2023年5月20日土曜日

Chicken Shack / CHICKENSHACK VII


 これは、発売されて直ぐに購入したアルバムです。チキン・シャックは学生の時にサックスの先輩がよく聴いていたバンドで私自体は思い入れがあるバンドでは無いのですが、つられて聴くうちに心地よいバンドであることは知っていましたし、ギターの 山岸潤史 も日本のフュージョン界では重要な位置を占める方で、耳にすることは多かったので23年ぶりの発売と聴いて、まず間違いはないものと確信しての購入でした。


 すっかり歳をとってしまわれたメンバーは、土岐英史(sax)、山岸潤史(g)、続木徹(key) で、結成は1986年でした。前作は1990年に発表の CHICKENSHACK VI で、23年ぶりの2013年の発売で、10作目となります。昔はもっとネチッとしたサウンドでクロスオーバーとブラコン的な要素が強かったのが、今回は軽めになったソウル、R&B系フュージョンで円熟味を増した演奏に変化していると感じます。
 さてレビューです。Have Yourself a Merry Little Christmas は、クリスマス・ソング。発売日は2013/06/12です。?と思っていると、どうやら'91年のChickenshackのライブ盤で Prime Time の最後の曲です。この盤がベスト盤やコンピ盤、リユニオン盤を除けば実質的なラストアルバムになるので、その続きという訳ですね。続くは Flow は歌物です。歌詞は Wornell Jones 作曲は 続木徹 と書いてあるのでこのアルバムのための書下ろしのようです。Go は 山岸潤史 の作曲のゆったりとしたフュージョンでトリッキーなこともなく落ち着いて聴ける聴きやすい曲で各自のソロも取りやすい進行です。ギターソロの音使いは私のツボに入る感じ。It’s Rainin’ on my Heart は、土岐英史の作曲のブルース。それも泥臭いヤツです。こんな曲はこのメンバーなら何にも考えずに手癖のみで演奏でしょう。王道すぎて楽しい。October Sky は山岸潤史で、アースのセプテンバーがモチーフですね。だから曲名もオクトーバーと納得。私の世代の人は嬉しい楽曲ではないでしょうか。You Make me Feel Brand New は、スタイリスティクスですねえ。山岸さんの趣味でしょうか。Thrill ain’t Gone (we’re still together) は、続木徹の作曲で王道のコード進行と構成で Fourplay が好きな人にはばっちりです。Have You met Johnny G ? は、また土岐英史の作曲。Johnny G とは、Johnny ''Guitar'' Watson のことでしょうか。The Gadd Gang っぽい楽曲です。ピアノは Richard Tee、ギターは Cornell Dupree に随所でなりきってます。Christmas Time is Here は、Vince Guaraldi Trio の Charlie Brown の Christmas アルバムでは子供たちが合唱している曲です。渋い選曲かな。最後の Walk Alone は山岸潤史で締めくくりです。モチーフは Peple Get Ready ですよね。もしかしたらコード進行だけかもしれませんが、メロディだけ女性ボーカルを入れてきたり、ジェフベックみたいな音を入れてきたりと確信犯だとは思います。こういった遊び心が随所に入っているのも熟練されたミュージシャンの余裕を感じますね🎵良きアルバム。

【オリジナルメンバー】
sax : 土岐英史
guitar : 山岸潤史
keyboads : 続木徹

【ゲスト】
bass : 清水興、Wornell Jones
drums : 鶴谷智生、Fuyu

1. Have Yourself a Merry Little Christmas
2. Flow
3. Go
4. It’s Rainin’ on my Heart
5. October Sky
6. You Make me Feel Brand New
7. Thrill ain’t Gone (we’re still together)
8. Have You met Johnny G ?
9. Christmas Time is Here
10. Walk Alone

▶ Flow




  

2023年5月19日金曜日

Tal Farlow / Tal


 10年ぐらいは眠らしていたでしょうか?久しぶりに聴きます。大学時代にジャズをかじっていたものの、ジャズ・ギタリストには全く詳しくなくて行きつけの「おでんバー」のマスターに何人かご紹介を受けたギタリストの一人で何を購入しようかタワレコで迷ってタル・ファーローで Tal なら間違いは無かろうと思って購入を決めたような記憶です。
 長い指からオクトパス・ハンドとも呼ばれていたギタリストで実際にコピーしようとすると長すぎる指の長さから普通のギタリストにはかなり無理な運指らとのことで、どうやら低音側2弦とも左手親指で押弦してたらしく、でか過ぎだろうという感じです。また楽譜は多分読めなかったそうですが、聞いてる分にはそのようなことは余り感じさせない丁寧なフレーズのギターの印象です。1921年生まれで、チャーリー・クリスチャンを耳にしてジャズ・ギターを始めチャーリー・パーカーのビバップの洗礼を受け、チャールズ・ミンガス、レッド・ノーヴォと組んだトリオの、圧倒的なスウィング感と超速プレイに鍛えられたことによって、驚異的なスピードが身についたとされています。


 1958年に結婚して絶頂にありながら、家族との時間を大切にするために引退し以前の本業、看板描きで生計を立て、10年後の1968年のニューポート・ジャズ・フェスティバルで復帰し、1998年7月25日に食道ガンによりニューヨークで死去されています。
 さてこの作品のレビューにしましょう。1曲目は、Isn't It Romantic? です。なんといっても特徴はハーモニックスによる演奏。最初はギターのブリッジの方(後ろの方)で弾いているのかと思ったら音程が高いのでおかしいなとは思ってググったらハーモニクスを使っているとのこと。多分ピッキング・ハーモニクスとは思いますがそこら辺については発見できませんでした。次いで、テンポ良い There Is No Greater Love は正調なビバップですが、少し弾きつらそうにテンポがもたつく箇所も度々出てきます。おそらくとんでもない運指で弾いているものと思われます。一転して How About You? は、違う人のようにガンガン流れるように弾きまくります。ドラム不在で、このリズミカルな演奏は Vinnie Burke の職人のような途切れなく音を埋め尽くすベース・プレイと弾きまくるギターに触発されたかのよなガンガンプレイの Eddie Costa の技が光ります。Anything Goes は最初から突っ込んだイントロと高速バップが特徴的です。最初より中盤の方がテンポアップしているような感じもあります。凄いですね。Yesterdays は、Jerome Kern による1933年の楽曲で、いつもこの曲を聴くとチュニジアを思いだしてしまいます。どっちが先何だろうとググってみるとチュニジアが1945年のガレスピ作なので Yesterdays の方が先に創られています。You Don't Know What Love Is は、いかにも、ぶっとい弦を張っていますという感じの低音ギターから始まりソロ部分はネチッとした中域広域のレンジの音まで幅広く使われているテンポ遅めの聴かせる曲。うって変わって Chuckles はテンポ早めのダンサブルな曲でライブでこのような曲は受けたに違いない楽曲です。Broadway は最後に相応しいスタンダード。Bill Byrd Teddy McRae Henri Woode が作曲となっています。軽やかでいかにもジャズですと言う感じでタルとエディー・コスタのアドリブの掛け合いが楽しい。
 今まで聴いてこなかったのは、黒さが少ないのが要因であるような気もしますがドラムレス・トリオで、このリズム感のあるアルバムは中々の名盤です。もっと頻度上げて聴く気になりました🎵

guitar : Tal farlow
piano : Eddie Costa
bass : Vinnie Burke

Recorded May 31, 1956, NYC

1. Isn't It Romantic?
2. There Is No Greater Love
3. How About You?
4. Anything Goes
5. Yesterdays
6. You Don't Know What Love Is
7. Chuckles
8. Broadway




  

2023年5月18日木曜日

Areski Brigitte Fontaine / Le bonheur

 

 Brigitte Fontaine(ブリジット・フォンテーヌ)は、フランスの歌手でジャンル的にはアバンギャルド・ミュージックとされています。ディスク・ユニオンのジャズ・ボーカルの棚にこれがあったので、たまたま手に取って購入してみましたが、この分野の音楽に触れることは滅多にないため不思議な感覚です。
 と言うことでもう少し Brigitte Fontaine を調べてみると歌手もやっているが、女優、作詞家、詩人、小説家でもあるマルチな才能の持ち主らしく、音楽的にもロック、フォーク、ジャズ、ワールドミュージックなど、多くの音楽のスタイルをオリジナルに融合させていった、フランス音楽シーンが誇るカリスマ的アーティストとのこと。1940年ブルターニュのモルレー生まれ。パリのソルボンヌ大学に入学後、実験演劇と歌手の両方で活動を開始したとのこと。
 そしてこのアルバムのもう一人の登場人物は Areski Belkacem(アレスキー・ベルカセム)。彼も1940年のフランスのベルサイユ生まれ。ダンスクラブや二流のレストランでヒット曲の演奏を始め、兵役の前には、ジャム・セッションのためにサン・ジェルマン・デ・プレの洞窟でドラマーとし活動。兵役後は、フランス中のロックやジャズクラブで多様な楽器を演奏しながらツアーをするマルチ・ミュージシャンです。Brigitte Fontaine とは、Art Ensemble Of Chicago と共に、Théâtre du Vieux-Colombierで、地下クラシックになる Comme à la radio アルバムで演奏し役者としても活動しています。


 先にも書きましたように、この手の音楽には馴染みがなく雑多にお音楽を聴いている私にも、耳慣れない響きです。フランス語は美しい響きの言葉であると言われるのを耳にすることはありますが、自分ではそれほど意識して美しいと感じたことはありませんでした。そこで、このアルバムを聴いてどう感じたのかと言えば美しいと言うよりは結構力強い響きであること。(演奏者の性格も出ているような気はします)
 さて、アルバムの曲のレビュー。テーマ曲である Le bonheur は、11曲含まれている楽曲のうち10曲目に配置されています。劇場での録音なのか、SE的な演出なのか、わかりませんが、出だしは観客と思われる人の笑い声から始まります。アルバム全体がフォーキーで、印象に残りやすいメロディーな曲は少ないのですが、その中で、かなり聴きやすいハッキリしたメロディでユニゾンをハモリながら進行していく印象深い曲。フォーキーでありながら語るように歌うのでお経のように聞こえるところもあり不思議な響き。楽曲としては、幸福と自由を求める若者たちへのメッセージを伝える歌詞で、曲の冒頭では、「幸福は自分で見つけなければならないものだが、それを見つけたら、人生は自由になるだろう」と歌われてるとのこと。当時のフランス社会において、政治的、社会的変革を求める若者たちの反逆の象徴となったとのこと。1969年にこの曲は書かれたとのことで1968年にフランスは五月革命というゼネストを主体とした学生、労働者、大衆の一斉蜂起がおこった頃です。なるほど力強い響きになってくるわけです。世界的には、アメリカではベトナム反戦運動の泥沼化、中国では文化大革命、日本は全共闘、東大紛争、ワルシャワ条約機構軍によるチェコへの軍事介入(プラハの春)などがあり、最近聴いているアルバムは、この辺に関するもの、時期のものが多く政治、戦争、音楽はこの時期には切れない縁があると再認識です。
 さて、アルバムに戻り冒頭の1曲目は、かぼちゃ La citrouille で歌いだしの奇妙な笑い声に聞こえるのは、ハエの前足をすり合わせるようなフォンティーヌの声とライナーノーツでは書かれているが歌詞の中身からしてもハエではないと思いたい。可愛らしいメロディーと奇妙な笑い声、カボチャは馬車になることが出来ると歌い、実は自分は灰色ネズミであるという中々シュールな曲のようで、アルバムは全体的にこのような雰囲気が漂っています。
 言葉はわからないけれど、美しさ、抒情性など芸術性を感じるアルバムで、1曲よりもアルバム全体を聴いた方がその感覚がわかると思います🎵

vocals , percussion (tambour) : Brigitte Fontaine
guitar, percussion, flute, music by : Areski
lyrics by : Brigitte Fontaine ( 1 to 4, 6 to 11)

producer : Pierre Barouh

recorded during the winter of 1975 in a theatre, a kitchen, a stable and a studio.

1. かぼちゃ La citrouille 
2. 芝居 Theatre
3. 星と豚 Les étoiles et les cochons
4. オーナー Le propriétaire
5. ブーダリ Boudali 
6. 痛い痛い Bobo
7. 果樹園 Les vergers 
8. メフィスト Mepfisto
9. ベーコンがある Y’a du lard
10. 幸福 Le bonheur
11. 忘却のうた L’oubliana





  

2023年5月14日日曜日

Miles Davis / Tourin' 1964

 


 1964年のマイルスは忙しい。1964年2月にニューヨークのリンカーン・センターのフィルハーモニック・ホールで行われた2公演のバラードを「My Funny Valentine」に高速バップは「Four & More」の2枚に収録され「静」と「動」として対をなす傑作を録音。この時のサックスはGeorge Coleman。そしてサックスが Sam Rivers の編成になって、初の日本公演を1964年7月に果たし Miles in Tokyoというライブアルバムを遺しています。そして Art Blakey And The Jazz Messengers で頭角を現した Wayne Shorter を迎え入れて第2期クインテットが確立し、10月のドイツでのライブが本アルバムです。その他この1964年ライブ・アルバムとしては、Miles in Berlin も発表されています。このヨーロッパ・ツアーは以下の日程で組まれていた記録がありました

September 25: Berlin Philharmonie
September 26: Concertgebouw, Amsterdam
September 29: Le Théâtre Municipal, Lausanne
September 30: Kongresshaus, Zürich
October 1: Salle Pleyel, Paris (two concerts)
October 3: Johanneshov Isstadion, Stockholm
October 4: KB-Hallen, Copenhagen
October 6: Messuhalli, Helsinki
October 8: Stadthalle, Sindelfingen (two concerts)
October 11: Teatro dell' Arte, Milan


 本アルバムはヨーロッパ公演の中で1964年10月8日ドイツの地方都市Sindelfingen(ジンデルフィンゲン)で行われたコンサートで地元のラジオ局の番組用に収録・放送されたもので、このラジオの放送音源を使用してのリリースとなっています。このコンサートの2日前に行ったフィンランドのHelsinki(ヘルシンキ)でのコンサートの模様もボーナス・トラックとして収録されています。演奏よりも気になるのはハンコックのノリノリ加減で、ドイツでもフィンランドでもピアノソロのところでジャレットかと思うような唸り声が聴こえ、他のメンバーも含め皆ノリノリ、いきいきとしたプレイを聴いて取れます。
 1曲目は Autumn Leaves です。何回か聴いても、聴き始めは音が今いちだという印象がありますが、聴き始めてしばらくするとテンポ早めの音数多めのマイルスのトランペットに耳を奪われ気にならなくなります。ショーターのリズムにのったサックスも素晴らしい。ハンコックはソロになると唸りをあげ気分が盛り上がっているのがよくわかります。So What ももともと大好きな曲、テーマの部分から凝っているのが嬉しい。文句なし。そこから All Blues で、お互いの技量を確かめ合うかのような演奏がすごい。途中のテンポを変えるところのメンバーの反応具合も良く勢いを感じます。そしてOleo ですか。おいしい曲が連発です。Ron Carter のベースがとても良い感じでメンバーを煽っています。マイルスも狂ったように吹きまくりハンコックが、各人のソロの始まりにそれぞれに違った感じの煽りを入れるのも良いですね。Walkin' / The Theme もスリリング。一枚目で十分に堪能できる内容ですが、2枚目に続きます。またもや名曲 Milestones です。まだまだ早いテンポで聴き手を煽り続けています。疲れそうなライブになってきました。ここで一息の No Blues です。今までよりも方の力が抜けたこなれた楽曲になり、ブルースって展開が見えやすくてホッとするなあと感じます。All Of You で、さらにクールダウンしてきます、今まで聴く方も一生懸命だったのが、ゆっくり席に座って目を閉じて音を聴くような感じ。ショーターが変則的な音と間合いでソロを取り始めるところにロン・カーターのベースの音の入れ方がカッコよく感じます。Joshua / The Theme で一旦ライブが終了します。これからはフィンランドでのライブとなり音質が変わります。Autum Leaves は少しテンポを落として聴かせるタイプの演奏。音のこもり具合が気になります。So What の出だしのアレンジは1枚目とほぼ一緒の感じですが、録音の具合もあるのか、なんとなく熱量が少ない。Stella by Starlight は、やはりしっとりと聴かせてくれます。Walkin' は、煽り気味に戻りますが、これも今まで聴いてきた中では不完全燃焼気味です。終わりがテープが終わったりしたのでしょうか?次の The Theme と合わせてうまく編集しているような感じです。聴いてきて思うのはフィンランドになると落ちている演奏側の熱量です。さすがの強者たちも疲れが見えているんですかね。
 このツアーは Autumn Leaves、So What、Stella by Starlight、So What、Walkin' などの過去のレパートリーに終始しています。しかし演奏はウェイン・ショーターの参加によってモーダルな方向に加速しているのがわかります。Miles in Berlin は未だ持っていないのですが、曲目はほぼ同じなのを見ましたので、どのような違いがあるのか是非聴いてみたいものです。おそらく最初の公演なので熱い演奏なのかと期待ですね🎵

trumpet : Miles Davis
tenor sax : Wayne Shorter
piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Tony Williams

Stadthalle, Sindelfingen, Germany 8th Oct 1964

【Disc 1】
1. Autumn Leaves
2. So What
3. All Blues
4. Oleo
4. Walkin' /The Theme

【Disc 2】
1. Milestones
2. No Blues
3. All Of You
4. Joshua / The Theme
Bonus Tracks Messuhalli, Helsinki, Finland 6th Oct1964
5. Autum Leaves
6. So What
7. Stella by Starlight
8. Walkin' 
9. The Theme

▶ Oleo

▶ Walkin'

▶ Joshua


  

2023年5月13日土曜日

Dire Straits / You And Your Friend


 Dire Straits を中古CD屋で発見!懐かしいと思って買ったらシングルでした。私が昔聴いてギターのコピーをしたのは、ブルースが少し変形したような曲で、改めて探したら Lady Writer という曲でしたが、この曲のイメージとは本CDはかなり違います。アメリカのブルース・ロック・バンドだと思っていたら、イギリスでした。(しかもブルース・ロックではない)購入したはいいが過去の記憶とは何かが微妙にずれていて奇妙な気持ちになるCDです。
 そもそもが、Dire Straitsというバンドの記憶が曖昧であるのでしょうがないかとおさらいしてみます。1970年代末から90年代初頭に掛けて、ポップシーンにありながらも流行とは一線を画した音楽で世界的な人気を誇ったグループで、結成は1976年でイギリスで、オリジナル・メンバーは、リードギター&ボーカルの Mark Knopfler (マーク・ノップラー)、リズムギターの David Knopfler (デヴィッド・ノップラー)、ベースのJohn Illsley(ジョン・イルズリー)、ドラムの Pick Withers (ピック・ウィザース)などで、バンド名の「dire」は「ひどい、無残な、差し迫った」、「strait」は「断崖、苦境、困窮」
 ヒット曲は、Sultans of Swing (悲しきサルタン)、Private Investigations (哀しみのダイアリー)などなど。そして1988年9月に解散、1991年には再結集するが1995年には、また解散となる。理由は、世界的グループとして大規模な公演を行うことに疲れたとナルホド🎵


1. You And Your Friend
2. Ticket To Heaven
3. Badges, Posters, Stickers, T-Shirts





  

2023年5月12日金曜日

土岐英史 / Black Eyes

 

 亡くなってから、ふとその良さに気づいて集めだした土岐英史の作品はこれで6枚目になります。晩年はピアノやギターとのセッションが多かったのですがこのアルバムでは、サックスを中心とした、オーソドックスなカルテット・クインテットの作で2018年の録音で、前作の Missing What? からは2年ぶりのリリースとなりました。アルバムタイトルの Black Eyes は、土岐英史が「暗闇の中で自分自身を見つめるように、自分の内側を見つめることが大切だと思った」という思いから名付けられたとのこと。レコーディングは2020年に閉鎖した東京は新宿の Studio Greenbird で、レコーディングでは同じ空間で彼らが出す音を直接聞きたいと、セパレート・ブースを使わずに全員が同部屋で演奏をしたとのことです。


 収録曲は全て土岐英史の作曲。「Black Eyes」や「Sky High」といったアップテンポな曲から、「Take Me Out to the Ballgame」といったカバー曲まで、バラエティ豊かな曲が含まれています。
 さてレビューします。1曲目 Black Eyes は岡本太郎がモチーフです。 「顔は宇宙だ。眼は存在が宇宙と合体する穴だ」晩年はほとんど眼だけの作風となり、それがモチーフとなってこの曲が作られたようです。ただ、ここには芸術は爆発だ!は無く、静かなる情熱が表現されているように感じます。845は、なんてことはないオールドタイプのジャズのように聞こえますが、佐藤’ハチ’泰彦、 奥平真吾 の見せ場が満載で強力なリズム隊のグルーブを引き出しています。Picasso's Holiday は、ピカソに影響を受けた岡本太郎のことを意識して書いた曲と思われます。もしかしたら岡本太郎をピカソと見立てたのでしょうか。岡本太郎が提唱する「対極主義」は、当たり前やそれまでの常識など既存のイデオロギーや様式にあえて、それに反する「対極的」な考え方をぶつけ、一つの作品に詰め込み、その矛盾(つじつまが合わないこと)から生まれる緊張感が、見た人にその矛盾について考えさせ、新しい考えが生まれて前に進むことが出来るという考え方。この曲にはそんな矛盾は見えませんが、そんなことを考えていることに対する情熱的なパッションは感じられ、休日と言う印象は見受けられません。いや熱い。次いでは、片倉真由子のピアノを思い描いた Little Phoenix で、その通り片倉真由子の優雅でありながら芯の強いピアノの響きが楽しめます。C Minor は土岐さんお馴染みの曲で、土岐英史 feat. 竹田一彦 Live at "RAG"Little Boys Eyes
 などにも収録されています。Thunder Head は、正調なビ・バップという感じで楽しいジャズの世界が広がります。管が2本は曲の広がりがあります。そして市原ひかりのフリューゲルホーンをイメージして書いた Lady Traveler です。この人のトランペットの発音も良いなあ。ライナーノーツに市原ひかりのインタビューが書いてあります。「土岐さんの“音”はインゴットのようなもの。普通は気泡が入るんです。でも土岐さんの音には一音一音に意味があり、人生のすべてが詰まっている。音に魂が宿っている。技術だけであの音は出せません。すぐれた芸術とおなじ。だから一音一音が心に響くんです。10年となりで吹いているけど、いまだにうまくブレンドできているとは思いません。でも10年後にはビタっと合うはず。それを信じてやっています」 そして最後は、MA-TA-NE ! ライブが終了する合図のような軽やかな曲でソロをとりやすい感じの曲で和気あいあいの演奏です。
 土岐さんと言われないで聴いていたら、日本人とはわかりにくいですが、そう思って聴くときっちりと作りこんでいる感じはやはりジャパン・ジャズでしょうか。芸術を感じる普通に良いアルバムだなあ🎵

alto sax : 土岐英史(Hidefumi Toki)
piano : 片倉真由子(Mayuko Katakura)
bass : 佐藤’ハチ’泰彦(Yasuhiko Sato)
drums : 奥平真吾(Shingo Okudaira)
trumpet, bugle : 市原ひかり(Hikari Ichihara)

produced by Akiomi Hirano 

recorded at Studio Greenbird on 23,24, July in 2018

1. Black Eyes
2. 845
3. Picasso's Holiday
4. Little Phoenix
5. C Minor
6. Thunder Head
7. Lady Traveler
8. MA-TA-NE !





  

2023年5月7日日曜日

Nina Simone / Here Comes The Sun

 

 Nina Simone は、これが2枚目のアルバム。1枚目は1967年のソウル系の Silk & Soul で、今回はポップなところをカバーしている1971年のアルバムです。唯一無比、印象的な渋声ヴォーカルで、ジャズ、フォーク、ブルース、R&B、ゴスペル までジャンルレスに歌いこなす方で、いつもの「おでんバー」でジャズとかも聴いたことがあるんですけど、もっか私の所有音源はソウル系のみです。


 レビューしてみます。タイトル曲は1曲目の Here Comes The Sun で、ビートルズが1969年に発表したジョージ・ハリスン作の名曲のカバーです。ワザとでしょうか?あまり歌いこんでいないようなイントロで、音程もフラフラしているような気がします。ピアノはニーナが弾いているとのことで、バックのバンドの演奏は素晴らしい。Just Like A Woman は、ロバータ・フラッグも歌っていたボブ・ディランのヒット作。これは歌いこんでいるようで情感豊かに歌い上げています。イントロのニーナのピアノも良し。オルガンがバックに入り、ゴスペル調のフォーク。中盤のドラム・ロールが要らないかな。O-O-H Child は、ゴスペル調のラテン・ロックになっています。単調なメロディーですがニーナの良さは出ている楽曲です。印象的で、これは昔ラジオとかで聴いたことある記憶があります。Mr Bojangles は、1曲目との力の入れ方に明らかな格差をつけて、ニーナがグッと感情をこめて歌い上げています。ソウルに属するのかもしれませんがフォーク調に聞こえる歌い方も良い。New World Coming はスピリチュアルな曲で、新しい世界が素晴らしい世界が待っているという自由を求める黒人の願いが込められた歌で、アメリカ全土の黒人が投票権を持つことによって生まれる解放への希望が込められています。Angel Of The Morning は、ぶっとい迫力がある声で、可愛らしく歌っています。ジェイムス・テイラーのヒット曲。How Long Must I Wander は、ニーナの力強いピアノで始まる弾き語り。しんみりとします。このアルバムでピークに達する高揚感があります。そして最後はシナトラ My Way で締めくくりです。良い曲なんでニーナが歌って悪い訳がない。せわしないバックの早いボンゴで意表を突かれますが、これはありだな。アレンジはかなり凝っていますので、たまにやる行きつけ「おでんバー」で開催されるマイウェイ大会(どのアーチストのマイ・ウェイが良いか、インパクトがあるか、見つけてきた youTube を流して競います)にエントリーしときます。
 正直言って、時代の流れに合わせたヒット曲のカバーをアルバムタイトルに持ってくる商業色豊かなアルバム制作の姿勢がチープなアルバム感を出してしまっています。アルバムを真面目に制作していたのに、後で企画会議でヒットした Here Comes The Sun を入れて売り上げを増やそうとして企画倒れになったみたいな感じかなあ🎵

piano, vocal : Nina Simone
guitar : Al Shackman
bass : Gene Taylor
drum : Ray Lucas
backing vocals : Howard Roberts
harp : Corky Hale
conductor : Harold Wheeler
leader (orchestra, assembled by) : Kermit Moore

producer : Harold Wheeler, Nat Shapiro
arranged by : Harold Wheeler, Nina Simone
recorded in RCA's Studio B, New York City

1. Here Comes The Sun
2. Just Like A Woman
3. O-O-H Child
4. Mr Bojangles
5. New World Coming
6. Angel Of The Morning
7. How Long Must I Wander
8. My Way





  

2023年5月6日土曜日

Baha Men / I Like What I Like


 1977年に結成されたバハマ出身のグループ Baha Men のメジャーデビュー3作目です。結成当時は High Voltage というバンド名でバハマのナイトクラブやホテルなどで活動しアルバムは自主制作でした。その後1991年に、自主制作テープが、アトランティク・レコードの目に留まり子会社のビッグ・ビートと契約しバンドは Baha Men に改名。そして翌年の1992年に、Junkanoo でメジャーデビューし1994年に、Kalik 1997年には本アルバム I Like What I Like をリリース。1998年にはポリグラムにレーベル移動し Doong Spank を発表、2000年は Who Let the Dogs Out? のリメイクで大ヒットし「ベスト・ダンス・レコーディング部門」でグラミー賞を受賞したがメジャーデビュー後は割と短命に終わってしまいました。


 購入動機としては関西在住時代に行っていた寝屋川のレゲエ・フェスの予習で購入していたものです。レゲエ・バンドという認識で購入していたんですがカリビアン・ビートのポップスという感じです。KC & The Sunshine Band の That's The Way (I Like It) なんかのカバーはレゲエはあまり感じません。ここらへんのビートだと先日レビューの Magnum Band より、はるかに日本人にも受け入れやすい感じです。とにかく陽気に気分を盛り上げていこう!と一貫した曲作りですねえ🎵

That's The Way I Get Down
Beautiful Girl
あたりが良く流れていたような気がします

1. Love Really Hurts
2. That's The Way I Get Down
3. Follow The Sun
4. I Like What I Like
5. Windee
6. Beautiful Girl
7. Only Lonely
8. Heart
9. Jump In
10. Living On Sunshine
11. Bounce
12. Gotta Move On





  

2023年5月5日金曜日

Cannonball Adderley / Somethin' Else

 

 このアルバムを録音したのは1958年3月9日、その5日前にマイルスは、Milestones(Columbia)を録音を完了しています。1958年2月4日、3月9日 の2回の録音でした。それまでのクインテット(5人編成)に Cannonball Adderley を加えることによりセクステット(6人編成)し新しい試みに着手し、マイルスを起点にしたジャズの歴史が大きく転換した時期でもあり、同時期のマイルスをメンバーに加えた演奏として人気の名盤となっている古典的名作です。Blue Note は、当時ミュージシャンに事前リハーサルを求めていたが、このアルバムはマイルスが参加していたので当日の簡単な打ち合わせだけで録音が行われたとのことです。選曲はキャノンボールに一任、Somethin' Else はマイルスの書下ろしとなっています。共演ミュージシャンはキャノンボールとアルフレッド・ライオンの人選のようです。マイルスはメンバーとして参加ではありますが、Columbia と契約していたマイルスは、Blue Note からリーダー名義の作品を出すわけにはいかず、実質上のリーダーはマイルスだったとも言われています。


 そのような謂れのアルバムをレビューします。1曲目はマイルスも良く演奏しているAutumn Leaves ですが、イントロが独特で全く違う曲のようです。これはマイルスが愛聴していたアーマッド・ジャマルのイントロがそのまま採用されているとのこと。エンディングもテーマと違った形にしていて凝って作りの作品となっています。Love For Sale については、キャノン・ボールの可愛らしくユーモラスとも思えるサックス・ソロが印象的で、続くマイルスのミュート・トランペットも軽快なメロディで始まるが、おっと引きつられてはいかんと渋い演奏に戻るような気がします。続いてはアルバムテーマの Somethin' Else はマイルス提供です。シンプルなブルース・テーマで始まりますがコード進行が不思議な感じです。One For Daddy-O はオーソドックスなミドルテンポのブルース。まずはキャノンボールのソロですが流れるところと聴かせるところのレトロ感と緩急が良い、マイルスはクールに日常的に吹いている感じです。熱くないのが良いところですかね。そしてハンク・ジョーンズの短めピアノ・ソロ、キャノン・ボール、マイルスのアンニュイなソロ、ピアノでテーマとなります。このエンディングはあっさりで、最後にマイルの声(何と言っているのか?)ラストの Dancing In The Dark はマイルス参加せずにキャノン・ボールのみ。マイルスのアイデアらしい。
 テクニック云々よりも、力強さが伝わってくるアルバムでわかりやすいジャズ・アルバムです。でかい音で酒を飲みながら聴きたいやつです🎵

alto sax : Julian "Cannonball" Adderley
trumpet : Miles Davis
piano : Hank Jones
bass : Sam Jones
drums : Art Blakey

producer : Alfred Lion
recorded by : Rudy Van Gelder

recorded on March 9, 1958.

1. Autumn Leaves
2. Love For Sale
3. Somethin' Else
4. One For Daddy-O
5. Dancing In The Dark
6. Bangoon
7. Autumn Leaves (altered take)