1991年発表のセカンドアルバムで
3. I Am A Piano
4. Cuanto Vale Tu Amo
5. Ban Con San
6. El Me Ama, Yo Le Amo
7. Descarga De La Luz
8. Make The World Stand Still
9. Flores Y Tambores
Sin Fronteras
住野よるの作品を読んだのは「よるのばけもの」でした。ほんとの「ばけもの」の話なんですが「ばけもの」は怖くない「ばけものより人間の方が怖い」「無意識の行動って怖いもんだな」などなど非常に考えさせられることが多かった作品でした。
そして題名だけは知っていた2015年のデビュー作は、おそらく半年以上前に買ってあってやっと読み始めました。文体は「よるのばけもの」と同じで、本の題名からしても、そっち系の話かなと思っていたら、ちっともそちらのほうへ話はいかず、どうやら青春ものっぽい。
軽快に読み進めていましたが、途中で、これはシリアスな展開に最後はなるんだろうなと気づきます。予想は間違ってはいませんでしたが、これほどまでに感情を揺さぶられるとは思っていませんでした。
私は通勤や移動の電車、そして帰宅前に電車を降りてからドトールで珈琲を飲みながら本を読みます。今回も少しづつ読み進めてドトールの珈琲で少しほろ苦くなるところでやめて帰宅しました。しかし気になってしまい寝ころびながら読み進めると、別に悲しくない普通の話なのに、なんだか涙が少し涙が出てきます。そして途中から一気に涙と鼻水が溢れてきてしまい、最後まで一気に読み切りました。切りどころが悪かったら電車の中で泣いている「変なおじさん」になるところでした。歳をとると涙もろくなるとはいえ、危ない本ですね。
これから読む人のためにネタバレはせぬように細かいところは書きませぬので、未読の方はぜひ読んでください。読み手の性別、年齢の適合性はなく読める本であると思います。
電車で本を読んでいて、隣の人に文面を見られないようにしてしまう久しぶりの官能小説という分類の本でした。ここまで性描写が延々と続く本は初めてで、作者の他の作品は読んだことはありませんが、単なる官能小説で終わっていないので「これが直木賞受賞作家なんだな」と読後の感想です。
夫とその両親と同居する塔子は、かなり普通に地味に生きようと努力していて地味ながらも清楚な美人。しかし独身時代の不倫経験が書かれるあたりで真面目とそれは違うのかと、なんとなく納得。そうこうしているうちにかつての恋人との偶然の再開で不倫となり、手がハラハラしてそこでズルズルだめだよと思うところにそのまま不倫にはまっていきます。日常描写でホッとする部分が前半は圧倒的に少ないんですが、その濃密な描写がこれでもかと続くのだが読者に一気に読ませる力とエネルギーには感服します。
この小説は最後のエピローグでほっとして引き締まるところにも魅力がありました。それまでハラハラして緊張して塔子とともに自分が落ちていったような感覚になっていたのが、落ち着いた視点で天から見つめるよう感覚になって安心感を持たせてくれます。読むのにもエネルギーを使いましたが長編なのに一気読みの作品でした。
このように色々な仕掛けを作って文章の中で直接表現し全体の構成で更に骨格を作っていく小説家という職業を生業としている人には感服します。音楽は感性一発で作ってしまわれるものもありますが、似たようなプロセスで作られていると感じる作品もかなりあります。歳をとってくるとそこらへんが最近面白いと感じてしまいますね。