1956年に Prestige Records から発表した26歳の時のアルバムで、これまでに既に9枚のリーダーアルバムを発売していますが発売直後から英米のメディアで絶賛された出世作とと言われ、ロリンズの代表作としても有名です。録音メンバーも Tommy Flanagan、Max Roach、Doug Watkinsという最強ののリズム・セクションで、Max Roach の自由自在なドラミング、1962年で若くして逝ってしまう Doug Watkins の入魂のベース・プレイもこの作品の価値をさらに高めています。この作品の St. Thomas をコピーしたサックス・プレイヤーも非常に多いのではないでしょうか。
いつもの音楽好きの集う「おでんバー」で聴いた時も、おお懐かしい。悪い訳がなかろう。20年ぶりに聴くんじゃないか。皆さんウキウキで聴きました。往々にして昔聴いたアルバムは久しぶりに聴くとこんなんだたっけ?と期待外れの(記憶の美化)なことが多いのですが、朗々としたサックス、見事な曲想と演奏で、改めて聴いても非常に気持ちがいいアルバムでした。そして実に酒を飲みながら聴くと心地よく飲めるアルバムでもあります。
それではレビューです。St. Thomas これは、ロリンズのオリジナルでカリプソのリズムの明るい曲で、タイトルの由来はもちろん、セント・トーマス島。ロリンズの母方がヴァージン諸島出身ということもあって歌っていた、イングランド民謡 The Lincolnshire Poacher が元となっていて、ロリンズも幼い頃からカリプソに親しんできたようです。私も大学のジャズ研に入って初めてスモール・コンボを組んだ時の練習曲の一つでした。難しいことは何もない曲ですがリズムに慣れないとダサくなりがちで聴いているお客がつまらないことになりがちでした。You Don't Know What Love Is は、1941年に Gene de Paul が作曲した美しいバラード曲。深い暖かみのあるロリンズのサウンドを楽しめます。また、控えめではありますが Tommy Flanagan のソロもツボを押さえた渋いピアノが素晴らしい。Strode Rode は、ムーディーなメロディーが特徴のロリンズによるオリジナル。ソロ部分でサックス&ベースのみとなってから、ピアノが入ってくるスリリングな演奏に注目です。Moritat は、ミュージカルの「三文オペラ」の挿入歌をアレンジしたもので別名「Mack the Knife」「The Ballad of Mack the Knife」オリジナルはKurt Weill の1928年作曲。アダルトで陽気な曲となっています。Blue Seven でラストですが、これもロリンズのオリジナル。非常に渋い曲で Doug Watkins の弾くベース・ラインに合わせてロリンズの長いソロが展開され、Tommy Flanagan のピアノがコロコロと気持ち良いです。派手じゃないのがさりげなくてこれまた良い感じです。そして技術を見せびらかすのではなく音を聴かせる Max Roach のソロも素晴らしい。
木製のカウンターでくつろぎながら聴くと安い酒もゴージャスになる。何回聴いても聴き飽きない、心地よく聴けるアルバムの一つですね🎵
bass : Doug Watkins
drums : Max Roach
piano : Tommy Flanagan
tenor sax : Sonny Rollins
recorded by – Van Gelder
recorded at Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey