2023年1月13日金曜日

Soulive / Break Out


 2005年に BlueNote を離れ、Concord Records に移籍してリリースしたアルバムで、今までのインスト・ファンク路線を変更したので今までのファンが戸惑った作品ですね。作りては古いスタイルを踏襲し続ける人もいれば、新しい音を追求するための路線を変更する人もいる。ファンと言う購入者は、購入前に既に今までの昔の作り方が気に入っているためにそれを期待する人が圧倒的に多いので大幅な路線変更ではこういったことが起きるんでしょうね。作り手としては気に入らなかったら買わなきゃ良いだけの話で勝手に残念がられても迷惑な話かもしれません。そのような面倒なことが起きるのを防ぐために、この私の音楽レビュー・ブログを参考にしていただければと思います。但し基本音源と言うものは基本作り手が一生懸命作った作品ですのでネガティブな発言は避けるような言葉選びをしているのでそこは察していただければと思います。


 さて封建派からは酷評されることも多いこのアルバム、今までののジャズ・フォーマットから離れて Soul/R&B 色が強め、多数のボーカリストを起用しています。でもバンドの基本フォーマットはオルガン、ギター、ドラムのスタイルにブラスを追加した音作りで、ジミヘンの Crosstown Traffic なんかも持ってきているのは昔のギター小僧なら嬉しい曲も入っています。ちなみにこのアルバムはアメリカと日本発売の中身は曲順や曲目が微妙に違うようですが私は日本版だけ所有しとります。曲によっては長さも違うのでおそらくアレンジとかも変えてきているんでしょう。
 それでは嘆き悲しむよりも、このアルバムの良さを探りましょう。出だしの Reverb は今までの Soulive の路線は引き継いでいて違和感なく安心して聴けます。久しぶりにこのバンドを聴くと改めてオルガンの足で踏むペダルのベースって弦楽器よりもパンチが効いてて気持ち良いですね。ギターのリフもソロも良いではないですか。次いで Got Soul ではボーカル  Ivan Neville のソウルものになっています。曲はソウル何ですが演奏はアレンジはデジタルな感じの処理でイントロから「おや?」と思った人もここら辺から多いのかな。Cachaca は、フラメンコ風のアコースティック・ギターのイントロにリズム・ボックスっぽいドラミング。曲はスペイン風の旋律が取り入れられていますがここらへんの手法は他のアルバムでもあったような気がします。Back Again はいつもの Soulive ではありませんが低音でズシズシと刻みながら一流のボーカルを配した中々の売れ筋の作りです。Break Out ではいつものパターンに戻ってきてホッとします。シンプルながらメロディーの良さが光るインスト・ジャズ・ファンクです。She's はボーカルに Reggie Watts を起用したポップなセンスが光ります。プリンス入ってるかなあ。Vapor は少しいつもの Soulive よりポップ寄りのジャズ・ファンク。これは良い! Crosstown Traffic は言わずもがなジミヘンです。ダサ目のギターがカッコ良いですなあ。What Can You Do はバラードで Robert Randolph のpedal steel を起用でペダルのベースのカッコよさが際立ちます。Headphones はライブ風な音作りのジャズ・ファンクでいつもの奴です。ガシャガシャしてるけど落ち着く・・Left Behind は戻ってきました Soulive って感じでボーカルものではありますがガシガシとしたリズムが堪らんです。Glad Ta Know Ya も Cochemea Gastelum のサックス入りでコテコテのギター・ソロがたまりません。楽曲良さというより単純なカッコ良いリフの勝利。Crosstown Reprise はがっちり Robert Randolph のペダルが暴れます。最高です。Take It Easy は Ivan Neville をボーカルに廃しての楽曲ですがしっかり "Soulive!"
 結局よく聞いてみたら様々なタイプの楽曲が入っていますが本質は "Soulive”でしたね。異色ではあるけど期待が外れたと騒ぐほどの変質はないんではないかい? 
 しかしですね続きあります。このレーベルは1枚で2007年にスタックス・レコード移籍で「No Place Like Soul」1枚で終了。2009年以降はロイヤル・ファミリー移籍で「Up Here」発表以降落ち着いているようです。

electric guitar, acoustic guitar : Eric Krasno
organ , keyboards , clavinet, piano : Neal Evans
drums : Alan Evans

percussion : Daniel Sadownick
tenor sax, alto sax : Ryan Zoidis
trombone : Lasim Richards (5) , Robin Eubanks
trumpet : Rashawn Ross
backing vocals : Jordan Battiste (8)

producer : Alan Evans, Eric Krasno, Soulive

recorded : New York, NY
released : September 13, 2005.

1. Reverb
2. Got Soul / Feat  Ivan Neville
3. Cachaca
4. Back Again / Feat  Chaka Khan
5. Break Out
6. She's / Feat Reggie Watts
7. Vapor
8. Crosstown Traffic / Feat : Robert Randolph
9. What Can You Do / Feat Reggie Watts
10. Headphones
11. Left Behind / Feat Reggie Watts
12. Glad Ta Know Ya / Feat : Cochemea Gastelum
13. Crosstown Reprise / Feat : Robert Randolph
14. Take It Easy / Feat Ivan Neville




▶ Vapor



  

2023年1月8日日曜日

Paul Desmond / From The Hot Afternoon

 

 どのような音楽も雑多に聴いているような気になっていますが、知らないミュージシャンの音源にはなかなか手が伸びないもので、たまに冒険するのがジャケ買いでありジャズなんかでは帯の文言に惹かれて購入する帯買いがあります。このアルバムは後者の方の帯買いにあたります。帯の文言は「デイブ・ブルーベックとの活動でおなじみ、彼独特のリリカルで美しいアルトの音色が、まろやかに聴く人を包む」でした。
 ということでPaul Desmond(ポール・デスモンド)自体には注目して聴いてこなかったので、ほぼ初心者なのですがサイドマンとして私の所蔵音源に辛うじて2枚参加されており、その2枚は The Dave Brubeck Quartet / Jazz at OberlinJim Hall / Concierto 。やはりデイブ・ブルーベックは入っており、私の所有音源の中でも比較的格調が高めのジャズでしょうか。
 ポール・デスモンドは1924年サンフランシスコ生まれで1946年にデイヴ・ブルーベックのバンドでデビュー、その後ジェリー・マリガン、ジム・ホールなどと共演しています。デイブ・ブルーベックとのバンド在籍時にあの名曲5拍子の名曲 Take Five(テイク・ファイヴ)は、ポール・デスモンドの作曲であるとのことも発見。


 本作品は A&M レーベルから1969年の Rudy Van Gelder のスタジオの録音で、ブラジルの代表的作曲家 Milton Nascimento & Edu Lobo(エドゥロボとミルトンナシメント)の作品集であるとのこと。基本的にストリングスを加えたビッグ・バンドで綿密にアレンジしたサウンドに、ポールデスモンドが軽くサックスをのせてアルバムなので、おそらくこの人の真骨頂はもっと別のアルバムも聴きこまないとわからないような気もします。ストリングス・アレンジはDon Sebesky(ドン・セベスキー)
 ゆったりとしたブラジル・テイストでありますが、アレンジも凝っているせいか割とこってりとしています。ムード歌謡のような昭和感のあり昔の喫茶店でかかっていたかのような雰囲気を感じます。
 さてアルバムですが October はストリングスが入ったイントロから始まり映画のテーマ音楽のようなアダルトな曲調にのせて Paul Desmond が肩慣らしで軽くサックスを吹いています。全く脱力な感じ。Round N' Round 軽くリズムを刻むボサノバ・ギターが印象的ですが曲自体はブルースの進行です。Faithful Brother はムーディなブラジル音楽で軽めのアルトサックスとストリングスです。何回か聴きこみましたが、ここで思ったのはどれも3分~4分程度に短くまとめられているのでアルバムとしては聴きやすい。To Say Goodbye では、ボサノバの特徴である「ささやき系ボーカル」が出てきます。そしてムードのあるアルトのソロ。やっぱり昭和を感じるなあ。From The Hot Afternoon では少しテンポ・アップしたボサになります。今までは真夏の深夜薄暗い部屋で濃い珈琲でもすすりながら聴く感じですが、ここら辺は昼間を感じますが、けだるい昼間に少し明るい系のボサノバって感じでしょうか。Circles はサックスに焦点を当てたイントロに透明感のあるボーカルが静かにハモっています。この曲は好いかも。Martha & Romao はミドルテンポですが少しミステリアスでダンサブルな曲です。これはクソ厚い昼下がりに日光を避けた家の中から海を静かに見つめているような感じでしょうか。メロディー的にはボサを外せばポップス的に聞こえます。Catavento は細やかなリズムとパーカッションを使ったアップ・テンポで夜になって軽くカクテルでも飲んで軽くハイな気分になっている感じでこれも良きかな。 Latin Chant は古臭い映画の暗く静かなアダルトな映画のワンシーンと思っていたら、展開で明るいパッとしたガヤガヤした部屋に連れていかれた感じになり、そして疲れてお休みしてから朝になります。アレンジ凄いですね。Crystal Illusions で終了となりますが中東風の音使いで始まり少しポップなボーカルが入っています。正直、刺激が少ないなあと思っていましたがアレンジとかに注目して聴いていると少しイメージ変わりました。

alto sax : Paul Desmond
bass : Ron Carter
keyboards (keyboard instruments) : Patrick Rebillot
guitar : Dorio Ferreira (1 to 5, 8, 9), Edu Lobo (6, 7, 10)
drums : Airto Moreira
percussion : Airto Moreira, Jack Jennings, Stan Webb, Jr.
sax, clarinet, oboe : George Marge, Phil Bodner
trumpet, flugelhorn : Irvin Markovitz, Marvin Stamm
french horn : Jim Buffington
bass trombone : Paul Faulise
flute, alto flute : Don Hammond, Hubert Laws, Stan Webb, Jr.
harp : Margaret Ross
violin : Avram Weiss, Eugene Orloff, George Ockner, Lewis Eley, Matthew Raimondi, Max Pollikoff, Paul Gershman, Raoul Poliakin, Sylvan Shulman
cello : Charles McCracken, George Ricci
vocals : Edu Lobo, Wanda De Sah

arranged by Don Sebesky

producer : Creed Taylor

recorded at Van Gelder Studios June 24, 25; August 13, 14, 1969

1. October
2. Round N' Round
3. Faithful Brother
4. To Say Goodbye
5. From The Hot Afternoon
6. Circles
7. Martha & Romao
8. Catavento
9. Latin Chant
10. Crystal Illusions


▶ October

▶ Circles



  

2023年1月7日土曜日

Nina Simone / Silk & Soul

 

 行きつけの「おでんバー」のジャズ・アルバムは聴いたことがある程度で、ほぼ名前だけ知っている程度だったのですがボーカルものも開拓しているので気になってディスク・ユニオンで中古で購入です。確かジャズの棚にあったのですがバリバリにソウルです。
 これを最初に聴いていたのは、行きつけの「おでんバー」でマスターと私の二人だけのまったりとした時で、かけ始めると「ウハっ」と声がでてしまうような迫力のボーカルで、マスターもソウルでも「やっぱりすごいね」の感想。「すごいね」の中身は迫力です。しばらくすると常連のKさんが入ってきて「ソウルですか、なかなか渋いとこですね」しばらくしてから机の上のジャケットを見て「ウヘっ女性ですか?」「ああニーナ・シモン」とかなりの強い反応でした。新しいのを店でかけて、こだわりの強いマスターや常連さんの反応を見るのが楽しみでもありますので、この手のアルバムは中々効果は絶大で愉快です。


 さてあまりよく知らない Nina Simone(ニーナ・シモン)なので経歴をググって見るとアフロアメリカンのジャズ歌手、フォーク、ブルース、R&B、ゴスペル歌手、ピアニスト、公民権活動家、市民運動家とのことで、守備範囲はかなり広いようです。4歳からピアノを弾き始めクラシック音楽のトレーニングで有名なジュリアード音楽院でレッスンを受けたとあり、音楽エリートかと思いきやカーティス音楽学校への進学を試みたが断られる。50年代前半のことであり、黒人であったために差別された疑いがある。とのこと才能があってもこの時代は黒人の方はまだまだ大変な時代ですね。しかし1954年にはアトランティック・シティのアイリッシュ・バーで、ピアノを弾くことになり1957年にベツレヘム・レコードから Nina Simone And Her Friends と言うジャズ・アルバムでデビューからのスタート。
 本アルバムは1967年のレコーディングですから、かなりキャリアを積んだ時点でのアルバムになります。時代的には、Aretha Franklin(アレサ・フランクリン) が I Never Loved A Man The Way I Love YouAretha Arrives などでヒットを飛ばした頃なので、かなりアレサを意識してのレコード会社も期待のアルバムだったに違いありません。
 他の作品はあまり聴いていないので、よく知らないのですが、このアルバムはいつも彼女よりも明るい異色作であり屈指のSoulアルバムであるとのこと。つまりこれを期待して他のアルバムを購入すると痛い目にあうと言うことですか(それも面白い)
 さてレビューしていくと It Be's That Way Sometime は当然のパワフル・ボーカルでバンドの演奏も時代を反映するホーン入りのソウルがカッコ良い。と思いながらメンバーを見ると Eric Gale(エリック・ゲイル)がギターにいます。ここにも居たかって感じですね。ヒット作には、かなりの確率で登場します。The Look Of Love は、音量抑え気味で渋い感じです(奥村チヨまでがカバーもしているらしい)Go To Hell は、明るく怖い声で、地獄へ行けと命じられてしまいホーン部隊のパンチを効かせたヒット音は銃撃のようです。Love O' Love はゴスペル調に歌い上げます。プロテスト・ソングかとも思いましたがラブ・ソングでもないかな。人類愛みたいな感じでしょうか。Cherish はヒット曲のカバーでマルチ録音での彼女のデュエット・ボーカルが効いているソフトロックでザ・フーとかでも出てきそうなメロディ。I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free はソウルに戻りますが最初はソフトに次第に盛り上がりながら熱を帯びてくる典型的な盛り上がりが素晴らしいパフォーマンス。Turn Me On は、少し古臭いブルースを思わせるクラシック・ソウル・バラード。Turning Point はハープシコードを入れたフォーク調の曲でストレートな歌声が素朴な優しいおばさんが歌っている感じで彼女っぽくはないけど好きですね。Some Say はモータウン風なアレンジの曲でリズミックで楽しい。Consummation は彼女の作品でバッハ風フーガに基づいているけれどソウルフルな愛の歌で聴かせてくれます。
 流して聴いている時には粗野で男性的なイメージがありましたが聴きこんでいくと、きめ細やかに作りこんいる作品と感じることが出来ました。なるほどアルバム名も Silk &  Soul ですか。良い作品です。声は怖いけど・・

piano, vocals : Nina Simone
piano, harpsichord : Ernie Hayes
guitar : Eric Gale, Rudy Stevenson
bass : Gene Taylor
drums : Bernard Purdie
arrangements, conductor : Sammy Lowe 

producer : Danny Davis

recorded june 12, 21, august 25,26, 1967

1. It Be's That Way Sometime
2. The Look Of Love
3. Go To Hell
4. Love O' Love
5. Cherish
6. I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free
7. Turn Me On
8. Turning Point
9. Some Say
10. Consummation





  

2023年1月6日金曜日

Tommy Flanagan / Thelonica

 

 John Coltrane、Thad Jones、Wes Montgomery、Kenny Burrell、Curtis Fuller などのサイドマンとしては聴いていた Tommy Flanagan(トミフラ)のソロアルバムをはじめて聴いたのが Let`s Play the Music of Thad Jones でした。これを皮切りに徐々に Tommy Flanagan も聴くのが面白くなってきました。ピアノ・ジャズも最近聴きこんできているのであまり詳しくは語れないですが、この方は自己主張はそれほど強くないとは思います。サイドメンとしても数多くのアルバムに参加しているのでスタイルも色々もっていらっしゃるようでその分聴きやすく聴き手に優しい演奏が多いような気がします。
 トミフラは、行きつけの「おでんバー」では、それほど愛聴されていない雰囲気ですがモンクは非常に頻度高くかかります。そこで見つけたこのアルバムを持って行くと・・若干反応は薄かったようです。


 そうなんです。このアルバムはトミフラの1982年録音のモンク作品集なんです。器用なイメージのあるトミフラがモンクを演奏したらどうなるんだろう?あのリズムや 6th のぶち込み方をどのように表現するのだろうか?と思いながら聴いている人たちにはモンク集とは言わずにかけていたところ、モンクの曲とは皆さん認識していますが私も含めてインパクト的には弱かった感じです。皆さん楽器をやらない耳年間ですが総じた感想をまとめると「モンクの楽曲を楽譜に落としてインパクト無視で普通のジャズっぽく演奏するとこんな風になるんだろう」と言った感じでしょうか。モンクをあまり知らない人がこのアルバムを聴いたら普通に、時に力強く時に静かに美しく格調のあるトミフラの演奏が楽しめるアルバムです。おそらく意識的にそうしたことに違いないのですがもう少し遊んでいただいても聴者としては良かったかなと思います。
 さて酷評しているのか、なんなのかよくわからないレビューになってきましたが、North Of The Sunset についてはモンクの独特のメロディーとコード使いの曲なのでここら辺はモンク集なので始まった始まったと期待に胸膨らませる出だしです。Light Blue については、モンクのテーマをベースに美しく静かに拡張高く表現していて熱量は抑え気味にしているところが洒落た印象です。Off Minor も大好きな曲なのでテーマ始まると、オオこれね、と思いながら聴けます。しかし私的にはここらへんから何かが違うな?と異変を感じ始めます。Pannonica になると何かクラシック的なアプローチなのかなと思い始め、美しいバラードに仕上げているのでモンクは無いですがモンク集だけどモンクのコピー的要素は少ないアルバムなのだと気付きます(遅いか)Ask Me Now はピアノがリードしながら進むバラードでゆったりとエンディングまで美しい。モンクが演奏するのとは違った楽曲の良さが表現されています。Thelonious はアーリー・ジャズのようなピアノのソロのイントロから始まり、トリオになってからはリズミカルにテイラーのドラム・ソロも正調ジャズで繰り広げられます。きっちりとした演奏がカッコ良い。Reflections は、悲しいメロディーのテーマですが進むにつれて哀しみが希望に変わっていくような展開に不思議な魅力を感じます。ワルツ・アレンジの Ugly Beauty も悪くない。原曲とは全く違う魅力的な展開です。最後はタイトル曲のThelonica。ピアノ・ソロでの締めくくりです。この曲はトミフラの作曲で、Thelonious + Pannonica ですね。モンクの音楽的特徴を少しだけ意識させる部分もありますがモンクと、その音楽をサポートしたニカ夫人への感謝を表現している美しい曲です。
 レビューを書きながら改めてアルバムを丁寧に聴き直すと書き始めの最初の少し残念な印象とは変わってきました。モンクのピアニストとしての側面よりも作曲家としての側面を意識したアルバムと表現したら、このアルバムが良くわかるかと思います。また録音的も非常によく Art Taylor のドラムの緻密な表現が良くわかる録音でした。

piano : Tommy Flanagan
bass : George Mraz
drums : Art Taylor

producer : Horst Weber, Matthias Winckelmann

recorded on Nov. 30 & Dec. 1, 1982 at Eurosound, New York City.

1. North Of The Sunset
2. Light Blue
3. Off Minor
4. Pannonica
5. Ask Me Now
6. Thelonious
7. Reflections
8. Ugly Beauty
9. Thelonica





  

2023年1月5日木曜日

Bill Evans / Alone



 いきつけの「おでんバー」はジャズ・バーではないのですがジャズ好きが多いのです。好みは皆様分かれるところがあり、Bill Evans(ビル・エバンス)の音源も一応おいてありますが滅多にかかることはなく、店では評価は低めに設定されています。でも私がジャズピアノってのも良いもんだなと思わせてくれたのはビル・エバンスを聴いたのがきっかけでもあり店に音源を持って行って聴くことは滅多にありませんが、たまには聴きますし音源もそれなりに集めていますし、「ビル・エヴァンスについていくつかの事柄」という分厚い本も読まさせていただきました。若い頃は、音楽とは聴くものであり、その背景なんかを語るジャズ好きは余り好みでは無かったのですが、いつの頃からか時代背景を調べながらの聴くと聴いている音とは別の背景がアルバム・タイトルや曲名からも読み取れたりすることにも面白いなと思うようになってきて、若い頃にめんどくさいヤツと思っていたウンチクジジイになりつつある今日この頃です。


 さてこのアルバムですが、1968年9月23日、10月8日、21日のニューヨーク、ウェブスター・ホールの録音です。グラミー賞受賞のピアノソロの作品で、非常に芸術性の高さを感じる作品です。1968年録音にしては音質がイマイチといった批評も見ますがピアノ一本なのに、ずっと世界に引き込んでくれる演奏そのものは実に素晴らしい作品です。むしろ音質が少し悪い方が聴いているほうに想像力を掻き立ててくれるのではないでしょうか。
 リリカルという形容詞がよく使われるビル・エバンスですが、このアルバムはまさにその形容詞がしっくりくる一枚で、ピアノのみでならの繊細さとダイナミクスが表現されていると感じます。
 アルバムの1曲目は、Here's That Rainy Day はいきなりエヴァンスの美しいリリカルなピアノの世界で、深く静かですが、これで心はわしづかみにされ、さあ正座して電気消して目をつむってこのアルバムを聴こうかなって気にさせてくれますが正座は苦手なのでしません。A Time For Love では、時折音の密度を少なくし、静寂をもたらすことで、余韻と抒情が生まれています。Midnight Mood は軽快なスイングで夜のイメージよりも爽快な朝の方が似合いそうなイメージで作曲はジョー・ザビヌルとのことで意外な感じです。On A Clear Day (You Can See Forever)  はブロードウェイ・ミュージカルの曲で、きれいなメロディーで軽やかでありながら力強くピアノを鳴らしながら弾ききっています。Never Let Me Go はこのアルバムで一番の長尺の14分で、頭は静かに、そして徐々に饒舌になってくる感情のこもった展開が印象的です。残りの2曲 Medley: All The Things You Are/ Midnight Mood、はオリジナルのは無いボーナス・トラックで A Time For Love はオリジナル収録の別テイクです。A Time For Love についてはオリジナルの方が感情が大きく入り別テイクは静かにメロディーを確かめるような演奏でした。
 深く静かに、自分の心の中を見つめながらピアノの鍵盤をさぐるような感じがとても好き。心の揺れをスウィングするピアノの表現は何度聴いても素晴らしいですし好きな人の方が多いアルバムですね🎵

piano : Bill Evans

producer : Helen Keane
recorded on October 21, 1968; except A2 recorded October 8

1. Here's That Rainy Day
2. A Time For Love
3. Midnight Mood
4. On A Clear Day (You Can See Forever)
5. Never Let Me Go
6. Medley: All The Things You Are / Midnight Mood
7. A Time For Love





  

2023年1月4日水曜日

Johnny Winter ONN55


 ジョニー・ウインターは、デビュー当時のCBSとの契約金が100万ドルだったので「100万ドルのギタリスト」と呼ばれていること。ブルースをやり続けていたためマディ・ウォーターズが「義理の息子」と呼んでいたことなどが知られています。
 ジョニーウィンターはこの一枚しか保持していませんが、YouTubeなどではとてもよく拝見する人で、色々なミュージシャンとの共演が多い人でした。キャリアは長いのですが来日は長い間実現していなかった人で、御年67歳にして2011年に初来日、2012年5月、2014年4月と来日公演され、2014年7月に亡くなっています。1990年に来日の機会はあったようですが当時所有が禁止されていた薬を持ち込み入国できなかったそうです。麻薬とは書いてありませんが、睡眠薬とかではないでしょうから、どんなドラッグだったのでしょうか。


 最後の来日時には、雑誌には椅子に座ってギターを弾いている姿が掲載され、普通のギターは多分重すぎるのか確かギターはヘッドレスのギターを使用されていました。てっきりスタインバーガーと思っていたら、アールワインというメーカーが製造した LASER というギターとのこと。
 さてこのアルバム、おそらく激安ワゴンセールなどありがちなライナーノーツ無しのぺラペラな紙一枚の廉価版。おそらく一枚ぐらいは購入しとこうかなと見つけて購入の一枚でしょう。発売元は Object Enterprises で品番はONN55 以外はよくわかりませんでした。写真で検索してみると内容は About Blues という名前で販売されているアルバムと同じですが、こちら Compilation コンピアルバムのようで、コンピですが写真を変えて色々な国でコピー販売されているようです。


 アルバムを聴いてみると Livin' In The Blues みたいなジミヘン意識の曲もあったり、ソウル系の Out Of Sight なんてのもあったりしてブルース一辺倒でもないのは意外ですね。でもイメージは Leavin' Blues、Going Down Slow のバリバリのブルース・ロックです。

1. Parchman Farm
2. Livin' In The Blues 
3. Leavin' Blues
4. 38, 32, 20
5. Bad News
6. Kind Hearted Woman
7. Out Of Sight
8. Low Down Gal Of Mine
9. Going Down Slow
10. Avacado Green





  

2023年1月3日火曜日

Tower Of Power / Live And Living Color


 今までこのアルバムは何百回聴いたんだろう?と記憶にないくらい聴きたおした名アルバムです。若い時に早朝釣りにく車の中で大きめの音量で聴いていたことが多かったような気がします。今ではタワー・オブ・パワー(T.O.P.) のライブ盤も数多くでているようですが、当時はこれぐらいしか出ていなかったように思います。私自身も生で見たのは1回しかなく、2015年の札幌シティ・ジャズフェスの芸術の森ステージでした。Down To The Nightclub などで始まり、お決まりの名曲も目白押しでしたが、ここでも聴かれるフレーズなどとも全く同一アレンジですし、次のキメはあれで・・ ここでこのセリフが・・という記憶と期待は、全て忠実に再現していただいておりました思わずニンマリしてしまいました。歴史が詰まった伝統芸なのですね。きっと、これは何回見ても飽きることはないんでしょう。


 本アルバムはタワー・オブ・パワー全盛期=ワーナー時代の最後1976年にリリースです。ホーンセクションも最強ですが、ドラムのDavid Garibaldi(デイヴィッド・ガリバルディ)とベースのFrancis Rocco Prestia(ロッコ)のコンビは、このバンドの象徴です。メンバーが変わりリズム隊のグルーブは変化してもT.O.Pの基本はホーンとリズム隊のきめ細かいリズム、キメです。ボーカルはこの時代は入れ替わり激しく、前作から加入のHubert Tubbs(ヒューバート・タブス)。ギターはBruce Conte(ブルース・コンテ)で、細かでキレのあるファンク・カッティングは何度聞いても素晴らしい。
 アルバムはライブのオープニングの定番 Down To The Nightclub で始まります。1972年の スタジオアルバム Bump City で収録されているものよりもはるかにグルーブ感がある曲になっています。次いで You're Still A Young Man も人気のバラードで同様に1972年の スタジオアルバム Bump City で収録されていますが、これよりも秀悦に感じます。ボーカルの Rick Stevens(リック・スティーヴンス)1970年-1972年との違いが大きいと言われているようです。What Is Hip? は1973年の3枚目アルバム Tower Of Power からの曲で、緻密なベースとドラムのグルーブが堪りませんしイントロのギターのフレーズと決めのカッコ良いことこのうえありません。盛り上がったところでのトランペットのトレモロのようなフレーズも最高です。Sparkling In The Sand は、1stアルバムの East Bay Grease からで、スローなバラードと透き通ったフルートがクールダウンしてくれます。締めは Knock Yourself Out で何と23分の熱演です。バリトン・サックスがカッコよく、ホーン部隊のソロ回しが気持ち良くて長さが全く気にならないのが凄いですね。永遠の名盤でこれを聴いていない人は人生を損するぐらいの名盤です。

lead vocals : Hubert Tubbs
organ, other (bass pedals), clavinet, vocals, synthesizer (arp string ensemble) : Chester Thompson
bass : Francis Rocco Prestia
drums : David Garibaldi
guitar, vocals : Bruce Conteb

tenor sax, alto sax(1st), flute : Lenny Pickett
tenor sax(2nd), vocals : Emilio Castillo
baritone sax, vocals : Steve Kupka
trumpet, flugelhorn, trombone, vocals, piccolo trumpet : Mic Gillette
trumpet, flugelhorn, vocals : Greg Adams

producer : Emilio Castillo, Tower Of Power

recorded live at Sacramento Memorial Auditorium and Cerritos College by the Record Plant, Sausalito.

1. Down to the Nightclub
2. You're Still a Young Man
3. What Is Hip?
4. Sparkling in the Sand
5. Knock Yourself Out





  

2023年1月2日月曜日

Bill Withers / Just As I am


 フォーク系のソウルの Bill Withers のアコースティック・ギターが印象的な1971年発売のデビュー・アルバムです。社会人になってから知った人ですが私かなりヘビロテで聴きこんでいる名盤です。このアルバムでは Ain’t No Sunshine が特に印象に残りますが、Lean on M、Use Me と言った名曲が後に発売され Just the Two of Us というボーカル・カバーもありますが、美しいメロディによりジャズ系ミュージシャン、フィンガー・ピッカーのアコースティック系ギタリストなどでも頻繁にカバーされる名曲も生み出しています。
 実はこの人かなりの苦労人で、デモテープを作って売り込んでいたがまったく相手にされず、海軍やめて彼女にふられ、泥棒に入られると絵にかいたようなどん底から、33歳で突然レコーディングが始まったのがこのデビュー作です。見出したのはプロデューサーのBooker T. Jones (ブッカー・T・ジョーンズ)でレコード会社」に送ったデモテープがきっかけで、急遽アルバムを作ることとなったので、レコーディングに参加したミュージシャンは Bill Withers の仲間ではなく、紹介されたセッション・ミュージシャンとのこと。


 ザクっとコードをかき鳴らすギターとタイトにリズムを刻むドラムが印象的な Harlem からアルバムは始まります。改めて聴き直すとデビュー一発目でストリングスがバックに入っています。多くの人が関わればそれだけ製作費もかかりますから、この人は売れると確信してのアルバム制作だったことが推測されます。続く Ain't No Sunshine は後にも様々なミュージシャンにカバーされる名曲で、じんわりとした曲調にI know, I know・・・のサビが印象的ですね。ここでもストリングスが入ってます。Ain't no sunshine when she was gone の歌いだしはストレートに失恋の物語で、映画 酒とバラの日々 をテレビで見た後に書いたと言われています。Grandma's Hands はブルージーな曲調で、おばあちゃんとの思い出が題材となった家族愛を描いています。これも素朴な曲調ですが好印象。Sweet Wanomi はカントリー・フォーク調のラブソングを Booker T. Jones のキーボードでソウル調に味付け。Everybody's Talkin' は、フォーク・ロックのフレッド・ニール作のカバーで売れ筋のアップテンポのソウルになっています。Do It Good は、女性コーラスも入ったりして jazz blues 的な味付けにしていて、ここらへんはプロデューサー Booker T. Jones の手腕が光っています。Hope She'll Be Happier はギターとオルガンがメインの幻想的なムードも漂う傷心のバラード。そして Let It Be は、ビートルズのカバーで、ゴスペルのような仕上がりのソウルとなっています。この翌年のヒット曲 Lean On Me に通ずるものを感じます。I'm Her Daddy あたりになってくると流行りのソウルっぽいアレンジ。久しぶりに聴いて結構パンチのある良い曲ですが、歌詞的には別れた彼女に自分との子供がいたってことを人づてに聞いたけど元気かい?っていう痛い中身です。In My Heartギターだけの弾き語りの傷心ソング。Moanin' And Groanin' はファンキーなバンドサウンドで Bill Withers の歌いまわし音づかいが良く表れている曲です。最後 Better Off Dead はパーカッシブなグルーブで少し雰囲気を変えてきています。奥さんと子供が出て行って有り金は残らず飲んじまった。俺なんか死んじまったほうがましさと And I'm better off Dead で、銃声一発でブツッとアルバムが終わる。フォーク調ソウルの素朴な曲調が売りのミュージシャンのデビュー・アルバムとしては中々斬新な一枚目なんですよね。

vocals, guitar : Bill Withers
guitar : Stephen Stills
keyboards, guitar : Booker T. Jones
bass : Chris Ethridge, Donald "Duck" Dunn
drums : Al Jackson, Jim Keltner
percussion : Bobbie Hall Porter

producer : Booker T. Jones 

recorded in "Sunset Sound Recorders" and "Wally Heider Recording Studio", Hollywood.

1. Harlem
2. Ain't No Sunshine
3. Grandma's Hands
4. Sweet Wanomi
5. Everybody's Talkin'
6. Do It Good
7. Hope She'll Be Happier
8. Let It Be
9. I'm Her Daddy
10. In My Heart
11. Moanin' and Groanin'
12. Better Off Dead






  

2023年1月1日日曜日

Lou Donaldson / Hot Dog

 

 Lou Donaldson といえば1926年生まれのアルト奏者で、最初の録音は1950年のチャーリー・シングルトン・オーケストラ。その後1952年にMilt Jackson(ミルト・ジャクソン)Thelonious Monk(セロニアス・モンク)と活動、1953年には Clifford Brown(クリフォード・ブラウン)Philly Joe Jones(フィリー・ジョー・ジョーンズ)Art Blakey(アート・ブレイキー)等と活動しています。現在の私所有音源では、ソロでの作品は、Quartet Quintet Sextet plus five (1954)、Blues Walk(1958) 、Thelonious Monk 作品では Genius Of Modern Music Vol2、Art Blakey 作品では A Night At Birdland Vol1A Night At Birdland Vol2 など、ほぼバップ作品に登場です。その後ソウル・ジャズに進出しているとのことですが、それとは知らずに購入していました。正直これを購入してから数か月は経っていて、いつもの「おでんバー」に何を持っていこうかと思いジャケットはソウル風だが、どうせ見掛け倒しの内容だろうとセレクトしました。マスターもこの音源は知らずに Lou Donaldson? ホー珍しい感じのジャケットですな。と聴いたところ思わずニヤリでした。何がニヤリかと言えば、ファンキーでダンサブルなサウンドが満載で Lou Donaldson がこんな作品を作っていたのかと拍手したい気分になります。どうやらこの前作の Say It Loud という作品からダンス・ミュージック路線となっているようです。ジャケ写もそっち路線ですね。


 完全に8ビートの Who's Making Love は Johnnie Taylor の1968年のヒットのカバーでCharles Earlandのオルガンがファンクしてて、Melvin Sparks のギターもお決まりのパターンが光ります。メンバーで遠くで歌いながら気持ちよく録音されています。Turtle Walk 
は Lou Donaldson 作品のソウルフルな楽曲でバップ時代とは違ってゆったりとリズムをとりながらのサックスで トランペットの Ed Williams のソロが引き締め、Melvin Sparks は完全にブルース・ギターのノリです。アンダー・グラウンドな感じの惰性のようなソロ回しがいかしてます。Bonnie は Tommy Turrentine の作品でのバラード。ダンスホールでのチーク・タイムようなテンポで朗々としたサックスにはバップ時代を忘れててサックスの響きを堪能しながら演奏しているかのよう。タイトル曲の Hot Dog は Lou Donaldson 作品で再びダンス的ファンキー曲で売れ筋路線です。It's Your Thing は The Isley Brothers の1969年のシングルのカバーで元曲の良さが際立ちます。少し遅めのため気味の演奏がレイジーな感じでだるくて良いです。
 この時代のB級ジャズ・ファンクを少し聴きやすくした感じの音はソウル・ジャズとB級ファンクの中間系で、私かなり好みですが、B級マニアとしてはもう少しダサいくらいがかえってカッコ良いかなと思いました。

alto sax : Lou Donaldson
organ : Charles Earland
guitar : Melvin Sparks
drums : Leo Morris
trumpet : Ed Williams

producer : Francis Wolff
recorded by : Rudy Van Gelder

recorded April 25, 1969.

1. Who's Making Love
2. Turtle Walk
3. Bonnie
4. Hot Dog
5. It's Your Thing


▶ Hot Dog