中盤のグシャグシャ感もサービスの演奏です。Tell The Truth もクラプトンとウィットロックの共作。フェイセス当たりのブギー的なロック・サウンドな感じ。ライブとかで演ったら受けそうでコマーシャルな感じとボーカルの気合の入り方も好きです。Why Does Love Got To Be So Sad 中盤はクラプトンとウィットロックの共作が続きます。激しめの曲ですが、この作風はシカゴとかの流れかな。どっちが元祖だろう?Have You Ever Loved A Woman は、ビリーマイルスの古典ブルース。オールマン・ブラザースのバージョンにも名演ありますよね。悪かろう訳もなくここら辺の古典的名曲をアルバムに入れてくるのもやはりクラプトン流。Little Wing このアルバムにジミヘンが入っていたことは忘れてましたが再度聴き直して、そうそうこれこれと思い出しました。リバーブ深めの録音もジミヘンのサイケなイメージを出そうとしているのだなと再認識。It's Too Late はチャック・ウィリスのドゥーワップ・バラードをテンポ・アップさせたもので、やはりクラプトンのリメイクはうまい。そしてテーマ曲の Layla です。多くのギタリストに愛されコピーされ続ける名曲ですが私はリフぐらいしか弾けません。クラプトンだけの作曲と思っていたら、ピアノコーダ部分はジム・ゴードンとのことでした。全く違う曲を合体させたような、この流れも確かにこの曲を印象付ける重大な要素で改めて聴きながらこのアイデアも天才的と思います。Thorn Tree In The Garden は、ウィット・ロックの曲で、ウィットロック、クラプトン、オールマン、レイドル、ゴードンはスタジオで輪になって座り、マイクがその中央に置かれて録音が行われたとのこと。これも地味ですがバンドとしてのチームワークを表現しているようで、冒頭とラストにこのような曲の配置もアルバムとしてメッセージ性があるアルバムなのだと再認識しました。
 このアルバムはデラックス・エディションなので、2枚目のディスクはオリジナルには無いライブ音源などが収録されています。印象的なのは、サイケな雰囲気と凝ったアレンジですがビートルズっぽいとも感じる Roll It Over。 はじっけプリが楽しい Tell The Truth。ギター小僧としては、クラプトンのギターがたっぷり堪能できる Snake Lake Blues。単純にとがっていてカッコ良い Evil。曲のアレンジ力が見せつけられる Got To Get Better In A Little While Jam のバージョン違いの収録。
 おそらく多くの人が所有はしているが、ずっと聴いていない名アルバム。聴き直す価値あり。持っていなくて新規購入を考える人には、やはりこのデラックスの方がお勧めです。

guitar, vocals : Eric Clapton
bass, ercussion : Carl Radle
drums, percussion : Jim Gordon
organ, vocals : Bobby Whitlock (exept 1)
guitar : Duane Allman(except 1,2,3)
piano : Albhy Galuten(4)

【Disc1】
1. I Looked Away
2. Bell Bottom Blues
3 Keep On Growing
4. Nobody Knows You When You're Down And Out
5. I Am Yours
6. Anyday
7. Key To The Highway
8. Tell The Truth
9. Why Does Love Got To Be So Sad
10. Have You Ever Loved A Woman
11. Little Wing
12. It's Too Late
13. Layla
14. Thorn Tree In The Garden

【Disc2】
1. Mean Old World 
(Layla Session Out-Take)
2. Roll It Over 
(Phil Spector Produced Single B-Side)
3. Tell The Truth 
(Phil Spector Produced Single A-Side)
4.It’s Too Late 
(Live On The Johnny Cash Show, 5 November, 1970)
5. Got To Get Better In A Little While 
(Live On The Johnny Cash Show, 5 November, 1970)
6. Matchbox 
(With Johnny Cash & Carl Perkins) 
(Live On The Johnny Cash Show, 5 November, 1970)
7. Blues Power 
(Live On The Johnny Cash Show, 5 November,1970)
8. Snake Lake Blues 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
9. Evil 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
10. Mean Old Frisco 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
11. One More Chance 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
12. Got To Get Better In A Little While Jam 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)
13. Got To Get Better In A Little While 
(From April/May 1971 Sessions For The Dominos Second Album)



▶ Layla


  

2023年2月5日日曜日

Phat Phunktion / You And Me

 

 以前、Real Life .:. High Fidelity を聴いてから気にはなっていたバンドで、中古ですが、これで2枚目の購入となりました。以前のアルバムの印象は、きっちりとして切れのあるホーンアレンジでぴっちりと細かなキメで T.O.P. みたいだと言えば、その通りだが Phat Phunktion は思いっきり重量感があって硬質。一聴したところ T.O.P. 、クラブ・ジャズの熟練者のバンドであったものに今回は Hip Hop も取り込んでいる。進化したのかと思いきやアルバムは Real Life .:. High Fidelity は2011年、本アルバムは2004年であるから Real Life .:. High Fidelity の方が余計なものをそぎ落とした進化系のようであるようです。
 このバンドの略歴は、米ウィスコンシン州マディソンで1996年、大学で音楽を専攻する学生たちによって結成され、輸入盤が国内でも一部でヒットしてから国内盤でも発売されるようになったとの事。確か地元ラジオ局なんかで輸入盤をかけたところヒットした記事を見たような気がします。


 その他大きな特徴はヘビメタのような音色で鋭く切り込んでくるギターソロで、この手のファンクバンドでは珍しいですね。これに合わせるかのようにホーン部隊もキレがあるアレンジと録音になっています。
 さて曲の紹介です。Untitled (Weekend Special) ジャム・セッションとかでやっている曲なのだろうか? Untitled という曲名であり歌部分はラップを取り入れたファンクではありますが、キメの箇所あり多くラップ以外のところはメロディのある歌なので、おそらくその場でのジャムは無理だと思うのですが・・決まったパターンで曲の構成はあるけど weekend のライブの時だけ好きなソロを入れる曲名の無い曲なんだろうか? You And Me は、どっかで聴いたことのあるキーボードのバッキング・パターンにホーン・アンサンブル。コーラスに色っぽい女性のボーカルが入ってます。もしや上の写真の左後ろの女性かと Holly Brook を調べてみるともっと若い女性でした。Higher はミドル・テンポのソウルナンバーかと思ったら、またラップでした。ここら辺が今っぽくて良いと思うのか、アンバランスと思うのかは意見の分かれるところでしょう。How Do I Get Your Heart 踊れる系のファンク・チューンでソウル風のボーカルであっさりとまとめています。ギター・ソロもバランスを考えたきつすぎないフレーズで全体的にバランス良しです。Rocco は、これまたどっかで聴いたベースの打ち方とホーン・アンサンブルです。基本このパターン大好きです。歌無しのインストにしているのも良し、トランペットにワウをかけるのも良し(あの人のファンですね)最後は超高音にまで展開して欲しかったです。ギター・ソロも気合が見受けられます。Rock Star は、少し落ち着いた曲調でブラコン的な雰囲気もあるファンク。ボーカルが結構良いですがギターの人でしょうか。トロンボーン、サックスの方もボーカルとっておられるけどライナーノーツに詳しいことは書いてありません。Never Be The Same 売れ線な曲でギターが頑張ってますが頑張りすぎないでも良いと思うな。Integrity このアルバムでニ番のメロー路線でしょうか。ラップが入ってますが、これは賛否は別れずマッチしていると思います。曲調も含めて Acid Jazz ってやつでよくあるパターンですね。A Little Bit 派手さは無いけど曲としてまとまっていてセンスは良くて好きです。Red Carpet 変則技ですね。ラップも肺いて Acid Jazz ってやつです。このバンドっぽくないけど大好きの好きです。Always で正調に戻りました。ライブでみんながシーンとする曲です。一番のメロー路線です。Stand Up は締めの一曲なのでバンドも気に入っている曲を配置することが多いと思うのですが、色々な音楽性があるメンバーが気に行っている曲なんでしょうね。
 基本的に大好きなサウンドを持っているバンドなので応援したいですし、演奏技術はピカピカで、将来的に大物になる可能性はあると思うのですが器用貧乏っぽいところも感じなくはありません。他のアルバムも中古で見かけたら買います。

keyboards, vocals : Tim Whalen
guitar, vocals : Vince Jesse
guitar : Louka Patenaude (11)
bass : Jason Braatz
drums : Sheldon Allen
percussion : Pauli Ryan
alto sax, baritone sax : Dan Wallach
tenor sax, vocals : Al Falaschi
trombone, vocals : Courtney Larsen
trumpet : John Schipper (2)
vocals : Mr. Parker (8)
backing vocals : Holly Brook (2)

producer : Al Falaschi, Tim Whalen

1. Untitled (Weekend Special)
2. You And Me
3. Higher
4. How Do I Get Your Heart
5. Rocco
6. Rock Star
7. Never Be The Same
8. Integrity
9. A Little Bit
10. Red Carpet
11. Always
12. Stand Up

▶ Rocco




  

2023年2月4日土曜日

The Brand New Heavies / Brother Sister


 英・ロンドン出身で、ポップ・ジャズやクインシー系の音楽に、ファンク・テイストを強調した Acid Jazz(アシッド・ジャズ)と呼ばれる分野を牽引し、職人的な音作りファンクを愛する心が感じられるアルバムです。ただこのジャンル Acid Jazz(アシッド・ジャズ)とか、Jazz Funk(ジャズ・ファンク)、Club Jazz(クラブ・ジャズ)などとも呼ばれるようで音楽業界のセールスのためのカテゴリー用語は未だによくわからず、このタイプの音楽に Jazz(ジャズ)を絡ませたカテゴライズには若干ムリがあるんじゃないかとはいつも思っています。
 そして、このブログで所持品整理しながら見つかるジャケ写違いが発生していましたので、2枚分写真のっけときます。中身は同じだと思っていたら、なんと曲目が若干異なるようで右のバージョンには Midnight At The Oasis、Worlds Keep Spinning が入っています。でもレコード会社の策略には間違いないような気はします。
ジャケットの違いはこの違いです。
左 USバージョン Delicious Vinyl ‎ 
右 Europeバージョン FFRR


 2枚購入と言う失態はあるものの、このアルバムは全体にスローでまったり適度にファンキー全ての楽曲がシングル級の完成度で、Acid Jazz という単語に批判的なことも書きましたが他のアルバムよりも、少しジャズっぽさがあります。
 さて曲目の紹介です。Have A Good Time 楽曲の作りとしては単純なファンクで Let's all just have a good time を繰り返すナンバーだが永遠に繰り返せるぐらいのリフの力強さが魅力 Brother Sister 1曲目には参加していなかったボーカルの N'Dea の切ない歌声が最初は細い線で段々と力強く歌い上げる。タイトル曲だけに凝った作りになっています。Dream On Dreamer 一度聴くとキャッチーなメロディーと曲名のサビ部分は頭の中で繰り返される名曲で様々なアレンジを施されたバージョンが多数でているはず。Midnight At The Oasis アシッド・ジャズと言うよりこれはジャズ・ファンクと呼んだ方がしっくりくるインストファンクでキレが良いサウンドとホーン部隊のソロがなどが気持ち良い。Ten Ton Take これもホーン部隊が大活躍のインスト・ファンクで強力リズム隊がしっかりと土台を支えています。気持ち良いですね。Mind Trips で歌姫 N'Dea が舞い戻ってきます。曲に入る前に歌詞無しのハミングを入れるのがセクシーでカッコ良かったです。mind trips は got me trippin'out mind trips i can without のサビが、これまた呪文のように頭にこびりついてしまうのが魅力。Fake は掛け声?が印象的なファンクで、ライブではこの掛け声に合わせて客が飛び跳ねそうな元気いっぱいの曲。Spend Some Time も、きっちりと作りこんだ歌物でこれもきっちりと記憶に残っているメロディーが素晴らしい。Los Burritos 中休みのジャムセッションのような曲で1分くらいの小曲です。Back To Love これは懐かしい感じのする歌メロが素晴らしい曲で、男性ボーカルとともに曲が盛り上がる。Snake Hips は、リズム隊の練習曲のようでギターがギュイーンとだけしか鳴らさない。インパクトは絶大。Keep Together ここまで来ても、これだけの曲が続けて出てくるのは凄いなと最初聴いた時も思い始めた。シリアスな響きのサビとその後に出てくるピアノの高揚させてくれるコード進行とかが凄いんですよね。People Giving Love はレゲエです。でもメロディーラインはBNHです。なるほど癖になるのは、このメロディーラインにあるのかと今気づきました。Forever 重厚な低音ベースとジージーとなるようなギターの単純なバッキングが印象的です。後半になるとストリングスが入ってきてゴージャス感が増します。Day Break で最初はは爽やかに、最後は大団円のファンクで締めくくりとなります。
 何回聴いても捨て曲が無く、どこをとっても金太郎飴のように売れ線という単語が出てくる天才的なバンドです。incognite と比較してしまいがちですが、BNHの方がバンドとしてのまとまりがあります

vocals : N'Dea Davenport
guitar : Simon Bartholomew
bass : Andrew Levy
drums, Keyboards : Jan Kincaid

producer : The Brand New Heavies
written by : A. Levy (1, 2, 4 to 7, 10, 14), J. Kincaid (1, 2, 4 to 6, 9 to 14), N. Davenport (1 to 3, 5, 6, 12, 14), S. Bartholomew (1, 2, 4 to 6, 10, 12, 14)

1. Have A Good Time
2. Brother Sister
3. Dream On Dreamer
4. Ten Ton Take
5. Mind Trips
6. Fake
7. Spend Some Time
8. Los Burritos
9. Back To Love
10. Snake Hips
11. Keep Together
12. People Giving Love
13. Forever
14. Day Break

1. Have A Good Time
keyboards, backing vocals : Mike Boito
sax, backing vocals : Ray Gaskins
backing vocals : Brady Blade
backing vocals, percussion : A. Levy, J. Kincaid, N'Dea, S. Bartholomew

2.  Brother Sister
backing vocals : J. Kincaid, N'Dea
sax : Steve Williamson
trumpet : Gerard Presencer
trombone : Dennis Rollins
flugelhorn : Gerard Presencer
percussion :  TBNH

3. Dream On Dreamer
keyboards : Amp Fiddler
backing vocals, keyboards: N'Dea
flugelhorn : Gerard Presencer
flute : Mike Smith
percussion : A. Levy, Jeff Scantlebury

4. Ten Ton Take
keyboards : Max Beesley
trumpet : Kevin Robinson
sax : Mike Smith
trombone : Dennis Rollins
percussion : Jeff Scantlebury

5. Mind Trips
backing vocals : N'Dea
percussion : A. Levy, TBNH

6. Fake
backing vocals : Brady Blade
sax : Mike Smith
trumpet : Gerard Presencer
trombone : Dennis Rollins
backing vocals, percussion : A. Levy, J. Kincaid, N'Dea, S. Bartholomew

7. Spend Some Time
keyboards : Mike Boito
backing vocals : N'Dea
percussion : Jeff Scantlebury

9. Back To Love
sax : Steve Williamson
trumpet : Gerard Presencer
trombone : Dennis Rollins
percussion : Jeff Scantlebury

10. Snake Hips
sax : Mike Smith
trumpet : Gerard Presencer
trombone : Dennis Rollins
percussion :  TBNH

11. Keep Together
backing vocals : N'Dea
percussion :  S. Bartholomew

12.Pepole Giving Love  
keyboards : A. Levy
backing vocals : N'Dea
sax : Steve Williamson
trombone : Dennis Rollins
percussion : Jeff Scantlebury

13. Forever
backing vocals : N'Dea
flute : Mike Smith
percussion :  TBNH

14. Day Break
sax : Mike Smith
trombone : Dennis Rollins
trumpet : Gerard Presencer
backing vocals, percussion : A. Levy, J. Kincaid, N'Dea, S. Bartholomew



▶ Forever


  

2023年2月3日金曜日

David Sanborn / Straight to The Heart


 サンボーンを最初に知ったのがこのアルバムで、大学時代にジャズ研の先輩から「この曲をやれるメンツ集めてるんだけど」と渡された曲が、このアルバムの Smile でした。先輩は大学に入学してからサンボーンに惚れてアルトサックスを始め、多摩川のほとりで夜な夜な練習して完全コピーを完了してからのお誘いで、周囲からは Mr.Sanborn をささやかれるほどで、ライブをするごとに女性ファンが増えるといった実力者でした。数年前に同窓会でお会いしたところ、今はサラリーマンをしながらジャズ・フュージョン・ロックを問わず音楽優先の勤務時間が許される生活をなさっているとのことでサックスは一生のお友達になっているようです。
 スタジオでの地獄の特訓は、歌えなければ楽器で表現できるわけもない理論から楽器触らずに各パートを声で出して歌うことから始まり、このアルバムの音は全て覚えているほど聴きこんでいます。おかげで、すっかり洗脳されてしまい無人島に一枚だけ持って行けるんだったら私はこのアルバムを選びます。


 さてこのアルバム、サンボーン、マーカスはもちろんのこと今は亡きハイラムも最高の演奏で、キーボードのドン・グロルニック、ブレッカー・ブラザーズ、ドラムのバディ・ウィリアムス、名アルバムでは必ず参加している印象のあるパーカッションのラルフ・マクドナルドなどが出演で贅沢の極みの絶好調期の理屈抜きで楽しめるライブ・アルバムとなっています。
 それではアルバムの紹介です。Hideaway すべてが完璧なイントロ、売れ線のフュージョンのどこが悪い。かっこよすぎで最初の曲から全開に素晴らしい。ギターのハイラムのソロもロックで素晴らしい。今のフュージョンはやたら早弾きして難しいことをやりますが、ハイラムは早弾きはせずに、フレーズをつなげて展開するのが上手いのです。基本的にロックですがバッキングのクリーンなギターの音色も素晴らしい。 Straight To The Heart は、バンド全体がこの曲を大事に演奏しているのがわかります。タイトル曲でもあるよにサンボーンが一番感情を込めたサックスを吹いているのがこの曲でしょうか。Run For Cover ライブ映像ではこの曲が一番多いように感じます。ベーシストでスラップをやる人はこの曲を練習局にする人が多いようです。マーカスの静かなベース・ソロから始まるこの曲はマーカスの非凡な音楽性を思い知らされる名曲です。Smile 私はこの曲が全てのエッセンスが詰まっていて曲の表情も多彩で最高であると思っていますが世の中的にはそうでもないのかも知れません。別で発売されているビデオ Love & Happiness で見ることのできる2回目のギターソロのハイラムの弾けっぷりも最高です。今でもこの曲は全部歌えます。Lisa はライブでの休息を入れるバラードです。サンボーンのアルトが歌うように聴く人の心をつかむ曲。Love & Happiness これも学生時代のサンボーン・バンドのテーマの一つ。ボーカルものですが盛り上がります。ビデオ Love & Happiness では、これから始まります。Lotus Blossom も名曲です。これは Heart To Heart に収録されているスタジオテイクの方も良かった記憶があります。One Hundred Ways はポップなフュージョン・ナンバーで夕暮れを思わせるしんみりとしたテーマが魅力的な曲でコーラスも入っているのですが凄く良い。フュージョン曲でコーラスが入ったりするとダサくなる曲が多いのですがサンボーンのサックスが肉声のような役割を果たしているのと、やっぱりマーカスのセンスが良いのでしょう。
 何百回聴いても色あせない素晴らしいアルバムです。今夜の就寝時の子守歌はこのアルバムにします。

alto sax : David Sanborn
keyboards : Don Grolnick
guitar, backing vocals : Hiram Bullock
bass, synthesizer : Marcus Miller
drums, backing vocals : Buddy Williams
percussion : "Crusher" Bennett (2), Michael White (5) (6), Ralph MacDonald (3, 8)
horns : Jon Faddis, Michael Brecker, Randy Brecker (8)
lead vocals : Hamish Stuart (6)
backing vocals : Frank Floyd, Lani Groves, Vivian Cherry, Marcus Miller (8)

producer : Marcus Miller

1. Hideaway
2. Straight To The Heart
3. Run For Cover
4. Smile
5. Lisa
6. Love & Happiness
7. Lotus Blossom
8. One Hundred Ways


▶ Smile



  

2023年1月29日日曜日

Canned Heat / Rollin' And Tumblin'


 1967年のデビューアルバム。白人ブルース・バンドで戦前のジャック・ブルースの創始者の一人とされるTommy Johnson(トミー・ジョンソン)の Canned Heat Blues からバンド名がつけられたとのこと。Canned Heat は、食品を温めて冷まさないための燃料のことで1914年の製品名「Sterno Canned Heat」で、ブリキなどの缶に入って売られていたのだが、Canned Heat Blues 自体はアルコール依存の人がこのエタノールを含む Canned Heat を飲むようになってしまった人の歌とのこと。この時代のブルースのテーマは酒、女、貧困が主流だったので珍しくもないんですが直接タイトルは珍しいですかね。
 何故このアルバムを購入したのかと言うと、中学生ぐらいの時に兄が持っていた音楽系同人誌を興味津々で読んでいて、ヒッピー文化とともにこの Canned Heat というバンドが紹介されていました。サラリーマン札幌時代に中古CD屋で見つけて、これが Canned Heat かと直ぐに購入を決意を記憶しています。よく覚えてたもんです。


 結成は1965年デビューは1967年とのことなので、実力があるメンバーが集まってのバンド結成が予想されます。このデビューアルバムの原盤は Canned Heat というバンド名がアルバムにつけられていたものと中身は同じですが、ジャケ写はこれとは違うようです。また本作はカバー中心ですが2作目以降はオリジナルになっているようです。しかし私の Canned Heat の所有音源はこれしかありません。
 さて曲の紹介です。Rollin'and Tumblin' デルタブルースのクラシックで Hambone Willie Newbern が最初に録音、Robert Johnson、Muddy Waters がヒットさせています。スライド・ギターでアンプに直突っ込み、歪み無しのシンプル設計です。Bullfrog Blues オリジナルは William Harris で1928年らしいです。テンポ早めでベースがブンブンという感じでカッコ良い。ウシガエルのブルースなんですね。Goin'down Slow はオリジナル St. Louis Jimmy Oden で1948年作。スローブルースでハーモニカがソロのメインでこれも良い。 Dust My Broom は Robert Johnson 1936年で、ブルースバンドの教科書には必ずのっている名リフが印象的な曲です。初心者も直ぐにマネができるので誰もが通る道で王道の演奏  Evilis Goin'on は Howlin' Wolf がオリジナルの1954年。エルビス?と思ったら Evilis ですね。Catfish Blues は Robert Petway で1954年ですか。Muddy Waters が有名ですかね。Help Me は Sonny Boy Williamson II の1963年。同じような曲調のブルースだけど特徴のある曲です。Big Road Blues  は Tommy Johnson の1928年。スピード感とドラムのドカドカ加減が気分を変えてくれます。The Story Of My Life は Junie B. Jones でリリース年不明。ブギですね。おそらく自分の人生を嘆くブルースなのでしょうか。The Road Song は Wilson Hawk これもリリース年は不明。Rich Woman は Mississippi John Hurt でリリース年は不明。古臭くて雰囲気のある曲ですね。ブルース・ギター小僧はこんな曲でギターを練習します。
 なんかブルースの教科書みたいなアルバムでした。実は購入当初はワクワクしたものの、
つまらないと思っていたのですが今聴くとそれなりに楽しめる内容です。聴き手の私の変化ですね。でも少し聴き疲れするかもしれません。

vocals : Bob Hite
rhythm and slide guitar, vocals, harmonica : Alan Wilson
lead guitar : Henry Vestine
bass : Larry Taylor
drums : Frank Cook

producer : Cal Carter

1. Rollin'and Tumblin' 
2. Bullfrog Blues 
3. Goin'down Slow 
4. Dust My Broom 
5. Evilis Goin'on 
6. Catfish Blues
7. Help Me 
8. Big Road Blues 
9. Story Of My Life 
10. The Road Song
11. Rich Woman





  

2023年1月28日土曜日

Bobbi Humphrey / Blacks And Blues

 

 インパクトのあるジャケットなのでタワレコに行くたびに気になってしまって購入してしまいました。微妙に安いような気がする1,500円のジャズ百貨店シリーズでした。帯の文句は「ヒット・メイカー、マイゼル・ブラザーズが手掛けた女性フルート奏者の傑作。豊饒なトーンで自在に歌う彼女の魅力が最大限に味わえる」
 ナルホドなんですがマイゼル・ブラザーズがよくわかりませんのでググりますとAlphonso "Fonce" Mizell、Larry Mizell の兄弟で音楽制作チームで私の好きな Donald Byrd の Black Byrd 以降の作品群、The Miracles、The Jackson 5、Michael Jackson、、A Taste Of Honey などの制作にかかわっているらしい。ちなみに Black Byrd では、Larry Mizell(vocals)、Fonce Mizell(trumpet, vocals)での参加でした。最近よくある知らなかったけど実は聴いていた現象で世間は狭いものだと改めて思います。
 私の所有音源での Bobbi Humphrey を一応調べてみると Beginner's Guide To Jazz Funk なるジャズ・ファンクの初心者用オムニバスに1曲だけ入ってました。


 さてマイゼル兄弟はこのアルバムでどのような役割を果たしているのかと言えば、ボーカル、アレンジ、プロデュースをブラザースで担当しております。主役の Bobbi Humphrey については1950年テキサス州生まれのジャズ・フルート奏者で、このアルバムではフルートとボーカルをとっています。このアルバムのジャケ写はボーイッシュでスリムな印象ですが晩年の写真をみると迫力の豊満ボディでした。
 アルバムの紹介です。Chicago, Damn シンセによる風のような効果音で始まり、ダークなベース、ボーカルが入ってくると深いリバーブがかかっています。この時代特有のジャズファンクの音処理で「キター」って印象です。ボーカルはマイゼル兄弟のコーラスのみ。フルート・ソロは超絶技巧と言う感じではなくソツなくこなしています。Harlem River Drive はベースラインから始まり、車のエンジン音が小さく聞こえます。曲名からしてもハーレムを流れる川岸を爽快にドライブするイメージの曲なのでしょう。ダークな1曲目と違い爽快な感じのするメロー・ソウル的な曲調です。こちらもボーカルはマイゼル兄弟のコーラスのみ。フルートは1曲目より長めで主張してきています。最後はパトカーのサイレンです。ぶっ飛ばし過ぎて捕まるという終わり方ですね。ほう。Just a Love Child では、メイン・ボーカルを Bobbi がとります。少女のような歌声に!となりますが曲の頭の方だけしか長く歌わず曲の最後で少しだけでてくるのが不完全燃焼。もっとこのボーカルを押し出した方がこの曲は絶対良いと思います。でもフルート・ソロが今までの曲の中で一番良いですね。Blacks and Blues タイトル曲は売れ筋路線のフリーソウル・サウンドでシンプルな曲で聴きやすい。マイゼル兄弟のボーカルも聴きやすく、曲に寄り添うようにオブリ的にフルートを吹き続けるのもフルートならではの爽やかさがあって良いです。Jasper Country Man は完成されたアレンジのジャズ・ファンク。Baby's Gone ラストは怪しげな出だしですが、ソウルフルなバラードへ変化していきます。ゆったりとしたグルーブがヒーリング・ミュージックのように心地よい。Bobbi のボーカルは1曲だけだったのがもったいない。
 アルバムを通して聴きこむと、結構しっかりと作りこんだジャズ・ファンクでした。B級路線は1曲目の Chicago, Damn のみだったので、ジャズファンクはダサいぐらいがカッコ良いと思う私としては、優等生的なこのアルバムはとても良かったのですが面白みは少ないかなと思います。つまりは世間からしてみたら傑作と言われる部類ですね(面倒な言い方になりましたがニュアンスわかりますでしょうか?)
 メンバーのおさらいしたら David T. Walker がギターで参加ですね。どのギターだろう?ささやき系ギターでわかりにくいのかも。再度そこに注意して聴いてみます。

flute, vocals (solo3) : Bobbi Humphrey
piano, electric piano (fender rhodes) : Jerry Peters
synthesizer (arp) : Fred Perren
guitar : David T. Walker, John Rowin
electric bass (fender) : Chuck Rainey, Ron Brown
drums : Harvey Mason
percussion : Stephanie Spruill
congas : King Errison
clavinet, trumpet : Fonce Mizell
vocals, arranged by (vocals) : Fonce Mizell, Fred Perren, Larry Mizell

arranged by, conductor, composed by : Larry Mizell
producer : Chuck Davis, Larry Mizell

recorded June 6, 7 & 8, 1973.

1. Chicago, Damn
2. Harlem River Drive
3. Just A Love Child
4. Blacks And Blues
5. Jasper Country Man
6. Baby's Gone





  

2023年1月27日金曜日

Esperanza Spalding / Esperanza

 

 時空を超えてどこかに行ってしまいそうな楽曲が多いエスペランザですが、これは大丈夫。ジャズをベースにリラックスできて、かつ彼女の中にある独特の音階も楽しめるのでジャズ好きのエスペランザ初心者なら入門編としてお勧めです。普段はポップな音楽を好まれている方の初心者入門は売れたアルバムの Radio Music Society ですね。
 エスペランザは史上最年少の20歳で、バークリー音学院の講師に就任したベース・プレイヤーであり、ソング・ライターであり、ボーカリストであります。ルーツとしては、アフリカ系アメリカ人、ウェールズ及びスペインの血を引いているとのこと。ベース・プレイヤーとしても高い技術がありますが、ジャズ、ポップス等のジャンルに寄せた曲も素晴らしいですが、その曲の中に見える彼女の独特の音階やリズムが凄いのと、ジャンル分け出来ない音楽も一聴すると訳がわからないのですがファンになると、それが高い芸術性を持っているように聞こえる訳です。ボーカルも非常に透明感があり的確に複雑な音程の中を泳ぐように歌います。イブとかは見たこと無いですけど、どうやら私はすっかりエスペランザのファンになってしまっているようで、はるか前に降参しております。ライナー・ノーツの手書きの字までアートですから。


 さて、このアルバム、エスペランザのセカンドで2008年リリースです。本年は2023年になってしまいましたので約14年前のアルバムですか、いつのまにか懐かしのアルバムになってしまいました。
 再度拝聴しましょう。Ponta De Areia はイントロでアフリカンな響きなようで浮遊感のあるコーラスで始まりますがイントロが終わるとポップスのようなボーカルのメロディーラインになりクルクルと展開していくジャズ・フォーマットですが最後はポップスのように聴きやすいメロディーでいきなりノックアウトですね。I Know You Know は、ゴツゴツしたベース・ラインから始まるのですが、ここでアコースティック・ベースなのに粒だちの良い発音と滑らかな音にベーシストとして本物がここにいることが実感できます。拍子の数え方はよくわかりませんが、おそらく6拍子でしょうか。この拍子がぐるぐると音の波が押し寄せるような効果があってまた気持ち良い。Fall In は静かな曲です。エスペランザの曲でバラードというのは何か当てはまらないような気がするので静かな曲と表現しました。中域を活かした伸びやかなボーカルが心に響く美しい曲です。I Adore You は、アフリカンな響きのあるスキャットで1曲目と同様にポップス、ワールドミュージック、ジャズのような要素が目まぐるしく1曲の中で変わっていきます。ピアノ・ソロの時はジャズ・フォーマットでの演奏でのアドリブですが続くベース・ソロ部分(おそらく)はエスペランザはフォーマットはお構いなしでの演奏で格が違います。Adore は憧れる、熱愛するということだそうです。Cuerpo Y Alma はスタンダード Body & Soul ですが、ここはエスペランザはスペイン語で歌っています。語感の違いが情熱的な印象を持たせてくれるのが面白いですね。変拍子っぽいところを入れていることはありますが珍しく変則技があまりない完全にジャズですね。She Got To You では、フュージョンぽい出だしで出だしの表情はあまり変えずに曲が進行します。これは聴きやすい。ですが面白くはないかな。ライブでは盛り上がりそうです。Precious は、可愛らしいメロディーで、このアルバムで一番印象に残るメロディーラインです。惚れます。Mela は、ザ・ジャズって感じです。普通にジャズです。ソロなんかは凄いクオリティ高いんだけど、エスペランザのアルバムの中では面白みにかけるような気がしてしまうのが困ったもんです。Love In Time は、曲名通り甘い感じです。ディナー・ショーとかでかかるようなゴージャス感もあります。Espera は当然自分の名前から曲名をとったんだろう曲です。自分の存在を確認するような歌詞と我々普通の人に安心感を与えてくれる曲の進行でこれも良いですね。If That's True は、8ビートのドラムから始まり4ビートに変化したりする曲でメンバーのセッションのような曲です。なかなかスリリング。Samba Em Preludio でアルバムは終了します。バド・パウエルの曲のようですがボーカルがまたスペイン語になっています。このしっとりエスペランザも良いですね。ずっと愛聴します。

bass : Esperanza Spalding
vocals : Esperanza Spalding (1 to 10, 12)
piano : Leo Genovese (1 to 11)
guitar : Niño Josele (12)
drums : Horacio Hernández "El Negro"(4, 6, 8), Otis Brown (1, 2, 5, 7, 9 to 11)

bongos : Jamey Haddad (1, 2, 6)
percussion : Jamey Haddad (4, 10)
backing vocals : Gretchen Parlato (1, 4), Otis Brown (4, 7), Theresa Perez (4)
alto sax:  Donald Harrison (6, 11)
trumpet : Ambrose Akinmusire (8, 11)

1. Ponta De Areia
2. I Know You Know
3. Fall In
4. I Adore You
5. Cuerpo Y Alma (Body & Soul)
6. She Got To You
7. Precious
8. Mela
9. Love In Time
10. Espera
11. If That's True
12. Samba Em Preludio



Espera
 


  

2023年1月22日日曜日

Duke Pearson / Now Hear This

 

 マンネリ気味、偏り気味の音源の幅を広げるべく、あまり聴いたことが無いミュージシャンの音源をあえて購入するパターンで購入の一枚。購入店舗は、おそらくディスク・ユニオンだったはず。このような買い方をするときは、何が入っているのか?参加メンバーは?などと気にすることなく、安くて名盤っぽい売り文句があれば購入してしまいます。ロック系はこの買い方で失敗する(2度と聴かない)ことは多いのですが、ジャズに限っては後悔することは少ないですよね。
 と言うことで、私がこの Duke Pearson(デューク・ピアソン)に関しては、ほぼ知識が無いことは察していただけることかと思いますのでググって見ます。1932年生まれのピアニスト、作曲家。有名曲はよくわかりませんが、アート・ファーマー、ベニー・ゴルソン、私の好きなドナルド・バードなどと共演されているとのこと。Duke Pearson の名前は、デューク・エリントンにあやかって「Duke」とおじさんにつけられた愛称とのこと。1963年には Blue Note でスカウトを担当し1963年から1970年までセッションに参加しながらプロデューサーを務めています。1966年にブルーノートがリバティ・レコードに買収されピアソンも1971年に Blue Note を引退しクラーク大学で教鞭を採りその後ビッグバンドを結成してのこのビッグ・バンド・アルバムの録音となったようです。
 でピアノを弾き、Herbie Hancook / Speak Like A Child ではプロデューサーでした。つまり全くしらないオジサンでは無かった訳です。


 さてこのアルバムもうおわかりの通り、晩年のビッグ・バンド作品で1968年の録音です。メンバーは有名どころではトランペットで Randy Brecker、サックスは Frank Foster、バリトン・サックス Pepper Adams 先の Herbie Hancook / Speak Like A Child でドラムを叩いていた Mickey Roker なんかが参加しています。
 ただ聴いているときよりも面白くなってきました。それではレビューですが、まずは Disapproachment これは Frank Foster のオリジナル。ザ・ビッグ・バンドって感じの派手でカッコ良い曲なんですが、ソロ回しでサックスがノリノリでソロが終わってトロンボーンの出番となります。少したどたどしいかなと思いつつ聴いていると、3分9秒ぐらいから素人でもわかるレベルで音を外し始め?となりました。放送事故っぽいレベルのような気がします。で気を取り直して I'm Tired Cryin' Over You ブルース・ピアニストのバディ・ジョンソンのブルースでボーカルもので一休みって感じですが一休みが2曲目は早いなあと思います。Tones For Joan's Bones はチック・コリアのオリジナル曲でチックコリアの初リーダーアルバムのタイトル曲とのこと。オリジナルを聴いて比較したいですね。Amanda はピアソンのオリジナルでボッサです。ピアノ、ベース、ドラムのトリオで始まり、トロンボーン・ソロ 1分16秒4あたりが、また音程があやしい。4人いますが犯人は誰なのか気になります。Dad Digs Mom もピアソン・オリジナルのバラードです。パパはママを探し当てる(ママもパパを探し当てる)みたいな意味でしょうか。抜き足差し足でにじみよっていくような曲です。Minor League は景気の良いビッグ・バンド・アレンジでドラムが楽しそうにバカバカやってます。トロンボーン大丈夫だろうな?と思いながら聴いているとこの曲ではソロは回ってこなくて終了です。ホッとした。Here's That Rainy Day は Jonny Burke の作曲でチーク・タイムにかかるやつですね。甘いヤツです。テナー・サックスがエロい感じです。Make It Good もピアソンのオリジナルで豪快なパターンで Pepper Adams のバリサキが暴走族みたいで素晴らしい。最後は名曲 The Days Of Wine And Roses です。甘美な旋律の美しい曲ですが確か曲名とは裏腹に悲しい曲だったんですかね。間違いなく安定した演奏です。これはトロンボーンが率先してのソロ。出だし怪しいところは少しありましたが、うまくクリアです。ホッとしました。
 最初はふーんって感じだったんですが結局は聴きこんでしまったアルバムでした。面白かったかな。

piano : Duke Pearson
bass : Bob Cranshaw
drums : Mickey Roker
alto sax : Al Gibbons, Jerry Dodion
tenor sax : Frank Foster, Lew Tabakin
baritone sax : Pepper Adams
trumpet : Burt Collins, Jim Bossy, Joe Shepley, Marvin Stamm, Randy Brecker
trombone : Benny Powell, Garnett Brown, Jimmy Cleveland, Kenny Rupp
vocals : Andy Bey (2)

recorded by : Rudy Van Gelder
producer, arranged by : Duke Pearson

recorded on December 3, 1968.

1. Disapproachment
2. I'm Tired Cryin' Over You
3. Tones For Joan's Bones
4. Amanda
5. Dad Digs Mom (And Mom Digs Dad)
6. Minor League
7. Here's That Rainy Day
8. Make It Good
9. The Days Of Wine And Roses


▶ Amanda