それまで聞かず嫌いだった Herbie Hancook を聴き始めるきっかけのアルバムです。なにしろジャケットが好印象、中身も素敵な Speak Like A Child は、Herbie Hancook が1968年に発表したアルバムです。1965年からベトナム戦争が本格化して1968年にはキング牧師の暗殺された年の録音で、アメリカ音楽を時代背景を考えながら聴くうえで重要な年代になります。
このジャケ写は婚約中の Herbie Hancook とGigi Meixner のシルエットで、いかにも平和なこのジャケットのアルバムは「innocence and naivete」がテーマで、Herbie は子供、少年、少年時代、そうしたものを題材に曲を書いています。書き下ろしではない作品としては Miles 作品で既に演奏されている The Sorcerer (魔法使い)がありますが、子供にっとって不思議な存在であることを考えればこれはコンセプトに沿った選曲。しかし Miles 作品で既に演奏されたことのある 1曲目の Riot(暴動)は、曲名からわかるように innocence の対極にあります。これは、録音された時代背景の、当時の現実社会の戦争、暴動、弱肉強食の金融界などへのアンチテーゼを、あえて裏テーマとして表しているような記事を見たことがありますしライナーノーツにも似たような解釈が書かれている記事を見たことがありました。以来 Herbie がそう語ったとは書かれていなかったもののそういった解釈をしていました。
が、しかしです。今回の再聴にあたり、原盤のライナーノーツの細かい字を読んでいたら何やら、今までの認識と違うことが書いてある。
The first number, Riot, was recorded originally by Miles Davis. "When I listened to the record," Herbie said, "it sounded like a riot to me with regard to the emotions being expressed. This version, however, is less riotous. It does contain an element of turmoil, but it's there more as an undercurrent than on the surface. Incidentally, when I wrote this song, I wrote the melody first and then I added the harmonies I wanted underneath. I suppose I heard them vaguely in my head from the beginning. I just had to find them."
つまりは、Miles の録音当時は、暴動(Riot)のように聞こえたが、今回のバージョンは、そこまで暴動的ではない。と本人が語っている。つまり、時代背景を踏まえたアンチテーゼは、リスナー側の誇大解釈で、作者本人にとっては純粋に「innocence and naivete」を表し、婚約者との幸せ絶頂の幸福感を詰め込んだアルバムであるということが今更に判明。
最初にこのアルバムを聴く前の私の Herbie Hancook のイメージはゴリゴリのハード系の電子音楽だったので、このアルバムでイメージが一新されたことを覚えています。以降、Speak Like A Child以前の作品では Takin' Off (1962), Inventions & Dimensions (1963), My Point Of View (1963), Empyrean Isles (1964), Maiden Voyage (1965) 以降では、Fat Albert Rotunda (1969), Head Hunters (1973), Quartet (1981), Future Shock (1983), Herbie Hancock and Wayne Shorter / 1+1 (1996) など増え続けています。ただ Future Shock については、Herbie Hancook の聞かず嫌いの元凶だったので、中身はわかってはいたものの、怖いもの見たさに購入して記憶どおり以上の内容にそれ以降ほぼかけていません。
Riot スリリングな疾走感でピアノが突っ走りホーンが合いの手を入れる。「innocence and naivete」がテーマにしては曲名とイメージが合致しないのと思いますが、そうではないと作曲者本人が言っているのだからしょうがない。好きな曲ではあります。
Speak Like A Child ボサノバのリズム、叙情的なピアノと控えめなホーンのアンサンブルは素晴らしい。清々しさの中に、独特のロマンを感じさせる演奏だと思う。
First Trip Ron Carter の息子が初めて学校に通うことになった日の様を音楽で表現したスインギーな曲。比較的穏やかな表情をしてはいるのですが大胆なプレイで、ホーン部隊は参加しません。
Toys ブラス・アンサンブルがほわっとするテーマに、一転してファンキーなタッチも駆使しながら変幻自在なフレーズを積み重ねていくピアノソロが素晴らしい。
Goodbye To Childhood これも幻想的なブラス・アンサンブルのテーマでホンワリさせて、更に幻想的なじんわりとピアノの響きが堪能できる曲で。Toys とつながっているかのような感じがします。
The Sorcerer これはハービーがマイルスにつけたあだ名でもあるとのこと。Miles Davis / Sorcerer のタイトルでもありますが全く違う曲に聞こえます。もしかしてライナーノーツのインタビューでの Riot のことは、The Sorcerer のことと間違えて書いてしまったとか?ないでしょうか
アルバムの楽曲は基本ピアノ・トリオの演奏で、ソロは Herbie Hancook のみでブラスは曲の色付け程度に控えめで、全体的にしっとりと淡いく感じます。私の中のハービーのイメージが変わりました中々の作品ではないかと思います🎶🎹
piano : Herbie Hancock
bass : Ron Carter
drums : Mickey Roker
flugelhorn : Thad Jones
alto flute : Jerry Dodgion
bass trombone : Peter Phillips
producer : Duke Pearson
photography by (cover photo) : David Bythewood
recorded by : Rudy Van Gelder
recorded on March 6 & 9, 1968
1. Riot / Herbie Hancock
2. Speak Like A Child / Herbie Hancock
3. First Trip / Ron Carter
4. Toys / Herbie Hancock
5. Goodbye To Childhood / Herbie Hancock
6. The Sorcerer / Herbie Hancock
▶ Riot







